
文/Webikeスタッフ:アキヒト
目次
【ヤマハ トレーサー900 GT】
ディテール&試乗インプレッション
これまでは「MT-09 トレーサー」としてMTシリーズのツアラー的なポジションにいましたが、今回のモデルチェンジから「トレーサー900」へと名称が変わりました。
MTという名称が外れたトレーサー900はMTシリーズの1つととしてではなく、「トレーサー」という新たなシリーズの幕開けを感じさせてくれます。
モデルチェンジによって新たな装備を身に付けたトレーサー900はどれほどのものなのか?
今回は上位グレードの「トレーサー900 GT」で試乗レポートしていきます!
デザイン以上に大きく変わった車体
【全長/全幅/全高】
2,160mm/850mm/1,375mm
【車両重量】
・トレーサー900 GT:215kg
・トレーサー900:214kg
パッと見ではこれまでのモデルと大きな違いは無いように思えますが、多くの変更点がありました。
1番の変更点は電子制御の追加となりますが、外装もトレーサー900用にほぼ新設計となっています!
ハンドルバーとブラッシュガードも新設計となり、従来モデルよりもハンドルバーは短く、ブラッシュガードはよりコンパクトに仕様変更となりました。
他にもスイングアームが従来モデルより60mm長くなり、ホイールベースが伸びたことでMT-09よりも安定感が増しています。
今回の試乗車には22リットルのサイドケースが装着されていましたが、欧州仕様では標準装備となるものの、国内仕様では純正オプションとして別売りになってしまいます。
このケースをオプションで取り付けるには、ケースが片側69,000円(税抜)と専用のステーが18,000円(税抜)、ステーに付けるラバーが2,500円(税抜)必要となり、約16万円ほどかかります。
専用オプションなだけあってケースと車体との統一感はバツグンなんですが、価格面がネックになりそうですね。


▲容量は片側22Lと大容量だが、フルフェイスヘルメットは入らなかった
また、新型のフロントスクリーンは表面積が拡大しただけではなく、片手で高さ調整(5mm単位で10段階)ができるようになりました。走行シーンに合わせて走行風の調節できるようになったので、高速走行やロングツーリングでも走行風による負担を減らせますね!
▲最短と最長
トレーサー900 GTのシート高、足つきをチェック
【シート高】
850mm(低い位置・出荷時)
865mm(高い位置)
【足つき】
トレーサー900はシート高の調節が可能となり、今回それぞれの高さで足つきを撮ってみました。
MT-09と比べ、低い状態でも30mm高くなったシート高は足つきにかなり影響がありましたが、低い状態であれば踵が少し浮く程度に足がつきました。高い状態ではつま先立ちになります。
シート高以上にシートの形状もあってか、身長161cmのスタッフでもつま先立ちで車体を支える事が出来ました!
試しに865mmにして跨ってもらってみると、辛うじてつま先はつきましたが、跨ったまま車体を動かすのは無理とのことでした。


トレーサー900 GTの灯火類をチェック
【ヘッドライト】
ヘッドライトにはLEDが採用されています。ヘッドライト自体は従来モデルと変わりませんが、フロントのカウル周りが一部変更となっています。ウィンカーはハロゲンのままとなります。
【テールライト】
テールライトはMTシリーズと共通のLEDとなります。ウィンカーも同じくハロゲンとなります。
トレーサー900 GTのメーターをチェック
トレーサー900とGTではメーターのデザイン、機能が大きく異なります。
GTに装着されているメーターはフルカラーTFTマルチファンクションディスプレイとなり、YZF-R1やMT-10SPと共通ですが表示内容がGT用にアレンジされています。
MTシリーズでも装着されていないTFTディスプレイの標準装備はトレーサー900GTのグレードの高さがうかがえますね!
表示される情報はスピードメーターとバーグラフ式のタコメーター、手元のスイッチで切り替えられる走行モード(D-MODE)、ギアポジション、外気温、水温、時計、燃料計、グリップウォーマーなど多くの情報が盛り込まれています。
また、メーターパネル左側にはあると便利な12VのDCジャックが装備されています。
トレーサー900 GTのスイッチ類をチェック
スイッチはMT-10SPと同じボタンが使われていて、モード切替やトラクションコントロールの調整も指先で簡単に設定できます。
さらにGTではクルーズコントロールが標準装備となるので、ロングツーリングでも快適なライディングに貢献してくれます。
GTではグリップウォーマーが標準装備となります。
なんとこのグリップウォーマー、手元のスイッチを使ってディスプレイの設定画面から温度調節ができるんです!!
ブラッシュガードと合わせて冬場には強い味方になりますね!
