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25kg軽量化、エンジンと車体も完全新設計に
トライアンフ・アドベンチャーの最高峰、タイガー1200シリーズが4年ぶりにフルチェンジした。満を持して登場した新型は文字どおりの完全新設計で、変更箇所はすべてと言っていい。まず注目したいのはエンジンだ。T-PLANE(Tプレーン)と名付けられた 3気筒エンジンは不等間隔の点火サイクルが採用されトルクフィールが向上。排気量は従来の1215ccから1160ccへとダウンサイジングしつつもピークパワーは9psアップの150ps(9,000rpm)へと向上している。
車体面でもフレームは新設計となりショーワ製セミアクティブ・サスペンションやブレンボ製 モノブロックキャリパーを全モデルに装備するなど足まわりも大幅に進化。トータルで25kgの大幅な軽量化を実現している。
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電子制御もさらに充実した。最大6種類のライディングモードはスロットルレスポンスやABS&トラコンの介入度に加え、サスペンションも自動調整することで最適な走りを実現。モデル構成としてはオンロードに特化したGTとよりオフロード性能を高めたRallyの2タイプが設定され、それぞれに2グレードを用意。標準モデルの「GT プロ」には前後19/18インチのキャストホイール、「Rallyプロ」には前後21/18インチのワイヤースポークホイールを採用。また、上級モデルの「GTエクスプローラー」と「Rallyエクスプローラー」には大容量30Lタンクと死角を検知するブラインドスポットレーダーシステムを初搭載するなど、安全性と快適性がさらに高められている。
タイガー1200 Rallyプロ
タイガー1200 Rallyエクスプローラー
タイガー1200 GTプロ
タイガー1200 GTエクスプローラー
タイガー1200 Rallyエクスプローラー
“2気筒と4気筒のいいとこ取り”は本当だった
まずはオフロード向け上級モデルのRallyエクスプローラーに試乗してみた。会場となったオフロードコースは朝からの雨でだいぶ滑りやすい状態だ。見た目はかなりのデカさ。左右に張り出した30Lタンクと無骨なガード類に圧倒されるが、跨ってみると車体がスリムでシート前方が絞り込まれ、さらにローシート(オプション)が装着されていたので足着きも安心できるレベル。軽量化の恩恵も大きく、取り回しやスタンドを払うだけで軽く感じられる。
走り出してすぐに感じるのがエンジンの違い。同じ3気筒でも従来型の規則正しい鼓動から、新型ではパルス感豊かな不等間隔となり音質もワイルドになった。路面を捉えて後輪をグリップさせる“トラクション”の感覚も分かりやすく、それでいて3気筒ならではの伸びやかな加速も楽しめる。つまり、低中速での2気筒のようなトルク感と高回転での4気筒並みのパワーの“いいとこ取り”なのだ。
ハンドリングも向上した。25kgの軽量化に加え重量バランスも最適化され、サイドラジエター化によりライダーへの熱を抑えるだけでなく結果的にクリアランスが増えて走破性も高められている。スイングアームとシャフトドライブの改良によりパネ下が軽減されたおかげで路面追従性が良くなりマシンの姿勢をコントロールしやすくなった。たとえばパワースライドしたときなどもリアが収束しやすく、とりわけ滑りやすいダートでは安心感が増している。
進化した電子デバイスにも大いに助けられた。路面状況を見て最初から「オフロード」モードで試走したが、ヌタヌタ路面でもしっかりブレーキをかけられるし、アクセルオンで後輪が適度に滑ったところでトラコンが安全にスライドを収めてくれる。ちなみにRallyモデル専用の「オフロードプロ」モードはABSとトラコンを全解除にしてくれるが、このコンディションでは逆に難しいはずだ。電子制御サスペンションも秀逸で凸凹の路面を舐めるようにいなしてくれる。軽くジャンプを飛んでみたりもしたが、着地の挙動もとても安定していた。
ちなみにRallyモデルには全地形対応のメッツラー「Karooストリート」が標準装着されるが、今回の試乗会ではより本格的なオフロード走行向けにオプション設定されているミシュラン「Anakee Wild」が装着されていた。これが大正解で、ちゃんとオフロードを走りたいなら最初からこちらを選択すべきと思う。
タイガー1200 GTエクスプローラー
Tブレーン&電制パワーでウェットでも盤石の走り
続いてオンロード向け上級モデルのGTエクスプローラーに試乗した。シート高は870mmとこのクラスとしては低めだがローシートのおかげで足着きはさらに良い。
