【ケニー佐川:Webikeニュース編集長】

英国を代表する工業都市、バーミンガム近郊の街レディッチで1901年からモーターサイクルを作り続けてきたロイヤルエンフィールドは、世界で最も古い2輪ブランドのひとつである。現在はインドに本拠を置くが、今回ご紹介する「INT650」を含む新型ツインシリーズは英国でデザインと開発が進められた最新モデルだ。

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西海岸で人気だった往年の名車をオマージュ

INT650はかつて1960年代にアメリカ西海岸で人気を博したINTERCEPTOR(インターセプター)にインスパイアされ現代に蘇ったモデルである。セミアップハンドルや丸型ヘッドライト、ティアドロップタンクにフラットシートを備えた正統的スタイルは、誰もが思い描くオートバイの姿そのもの。
太陽が降り注ぐカリフォルニアのビーチで遊び、デザートレースに興じた古き良き時代のアイコンでもあるのだ。

その極めつけはエンジン。シリンダーが縦に2本並んだ空冷バーチカルツインの伝統的レイアウトを今に伝えている。ツインシリーズのもう一台「コンチネンタルGT」とは共通のエンジンと車体を持つまさに双子の関係だが、ハンドルとステップ位置、タンクとシートのデザインなどによって異なるキャラに仕上げられている。

GTがカフェレーサーなら、INTはより自由な雰囲気を持ったスタンダードなモデルと言えそうだ。

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重いクランクが転がる昔気質の走りが楽しい

ライポジは650ccクラスとしては大柄で重厚感があるが、跨ってみるとシートは低め、サスペンションの沈み込みも多めで足着きは良い。

INT650で走り出すとすぐに伝わってくるのが乗りやすさ。理由は空冷OHCツインというエンジンレイアウトにあると思う。排気量は650ccとジャストミドルで最高出力も47psと取り立てて凄いわけではないが、逆にそれが扱いやすい。間違ってスロットルをガバ開けしてもドッカンとこないし、じわじわっとパワーが出てくる優しさがある。それでいて粘り強い低中速トルクと4バルブならではの伸びやかな加速も持っている。

聞くところによれば、この新設計エンジンは3000~6000rpmで最大トルクのほぼ9割を発生するらしい。高速道路でも6速固定のまま3000rpmで80km/h、4000rpmで100km/hレンジで楽に走れる。
フラットな出力特性と270度クランク独特のパルス感あふれる走りが実に気持ちよく、レトロ感漂う大きなクランクケースの中で重いクランクシャフトがゴロゴロ回っているような昔堅気なフィーリングがまた味わい深いのだ。ということもあって、形はネイキッドなのだがクルーザー的なまったりした走りも楽しめてしまう。

伝統のハリスフレームが生むしなやかなハンドリング

特筆すべきはハリスがフレームを設計していること。英国のハリス社はかつてWGPにもマシンを送り込んでいた一流のフレームビルダーである。2015年にロイヤルエンフィールドがそのハリス社を傘下に収めたことにより、現代に通じる本格的な車体作りのノウハウが新型ツインシリーズにも注ぎ込まれたわけだ。

適度なしなりを生むスチール製ダブルクレードルフレームと前後18インチの大径ホイールの慣性力が生み出す、安定感のあるハンドリングがINT650の持ち味だ。もうひとつ、標準装着されたピレリ製ファントムの相乗効果だと思うが、見た目以上に走りは現代的でコーナリングもしっとりとした安定感がある。
その上で、アップハンと前寄りのステップの位置関係により、切り返しなどはGTよりも軽快だ。

ビギナーにも安心、カスタムベースとしてもおすすめ

ロイヤルエンフィールドと聞くと、古(いにしえ)のバイクというイメージがあると思う。現代の感覚で考えるとどうなの、という不安もあるかもしれない。だが心配はご無用。新たな時代に踏み出した新型ツインシリーズは形こそノスタルジックだが、その走りと性能は紛れもなく現代のバイクだ。

ビギナーでも安心して乗れるし、いろいろなバイクを乗り継いできたベテランにも原点に戻るという意味でおすすめ。バーチカルツインの鼓動に身を任せ、海岸沿いを風に吹かれながら走るだけで気分も高揚してくる。長く乗り続けられる趣味のバイクとして、またカスタムベースとしても楽しめるモデルだと思う。

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