
【ケニー佐川:Webikeニュース編集長】
写真/渡辺 昌彦
足まわりを中心にガチオフ仕様へとアップグレード
KTMの2021アドベンチャーシリーズのメディア向け試乗会の続報。今回は「1290スーパーアドベンチャーR」についてレポートしたい。
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4年ぶりのフルチェンジとなる1290スーパーアドベンチャーR はKTMを代表するフラッグシップモデルである。エンジンや車体については前回レポートした「S」と共通としつつ、足まわりを中心にオフロード向けの仕様になっているのが特徴だ。
WP製前後サスペンションは「S」が電子制御式であるのに対し「R」はマニュアルタイプのフルアジャスタブル式を採用し、ストローク長も前後220mm(Sは200mm)と長めの設定に。最低地上高も20mmプラスとし走破性を向上。そのぶんシート高も880mmと高められた。ホイールも前後90/90-21インチ、150/70-18(Sは120/70-19、170/60-17)と大径化され、BS製アドベンチャー用タイヤのA41を標準装着するなど、オフロードでの本格的な走りを想定した仕様になっている。
究極のアドベンチャーワールドを夢見る人へ
今回は時間の関係でオフロード走行のみとなったが、終日の雨でテストコースの路面はとても滑りやすく難しいコンディション。ただでさえ走るのを躊躇したくなるが、目の前にあるのは1300ccのモンスターマシンだ。
路面の感触を確かめつつ、徐々にスロットルを開けていったが、想像していた以上に車体の動きが安定していて前後タイヤからも接地感が伝わってくる。オフロードモードで走ってみたのだが、出力特性も穏やかでサスペンションも割とソフトタッチ。じゃじゃ馬を想像していたが、ずっと安心できる乗り味にまずはひと安心である。
ひとつひとつ検証してみたが、まずタイヤが良い。試乗車には標準装着のA41からさらに一段とオフロード性能が高いAX41が装着され、大きめのブロックがしっかりと路面を掴んでくれている感じ。前後サスも専用設計のWP製XPLORが奢られ、ストローク感たっぷりのしなやかな動きで路面に追従してくれる。
細かい凹凸をイニシャルの動きでいなしつつ、大きなギャップに対しては奥でダンピングが立ち上がって衝撃を吸収してくれるのだ。ボディワークも改良されている。フューエルタンクが左右にも振り分けられた3パート構造になったおかげで低重心化されて車体の動きが安定しただけでなく、ホイールベースの短縮とスイングアームの延長などにより運動性能も高められている。
これは790/890アドベンチャー投入時にも説明があったが、ラリーマシン由来の設計思想であることは容易に想像がつく。
電子制御もさらに進化した。「オフロードモード」で走ってみたが、出力は抑えられてスロットルレスポンスも穏やかに。KTM伝統のV型2気筒「LC8」エンジンはそのアグレッシブなイメージとは異なり、出力特性は滑らかで扱いやすく調教されている。
オフロードABSも秀逸で、ヌタヌタ路面のコーナー手前でフロントブレーキを思い切り握っても平然と減速してくれるし、リヤブレーキもロックされずに絶妙な滑り具合でスライド量をコントロールしてくれる。
トラコンについても同様で、コーナー立ち上りなど車体が少し傾いた状態のままアクセルを開けていっても急に後輪が流れ出すこともなく、適度にトラコンが介入して収めてくれる。何回かトライするうちに「ここまでなら大丈夫」という確信が持てればオーケー。あとは機械が上手くやってのけてくれるのだ。
最新の6軸コーナリングセンサーと連動した制御技術は凄いものだと思う。そして、コンディションが悪い場所ほどその恩恵を実感するはずだ。もちろん、元がハンパじゃないのでムリは禁物であることは言っておきたい。
万人向けのモデルではないだろう。だがその驚異的なポテンシャルの高さは、KTMが目指す理想のアドベンチャー像でもあるのだ。それを承知の上で、究極のアドベンチャーワールドを夢見る人にはイチ押しのマシンと言えよう。
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