●写真/文:ケニー佐川 ●撮影:田中淳磨

時代を見据えた“使えるEV”を目指して

市販車初の電動スクーター「Passol」や世界初となる電動アシスト自転車「PAS」の発売、そして最近では「E-Vino」がお茶の間で人気を博すなど、常にEVの先駆けとなってきたヤマハが満を持して送り出したのが「E01」である。

開発に当たってはユーザーの現実的なEVへのニーズを徹底的に掘り下げたという。従来のEVと言えば、短い距離しか走れず充電インフラの問題もあって使いづらいと思われてきた。今回ヤマハがやろうとしているのは、本格的EV時代を見据えた“使えるEV”を作ること。その試金石となるべく投入されたのがE01。実証実験専用モデルとして、気候や使われ方が異なる6か国を対象にグローバル規模でデータを集めるという。

原2扱いで最速100km/h&距離100キロを実現

E01は125ccクラスに相当するフル電動スクーターである。4.9kwhの大容量リチウムイオンバッテリーの電力をエネルギーとして高回転型空冷モーターを回し、ベルトドライブによって後輪を駆動させる仕組み。原付2種AT免許で運転可能で、通勤通学に適した最高速100km/hと航続距離100キロを実現。車格はNMAXと同等サイズでライポジもほぼ同じ。シート下にヘルメットスペースを設けるなど、航続距離はやや短いものの通常のスクーターと同じ感覚で使えるのがメリットだ。

一方で、E01にはクラッチがなく発進がリニアで、2000rpm以下で最大トルクを発生するなど発進加速に優れるのが特徴。電動モーターなので当然ながら騒音も少ない。また、3段階の走行モード(PWR、STD、ECO)や後進できるリバースモード、減速抵抗をエネルギーとして再利用する回生ブレーキなどEVならではの特性も備えている。さらにE01では幅広い充電環境に対応するため、車載の100Vポータブル充電器(フル充電14時間)の他、自宅設置型の200V普通充電器(同5時間)、ディーラー向け急速充電器(同1時間)の3種類の充電方式を設定。固定式の大容量バッテリーと多様な充電インフラに対応することで、都市内(短距離)だけでなく都市圏(中距離)での移動といった現実的なニーズにも応える仕様とした。また、LTE回線による実証実験データの収集を行い今後のEV開発へとつなげるという。

トルクはNMAXの3倍、驚くべき加速性能

メディア向け発表会でE01にさっそく試乗してみた。ぱっと見でスマートかつエレガント。EVらしさを強調したという水平基調のデザインが新鮮に映る。空気の流れを感じさせる白い車体が新幹線のようなイメージだ。

試乗用にNMAXがあったので、乗り比べた印象も含めてお伝えしたい。まず車格は同程度だが、取り回しではE01が若干重く感じる。一方でユニットスイング式のエンジンやマフラーなどがないためシートまわりがよりスリム。スマートキーと連動してメインスイッチ操作や充電ポート&シート下の開閉ができるのもNMAX同様だ。
スロットルを開けると同時に微かなモーター音とともにスムーズに発進。通常のガソリンスクーターのように遠心クラッチがないため右手の動きに即座に反応する。このダイレクト感がEVの気持ち良さ! 試乗コースの短い直線でも発進から50km/h程度に達するまでの加速は同クラスのガソリン車より明らかに速い。とりわけ最強のPWRモードにすると大きな力でドンと背中を押されたように加速する。なんと最大トルクは30Nm/1950rpmとNMAX(11Nm/6,000rpm)の3倍近く。そのスペックからも走りの力強さは想像できるはずだ。ちなみに最高出力は8.1kW/5000rpmでNMAX(9.0kW/8,000rpm)に若干及ばないことからも、スタートダッシュや坂道に強いEVの特徴がみてとれて興味深い。

ハンドリングでも従来スクーターを凌駕

走り出すとこれまた軽く感じるから不思議。構造的に約10kgのバッテリーやモーターなどの重量物が車体センター下側にあるため、低重心かつマスがぐっと集中している感じ。乗っていて常に安定感があるのだ。生憎のウエット路面だったが、グリップの良いタイヤとしなやかなツインショックのおかげで安心できた。通常のスクーターはユニットスイング式といって、エンジンと駆動系が一緒になったユニットがバネ下で動いているが、E01の場合はモーターサイクルのように独立したスイングアームとリアサスで後輪のみを支える構造のため、当然ながらバネ下が軽く路面追従性にも優れている。
加えて、開けた分だけ加速し閉じた分だけ減速するEVのリニアな出力特性により、扱いやすさでもガソリン車の上をいく。通常のスクーターは遠心クラッチを採用するため、スロットONとOFFの間に空走時間ができるが、E01にはそれがほぼないのだ。パイロンスラロームなどもやってみたが、スロットルを閉じれば即座に前輪に荷重がかかって曲がりやすくなるし、スロットルを開ければ即座に後輪にトルクが伝わり路面をつかんでくれる。右手にサジ加減にも細やかに反応してくれる制御系の完成度にも感心することしきり。前述の低重心かつフロント寄りの重量配分とも相まって“スクーターらしからぬ”正確なハンドリングを味わえる。

EVを誇示するようにフロントマスクに設けられた充電ポートやスイッチひとつで作動するリバースモードの使い勝手の良さも好印象。シート下に収まるポータブル充電器を取り出せば、そのスペースに愛用のジェットヘルが余裕で収まることも確認できた。
E01はそのまま市販されるわけではないが、現状でも大いに期待できる出来栄えだった。将来も持続可能なモビリティというだけでなく、走りの性能や楽しさの面でもガソリン車を超えられる可能性を秘めていると実感できたのだった。

なお、国内の実証実験については、一般ユーザーを対象に100台を月々2万円の有償リースで3か月間貸し出す計画。応募期間は5/9(月)~22(日)で受取は7/1~とのこと。詳細については近日ヤマハ発動機から正式発表があるはずなので注目したい。

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コメント一覧
  1. KAZUICHI YAMASHITA より:

    電動バイク🛵夢があります。自分は今ちょい乗りのバイク探しています。125ccのバイクが良いか其れとも150cc以上のバイクが良いかどうか思案中でした。電気で125cc並みの力があり100キロも走れたら充分でしょう。楽しみです

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