こんにちは! 今週の「WebikePlusスタッフが勧める意外とイイよ」のコーナーです。正直言って今回のモデルは「安く」はありません。2サイクルエンジンのバイクというだけでもう貴重な時代、悲しいですね……しかし2サイクルエンジンだから無条件で大人気! とはいかないのが現実。意外と狙い目なモデルをピックアップです。

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安くてカッコいいバイクを買ったので、意気揚揚と仲間に見せたら「ああ……コレ買ったのか……」なんて言われ、その言葉どういう意味!? と思いつつネットで調べたら「壊れやすい」だの「不人気」だのひどい言われよう。

(人気ないってマジかよ……だから安かったのかっ!?バイク屋はいいバイクって言ったのに……)

そんな経験ありませんか? だからってさっさと買い替えるのはちょっと待った。キラキラした大人気車ではなくても、どんなバイクも個性の塊。メーカーが「これは売れるぞ!」と意気込んで開発したバイクたちは、それぞれ独特の魅力を持っているもの。

そこで、人気はどうあれイイものはイイぞ! とゴリ押ししていくのがこのコーナー。人気モデルに乗ってりゃエライ時代は過去のもの、現代こそマイナーバイクを全力でお勧めしたい! と「マイナーバイク好き(自称)」のWebike+スタッフ・西田が独断でピックアップしたモデルを紹介していきます!

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わずか1年で退場した不遇の「ウルトラライト スポーツ」

250ccのレーサーレプリカ全盛期に登場したヤマハ「SDR」。このモデルを見て「強烈にカッコイイ!」という人と、「細くて頼りないね……」という人と、きっとライダーでも意見は分かれるでしょう。1987年の発売当時には、残念なことに後者の意見が多かったようで不遇をかこち、わずか1年で販売終了したモデルでした。

しかし今改めてみると、こんなに作りこまれた贅沢なマシンってあるだろうか!? と驚くほど。どうして不人気だったのかといえば、当時は「バイクブーム」の真っ盛り。250ccクラスの売り上げトップ勢を見てみると、ホンダはVT250F、CBR250R、NSR250、ヤマハはRZ250R、TZR250、スズキはRG250Γと、レーサーレプリカを代表するハイパワーのスポーツモデルが勢ぞろいしています。そんななかで200ccという一段落ちる小排気量、人を選ぶストイックなスタイルのSDRは大勢力にはなり得なかったのでした。

しかし時勢が悪かったとはいえ、不人気だったモデルとして片付けてしまうのはもったいがなさすぎるほど、このSDRはすごいモデルです。ということで、今回はこの不遇の名車を取り上げていきましょう。

 

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1987年にヤマハから発売されたSDRは、当時主流だったハイパワー主義に一石を投じるべく、常用域で乗って楽しく、運動性能も高いモデルを目標に設計された。それでも搭載されたエンジンは水冷2サイクル単気筒、排気量は195ccとやや小ぶりながら出力34.0PS/8,000rpmの高出力を発揮し、105kgしかない車重も相まってパワー感は鋭いものとなった。そのコンセプトは市場に受け入れられず発売翌年には販売を終了したが、個性的なデザインと性能に根強いファンもいる。

 

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見た目ほど小さくないけど、とにかく軽い!

まずぱっと見た印象は非常に小さいということ。50ccだと言われても納得してしまうくらいですが、実際はシート高770mm、ホイールベースは1335mmと、当時のレーサーレプリカとあまり大きさは変わりません(同じヤマハのTZR250は、シート高780mm、ホイールベース1340mmでした)。車体幅も680mm、ホイール径も前後17インチと、これもTZR250と同じです。つまりそこまで小さくない。とはいえ単気筒のコンパクトなエンジンやえぐられたタンクによって車体幅は非常に細く、自転車にまたがるような感じ。またカウルレスのシンプルなボディ、シングルシート・モノショックによるスマートなリア周りといった装備によって、いっそうスッキリした印象があります。

 

sdr_ride01

シート高は770mmとけして低くはないが、車体のスリムさによって足つきは非常によい(モデルは身長170cm)。スポーティーさを求めて採用されたセパレートハンドルも低すぎることなく、前傾けっこうおだやかだ。

 

見た目を裏切らないのは車体重量。これは105kgと本当に原付並み。そんな軽さを実現できたのは、シンプルで軽量な2サイクル単気筒エンジンを搭載することと、特徴的なトラス構造を採用していることにあります。トラス構造とは簡単に言えば、細いパイプを三角形に組み合わせて剛性を作り出す構造のこと。国産車ではなかなか採用されない形式なのですが、SDRでは驚くべきことにスイングアームまでトラス構造に! しかもフレームのすべてがTCメッキという新手法の仕上げで、デザイン上でも豪華で綺麗に見える造形美を持ちました。また、完全にタンデム運転を度外視していることにより、小型のシングルシートを採用し、タンデムステップもありません。メーター回りにはタコメーターもなく、これらの一般的には備えている装備がないという点も、車体重量の軽減に役立っています。

 

sdr_frame

SDRの大きな特徴であるトラス構造のフレームは、細いパイプを使用しつつも縦方向への剛性が高く、軽量さと剛性を両立したデザインとなった。

 

sdr_swing02

驚くべきスイングアームのトラス構造。徹底した軽量化が果たされている。フレームと共にTCメッキ(ニッケル・スズ・コバルトの3元素メッキ)が施されており、見た目にも美しい。

 

 

