文/Webikeスタッフ:銀

こんにちは!ウェビックスタッフの銀です。今夏、満を持して発売開始となるヤマハ TRACER 9 GT ABS(トレーサー9GT ABS)に袖ヶ浦フォレストレースウェイで試乗する機会がありましたので、早速印象をレポートします。
私はVストローム1050XTを所有していますので、ツーリングモデルとしての比較も参考になれば幸いです。

クラス最軽量の車体は跨がって起こすだけで分かる圧倒的な軽さ!

2020年11月に、ヤマハから新型MT-09とともに発表されたトレーサー9GT。MT-09の車体をベースとしたスポーツツアラーとして、トレーサー、トレーサー900GTとモデルチェンジを重ねていたモデルですが、今回もエンジン、フレームを一新したMT-09に合わせ、フルモデルチェンジでのデビューとなります。

長く伸びたスクリーンにフロントカウル、タンデムツーリングでも快適そうなシート回りなど、ベースとなるMT-09よりもだいぶボリューム感がありますが、サイドスタンドを払って車両を起こすと、リッタークラスのツアラーやアドベンチャーモデルと比較すると、圧倒的に軽さを感じます。

足つき性に関しても、身長170㎝の私でかかとが浮くぐらいなので、ツーリングモデルの中では足つき性の良い部類に入ります。

ちょっと違和感を感じるのは、トレーサー9GTに初採用された、KYBの電子制御フロントサスペンションが、停止状態だとほぼ動かないことでしょうか。もちろん、走りだせば、そんな違和感は全く感じることもありません。


▲2021年7月28日発売する新型トレーサー9GT ABS。エンジン、車体ともに刷新された新型MT-09をベースにツアラー化しています。車重は220kgとクラス最軽量です


▲身長170cmのライディングポジションはご覧の通り。ツアラーらしく上半身が直立する快適な姿勢でライディングできます


▲身長170cm、体重75kgでの足着きはご覧の通り。シート高は810mmと825mmの2通り設定されていますが、こちらは低くセットした例です

超思いのままの緻密なスロットルレスポンスに感動! 演出された吸気音も際立つ

エンジンをかけて、走り出してすぐに感心したのが、スロットルレスポンスの緻密さ。低速時のギクシャクやレスポンスが良すぎてびっくりする、といったこともなく、イメージ通りに加減速してくれます。スロットルオフ時のエンジンブレーキが強すぎる、ということもないですし、本当にコントローラブルです。もちろん、おとなしいエンジンという意味ではなく、ストレートでフル加速すれば、強烈なダッシュ力を見せてくれる、回して楽しいエンジンです。

また、5000回転を越えて耳に入ってくる吸気音は、多少演出された感もありますが、五感に響くライディングの楽しさを改めて感じさせてくれます。


▲エンジンのストロークを3mm延長し、従来の845ccから888ccに拡大したエンジン。従来から採用しているクイックシフターはシフトダウンにも対応しました


▲吸気音は断面積と長さの異なる3つの吸気ダクトを採用し、各ダクトの吸気音を共鳴させ音圧をチューニングすることで中~高回転域でサウンドを強調し、気持ちの良い加速感を演出しています

余談ですが、Vストローム1050XTに買い替えるとき、先代のトレーサー900GTも候補の一台でした。その時、トレーサーを選ばなかった理由は、試乗した際に、ツアラーとしては低速が元気が良すぎる、と感じてしまったからです。連日バイクに乗るようなロングツーリングで疲労が溜まってくると、少しだるいぐらいのエンジンレスポンスが良かったりします。今思うと、それは元気の良さではなく、スロットルレスポンスの過敏さだったのかな、と思います。新型のトレーサー9GTは、先代までのそんなイメージを感じさせない、実に緻密なスロットルレスポンスです。

コーナリング性能、ブレーキング性能も素晴らしく、サーキットでの高速クルージングも充分に楽しめるレベル。一般道のワインディングルートも存分に楽しめると思います。アップ、ダウン両方可能なクイックシフターはやはり便利。特に減速時にシフトダウンに気を遣う必要がなくなるので、操作がよりシンプルになり、結果的に安全にコーナリングすることができると思います。


▲今回の試乗会は千葉県の袖ヶ浦フォレストレースウェイで実施され、強めのブレーキングやワインディングを想定したコーナリング性能もチェックできました

▲私の愛車はVストローム1050XTです。こちらの車重は245kgでトレーサー9GTの取り回しの軽さは羨ましいところです。ですがエンジンマネージメントの緻密さは負けていません

