
文/Webikeスタッフ:アキヒト
目次
【ヤマハ YZF-R1】
ディテール&試乗インプレッション
2015年にフルモデルチェンジして登場した現行のYZF-R1。
ヤマハの最上級スーパースポーツとして、MotoGPなどの技術を惜しみなく取り入れたことで初登場から大きな話題となりました。
2018年現在も初登場から大きなモデルチェンジは行われていませんが、今でも他車を寄せ付けないスペックで、スーパースポーツの頂点に君臨しています。
レースシーンでは鈴鹿8耐において2015年から前人未到の4連覇を達成し、全日本ロードレース選手権でも中須賀克行選手がシリーズチャンピオンを獲るなど、国内ではまさに無敵といえるでしょう!
今回、そんな無敵のYZF-R1に試乗する機会がありましたので、インプレをお届けしたいと思います!
No Excuses. [いいわけしない]。
歴代YZF-R1との違いは何と言ってもデザイン!
これまでのデザインから大きく変わり、MotoGPマシンのYZR-M1に似たスタイルになりました。
特にアッパーカウル周りでは、これまでの存在感のあるヘッドライトから、まるでヘッドライトを搭載していない、ヘッドライトを取り外したレーサーのようなデザインになりました。
テール周りも空力を意識したような、独特のカウル形状となり、「これで本当にタンデムできるのか!?」と思うほどのタンデムシートもテール周りをよりレーシーに見せています。
カウルだけでなくフレームも大きく変更されており、前モデルから全長15mm、ホイールベースは10mmも短縮。
フレーム自体も新設計のアルミ製デルタボックスフレームと、各部の軽量化により、マスの集中化と旋回性をアップさせました。
軽量化はエンジン内部にも徹底的に行われ、装備重量は200kgに。
高い走行性能を引き出すために妥協の無い軽量化は、正にコンセプトである「No Excuses. 」を体現した結果と言えますね。
【全長/全幅/全高】
2,055mm/690mm/1,150mm
【車両重量】
200kg
YZF-R1のシート高、足つきをチェック
【シート高】
855mm
【足つき】
シート高は前モデルから30mmアップで、よりレーシーなポジションに。
コンパクトな車体といえど、直列4気筒の幅は足つきにも影響があり、173cmの私では両足でつま先立ちになりました。
ハンドルバーも低いことから自然と前傾姿勢になるので、足つきの悪い人は車体を支えるのに少し不安を覚えるかも知れませんね。
YZF-R1の灯火類をチェック
【ヘッドライト】
灯火類は全てLEDとなり、ウィンカーはミラーと一体型に。
細い吊り目のようなLEDライトがポジションとなり、メインのヘッドライトはエアダクト両側のフォグランプのような形状となります。
【テールライト】
テールライトも新デザインのLEDライトを装備。独特なデザインなだけでなく、LEDによって被視認性も格段にアップしています。
YZF-R1のメーターをチェック
4.2インチのTFT液晶デジタルメーターを装備。
多くの電子制御を搭載する現行YZF-R1では各種設定や情報を確認する重要なインターフェイスとなります。
表示されている情報も多いことながら、表示モードも「Street」と「Track」の2種類に切り替えが可能。
ここまで多くの情報を表示しながらも、ガソリン残量は警告灯のみなのはスーパースポーツらしいと言えますね。
デジタルモニターの表示を動画でどうぞ!
YZF-R1のスイッチ類をチェック
メーターの表示切替、電子制御の設定は全て手元のスイッチで操作します。
右側スイッチボックスの「MENU」と書いてあるホイールスイッチを長押しすることで、設定画面に切り替わります。
設定画面では電子制御の各種介入設定や表示情報の変更を行えますが、通常画面でも左側の灰色のボタンで各種電子制御の介入設定を行えます。
シフトロッドにはQSS(クイックシフトシステム)のセンサーが装着されています。
現行モデルもこれまでのQSSではシフトアップしか対応していませんでしたが、2018年モデルからは新たにシフトダウンにも対応しました。
YZF-R1の足回りをチェック
【タイヤサイズ】
フロント:120/70ZR17M/C(58W)
リア:190/55ZR17M/C(75W)
ホイールにはマグネシウム鋳造ホイール採用。前モデルと比較し、フロントでは530gの軽量化と4%の慣性モーメント低減、リヤで340gの軽量化と11%の慣性モーメント低減を実現しました。
コスト面からも量産市販車へのマグネシウムホイールを搭載する車両はほとんどありませんでしたが、徹底的な軽量化を求めたこのモデルではホイールも例外なく軽量箇所になります。
【ブレーキ】
フロントは外径320mmディスクローターと新設計のアルミ製モノブロック対向4ポッドキャリパー、マスターシリンダーにはニッシン製ラジアルマスターを装備。
前モデルでは6ポッドキャリパーを装備していましたが、現行モデルでは4ポッドキャリパーに変わっています。
リアには外径220mmディスクローターとアルミ製1ピストンピンスライド方式キャリパーを装備。
ブレーキホースも国内メーカー車両では珍しく、メッシュホースが標準装備となります。
【サスペンション】
フロントフォークには43㎜径インナーチューブ採用のKYB製倒立式サスペンションを装備。フォークトップでプリロードと減衰の調節が可能です。
