
徹底した作り込みでZRX1200RをコンプリートマシンRCMとして昇華
サンクチュアリー本店を旗艦店とするサンクチュアリーグループでは、さまざまなコンプリートマシンRCMを製作している。基本的にRCMとなり得るベースモデルは歴代フラッグシップモデルから選ばれることが多く、その意味でZRXシリーズがRCMのベースモデルとして選択される機会は少ない。
とはいえZRXシリーズがRCMたりえないというわけではなく、同社でもごく少数ながらベースモデルとして選定され、製作もされている。そのうちの1台となるのが、今回紹介するRCM-528こと、このZRX1200Rだ。
世間的にZRXカスタムといえば、ZRX1200R/ダエグの人気もあり、実にポピュラーな存在でもあるといえる。とはいえ、いわゆるボルトオンパーツ中心で作り上げられた状態では、全体のバランスが必ずしもベストになるとは言い難い部分もある。そこで全体をイチから見直し、トータルでの完成度を高めることをオーナーは選択。そこで全バラにしたうえでの作り込みをスタートさせている。
エンジンは全バラにしたうえでミッションは6速ミッションにコンバート。メッキシリンダーでボアアップが難しいZRX1200RエンジンにはZZR1200純正ピストンを組み込むことで高圧縮化を図り、レスポンスのいいエンジンに仕上げている。また外観もガンコートで全塗装され、まるで新品同様の見た目だ。
そのエンジンに合わせる吸排気には、排気にナイトロレーシングのチタン製ウェルドクラフトエキゾーストを、吸気にはヨシムラのTMR-MJNをセット。さらにナイトロレーシング製ワイドラジエターとハイマウントオイルクーラーをセットしている。
外観はという、ZRX1200ダエグのビキニカウルにレオパルド製シングルシートカウルを組み合わせてスポーティな外観を構築。なおシングルシートに関してはRCMとしての完成度に徹底的にこだわった結果、各種加工を追加。ZRX用として市販されているモノだからそのままでも問題ない製品ではあるのだが、同社としてはわずかな角度の差異にもこだわった結果だ。
足まわりは世界でもトップクラスのメーカーからチョイス。オーリンズ製倒立フロントフォークを用いたE×Mパッケージ(エクスチェンジモードパッケージ)を中心に、O・Zレーシング製ホイール、ブレーキにはブレンボ製ラジアルキャリパーGP4RX、サンスター製ワークスエキスパンドといったパーツで構成され、ハイレベルな走りを実現できるスペックが注ぎ込まれている。
またメーターパネルやリヤフェンダーは既製品ではなくワンオフ。オリジナリティを重視し、徹底した作り込みはこういったパートでも見られる。
もともとのバランスにすぐれる高年式モデルだけに、同社が得意とする70〜80年代車のように車体ディメンションから再構築し直す、といった内容ではなく、繊細かつ精度の高い作業で各部を作り込むことを重視したこのZRX1200R。それゆえにサンクチュアリーのRCMとして存在感あふれる仕上がりを見せているのだ。
カスタムポイント
シングルシートを採用したいとの要望からレオパルド製シングルシートが選ばれたが、RCMとしての理想を追求するためシートレールを加工。さらにシート座面の底部をFRPで作り直し、取り付けブラケットもワンオフで製作してわずかだが角度を調整。何気なく見えるシートではあるが、それが自然に見えるよう細心の注意を払いつつ作業が進められているのだ。
カスタムパーツギャラリー

見慣れないハンドルバーは市販予定のデイトナ製RCMコンセプト。RCMコンセプトとはRCMで用いるのに適したデザインや性能への要望を各メーカーが応えて用意した製品のこと。販売はデイトナから行なわれる予定だ

スピードやタコといったメーター本体はスタック製を用いて信頼性をアップ。パネル部分はカーボン製で、同社でCADを用いてプレート部分からワンオフしたモノとなる。これも担当の力作だ

ブレーキとクラッチのマスターはともに信頼のブレンボ製ラジアルポンプ。レバーはジータがリリースするRCMコンセプトに変更されている。肉抜きによる軽量化とともに超高速域での空気抵抗低減もねらった

