
文/Webikeスタッフ:アキヒト
目次
電子制御ってどんなのがあるの?
こんにちは、ウェビックスタッフのアキヒトです。突然ですが皆さんはバイクを選ぶ時、「電子制御」の有無を考慮していますか?
ここ数年、新しいバイクが登場する度にスペックの比較として挙げられるのが「電子制御」。「あの新型にはアップダウン対応のシフターがついたって~」「こっちのバイクはトラコン付いてないの?」「SPは電子サスらしいよ」など、こんな会話を一度はどこかで聞いたことがあると思います。そんな「電子制御」ですが、最近では種類も増えてきてイマイチよくわからない機能や、実際に電子制御を体感したことがない人も多いはず。かくいう私も試乗車で電子制御付きのバイクに乗る機会はあるものの、これまで所有してきたバイクはどれも電子制御の無いバイクばかり・・・
そこで、今回はこれからのバイク選びの参考になればと、色んな電子制御について紹介していこうと思います。「この電子制御ってどんな機能なの?」「ほかにどんな電子制御があるの?」なんて方々の参考になれば幸いです。
電子制御を搭載したバイクを手に入れました
冒頭で電子制御の無いバイクしか所有したことがないと言いましたが、実はつい最近電子制御付きのバイクを所有することになりました。
そのバイクはmoto2マシンのベースエンジンにもなった、トライアンフのストリートトリプルRSです。ちなみに最近発表されたばかりの新型ではなく765ccの初期モデルになります。(車両を受け取った日は新型モデル発表の日でした・・・)
今回はストリートトリプルRSに搭載されている電子制御を例に、主流となっている機能をご紹介していきます!
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ABS(アンチロックブレーキシステム)
ABS(アンチロックブレーキシステム)とは、急ブレーキをかけた時にホイールがロックしてタイヤが滑らないように電子制御で最適なブレーキングをサポートする機能です。仕組みとしては、車輪速センサーがホイールのロックを検知し、電子制御によりキャリパーの圧力を調整してホイールがロックしないようにしています。
ABS発動時にはブレーキの圧力が変化することから、ブレーキを操作しているレバーやペダルにキックバック(押し戻されたり振動したりすること)が起こります。
2018年10月よりABSの義務化が始まったこともあり、最新モデルにはABSが標準装備となっています。小排気量モデルやスクーターにもABS搭載車が増えてきましたね。
最近ではABSも進化し、ライディングモードと連動してABSの介入度を事前に調節したり、スロットルポジション、エンジン回転数、ギヤポジションなど様々な状況に応じて瞬時に介入度を調節してくれるハイテクなものまであります。コーナリングABS、オフロードABS、前後連動ABSなど、種類も様々登場しています。
なお、ABSはホイールのロックを予測して抑制するものなので、制御の介入度が強いとフルブレーキ時に本当はもっとブレーキをかけられるのにABSが発動して制動距離が伸びてしまうことがあります。主にサーキットなどを走る場合に起こるので、ライダーによっては意図的にABSをキャンセルすることがあります。
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クイックシフター(オートシフター)
クイックシフターはその名の通り、素早いシフトチェンジをサポートするもの。アクセルを開けたままシフトアップすると、ペダルの動きをシフトロッドに取り付けられているセンサーが感知し一時的に点火をカットすることで、アクセルを戻したのと同じ状況を作り出しシフトチェンジを行います。通常のシフトアップではアクセルを戻し、クラッチを切ってシフトチェンジを行うのが一般的ですが、これらの操作を必要としないことから「オートシフター」と呼ばれたりしています。
元々はクラッチ操作による加速のロスを減らすために開発されたもので、アフターパーツやオプションによる後付けが主流でした。それがここ数年で、スポーツモデルだけでなく、各メーカーの上位モデルにも標準装備されるようになりました。
これまでのクイックシフターはシフトアップのみが一般的でしたが、最近ではシフトダウンにも対応したクイックシフター(オートブリッパー)を搭載したモデルが登場しています。コーナー進入時にシフト操作が不要となるので、ブレーキングや寝かし込みにより集中することができます。
他にも、シフト操作が不要になるので、ロングツーリングなどシフト操作を頻繁に行う場面では疲労の軽減にも繋がりますね。
パワーモード(ライディングモード)