リヤサスペンションも同じくKYB製のボトムリンク式モノクロスサスペンションを装備。こちらも減衰の調節が可能となります。
他にもリアサスペンションには車高調整が標準装備されていました。
電子制御のステアリングダンパーも変わらず装備されています。
YZF-R1のエンジン・マフラーをチェック
最高出力:147.1kW(200PS)/13,500r/min
最大トルク:112.4N・m(11.5kgf.m)/11,500r/min
YZF-R1の最大の特徴とも言えるクロスプレーン型エンジン「CP4」を搭載。
これまでもクロスプレーンエンジンを搭載してきたが、新型エンジンでは歴代YZF-R1より1mmボアを広げつつショートストローク化したことで圧縮比を上げることに成功。
エンジン回転数も更に1000rpm上がることで、パワーも200馬力の大台まで上げることができました。
他にも部品の見直しによる軽量化でFSチタンコンロッドとアシスト&スリッパークラッチを採用。
コンロッドでは約60%の軽量化、スリッパ―クラッチでは19%の軽量化と約7%の小径化が行われました。
この軽量化はただ部品が軽くなっただけでなく、重さによる抵抗の軽減にも繋がり、パワーロスを防ぎます。
エンジンはビックボア化しているにも関わらず、前エンジンから34mm縮小と4㎏の軽量化に成功。
それでいて耐久性もしっかりと考えられているのだから、とんでもないエンジンとしか言えません…
高回転のハイパワーエンジンに合わせて、フューエルインジェクションもツインインジェクターを装備。
ツインインジェクターにより燃焼速度を高めることで、新型エンジンの圧倒的なパワー、トルクを生み出すことに貢献しています。
そして、クロスプレーンエンジン特有の不当間隔爆発による独特な排気音も健在で、MotoGPマシンであるYZR-M1の音を再現しています。
YZF-R1のタンクをチェック
タンク容量は17Lとなりますが、タンクも軽量化のためにアルミ製となります。
軽量化だけでなくタンクデザインも改良され、ニーグリップやハングオン時のホールド性を高めると共にポジションの自由度を拡大しています。
YZF-R1のシートをチェック
スポーツライディングに重点を置いた形状となり、ポジションの自由度が高く重心をずらしやすく、それでいて安定したポジションをキープする事が出来ます。
シート下はスーパースポーツらしく、書類を入れるのが精一杯のスペースになっています。
YZF-R1の気になるお値段は!?
税込価格:2,268,000円(本体価格:2,100,000円)
※プレスト参考小売価格
近年のスーパースポーツは各社電子制御の搭載と共に高価な素材を使っていることもあり、国内メーカーでも価格が200万円前後が標準になりつつあります。
さらに上のグレードとなる、YZF-R1Mに関しては税込で300万円を超えてくるので、もはや外車顔負けといえる車両ですね。
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最強の電子制御を纏ったYZF-R1
現行モデルでよりパワフルになった車体を支えるのは何と言っても最先端の電子制御です。
YZF-R1の肝である、市販二輪車初の6軸制御センサーIMU(Inertial Measurement Unit)を搭載したことで大きな話題となりました。
IMUを基に各センサーから与えられた情報を高速で演算することで、燃料噴射量、点火時期、スロットルバルブ開度に補正をかけてリアルタイムで最適なエンジン出力に調整します。
これらのセンサーを活用した電子制御がPWR(パワーモード切替えシステム)、TCS(トラクションコントロールシステム)、SCS(スライドコントロールシステム)、LIF(リフトコントロールシステム)、LCS(ローンチコントロールシステム)、QSS(クイックシフトシステム)です。
PWSはライダーの好みや走行環境に応じてエンジンの出力を調整することができます。
TCSはエンジンのパワーを最適にタイヤに伝えるシステムで、バンク角の深さも考慮された新型TCSを装備します。
リアタイヤのスライドを感知・補正するSCSは市販二輪車では初のシステムです。
LIFは強力なパワーにより発生するウィリーを抑止します。
LCSはレースでスタートダッシュを決める際、適切な回転数、パワーで加速を続けるためのシステムです。
QSSではクラッチ操作無しにスムーズなシフトアップ、ダウンを可能にします。
これらの機能が連動することで、ライダーはよりライディングに作集中することができ、ハイパワーなマシンを効率よく操る支援をしてくれます。
今回の試乗では全ての電子制御を体感することはできませんでしたが、公道走行でもTCSやQSSの恩恵は十分に受けることができました!
やはりサーキットなど極限の環境で走らないと全ての性能を体感することはできなさそうですが、死ぬまでには1度でもそんな機会に恵まれてみたいものです。
このYZF-R1はライダーをそんな気にさせてくれる魔法のようなバイクですね。
今でも凄い性能なのに、スーパースポーツはこの先どこまでいくのでしょうか?(笑)
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