
国産絶版車を専門に取り扱うウエマツが、2022年に創業30周年を迎えた。Z1の逆輸入を手がけたことがきっかけで創業し、これまで世界各地から輸入した絶版車は1万5000台以上。同時に徹底的に整備の品質を高めて、保証をつけることで全国規模に販売を拡大した。
販売網も沖縄店を皮切りに支店を増やし、2022年には東北へ出店が決定。ますます勢いに乗るウエマツの全容を改めて解説したい。
目次
ウエマツの30年の歩みが国産絶版車の存在を身近にした
「この30年間、国産の昔のオートバイが好きなお客様に対して、絶版車ライフを楽しんでいただけるようお手伝いできたと思います」と語るのはウエマツ本社の枝川副社長。
CB750フォアやマッハIII、Z1(900スーパー4)など、誰もが知る1960年代後半から1980年代の国産絶版車を専門に取り扱うウエマツが、2022年に30周年を迎えた。絶版車の盛り上がりはますます勢いを増しており、その立役者としてウエマツは最も重要な販売店と言えるだろう。
ウエマツは国産絶版車だけに絞った専門性を重視。そして、高品質の整備を提供するというスタンスは創業当初から変わらない。得意車種だけを全国規模で多数納車することで各車の弱点を把握。そこを徹底的に対策した整備を施すことで他にはない高い信頼性を確保しているのだ。この強みが絶版車業界で唯一の車両保証付き販売に結びついている。
この体制は一朝一夕で整った訳ではなくウエマツの30年の歩みで培われたもの。車齢が増すにつれて不具合も多く見られるようになり、60項目の点検整備から70項目、96項目と増やしていき、当初の整備保証から現在の車両保証付き販売体制へと進化しているのだ。
ウエマツは初めて絶版車に乗る人への不安も払拭し、それまでは憧れだけで踏み出せなかったライダーが安心してオーナーになれるようにアフターフォローを含めたサービス体制を拡充してきた。ウエマツがなかったら、これほど多くのライダーが何十年も前の絶版車を楽しむバイクライフを送ることはできなかっただろう。
ウエマツの納車整備はエンジン腰上を分解整備するステージ4が推奨で主流となる。一人の整備士が1台まるごと担当し、1ヵ月以上の時間をかけて96項目をくまなく点検整備する。
30周年にあたり取材に対応していただいたウエマツ東京本社の枝川寿副社長。創業時はアメリカでの買い付けも担当していたので海外の絶版車事情や市場動向の知識は業界随一だ。
国産絶版車を里帰りさせること1万5000台以上、オリジナル車にこだわり
ウエマツの30年にわたる輸入販売により海外でしか販売されていなかった国産絶版車がより身近な存在になったのは間違いない。ウエマツによる逆輸入数は1万5000台以上、コンテナ数にして800台以上に上る。
こうしてたくさんの車両を扱うことで、各車の基本状態を知る機会が多いのも強みになっている。絶版車はオリジナルに近い車両ほど価値が上がるが、ウエマツはそれを正確に見極められるので値付けの信頼性が高いのだ。また、レストア済みの車両であっても状態によって価格は様々で、ノウハウが豊富な専門店でないと目利きは難しいと思われる。
枝川氏は「Z1だからどれでも600万円する訳ではありません。私たちはオリジナルの希少価値を理解しているので高くても自信をもって仕入れることができます」と語る。
オリジナルであることはどんな車種においても最も価値が高いため、理解しておかなければならないのは当然のこと。オリジナル度が増すほど希少で価格が高くなり、ウエマツはそれを把握した上で仕入れている。新車時から時間が経つにつれて、オリジナルの価値は上昇することはあっても落ちることはないのが人気絶版車の宿命と言える。
この初期型オリジナルのZ1は、実際800万円ほどするという。絶版車においてタイヤなど消耗品まで純正というのは基本あり得ないので、ウエマツでは値札で「フルオリジナル」と記載することはない。正確な表現を徹底する。
日本の工業製品の魅力が詰まった絶版車オーナーの架け橋に
