サスペンションがストロークした時に内部のオイルが抜けないよう、テレスコピックフォークのインナーチューブとアウターチューブの間にはオイルシールが組み込まれています。インナーチューブのサビや経年劣化によってダメージを受けたオイルシールは交換が必要ですが、旧車の中には今では見ることが少なくなった方法でオイルシールを固定しているフロントフォークも存在します。

アルミ鋳造製になる以前のアウターチューブは別体ホルダーが当たり前


1965年製造のヤマハYGS1のフロントフォークは、アウタースプリング仕様のテレスコピック式。アウターフォーク側にダンパーロッドがないピストンメタル式と呼ばれる構造で、これ以降も一部の小排気量車に採用された。赤いアウターチューブの上部の円筒形のメッキ部品がアウターチューブナットで、内部にオイルシールが圧入されている。

クランプボルトを緩めるとスプリングの反力で抜けてしまうのがアウタースプリングフォーク。分解時はともかく組み立て時にスプリングを縮めながらフォークを組み立てるのが手間なので、圧縮された状態でタイラップなどで縛っておく。

フロントフォークが正立タイプでも倒立タイプでも、アウターチューブの端部にはオイルシールが圧入されていて、インナーチューブの伸縮に伴って表面に付着するフォークオイルを掻き落としています。経年劣化でシールリップが硬化したり、ストローク時にホコリや砂利を巻き込んで傷が付いたり、場合によってはインナーチューブの錆びで剥離したハードクロームメッキが傷をつけた際には交換が必要です。

現行車の多くが採用しているフロントフォークはアウターチューブがアルミ製で、インナーチューブが刺さる端部にオイルシールが圧入されています。そのため、本体に比べてシールホルダー部分の外径は太くなっています。しかし、アルミ製アウターチューブが普及する以前は鉄製のアウターチューブが一般的で、1960年代はもちろんのこと原付クラスでは1970年代でも鉄製は珍しくありませんでした。

パイプ状の材料から製造される鉄製アウターチューブは、基本的に上から下まで同じ外径になっており、アウターチューブにオイルシールを圧入する肉厚はありません。そこで、アウターチューブ上端に切られたネジに別部品のシールホルダーをねじ込む、アウターチューブナットと呼ばれる方式が採用されていました。

アウターチューブナットはそれ自体にクロームめっきが施されるなど、アクセント的な要素もあり、フォークスプリングがインナーチューブの外側に付くアウタースプリング仕様のフォークではスプリングマウントの役割も果たしていました。

セリアーニタイプのフロントフォークの場合、、アウターチューブ下端からダンパーロッドの固定ボルトを外してオイルシールクリップを取り外し、インナーチューブを強く引くことでスライドメタルによってオイルシールを引き抜くことができます。しかしそれ以前のピストンメタルと呼ばれるタイプのフロントフォークの場合、アウターチューブナットがインナーチューブの抜け止めとして機能しているため、インナーチューブを引くだけではオイルシールは外れません。それどころか、オイルシールはナットに深く圧入されているため、ナットを外してからでなければ取り外すことはできません。

POINT

  • ポイント1・フロントフォークのアウターチューブが鉄製の場合、ねじ込み式のアウターチューブナットを介してオイルシールが装着される
  • ポイント2・アウターチューブナットに圧入されたオイルシールは、ナットを取り外さないと交換できない

ねじ込み式のアウターチューブナットは傷つけないように回して取り外す


ガス管や水道管の締め付け作業で使用するパイプレンチ(上)は、上下のアゴが対象物に食い込むことで強力な緩め力や締め付け力を発揮するのが特長。ただしアゴのギザギザ部分が相手に傷を付けることもある。一方、ゴム製の平バンドを食い込ませて回すベルトレンチ(下)は、デリケートな相手も傷つけづらいが、ツルンとした素材に対してはスリップする場合もある。


ベルトレンチが滑って回らない固着したアウターチューブナットも、パイプレンチならすんなり緩む。アゴが食い込む際にどの程度傷を付けるかは固着の程度によるので、レンチに加える力が大きくなりそうならアゴ部分にウエスやゴムシートを挟む。


アウターチューブナットを取り外すとインナーチューブを引き抜くことができる。ナットに組み付けられたオイルシールの状態だけでなく、メタルやインナーチューブの擦れ痕もチェックする。