サイドケースのステーにはダンパーを内蔵! 航続距離がもう少し欲しい…

次に、ツーリングモデルとしての装備についてですが、私がもっとも気になったのは、ダンパー内蔵のサイドケースステーです。サイドケースを固定する上下それぞれのステーにダンパーを備え、あえてサイドケースが柔軟に動くようにすることで、ケースを装着した時の運動性を高めるという機構です。試乗時は中身の入っていない3バックを装着していただけだったので、正しく評価することはできませんが、ロングツーリング能力とスポーツ性能を両立させようという、ヤマハの意欲的な工夫だと思います。ぜひ実際に荷物を積んだ状態でのテストをしたいところです。

また、今回のトレーサー9GT、MT-09、ともにサイレンサーはBOX形状で車体下側に収まっています。この形状は好き嫌いがあるかもしれませんが、サイレンサーの出っ張りがないため、左右ともに同じ大きさのサイドケースを装着することが可能になっています。収納に余裕が生まれることはもちろん、中身がマフラーの熱で熱くならないという意味でも、とても大きなメリットです。

ツーリングモデルにあると嬉しいセンタースタンド。トレーサー9GTはセンタースタンド掛けもとにかく軽い!車重が250キロクラスのアドベンチャーバイクとなると、なかなかセンタースタンドを掛けるのがしんどいのも事実。そもそもの車重が軽いのはここでもメリットとなります。


▲フレームはMT-09と共通ながらシートレールをトレーサー専用設計とし、3バッグ搭載が可能。さらにパニア取り付け部の上下にダンパーを設置しています。ボックスはワイズギアのオプション扱いです


▲MT-09には導入されていないセンタースタンドを標準装備。荷物を搭載した時に駐車する際の安心感も高まります。車重が軽いため、スタンドがかけやすいのも魅力です

スクリーンの高さもバイクにまたがった状態で簡単に調整可能。高速道路に乗る前やPAなどでちょっと停止した際に、バイクから降りずに調整できるのは嬉しいですね。

ツーリングモデルとして気になる点は、その航続距離。MT-09より大きい18Lのタンクですが、元々元気が良いエンジンだけに、航続距離は350~400キロぐらいになりそう。ガス欠の不安を考えると、300キロ前後で給油というのが現実的かもしれません。

色々なポイントを列挙しましたが、トレーサー9GT、日帰りや週末に気軽に行くスポーツツーリングと、荷物満載の3BOXでのロングツーリング、両方を1台で存分に楽しめる、とても汎用性の高いバイクだと感じました。緻密なエンジンマネジメントと車重の軽さは初心者にも優しい作りですし、高いスポーツ性能はハイスピードなスポーツライディングも存分に楽しめるでしょう。

安心してライディングを楽しめる電子制御のサポート。クルーズコントロールを始めとしたツーリングを快適にする装備も過不足なく備えて、¥1,452,000というのは、とてもお買い得なモデルだと感じました。

機会があれば、ぜひタンデムでのロングツーリング性能もテストしてレポートしたいと思います。


▲KYB製の電子制御サスペンション(前後)がトレーサー9GTで初めて実用化されました。減衰力を自動で調整し乗り心地とスポーツ性を両立してくれます。ドライとウェット路面に対応した2つのモードも設定しています


▲新しいフェイスデザインは、モノフォーカスライトを下段に、上段にはポジション灯と7度以上のバンク角で点灯するコーナリングライトを設置しています


▲スクリーンは5mm単位で10段階上下に調整が可能です。片手で操作できるので、信号待ちなどでも上げ下げできます。写真は一番上に上げた状態です


▲ライダーシートは2段階に高さ調整が可能です。私は下の段810mmにセットして走行しました。ちなみに前モデルのトレーサー900のシート高850mmから40mmも低くなっています


▲ハンドガードが標準装備されるトレーサー9GTのコックピット。昔ながの2眼メーターを連想させるダブルモニターは見やすくて好印象でした


▲新型トレーサー9GTからIMU(慣性計測装置)が搭載され、ブレーキ油圧を制御するHU(ハイドローリックユニット)と連動し、コーナリング中のブレーキコントロールも行います


▲MT-09から60mm延長されたスイングアームを採用。また、新開発のSPINFORGED WHEEL(スピンフォージドホイール)を採用し、従来モデルから前後で1000gも軽くなっています

2021年型トレーサー9 GT ABS主要諸元

・全長×全幅×全高:2175×885×1430mm
・ホイールベース:1500mm
・シート高:810mm/825mm
・車重:220kg
・エジン:水冷4ストローク並列3気筒DOHC4バルブ 888cc
・最高出力:120PS/10000rpm
・最大トルク:9.5㎏m/7000rpm
・燃料タンク容量:18L
・変速機:6速リターン
・ブレーキ:F=Wディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=120/70ZR17、R=180/55ZR17
・価格:145万2000円

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