【和歌山利宏:モーターサイクルジャーナリスト】

KB4に展開されたマルコーニ氏の流儀とは

EICMAでお披露目されたビモータの「KB4」が、カワサキモータースジャパンから正式発表されました。
そこで頭に浮かんだのが、設計者であるCOOのピエルルイジ・マルコーニ氏のことでした。私はこれまで3度、彼と話す機会があり、それぞれにおいて印象的な思い出があるのです。

【関連ニュース】
【新車】カワサキ、イタリア”Bimota”の新モデル「KB4」を国内で発売

最初は31年前。ハブステアリングのテージの試乗会が筑波サーキットで行われ、開発者の彼が来日したときです。ハブ内の操舵軸の傾きがキャスター角に相当すると思い、それを質問したところ、角度は関係なく、必要なトレールを稼ぐために角度が付いているに過ぎないと言うのです。
キャスター角とフォークオフセットの機能を拭い去り、トレールにそれらを負わせているのです。つまり、各要素に負わされた機能を分析、必要な要素の機能を高めることで、全体としての高機能化と簡素化を図るというわけです。
彼が設計した1994年のSB7にもその思想は感じられました。フレームはメインスパーがヘッドパイプからピボット軸に直線的に配置、剛性向上と軽量化にはそれが理想的というわけです。

2度目は21年前、シシリー島で行われたアプリリアのフツーラの試乗会でした。ビモータの経営難もあって彼は1999年にアプリリアに移籍、フツーラを担当していたのです。
フレームはツインスパーの上部が絶妙に幅小化され、ライポジとの干渉を避けることは元より、捩じり中心が下がって剛性バランス上、好ましいと思えました。そのことを伝えると、我が意を得たりといった様子。
スーパースポーツRSV1000に対し、ツアラーのフツーラはマイルドで完成度も高く、技術的に独創的で奇抜な印象もあった彼でしたが、バランスの取れた見方をする人だと思ったものです。

その後、彼は02年にペザロにあるベネリ(リミニのビモータからクルマで30分ぐらい)に移籍しており、07年にそこで3度目の対談が実現しました。写真はその際のもので、そこでの話題はもう確かではないものの、夜にワインを飲みながらのバイク談義のことは覚えています。

愛車の初代TMAXを気に入っているという彼に、私はそれが好きでないと言い、理由を聞かれた私は、高剛性でモーターサイクル然としたハンドリングであっても、最初に小径のバイアスが破綻を来たしそうだからと答えました。彼はそのことを即、理解。でも、自分はそこまで攻めないから現実的に問題にならないとのこと。
総合的に走りの世界を把握できる人だと思い知らされたのでした。

KB4の開発目標は究極の軽量コンパクト化

KB4が目指したのは、量産市販車では不可能な軽量コンパクト化を図り、旋回性の高いハンドリングを実現することだと思います。そして、そのための手法に注目すると、そこにマルコーニ氏の設計思想が強く感じられるのです。

ホイールベースは、同じエンジンを積むニンジャ1000SXから50mmも短い1390mmです。現在のリッタースーパースポーツが1450mmを超えていることを考えると、他にない俊敏性を期待させます。
しかも、車重は1000SXから42kgも軽い194kgです。計測状態が分からず単純に比較していいものか疑問も残りますが、現在のリッタースーパースポーツが200kgを切る水準に達していることを考えれば、十分に可能な値です。また、前輪分布荷重は53.6%とレーシングマシン並みに高められています。

ホイールベース短縮のため、ラジエターを後方に移動。冷却風のダクトを両サイドに設けています。この手法は99年登場のベネリのトルネードにも見られます。時期的にこのアイデアは彼のものではないと思いますが、モデルチェンジの際にこの方式に関わった経験が生きているのでしょう。
ダクトの膨らみがライポジ面に影響を与えないか気になりますが、十分に検討されているはずです。

そして、フレームを軽量簡素化するために2分割式とし、エンジン懸架点を4点から3点(1000SXがシリンダの前後で懸架するところ、前部のみとする)としながら、エンジンの剛性部材としての依存度を高めています。

また、リヤサスはホンダのユニットプロリンクにも似た方式で、ショックユニット上部はスイングアーム側で支持されます。フレームに支持点は必要がなく、軽量簡素化が可能になります。

このように、機能を分析、機能を集約させるというマルコーニ氏らしい設計が随所に見て取れるのです。開発者の哲学、個性、経験がマシンに滲み出ているって、やっぱりバイクは芸術作品だと思いません?

この記事にいいねする

コメント一覧
  1. 匿名 より:

    拝啓 和歌山様
    (有)エフェクトのハヤシと申します。
    小生いたずらにモトグッチの350イモラでサーキットを楽しもうかといたずらしようとしている60歳前のおじさんです。ノーマルフレームは見た目にも間延びしていてとても走れるようなものではないようなので、フェザーベットタイプのフレームを作ろうと考えており、手元にハリスフレームのドカッティがあるのでキャスター角やトレールやホイールベースなどを参考にしているのですが、考えれば考えるほど判らなくなりこの記事を読み連絡させて頂きました。
    もし可能であれば色々なことアドバイス頂けると助かります。以前いたずらしたバイクは「https://yahoo.jp/xkOkn-1」で見れるかもしれません。
    敬具

コメントをもっと見る
コメントを残す