文/市本行平、写真/HONDA
※当記事は2022年7月1日に「ベストカーWeb」に掲載されたものです。


9月の発売に先駆けて、ホンダの新型「HAWK 11(ホークイレブン)」の試乗会が実施された。往年のロケットカウルスタイルを現代風にデザインしたホーク11は、ホンダのスポーツバイクでは珍しいファッション性やライフスタイルを重視した立ち位置。

その分、計画台数は他のモデルに比べて少なく、年間わずか1200台。しかも国内専用で海外分の台数は予定されていない。果たして狙いはどのようなものか?


ホーク11で導入されたアーキテクチャーシリーズプロジェクトとは?

ホーク11の前に同じ大型ツインエンジンを搭載して発売されたレブル1100シリーズは、2021年の発表時にグローバルで1万台程の販売が計画されていた。対して国内で9月に発売予定のホーク11は、年間販売計画は1200台しかない。海外分もないのでこの台数で成立するモデルということになる。

新車には、部品生産や生産コスト、開発費などが計上され、その分価格に転嫁されるのが一般的だ。ところが、ホーク11の価格は139万7000円とリッターバイクとしては標準的な水準。ひょっとすると採算度外視でもラインナップを増やす戦略なのだろうか? これについて、開発責任者は語る。

「このようなセグメントへの開発を実現可能と判断できたのは、それが具現化できるやり方を身に着けていたからです。

それが、『アーキテクチャーシリーズプロジェクト』というやり方です。既存の車体を活用しながら現行のラインナップと異なる位置づけの派生展開として、市場規模、設定台数に対応した作り方なども検討・精査した開発を行うことです。

既存車体は、アフリカツイン、NT1100の活用。現行ラインナップと異なる位置づけの派生モデルとは、国内専用ロードスポーツ(=ホーク11)の開発です。市場規模、設定台数に対応した作り方まで検討、に関してはホーク11の特徴ともなっているロケットカウルとリアカウルのFRP成形に結びついています」

どうやら採算度外視ではなく、ホーク11は既存の車体=アーキテクチャー(フレームやエンジンなどから構成される”車体”)を活用したシリーズプロジェクトを実践した例だったのだ。



中央がホーク11の開発責任者(LPL)後藤悌四郎氏。歴代CBなどの企画、開発に携わり、完成車開発部長に就任、この5月末で定年退職した。後藤氏の写真右は開発責任者代行の吉田昌弘氏


ファンバイクは少量生産に切り替わり、開発も小ロットに対応?

アーキテクチャーシリーズプロジェクトは多機種少量生産を可能とする車両開発の手法だが、実は生産に関してはすでに一部が少量ロットの時代になっている。ホーク11と同様に国内専用モデルとしてロングセラーになっているCB1300シリーズは、「セル生産」方式で組み立てられていた。

筆者は、ホンダのファンバイクを主に生産する熊本製作所を見学したことがあるが、10年程前の段階で、CB1300シリーズはライン外で一台一台少人数のチームが組み立てていた。ヤマハでも国内専用となったモデル末期のSR400のエンジンが、一人の技師によって手組されていたことが知られている。

だが、問題は「開発」にある。小ロットの製品は専用部品の開発がハードルとなっていたのだ。ホンダには小ロットの製品アイデアは無数にあり、ホーク11もその一台。しかし開発者らが“裏ホンダ”と呼ぶアイデアが発売に結びつくことはなかった。

後藤氏は“裏ホンダ”について、「ホーク11は研究開発部門の『アフリカツインのエンジンでワインディングを楽しみたい』という提案が基になっています。(アイデアとしては)通常のラインナップに乗るようなグローバル視線での政策性などなく、ライダー一個人の実感でしかありません。

そもそも普通にしないといけないルールはありません。もっと色々なやり方があるはずです。結論は”実行可能”」と開発責任者に任命されると、通常とは異なるプロセスで開発に臨んだという。

ホーク11の最大の特徴は、ロケットカウルにあると言っていいだろう。アフリカツインのオンロード仕様と言っても、製品としてどんなライダーがどう楽しむかを設定しないとならない。「作りたいもののキモは? どこを光らせるか?」を考え抜いて一点突破を図ったのがロケットカウルなのだ。

ロケットカウルは金型を用いた大量生産とせず、カスタムパーツでも一般的なFRP成形にすることで費用を抑えている。他にも、ホーク11専用部品となるエアクリーナーボックスを通常とは異なる生産方法にするなどして、販売価格を抑えている。


ホーク11をキャラクター付ける上で重要な要素となったロケットカウル。小ロットならではのFRP製とし、金型では成形不可能な1ピース品とすることで付加価値も高めている