「クルマも含めて絶版車の魅力は"日本の工業製品"だということ、ここに尽きると思います。和食やアニメなどに先行して日本のいいところを世界に示したのはクルマやバイク、家電といった工業製品だったと思うんですよね」と枝川氏は語る。
これを証明するように現在国産絶版車は世界的なブームになっている。これにはパーツメーカーによるリプロパーツが充実し、ネットによる海外への販売網が確立したことも影響しているという。部品供給が行き渡ったことで海外でも国産絶版車の修理が可能となり、特に欧米での需要が高まっているのだ。
「それでも国産絶版車の価値を最も理解できるのは日本人のライダーでしょう」とは枝川氏。海外と日本のオーナー、日本国内でオーナーからオーナーへの架け橋になることがウエマツの願いでもある。これの実現のために、ウエマツでは昔から変わらず個人所有の車両を仕入れて販売している。
さらに最近では、国産絶版車を次世代に受け継ぐ流れも見られるようになっており、ウエマツではCBX400Fなど親子で同じ車種に乗る例が増えているという。中には親子三世代でCB400フォアを愛好するという例もあり、世代間の架け橋にもなっている。
ウエマツが扱うのはドル高時代の「MADE IN JAPAN」のバイクたち。世界へ打って出た時代だけに一様にメーカ―の高い志が感じられる。頑丈さも特筆もので修理さえすれば走り続けられるのもこの年代の日本の工業製品ならではだ。
UEMATSU Channelを見て学校帰りの高校生も来店
2017年4月からスタートしたウエマツチャンネル(UEMATSU Channel)の動画数はすでに230本以上。「昔は雑誌が発売されて全国から広告を見て電話かけていただいていましたが、今はウエマツのYouTubeを見たお客様のお問い合わせが多くなりました」と枝川氏。
また、ウエマツ以外にも一般の国産絶版車ファンの発信がYouTubeに多数上がっており、普通に乗れる、維持費もそれほどかからないといったことをリアルに伝えてくれる事も大きく影響しているという。YouTubeの普及で40代以上はもちろんのこと、特に20代〜30代前半くらいまでの若い世代が急増。中には学校帰りの高校生が来店するなど、これまで以上に若者世代の需要も高まっている状況だ。
世代や新車旧車を問わず日本人は丸いヘッドライトのネイキッドバイクを好む傾向があり、これはCB750フォアやZ1のイメージが受け継がれたもの。今や日本のバイク文化にもなった正統派のスタイルに加え、歴史という付加価値を持った絶版車は"走る遺産"と言えるだろう。
バイクの良さは古くなっても実際に走って楽しめることにあり、これを動態継承していくことが30周年を迎えたウエマツが今後果たしていく役割となる。全国6店(仙台店は2022年3月にオープン決定)の重要性はさらに増している。
ウエマツならではの動画と言えるのがスズキRE-5のインプレッション。超貴重なロータリーエンジンのバイクを実際に走らせた現代の動画は世界でも唯一のものだろう。
親子の絶版車オーナー。はるか生まれる前からあった絶版車に魅力を感じる若い世代のオーナーが増えてきているのは親や先輩からの影響はもちろん、YouTubeで絶版車事情をリアルに伝える動画の普及が大きい。
東京、中部岡崎、関西明石、福岡、沖縄に加え仙台店が2022年3月にオープン
ウエマツは、2008年に現在の東京本社に移転後、2013年に沖縄店、2016年に中部岡崎店、2017年に福岡店、関西明石店をオープンし全国規模で販売体制を築いている。これらは全て直営の支店で、全国どこのウエマツでも均一のサービスを提供している。また、オーナーは全国どこの支店でも対応してもらえるので、ツーリングや引っ越しの際でも安心だ。
そして、2022年3月には関東以北をカバーする仙台店もオープンが決定。ほぼ全国規模で国産絶版車の整備供給体制が整うことになった。在庫車両についても、全店から取り寄せ可能となっており、常時400台規模の在庫から好みの車両を選ぶことができる。
【東京本社】住所:〒192-0024東京都八王子市宇津木町728-1 TEL:042-696-6667 定休日:毎週月曜日 ※祝日の場合は営業 営業時間:9:00~19:00
