突然のアクシデントで走行不能になってしまうトラブルのひとつに「タイヤのパンク」がある。チューブタイヤの場合は、釘や細いボルトや金属片などが突き刺さった場合、その数分後には、チューブを膨張させていた空気が抜けてしまい、あっという間に走行不能になってしまうことが多い。一方、チューブレスタイヤの場合は、釘や金属片が突き刺さってしまっても「すぐには空気が抜けてしまわないのが大きな特徴」だ。ここでは、そんな突然のアクシデントに対応できるように、チューブレスタイヤのパンク修理方法を再確認しておこう。
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「修理セット」を携帯してツーリングへGo!!
チューブタイヤでロングツーリング、しかも林道や秘境系ツーリングをプランニングしたときなどは、タイヤレバー2本、パンク修理用ホットパッチ、もしくはスペアのチューブ、さらには小型のエアーポンプなどなどが必要不可欠になってしまう。一方、チューブレスタイヤの場合は、車載工具と同等サイズのパンク修理キットがあれば大丈夫。走行時のエアー圧調整用に、小型エアーポンプがあればさらに良いが、チューブレスタイヤのパンク修理キットには、小型の窒素ガスボンベが数本入っていて、修理後のエアー充填で利用することができる。この撮影時のキットには3本の小型ボンベが入っているが、過去に使用済みの場合は、ボンベを必ず補充しておこう。
患部の「穴」はクリーニングが鉄則
車載工具のプライヤーでは、突き刺さったクギや金属片を抜き取りにくい。そこで、別途「ニッパ」を車載工具もしくはパンク修理キットに追加しておくことをお勧めしたい。金属片を引き抜く際には、刺さっていた角度(タイヤのトレッドに対して直角に刺さっているとは限らない)を、確実に確認しながら作業進行すること。抜き取り除去後は、修理キットに入っているスパイラル状リーマを穴角度に合わせて差し込む。リーマを差し込んだら、グリグリ回転させながら、さらに上下へ動かし、貫通穴の内側をリーマエッジでクリーンナップしよう。ここまでの作業で修理前の段取りは完了だが、この段取りをやらないで修理作業に入り、微妙にエアー漏れ=失敗する例も多いので要注意だ。
接着剤をたっぷり塗布して患部へ押し込む
穴埋め修理のヒモ(粘着質でベトベトしている)は慎重に取り扱おう。例えば、路面に落としてジャリなどが付着しないように要注意。不純物が付着して粘着性が落ちると失敗の原因になるからだ。挿入ツールの割り部分に穴埋め修理材をセットしたら、グリップ側へ二つ折りにして、接着剤(接着セメントとも呼ばれる)を多めに塗布して、患部の「穴角度に合わせて」しっかり挿入。接着セメントが乾いていない状況ならば、セメント成分が潤滑成分のようになってタイヤへスーッと挿入しやすいはずだ。この修理材のセット方法には諸説いろいろあるが、ここでは説明書に従い、二つ折りにした修理材を穴角度に合わせて挿入し、端末まで入れず(10mmほど残した)、また、挿入ハンドルの角度を変えずにスーッと引き抜いた。
圧縮ガスは漏らさないように作業進行
窒素ガスボンベからエアー充填するには、専用のジョイントアダプターが必要だ。もちろん修理キットに同梱されている。まずはボンベをアダプターへしっかりねじ込む。ねじ込み途中でエアーが出始めたらバルブを閉じよう。しっかりボンベを締め付けたら、タイヤバルブのねじにアダプターをしっかり詰め付け、その後、バルブを開放してボンベ内の圧縮窒素でタイヤへエアーを充填する。トレッドを親指でグイッと押し込み、エアーが入っていることを確認したら、タイヤから飛び出た修理材周辺につばきを塗布して、ブクブクッとエアー漏れしていないか目視確認しよう。同じ手順でタイヤのエアー圧が高まるまでボンベで充填し、アダプターを取り外すときには、エアー抜けしないように素早く取り外そう。作業後には、ガソリンチャージでスタンドに入り、タイヤのエアー圧を規定値に調整しよう。また、修理患部からエアーもれが無いかも確認しよう。
修理ひもは根元からカットしない!!