パワーモードはエンジンの出力特性をボタン一つで変化・調整するものです。路面コンディションやシチュエーションに応じて出力特性を変化させるだけでなく、ハイパワーマシンも意図的に出力を調整することで誰でも扱いやすくなるようにしたものです。同様の機能としてライディングモードと呼ばれるものがあります。
実は「パワーモード」と「ライディングモード」では、出力特性の変化方法が異なっています。
パワーモードは、各モード専用に点火タイミングや燃料噴射量、排気バルブ開度など、いくつかの要素を組み合わせたマッピングを設定しています。
例えばカワサキのZX-10Rに搭載されているパワーモードは3段階から調節ができて、フル:フルパワー、ミドル:フルパワーの約80%の出力、ロー:フルパワーの約70%の出力と、出力を抑えることで状況に合わせて乗りやすくしています。
ライディングモードでは、モードごとに変化する箇所はスロットルバルブの開度特性のみを基本としています。スロットルバルブの開度に伴って燃料噴射量は変化しますが、それ以外の部分はどのモードもほんとんど変わりません。スロットルバルブの特性を変化させることで、中間開度域の出力は変化しますが、パワーモードのように最高出力そのものを抑えたりはしていません。
ライディングモードを採用しているバイクはホンダのCBR250RRやヤマハの「Dモード」搭載車両などがあります。CBR250RRはComfort、Sport、Sport+の3種類からスロットルバルブ特性を選ぶことができ、スロットルレスポンスが一番鋭いSport+に対し、Comfortはスロットルを全開にしても一呼吸遅れて回転数が上がってくる感じです。
モードの中にはエンジンやスロットルバルブ特性を変更するだけでなく、ABSやトラクションコントロールの介入度も一緒に設定されているものもあります。
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トラクションコントロール
センサーがリアタイヤの空転を検知し、電子制御によりタイヤが滑ることを抑制することで転倒のリスクを減らすトラクションコントロール。前後ホイールの回転差を計算することで空転を検知し、点火タイミングや燃料噴射量、スロットルバルブ開度をECUが瞬時に制御することでリアタイヤの空転を調節し滑りを抑制しています。
特にリッターSSクラスのような200馬力を超えるハイパワーマシンは、コーナー立ち上がりなどでアクセルを開けると簡単にリアタイヤが滑ってしまうので、安心して走らせるには欠かせないシステムと言えますね。
トラクションコントロールには、発進、加速時に適切なトラクションをかけることが目的のシンプルなタイプや、『IMU』により瞬時に細かい制御を行い、コーナー立ち上がりなどで発生するハイサイドを抑制するハイテクなものまであります。
『IMU』によるバンク角を考慮したトラクションコントロールを最初に取り入れたのはアプリリアのRSV4ファクトリーAPRCとなりますが、『IMU』についてはまた別の機会でお話ししようと思います。
ちなみに、トラクションコントロールの介入度を設定できる場合、何でも強くすれば良いというものではありません。車両によっては介入度を強くしすぎると、意図しない制御(失火など)により思うように加速を得られずうまく立ち上がれないことも。ストレートでもトラクションコントロールが効いてしまい意図せず加速が鈍ることもあります。シチュエーションに合わせ適切な設定が必要ですね。
転倒を未然に防ぐシステムとして注目されいてるトラクションコントロールは、電子制御の中で誰もが一番欲しい機能ではないでしょうか?
まとめ
ストリートトリプルRSに搭載されている4種類の電子制御について紹介しましたが、いかがでしたか?少し前までは電子制御なんて無いのが当たり前だったこともあり、「電子制御なんていらない」「腕を磨けば関係ない」なんて思われる方もいるかもしれません。しかし、電子制御の登場により、これまでよりも事故や転倒のリスクが減ったことも否定できません。転倒のリスクが減るということはそれだけでライディングにも余裕が生まれ、より走りを楽しむことができるのではないでしょうか。
今では200馬力のハイパワーマシンが各社から登場する時代。「サーキットに行かないのにどこで使うの?」なんて言われたら元も子もありませんが、やっぱり最新のバイク、カッコいいバイクに乗りたいのがライダーの本音。そんな憧れのバイクをストリートでも楽しめるようにサポートしてくれるのが電子制御なのではないかと私は思います。
また、電子制御はあくまでもライダーをサポートする機能なので、ライダーが状況に応じて適切な設定をしないと効果を発揮しません。これからはライテクの1つとして、電子制御の知識も重要になるかもしれませんね。
次回はもっとニッチな電子制御たちをご紹介いたしますので、お楽しみに!
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