ハイパワーエンジンにハイメカを装備

エンジンはクランクケースリードバルブ吸気の水冷2サイクル単気筒195cc。34.0PS/9000rpmの最高出力を発揮し、トルクは2.8kgf/8,000rpmとかなりのハイパワー。とはいえ、当時の250ccクラスでは45PSクラスの出力を発揮するマシンが多く、その中では排気量差もあるにせよ、非力に見られた点もあったでしょう。しかし、エンジンのパワーを考えるうえで欠かせないパワーウエイトレシオ(車重出力比)では、1馬力あたり3.08kgとレーサーレプリカ並み。当時のプレスリリースにも「シャープな加速と、すぐれたパワーウエイトレシオによる速さの追求」というコンセプトが掲げられています。また、吸気系に「YEIS(ヤマハ・エナージー・インダクション・システム)」を採用し出力向上を狙い、排気系には「YPVS(ヤマハ・パワー・バルブ・システム)」を採用し可変バルブによる排気タイミングの最適化を可能としました。

 

そして注目したいのがなんと、エアクリーナーボックスがアルミ製だということ! 普通エアクリーナーボックスは樹脂製なのですが、軽量化を狙いアルミダイキャストを採用しており、機能的にも剛性が高いうえ見た目にも嬉しいという豪華な装備。おまけにこのエアクリーナーボックスはフレームの一部・サイドカバーをも兼用することで、パーツ数の省略も可能とした洗練された装備でした。排気系は2サイクルでは一般的なチャンバーを備えていますが、シンプルな車体に対してデザイン上でも大きなアクセントになっています。

 

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モトクロッサー「DT200R」搭載のエンジンをベースとした、クランクケースリードバルブ吸気、水冷2サイクル単気筒195ccのエンジン。34.0PS/9000rpmの最高出力、最高トルクは2.8kgf/8,000rpmを発揮する。「YEIS」「YPVS」の装備により、電子制御を用いたハイパフォーマンスを誇った。

 

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アルミダイキャスト製のエアクリーナーボックスはサイドカバーと一体化している。このためサイドカバーとエアクリーナーボックスのスキマがなく、かつ容量アップも可能とした。フレームの一部としても機能しており、部品点数を減らしながらも剛性を発揮する。

 

「モーターサイクル経験の深いマニア」のための1台

そんなエンジンながら、特性は中低速を重視したセッティングとなっており、2サイクル的なハジける高回転を発揮するよりも、ワインディングの立ち上がりや加速での力強さに魅力があるというユーザーの声もありました。小さな見た目や軽さ、扱いやすいトルクを考えると、一見エントリーライダーのために開発されたかのようにも思えますが、しかし、そのコンセプトはまったく逆。軽量な車体で強烈な加速を楽しむ、ということだけに特化したモデルであったということは、バイクでなにがしたいのかがハッキリしたベテラン、あるいは2サイクルの魅力に憑りつかれたエンスージアストのためのモデルだということ。ヤマハでは「モーターサイクル経験の深いマニア」向けに開発された……とハッキリ発表していました。ところがバイクブームのさなかでは、そんなストイックなコンセプトは多数派にはなり得なかったのです。

 

sdr_mater

メーターはシンプルな一眼式。スピードメーターのみを装備し、タコメーターはない。デザインは同世代の「SRX400」と共通する部分があるが、こちらはタコメーターがないぶんそれ以上にストイックだ。コンセプトを考えれば、「回転数をにらみつつパワーバンドを外さないように繊細にコントロールする」といったことは必要がなかったのだろう。

 

sdr_seat

シートは肉厚ながらタンデムを一切考慮しないシングルシート。同時期のレーサーレプリカでさえ、実用性はともかくタンデム用シートがある車種は多かった。それに対してSDRは非常に割り切った考えを徹底しているといえる。

 

sdr_katarog

当時のカタログではスチールのラックと並んだ写真も。軽量化のために生まれたトラスフレーム的な構造はラックにも共通するところだ。しかしスポーティーな雰囲気はまったくなく、SDRのイメージもレーシーなものではなかった。

 

sdr_color

カラーリングは「メルティンググリーン」「アップルレッド」「シャイニーブラック」の3色を展開。派手なグラフィックなどはなく、落ち着いた雰囲気のラインナップだった。

 

つまり意外といいぞ「SDR」

造形もコンセプトも、すべてがストイックなSDR。ないものも多いですが、SDRにしかない魅力も確かに存在しています。

つまりSDRは

・唯一無二のスタイリングにはコンセプトのすべてが詰まっている!

 

・気合の入った美しいトラス構造のフレーム!

 

・すべてを捨てて「軽い車体で加速を楽しむ!」ことのみを行うベテランのためのモデル!

というモデルだったのです。

ところが現代。生産年数も短く、現存する車体はあまり多くありませんが、生産終了から30年以上が経ち「モーターサイクル経験の深いマニア」の中では大人気なモデルとなっています。まあ、発売当時のビギナーは今まさに経験を深めて円熟しているころですから、まさにピタリと開発時のコンセプトがハマった形といえるでしょうか。

SDR諸元(1987)

全長 (mm) 1005
全幅 (mm) 680
全高 (mm) 1005
シート高 (mm) 770
重量 (kg) 105
エンジン種類 水冷2ストローク単気筒
総排気量 (cm3) 195
最高出力 (PS/rpm) 34/9,000
最大トルク (k-gm/rpm) 2.8/8,000
燃料タンク容量 (L) 9.5
変速機形式 6速/リターン式
タイヤ 90/80-17
110/80-17
ブレーキ 油圧式シングルディスク
油圧式シングルディスク
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撮影協力:RED BARON
カタログ:ヤマハ発動機
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コメント一覧
  1. いっちゃん より:

    メッキのトラスフレームはカッコいいんですけど。剛性不足で、飛ばすとグニャグニャでしたよ。

    • marie より:

      そこになぜメーカーはメッキしたのかがあるんですよね。
      たまにメッキを落とす方もおられますが・・・

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