カニのブクブク泡のようにならないことを確認したら、修理材が飛び出たし部分をナイフでカットするが、この際は、タイヤのトレッド面ギリギリでカットするのではなく、修理材を5ミリほど残してカットしよう。これで作業終了だが、ガソリン補給時には、必ずタイヤのエアー圧チェックを行おう。
- ポイント1・チューブレスタイヤに釘や金属片が突き刺さっているのに気が付いた時には、慌てて抜き取らないこと
- ポイント2・修理前には「突き刺さり患部」につばきを塗って、どの程度、エアー漏れしているのか事前確認しよう
- ポイント3・金属片の除去は意外と大変なので、車載工具のプライヤーだけではなく、ニッパを用意し利用するのが良い
突然のパンク!!……経験したことがある者なら、その切なさは、ご理解いただけると思う。パンクに気が付いた時に、秒単位で症状が悪化してしまうのがチューブタイヤ。あっという間にエアー圧が低下してしまうので、即刻、走行不能になってしまうことが多い。また、何とか走れるだろう!?なんて無駄な期待を寄せてしまい、潰れたタイヤのままで走ってしまうライダーがたまにいる。しかし、これは大間違い!!潰れたタイヤで走ってしまうと、釘や金属片を抜いたとしても、グチャグチャに潰れたタイヤによる走行で、チューブがタイヤとリムに押しつぶされて裂けてしまったり、固定バルブの付け根からチューブが千切れてしまうことがあるのだ。
チューブタイヤでパンクに遭遇したときは、クギや金属片などの原因を除去してから、レスキューを待とう。もしくは、仮にバイクを押して歩くとしても、ごく僅かな距離に留めておきたいものだ。何故なら、前述したように、パンク修理で直せるはずだった状況から「チューブ交換しないとダメ」な状況へ変化してしまうからだ。
一方、チューブレスタイヤの場合はどうだろう。チューブレスタイヤの歴史を振り返ると、その普及は70年代末が始まりで、それ以前は、大型車もチューブタイヤを採用していた。普及開始から40数年が経過し、チューブレスタイヤの採用率は極めて高まっているが、それでもまだまだチューブタイヤを装着したモデルは多い。一般的にスポークホイールモデルの場合は、タイヤチューブを利用する例が多いが、大型ツアラーモデルやオフロードモデルの中には、スポークホイールながらチューブレスタイヤを組み込める構造を採用しているモデルもある。
したがって、パンクに遭遇したときには、タイプによって修理方法も異なるため、愛車の前後タイヤが「チューブ仕様なのか?」「チューブレス仕様なのか?」、まずは知っておくことから始めよう。
ここでは「チューブレスタイヤのパンク修理方法」を再確認しているが、チューブレスタイヤの場合は、仮に、クギや金属片が突き刺さっているのに気が付いた時でも、慌ててすぐに抜き取ってしまうのは大間違い!!まずは「つばきを指先」に取り、患部へ塗布してみよう。そのときに「カニのブクブク泡」のように患部から泡が吹き出す場合は、できる限り早急にパンク修理しよう。逆に、ブクブク泡が出てこない場合は、そうは簡単にエアー圧低下しないので、目的地へ向けてゆっくり走ることもできる。ただし、信号待ちなどでは「つばき塗布」を繰り返し行い、エアー漏れの有無を確認するように心掛けなくてはいけない。
突然の出来事に遭遇してしまうと、やり方は理解していたつもりでも、正しい手順で作業進行できるとは限らない。「パンクしたので修理する」といった情報を仲間からキャッチしたら、すべてが経験になるので、その作業の様子を見せて頂くのも良い。きっと、新たな発見もあるはずだ。
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