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使えるパーツを使えるように組み合わせて、筑波サーキット59秒313を記録する実力を与える
1970〜80年代の鉄フレーム車が競う草レースとしては国内最大級の規模と知名度を誇るテイスト・オブ・ツクバ。とはいえ今や21世紀である。70年代といえば今から40年以上も前のこと。以前のように「少し古くなったマシンをカスタムでモディファイしてレースを楽しむ」というわけにもいかなくなったのが実態で、高年式の鉄フレーム車にも参戦する道が拓かれてきた。水冷車が主体となるFゼロクラスではかつてのようにFZ750やGPZ900Rばかりではなく、今ではGPZ1100やZRX1200R、CB1300SF/SB、Z1000なども参戦している。そしてこのZ1000もその1台だ。
見た目は空冷のいわゆるKZ1000ライクだが、エンジンを見れば水冷車であるのは一目瞭然。このあたりは製作したパワービルダー・針替代表の遊び心ともいえるが、外装フィッティングはなかなか凝ったものである。下手をすると空冷フレームに水冷エンジンを換装したと思う人もいるかもしれないが、フレームは歴とした2004年式Z1000だ。
このZ1000だが、そもそも製作したキッカケは、余剰パーツの再利用だった。というのも同社は長年、筑波サーキットを根城として活動している。そういった縁でいろんなレーシングパーツが同社には持ち込まれることがあるのだ。このZ1000に使われているフレームやエンジン、足まわりパーツなどなどは、基本的に同社に存在していたというモノ。ただし単に『余剰パーツがあるから組み挙げて1台のマシンにしました』というわけではない。パワービルダーが製作したマシンとして各部は徹底的に作り込まれているのだ。
パワービルダーといえばエンジンチューニングで知られているカスタムショップだ。ゆえにZ1000エンジンをただ組み直しただけではない。針替代表は次のように解説する。
「Z1000をカスタムする際、ハイリフト化できるZX-9R用カムシャフトを用いるケースが多いのですが、ZX-9R用カムシャフトはカムスプロケットが圧入式。ゆえにシリンダーやヘッドを面研してもバルブタイミングを適正化できず、ほとんどの人は面研などをせず、カムシャフトのいわゆるポン付けにとどまっています。それで“Z1000は130~135ps程度が上限”とされているようですが、それではおもしろくありません。
そこで当社ではバルブタイミング可能なようにカムスプロケットがスライド式のモノに変更し、面研してバルブタイミングを最適化。現状で149㎰を発揮できるようになりました」
ただしZ1000はテイスト・オブ・ツクバに参戦可能なクラスだとFゼロに相当するが、Fゼロで150㎰だと心もとない。そこでZX-9Rのクロスミッションを導入して立ち上がりなどでカバーできる仕様とした。
さらに吸排気もミクニTMRφ40㎜とノジマエンジニアリングのロックオンⅡを組み合わせて出力特性を整えている。なおこのアップタイプのロックオンⅡは市販されておらず、パワービルダーのオリジナル仕様だ。どうしても欲しいなら同社にご相談を。
足まわりはというとパワービルダーが厚く信頼するJBパワー・マグ鍛JB5ホイールに、GSX-R600(ショーワ製インナーカートリッジ)フロントフォークとGSX-R1000ブラケット、オーリンズTTXリヤショックをZX-6Rリンクを介して装着といった具合に一級品が投入されている。ブレーキもブレンボのGP4RRキャリパーやレーシングローターなどレーシングモデルで統一している。
外装はパワービルダーがペガサス製を加工したモノで、造形でイメージしたのは車体が同じ”Z1000”という名称でも丸Zで、シートカウルはペガサス製をショート化したうえでサイドカバーと一体とするなど大加工が加わっている。ペイントはBPナカヤマがパワービルダーのイメージカラーであるグレーでペイントし、針替代表の私物Z1000Jのような雰囲気も醸し出している。
完成したこのマシンは2020年11月に開催されたテイスト・オブ・ツクバの神楽月ステージにて、岩崎 朗選手がライドし、同じくパワービルダー所属の清田宗雅選手が記録していたコースレコードを更新する59秒313をマーク! 決してただの余剰パーツの寄せ集めではなく、マシンとしての高い完成度がタイムで、そして国内トップクラスのレースで実証されているのだ。
なお、実はもう1台のZ1000が同社には入庫しており、そちらをベースにテイスト・オブ・ツクバのハーキュリーズ参戦マシンを製作中。テイスト・オブ・ツクバのハーキュリーズクラスといえば同社からライダーが複数参戦中だが、そのZ1000の仕上がりと、同社山根選手、清田選手たちと誰がどんな戦いをするのかにも注目だ。
カスタムポイント
純正ピストンのままパワーアップさせる手法としては、圧縮比をアップさせるシリンダーヘッドの面研が有効だが、バルブタイミングが適正化できなければ最大の効果は得られない。そこで同社ではZX-9R用の社外製スライド式カムシャフトを探し出し、燃焼効率を最適化。ミッションもZX-9Rのクロスミッションを採用し、筑波サーキットを59秒313を記録できる性能を得た。
カスタムパーツギャラリー

