
限りあるコストを注ぎ込むべきパートに投入して現代的な走行性能獲得をねらう
サンクチュアリー本店を旗艦店とするサンクチュアリーグループには現在もなお、空冷Z系をベースとしたカスタムマシン製作依頼が引きを切らない状況だという。それも長年恋い焦がれた念願の空冷Z系、そしてサンクチュアリー製作のカスタムコンプリートマシンRCMとして欲しいという要望が後を絶たず、オーナーも夢の結晶を作り出したいという思いが強いためか、結果的にコストが跳ね上がることも少なくないそうだ。
このZ1000MkIIのオーナーは念願だったZ1000MkIIでRCMを、そしてシングルシート仕様のスポーティなスタイルと、それに見合った運動性能の獲得を希望した。しかし、空冷Z系のシングルシート化はかなりの労力を伴う。タンデムシート部にカバーを被せるような簡易なモノならともかく、大半はシートレールそのものの作り直しが必要になるし、それに伴ってリヤショックの取り付けボスの追加、さらにはナンバーやウインカー、バッテリーなどの取り付けブラケットの製作、テールランプまわりの配線処理などなど、かなりの時間と予算を投入せざるを得なくなる。オーナーの熱意に支えられてコストを相応に投入できるとあっても、抑えられるコストなら抑えたいのが人情だ。
そこで同社は海外から輸入されてきたベース車のなかから、シートレールが切断されている車両を用意。フレームの一部が欠損状態ということは、言ってしまえば得体のしれない状態だった可能性は大だ。だからか、若干ではあるが相場が安くなる傾向があるという。ただしシートレールを切断して新設することを前提とするのなら、シートレールが最初からなくても問題はないし、少しでも安く購入できるならそれに越したこともない。そもそも同社ではRCM製作時、フレームのレーザー測定や曲がり・歪みの修正作業は基本中の基本としてまず行なうべき作業となっている。サンクチュアリー本店としては通常の経年劣化、プラスアルファで多少の欠損がある程度なら、しっかり走れるように組み上げることは可能なのだ。もちろん新品・未使用に近いに越したことはないわけだが…。
ベース車価格をわずかでも抑えることができれば、その他のパートに抑えた分のコストをかけられる。そこで足まわりにはハイスペックなパーツがおごられることになった。O・Zレーシング製アルミ鍛造ホイール、フロントフォークとリヤショックにはオーリンズ製、ブレンボ製ラジアルキャリパーと、世界屈指のブランドで基本的な構成とし、同社が空冷Z系を17インチ化することを前提に開発されたスカルプチャー製ステムブラケットやスイングアームで車体姿勢を最適化させている。
なぜ走行性能を追求すると空冷Z系は17インチ化が必要になるのか。それは現代のスポーツモデルが例外なく17インチ・ラジアルタイヤを採用するからだ。そしてタイヤは走行性能を非常に大きく左右する重要な要素でもある。つまり現代的な走行性能を得るうえで前後17インチの最新スポーツラジアルタイヤは欠かせない、とサンクチュアリー本店・中村博行代表は考えている。そのためステムブラケットやスイングアームといったサスペンションの中核パーツを自社で開発し、空冷Z系を17インチ化した際の車体姿勢を最適化。さらに世界最高峰ブランドのパーツで足まわりを固めることで、現代にも通用する性能を追求しているのだ。
むろん、ここに列挙されたパーツをただ装着するだけでは同社製作のマシンと同等の走行性能は手に入らない。そこは同社が培ったノウハウが惜しみなく注入されることで初めて、生きたマシンとしてストリートを駆け抜けることができるようになっているのだ。その証ともいえるのが、このZ1000MkIIだといえるだろう。
カスタムポイント
同社取り扱いパーツのなかでもとくに人気があるのが同社Zレーサーなどでもお馴染みな、TOMO FRP製シングルシートカウルだ。装着に際してはシートレールから新規で作り起こしているが、純正と同レベルの使い勝手を考え、整備時なども各部へのアクセスが容易なよう各種ブラケットがシート下に隠れている。見えない部分でも手を抜かず作り込まれた逸品だ
カスタムパーツギャラリー

ホイールはO・Zレーシング製最新モデル、ガスRS-A(GASS RS-A)をチョイス。ZRX1200用を流用することで周辺パーツもZRX1200基準とし、今後の整備や拡張性を担保した

オーリンズ製フロントフォークは同社でフロントフェンダーやフェンダーステーなどとセット販売するE×M(エクスチェンジモード)パッケージを使用。ブラケットはスカルプチャータイプ3

同社で非常に採用例が多いのがこのマジカルレーシング製カーボンミラー。軽量なのでブレが発生しにくく、かつブルーミラーの後方視認性が高いとユーザーにも好評を博しているとか

セパレートハンドルはデイトナ製をチョイス。これも同社で採用例が多いブランドだ。また細かい話だがスイッチも現行モデル同様の使い勝手になるよう変更。信頼性を高めている

オイルクーラーはナイトロレーシングからリリースされている9インチ13段。ホースはオリジナルの上回しだ。なお13段は過剰気味だが、ハイプレッシャーオイルポンプによって全量をしっかり使用

エンジンはピスタルレーシングにより1,105㏄にボアアップ。これはパワーアップを強く意識したというより、緩くなったスリーブの打ち替えなど長寿命化を意識したメニューの余波だ

エキゾーストシステムはナイトロレーシング。サイレンサーはバリアントチタンサイレンサーだ。現代風のトライオーバル形状によって"現代の道を走る現役モデル"であることもアピール

リヤショックはゼファー1100用に設定されているオーリンズ製を流用。むろん購入時そのままではなくRCMとしてのハイレベルな走りに追従できるよう入念なセッティングが注ぎ込まれる

スイングアームは自社開発したスカルプチャー製をチョイス。空冷Z系用、GPZ900R用など多種多様なラインナップが存在し、それぞれの車種に最適な車体姿勢が得られるよう設計されている

リヤブレーキはオン・オフのデジタル的な効き方ではなく、よりアナログ的に踏み込んで制御できる組み合わせをチョイス。ジワリと効かせることを意図するため踏みしろも多い
「Z1000MkⅡ by サンクチュアリー本店」の主なカスタム内容
エンジン総排気量 | 1,105㎤ |
---|---|
ピストン | ピスタルレーシングφ73㎜ |
キャブレター | ヨシムラTMR-MJNφ38㎜ |
エキゾーストシステム | ナイトロレーシング |
オイルクーラー | ナイトロレーシング |
点火系 | ASウオタニ SPⅡ |
ホイール | (F)O・Zレーシング ガスRS-A 3.50-17 (R)O・Zレーシング ガスRS-A 5.50-17 |
タイヤ | ピレリ ディアブロ |
Fブレーキ | キャリパー:ブレンボ ラジアル4ポット ローター:サンスター RCMコンセプト マスター:ブレンボ ラジアルポンプ |
Rブレーキ | キャリパー:ブレンボ2ポット ローター:サンスター |
Fフォーク | オーリンズ |
ブラケット | スカルプチャー |
Rショック | オーリンズ |
スイングアーム | スカルプチャー RCM専用品 |
ハンドル | デイトナ |
ステップ | ナイトロレーシング |
シートカウル | TOMO FRP |
ミラー | マジカルレーシング |
クラッチ | マスター:ブレンボ ラジアルポンプ |
情報提供元 [ カスタムピープル ]
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