ビキニカウルはZRX1200ダエグ純正に変更されている。カーボン調に見えるのは透かしではなく、カーボン転写での演出だ。ヘッドライトユニットはLEDに換装し、一種独特の表情となる

シングルシートはレオパルド性を流用したと先にも触れたが、全体的にソリッドなシルエットを追求すべく、テールカウルのエンド部分を少し加工し、さらにカーボンシートで整えている

倒立フロントフォークで設定したE×Mパッケージでフロントフォークを倒立化。プラケットはスカルプャーの倒立ステムキットSPタイプ1を用いる。これはZRX1200R用を同社からリリース中だ

エンジンチューニングの結果、高回転域を多用できるようになったこと、ハイコンプレッション化して発熱量が増加したことを受け、ワイドラジエターとハイマウントタイプのオイルクーラーで冷却系を強化

ZRX1200Rエンジンはメッキシリンダーを採用するため、通常の方式でのボアアップが難しい。そこでZZR1200ピストンを用いてハイコンプレッションし、パンチある特性を求めた。外観はガンコートで施工

ステップはシンプルな造形で旧車用から高年式車用まで高い人気を誇るナイトロレーシング製をチョイス。可動部にはベアリングを内蔵し、操作性も追求している一品だ

黒いリヤショックはナイトロンのステルスツイン。ストイックなカラーリングで近年注目を集めているパーツだ。プリロードアジャスターなど一部のみ赤色とし、差し色として個性を演出する

ブレンボ製削り出しラジアルキャリパーGP4RXやサンスター製ワークスエキスパンドローター、O・Zレーシング製ガスRS-Aホイールなど、世界最高水準のメーカー製パーツで足まわりを固める

アンダーカウル装着をオーナーから依頼されたが、ノーブレスト製にZRX1200R用は存在しない。そこでラインナップにあったGPZ900R用をワイド加工して車幅に合わせるといった大加工を実施し、完全なマッチングを得た

エキゾーストパイプの大部分がアンダーカウルで覆われているので見えないが、チタンパイプを一度輪切りにし、エンジンをギリギリ避けるクリアランスを得つつフロントタイヤとの干渉を避けるレイアウトに溶接するウェルドクラフト製法で製作されたナイトロレーシング製マフラーだ

スイングアームはよりハンドリングマシンに仕上げるべく最適な長さを得ることを目的に開発されたスカルプチャー製だ。写真のこれはチェーン引きの部分が通常販売品と異なるRCM専用品で、さらにスタビライザーやスタンドフックを増設した特注品

ブレーキは制動力というよりもコーナリングでのきっかけ作りや車体の姿勢制御を意識してφ250㎜サンスター製ローターとブレンボ製2ポットキャリパーを組み合わせた。ホイールは前後ともO・Zレーシング製だ
「ZRX1200R by サンクチュアリー本店」の主なカスタム内容
エンジン総排気量 | 1,164㎤ |
---|---|
ピストン | ZZR1200 |
エキゾーストシステム | ナイトロレーシング |
キャブレター | ヨシムラTMR-MJNφ38㎜ |
オイルクーラー | ナイトロレーシング |
ラジエター | ナイトロレーシング |
電装系 | ASウオタニ SPⅡ |
ホイール | O・Zレーシング ガスRS-A |
タイヤ | ピレリ ディアブロ |
Fブレーキ |
キャリパー:ブレンボ ラジアル4ポット ローター:サンスター マスター:ブレンボ ラジアルポンプ ホース:アレグリ レバー:ジータ RCMコンセプト |
Rブレーキ |
キャリパー:ブレンボ2ポット ローター:サンスター |
Fフォーク | オーリンズ |
ブラケット | スカルプチャー |
Rショック | ナイトロン |
スイングアーム | スカルプチャー |
ハンドルバー | デイトナ RCMコンセプト(試作品) |
ステップ | ナイトロレーシング |
シート | レオパルド |
アンダーカウル | ナイトロレーシング(GPZ900R用) |
メーター |
タコ&スピード:スタック 水温計:スタック 燃料計:スタック パネル:ワンオフ |
ミラー | マジカルレーシング |
情報提供元 [ カスタムピープル ]
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