後藤LPLの贈る言葉「もっといろいろなクルマが造れる」

後藤氏は「(ホンダは、)もっといろいろなクルマが造れる」と最後に付け加えた。趣味の乗り物であるファンバイクは、もっときめ細かくユーザーのニーズに応える必要があり、後藤氏はホーク11を通してたとえ台数が少なくても独自の走りや価値が提供できることを示したかったのだ。

技術だけではなく、小ロット製品の開発には無駄を排した強烈なリーダーシップも欠かせない要素となる。「チームの方針は、シンプル、集中、スピード。すべてに着地点を読めるLPLだからこそできる開発」と、開発責任者代行の吉田氏は振り返る。1980年代にホンダに入社した後藤氏は、毎週のように新機種が立ち上がる現場で、若手がものづくりに集中できる環境と、「神のような」開発責任者の采配を身をもって体験しており、それをホーク11の開発に応用したのだ。

1980年代のバイクブームから一巡したが、「大量生産」と「少量生産」という180度異なる製品で当時と同じ開発チームの運営が実践され、ホーク11は完成した。現在、日本のビッグバイク市場は、ベストセラーのZ900RSが年間4800台ほどの販売台数を記録しており、アーキテクチャーシリーズプロジェクトなら日本人好みの専用モデルが開発可能なことを示している。

最後に後藤LPLは、ホーク11を世に送り出すにあたり、後進へのメッセージも残した。
・バイクが好きで、バイクが作りたいからホンダに入ったなら、何が大切かを考えた上でそれを意思として語るべきだ
・ホンダには製品を育てる義務がある。その責任を果たせ
など、去り行くエンジニアが残した言葉が響く。

ホーク11をきっかけに、今後も「もっといろいろなクルマ」が登場することを期待せずにはいられない。


9月29日発売のホーク11。価格は139万7000円でカラーリングは青と黒を用意。車体は大型オフロードツアラーのアフリカツイン譲りで、オンロードタイヤと前傾の乗車姿勢で峠道を楽しめる


【ホーク11所感】性能よりも気持ち良さ優先の走りはGB350にも通じる

ホーク11の試乗会で、知り合いのライダーがVTR1000Fに似ていると言っていた。VTR1000Fは北米でスーパーホーク996と名付けられていたのは偶然ではなく、ホンダは空白となっていた2気筒スポーツ「ホーク」の名に新たな歴史を刻もうとしているのだろう。

ホーク11は、とても乗りやすく心地いい。その魅力の源泉こそ270度位相クランクの並列2気筒。弾ける鼓動と路面をつかむ感覚が扱いやすさにつながっている。一般にスポーツモデルは高回転&高出力型だが、アドベンチャーモデルのアフツイは低回転&高トルク型。このエンジンと車体はロードスポーツと相性がよく、ホーク11は味わい深い仕上がりとなっている。

後藤LPLは、「ホーク11が公開されるとこれまで以上に賛否両論が巻き起こった」というが、筆者はこの走りは嫌いではない。最近の例だとGB350のサウンドとフィーリングに似た気持ち良さがあり、「アフリカツインのエンジンでワインディングを気持ち良く走りたい」というのは”裏”ではなくむしろ“表ホンダ”の企画だと思う。

ただし、ホーク11が顧客として想定するユーザー像には疑問もある。このバイクを革ジャンで格好よく乗りこなせそうな「オヤジライダー」はツーリングしていてもあまり見かけることはない。残念ながら今年50歳になった筆者にはあてはまらない…。

個人的にはファッション性を訴求したモデルより、ホンダにはオヤジ向けでも熱くなる提案を期待したい。独断と偏見で選んだ過去の”裏ホンダ”企画から今回のアーキテクチャーシリーズプロジェクトで実現して欲しいモデルを写真ギャラリーに並べてみたので、ぜひともホンダさん、検討お願いします!

ハンドル位置はセパレートタイプとなるが、低すぎない。また、カウル付きながら足着き性良好でオヤジライダーにもオススメ(写真/小川裕之)


ホンダHAWK 11主要諸元

・全長×全幅×全高:2190×710×1160mm
・ホイールベース:1510mm
・シート高:820mm
・車重:214kg
・エンジン:水冷4ストローク並列2気筒SOHC4バルブ 1082cc
・最高出力:102PS/7500rpm
・最大トルク:10.6kgf-m/6250rpm
・燃料タンク容量:14L
・変速機:6段リターン
・ブレーキ:F=Wディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=120/70ZR17、R=180/55ZR17
・価格:139万7000円


情報提供元 [ ベストカーWeb ]

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