アウターチューブ先端の雄ネジに対して、アウターチューブナットはねじ込むように取り付けられています。一般的なナットのように六角形ではないため、回すための工具にも工夫が必要です。フロントフォークの中で装飾的にクロームメッキ仕上げとなっている場合には、傷を付けないようゴムバンドを用いたホルダーやプーラーを使うのが良いでしょう。

それらが滑って回せない時には、パイプレンチを使えば確実に緩めることができますが、レンチの接触部分に傷が付くため、ゴム板やウエスなどの緩衝材を併用すると良いでしょう。また機種によってはフックレンチやピンスパナを掛けられるナットが使用されている場合もあり、この場合はナットの直径に適した工具を使用することで傷付きを防止できます。

アウターチューブナットを取り外してインナーチューブを引き抜いたら、表面のハードクロームメッキのコンディションを確認します。すでに点サビが出ている場合には再メッキするより他はありませんが、サビが出ていなくても摺動面の中で部分的に強く当たっている部分がある時は要注意です。

ピストンメタルタイプのフロントフォークのアウターチューブとインナーチューブは、上下のスライドメタル部分の2カ所だけで接触しています。それに対してセリアーニタイプは、アウターチューブ内面とインナーチューブが全面的に接触しています。そのため、ピストンメタルタイプのインナーチューブの特定部分のメッキが薄くなっていたり、剥離している場合はインナーチューブの曲がりを疑わなくてはなりません。

インナーチューブが曲がるとフリクションロスが増加してフォークオイル漏れの原因にもなりますが、曲がりが僅かな場合は作動性への影響が小さいこともあります。しかし分解してインナーチューブ単品で確認すれば、アウターチューブ側のスライドメタルとの接触部分で当たりが強い場所を見つけることができることがあります。

POINT

  • ポイント1・アウターチューブナットを着脱する際はナットを傷つけづらい工具を準備する
  • ポイント2・ピストンメタルタイプのフロントフォークは、分解した際にインナーチューブの曲がりに気づくことがある

ナットに圧入されたフォークシールを交換すればオイル漏れを解消できる


目立った傷がなくても、何十年も装着されていたオイルシールのリップはカチカチで、アウターチューブ内のフォークオイルを掻き落とす能力はすでにない。ナットの深い位置に圧入されていてドライバーでこじっても簡単には外れないので、適当なサイズのソケットとともにベンチバイスに挟んで押し出した。


純正部品は販売終了なので、内径と外径と厚さから同サイズのオイルシールを入手した。本来このオイルシールは回転部分用なのでフロントフォークのような摺動運動にはベストではないが致し方ない。リップの柔軟性は何十年物かの未使用新品の純正部品より上だ。


組み付け時もソケットとベンチバイスを利用する。ハンマーで叩き込むより真っ直ぐ圧入できる。シールに当てるコマはソケットでなくベアリングインストーラーの方がよりシール外径に近いサイズを選択できる可能性がある。


インナーチューブにサビがなくオイルシールを新品に交換すればフォークオイルが漏れるリスクが低減される。アウターチューブ上端とナット内側の接触部分に組み込まれているOリングが硬化するとオイルがにじむ場合もあるので、オイルシールと合わせて新品に交換しておく。

機種によって差があるものの、アウターチューブナットのオイルシールホルダーは比較的深いため、シールプーラーやマイナスドライバーでオイルシールを取り外すことのは難しいことが多いです。無理にシールをこじるとホルダーを傷つけたり変形させる原因となるため、古いシールを取り外す際も新しいシールを組み付ける際も、バイスや油圧プレスなどを用いるのが無難です。

ここで紹介する画像は1965年のヤマハYGS1という機種のフロントフォークですが、同じヤマハ車では1970年代半ばまでのチャピィも鉄製アウターチューブとアウターチューブナットを採用していました。なお70年代から80年代にかけて長く販売されていたチャピィは、70年代中盤のマイナーチェンジを機にアルミ製アウターチューブのフロントフォークに変更されており、その時点でアウターチューブナットも終了しています。

旧車の小排気量車用サスペンションはスプリングが主役で、ダンパーには大して期待できないというのも事実ですが、オイルシール不良でフォークオイルが漏れてしまえば乗り心地はさらに悪化します。絶版車人気で手に入れた小排気量のフロントフォークがアウターチューブナット仕様でオイルが漏れていると分かったら、工具を用意してメンテナンスを実践してみましょう。

POINT

  • ポイント1・アウターチューブナットに圧入されたオイルシールを交換する際は、バイスや油圧プレスなどを使用する

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