【中部岡崎店】住所:〒444-0858愛知県岡崎市上六名1-1-6 TEL :0564-57-1819 定休日:毎週月曜日 ※祝日の場合は営業 営業時間:10:00~19:00
【関西明石店】住所:〒674-0064兵庫県明石市大久保町江井島847-3 TEL:078-947-1819 定休日:毎週月曜日 ※祝日の場合は営業 営業時間:10:00~19:00
【福岡店】〒811-2413福岡県糟屋郡篠栗町尾仲438-1 TEL:092-931-5535 TEL:078-947-1819 定休日:毎週月曜日 ※祝日の場合は営業 営業時間:10:00~19:00
【沖縄店】〒901-2223沖縄県宜野湾市大山2-1-7アンリビル101 TEL:098-942-2444 定休日:毎週月曜日 ※祝日の場合は営業 営業時間:10:00~19:00
ステージ4以上の納車整備で最大1年2ヶ月の車両保証が受けられる
ウエマツの納車整備にはステージ1~5のバリエーションがあるが、現在は1と3が休止中になっていることからステージ2、4、5から選択するのが一般的だ。ステージ2は、一般的な納車整備でウエマツで販売した車両の下取り車などが当てはまるケース。
メインとなっているステージ4は、さらに問題が出やすいエンジントラブルも未然に防ぐ、吸気・排気系で9項目、エンジン系で26項目、電装系で22項目、ブレーキ系で12項目、車体まわりで27項目の計96項目に及ぶ点検整備を実施。
最上級のステージ5は、車両が好調でもエンジンのフルオーバーホールを施すこだわり派のメニューとなる。ステージ4、5の納車整備車には2ヶ月/3000kmの車両保証が付くので安心。さらに車両金額の5%で1年延長保証サービスが受けられる。
1. 1年間何度でも利用可能
2. 走行距離無制限
3. ステージ4、5対応可能
※修理や車両運搬を含め免責1万1000円
これらは1年延長保証の主なメリットになるが、中には50年前のモデルもある絶版車にここまでのサービスを実施するのはウエマツのみとなる。車両保証とは、整備が行き届かない箇所も保証するもので、新車並みのサービス体制と言えるだろう。
ウエマツは整備に最も力を入れており、整備士の育成にも積極的。社内でも整備部の人員が特に多いことで知られる。写真は、整備部長の前田一樹氏。
絶版車を保証付きで販売できるウエマツの整備体制は、絶版車に長けた整備士が揃っていることと豊富なパーツストックがあることがポイント。純正キャブレターなど新品パーツがないものは、自社ストックがあることも専門店の強味だ。
テレビ、映画、雑誌にもウエマツの車両が出演
走る遺産と言える貴重な国産絶版車をオリジナルかつ走れる状態で常時取り揃えるウエマツは、メディアにも頼られている存在で、テレビや映画など様々なコンテンツに車両協力オファーが絶えない。
中でも2014年の映画「ホットロード」では主人公のCBR400Fを原作に忠実に仕立てただけでなく、各チームの車両まで数十台を全てウエマツで用意して撮影が実施された大規模なものだった。他にも雑誌「ヤングマシン」のDVDでは、カワサキのZやマッハなど、シリーズを全て取り揃えて貸し出すなどウエマツならではのスケールが活かされたものだ。
2022年以降も、様々な形で貸し出しが予定されており、多くのコンテンツで登場する予定だ。
映画に登場したCBR400FとCB400フォア。ロケ地の湘南で撮影された写真だ。
ヤングマシンが制作したDVD「究極のZ」で撮影されたZシリーズのウエマツ車両。Z1からZ1000Mk.II、KZ1000R、Z1300までシリーズの名車を走行可能状態で貸し出している。 写真協力:ヤングマシン
同じくヤングマシンが制作したDVD「マッハ伝説」で撮影された2ストトリプルシリーズのウエマツ車両。初代のマッハIIIからH2、350SS、KH400などをここまで揃えて走行できることはまずない。 写真協力:ヤングマシン
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