レーサーらしくメーターまわりはいたってシンプル。信頼性からスタック製タコとヨシムラのデジタルマルチモニターだけだ。ブラケットはGSX-R1000から流用し、ハンドルはヤマハ純正といった構成だ。ネックに見える金具はタンクの取り付け用ステー

本来ならガソリンタンクがあるエンジン直上には電装類を集中。エボルテック社のリチウムイオンバッテリーやZX-9R用レーシングイグナイターといったパーツが見られる。なお右に見えるステーはタンク用。ダミータンクは上から挟み込まれているのだ

では燃料タンク自体はというと、シートレールをワンオフで加工し、
サイドカウルとドッキングさせたシングルシートを装着できるようにしつつ、シート下スペースに燃料タンクを移設

フロントフォークはGSX-R600(ショーワ製インナーカートリッジ)を流用。もちろんポン付けではなく内部もモディファイ。
同社オリジナルスプリングでバネレートはZ1000と筑波サーキットでのレース参戦用に適正化されている

ブレーキまわりはブレンボのレーシングパーツで統一。
キャリパーはモノブロックのGP4RR、ローターはレーシング用φ305㎜だ。ホイールはJBパワー・JB5。カワサキのレーシング用として用意されているモノだとか

Z1000はこのピボット下の強度が弱いとのことで、サーキット走行していない車両でもヒビが入ることもあるとか。
そういった弱点も踏まえて最小限度の補強を追加しているのだ

ステップはウッドストック製。ウッドストック製パーツはRSイトウなどカワサキと強い結びつきを持つ
レーシングチームでも採用されるほど高い信頼性を持つ。そういった信頼性なども加味して装着されている

エキゾーストシステムはノジマエンジニアリング・ロックオンⅡサイレンサーを採用するファサーム・プロチタン。
Z1000用にアップタイプは存在しないため、同社が製作を依頼したスペシャルとなる。
欲しい人はパワービルダーに相談すれば何とかなる、かも!?

リヤショックは信頼と実績のオーリンズ製TTX。ちなみに同社がこだわるレバー比を導き出すため選ばれたリンクはZX-6R用。
もちろんリンクをZX-6RにしてTTXリヤショックにすればこのマシンと同じ挙動が得られるわけではない。
そこがプロショップのノウハウだ
「Z1000 by パワービルダー」の主なカスタム内容
エンジン総排気量 | 953㏄ |
---|---|
カムシャフト | ZX-9R |
ミッション | ZX-9R |
エキゾーストシステム | ノジマエンジニアリング(パワービルダー仕様) |
キャブレター | ミクニTMRφ40㎜ |
電装系 | イグナイター:ZX-9R用レーシングキット |
ラジエター | ZX-10R |
ホイール |
(F)JBパワー マグ鍛JB5 3.50-17 (R)JBパワー マグ鍛JB5 6.00-17 |
タイヤ |
(F)ピレリ ディアブロスーパーコルサSC 120/70-17 (R)ピレリ ディアブロスーパーコルサSC 200/55-17 |
Fブレーキ |
キャリパー:ブレンボ4ポット ローター:ブレンボ マスター:ブレンボ ラジアルポンプ |
Rブレーキ |
キャリパー:ブレンボ2ポット ローター:ZX-10R マスター:ヤマハ純正 |
Fフォーク |
GSX-R600 インナー:ショーワ スプリング:パワービルダー |
ブラケット | GSX-R1000 |
Rショック | オーリンズ |
ハンドル | YZF-R1 |
ステップ | ウッドストック |
シート | パワービルダー オリジナル |
ペイント | BPナカヤマ |
情報提供元 [ カスタムピープル ]
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