トレーサー900 GTのシートをチェック
高さ調整が可能な新設計シートとなります。シート下にあるレールの位置をずらすことでシート高850mmと865mmの2段階に調整が可能となりました。実際乗り比べをしてみるましたが、その違いを体感できますよ!
シートもメインシートとタンデムシートがセパレートになっていて、タンデムシート下にはETC車載器を収納できそうなスペースがありましたが、メインシート下には収納スペースはありませんでした。
トレーサー900 GTの足回りをチェック
【タイヤサイズ】
・フロント:120/70ZR17M/C(58W)
・リア:180/55ZR17M/C(73W)
10本スポークタイプの軽量アルミ製キャストホイールを装備。タイヤサイズもMTシリーズと共通のフロント:120/70ZR17M/C(58W)、リア:180/55ZR17M/C(73W)となりますが、標準装備のタイヤはツーリングラジアルとなります。
【ブレーキ】
ブレーキもMTシリーズと同様にABS標準装備のディスクブレーキとなります。
フロントには298mmディスクローターと対向4ポッドラジアルマウントキャリパーを装備します。
【サスペンション】
サスペンションは前後ともGT専用となり、フロントはフルアジャスタブル式倒立フォーク、リアはリモート調整式プリロードアジャスター付きリアショックを装備しています。
フロントフォークは右側が伸側減衰、左側が圧側減衰の調整と左右で別々の働きをしています。
リアショックは減衰調節だけでなく、荷物の量などに合わせて簡単にプリロード調節ができるのはありがたいですね!
トレーサー900 GTのタンクをチェック
MT-09からタンク容量もアップして、14Lから18Lになりました。
燃費もWMTCモード値:19.7km/L(サブクラス3-2)とタンク容量と合わせてロングツーリングにも問題ありませんね!
新設計のタンクカバーがアッパーカウルとの一体感を出しています。
トレーサー900 GTの気になるお値段は!?
・TRACER900 GT ABS:1,198,800円 [消費税8%含む] (本体価格 1,110,000円)
・TRACER900 ABS:1,112,400円 [消費税8%含む] (本体価格 1,030,000円)
足回りや電子制御が追加されて、8万円しか変わらないのは正直お買い得だと思います!
特に足回りは後から交換したりすると前後で10万円以上かかりますので、買うのであればGTがオススメですよ!
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まとめ
ヤマハの上位モデルにはお馴染みとなりつつある電子制御の数々が盛り込まれたトレーサー900GT。
装備を見た時は「GTだからって色々と付けすぎじゃない?」と感じていましたが、走り出してみるとそのどれもが快適な走りに繋がっていました!
実際にD-MODEのパワー切り替えを試しながら走ってみましたが、流れのスムーズな幹線道路ではSTDモード。悪路や低速を維持する時はスロットルのレスポンスを抑えたBモード(STDモードより穏やかで扱い易い出力特性を楽しめるモード)。高速道路やワインディングなど、パワーが欲しい時にはAモード(STDモードよりシャープでダイレクトなレスポンスを楽しめるモード)と使い分けることで、その場その場で求めている適切なパワーが快適なライディングを生み出していました。巡行中もトレーサー900GTに標準装備のクイックシフターによる、クラッチ無しのシフトアップが気持ちの良い加速を楽しませてくれます。
パワーだけでなく、TCS(トラクション・コントロール・システム)により、Aモードでも滑らかな発進のアシストしてくれます。今回は走行機会がありませんでしたが、トレーサー900はマルチパーパスとして砂利道や悪路も走るライダーもいると思うので、そういう場面でTCSの本当の力が発揮されるのではと感じました!
個人的には操作系の中で電子制御よりも驚いたのがアシスト&スリッパー(A&S)クラッチによるクラッチレバーの軽さです。ふにゃふにゃとも言えるクラッチ操作は、半クラッチやストップ&ゴーの多い市街地で手の負荷を減らしてくれました!クイックシフターと合わせることで、クラッチ操作の機会を減らして手の疲れを軽減してくれますよ!
1番好みがわかれるところになると感じたのが、トレーサー900に搭載されているMT-09譲りのパワフルなエンジンです。正直乗り始めて慣れるまではツアラーなポジションと車格に対してこのパワフルなエンジンは、MT-09と思って乗るには重たさを感じ、ツアラーと思って乗るにはレスポンスが良すぎて気を遣うなと感じました。ただ、快適なツアラーを求めている人には刺激が強いですが、「ツーリング先のワインディングもしっかり走りたい!」という欲張りを間違いなく叶えてくれる1台です!
撮影協力:ヤマハ発動機株式会社
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