Tプレーンエンジンの不等間隔の唸りは脈動感があってワイルド。アクセルひとつで何速ギアからでも図太いトルクが巨体を押し出していく。こちらはワインディングでの試乗となったが、路面はセミウェットで落葉が散るいやらしいコンディションの中、安定感のある走りでコーナーを駆け抜けていく。試しにコーナー立ち上がりで強めにアクセルを開けてみると、すかさずメーター内のインジケーターが点滅する。つまり、トラコンが介入して滑りを抑えてくれているのだが、その挙動がスムーズすぎて感知できないほど。レインモードに入れるとさらに細やかな制御が入り安心だ。このように路面に応じてスイッチひとつで瞬間的にモード切り替えができるのもトライアンフの良いところだ。
ハンドリングはニュートラル。タイトな切り返しではさすがに手応えを感じるが、30Lタンクを乗せていることを忘れてしまう自然なハンドリングだ。フロント19インチホイールはキャストならではの剛性感もあり、サスペンションもダンパーが強めに効いてストローク量も抑えられることで踏ん張り感が増すなど、まさしくオンロード向けのセッティングに仕上げられている。標準装着タイヤのメッツラー「Tourance」 もしっとりした接地感があり荒れたアスファルトでも安心。コーナリングABSも心強く、濡れた路面や日陰のコーナーでマシンを倒し込むときやフロントブレーキを引きずりながら進入したいときなどでも安心して減速できた。
また新型の目玉でもある「ブラインド・スポット・レーダー」も期せずして試すことができた。狭い峠道で対向車が来たため減速した瞬間、バックミラー下側インジケーターが点滅したのだ。ふとミラーを見ると後方からもクルマが急接近していて、これを危険とみなして警告してくれたわけだ。あまりお世話にはなりたくはないが、いざというときに頼りになるメカだろう。
新型タイガー1200はこのクラスで最新のフラッグシップらしく、走りも快適性も安全性もそのすべてが全方位的にアップグレードされていた。オンロード主体の長距離ツーリング派にはGTを、ダートを含む本格的なアドベンチャーライドを求める人にはRallyをおすすめしたい。
主要諸元(タイガー1200 Rallyエクスプローラー)
通称名 | TIGER 1200 RALLY EXPLORER | |
軸距 (mm) | 1,560 | |
シート高 (mm) | Adjustable 875/895 mm | |
車両重量 (kg) | 261 | |
乗車定員 (人) | 2 | |
ハンドルを含む横幅(mm) | ハンドルバー 849mm、ハンドガード 982 mm | |
エンジン型式・種類 | 水冷並列3気筒DOHC12バルブ | |
総排気量 (cm3) | 1160 | |
内径×行程 (mm) | 90.0×60.7 | |
圧縮比 | 13.2:1 | |
最高出力 (kW[PS]/rpm) | 110.4[150]/9,000 | |
最大トルク (N・m/rpm) | 130/7,000 | |
燃料供給装置形式 | マルチポイントシーケンシャル電子燃料噴射、電子制御スロットル | |
エグゾーストシステム | ステンレス製3 into 1ヘッダーシステム、サイドマウントステンレス製サイレンサー | |
燃料タンク容量 (L) | 30 | |
クラッチ形式 | 油圧式、湿式多板、スリップアシスト | |
タイヤ | 前 | Metzeler Karoo Street, 90/90-21 (M/C 54V TL) |
後 | Metzeler Karoo Street, 150/70R18 (M/C 70V TL) | |
ブレーキ形式 | 前 | ブレンボ製M4.30 Stylemaモノブロックラジアルキャリパー、コーナリングABS、320mm径ツインフローティングディスク。マグラ製HC1スパン調整式ラジアルマスターシリンダー、別体リザーバー。 |
後 | ブレンボ製シングルピストンキャリパー、コーナリングABS、282mm径シングルディスク。リアマスターシリンダー、リモートリザーバー。 | |
懸架方式 | 前 | ショーワ製49mm倒立フォーク、セミアクティブダンパー。トラベル量220mm。 |
後 | ショーワ製モノコック、セミアクティブダンパー、電子式プリロード自動調整機能。ホイールトラベル220mm。 | |
フレーム形式 | チューブラースチールフレーム、鍛造アルミニウム製アウトリガー。ボルトンオン式アルミニウム製リアサブフレーム。 |
ケニー佐川のインプレッション
情報提供元[ TRIUMPH ]
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