
封入されたグリスでピンの潤滑を行うシールタイプのドライブチェーンに対して、金属製のピンとブッシュがダイレクトに接するノンシールチェーンはオイルによる潤滑と洗浄が不可欠です。洗浄にはチェーン専用のクリーナーがありますが、ゴム製のシールを使っていないノンシールチェーンに限っては、もっとシンプルな方法で効果的に洗浄できる場合もあります。
チェーンオイルの重ね吹きでは必要な部分にオイルが到達しない!?
ビジネスバイクのようなフルカバードタイプのチェーンケース付きモデルの場合、雨や泥の付着を軽減できるが、ノンシールチェーンで定期的にチェーンオイルを塗布していなければ早々に伸びてしまう。チェーンが露出していればオイル切れにも気づきやすいが、汚れたままで新たなオイルをスプレーしても充分な潤滑効果は得られない。それどころか、オイルで柔らかくなった汚れが研磨材のように摩耗を促進することもあるから要注意。
ノンシールでクリップジョイントのチェーンなら、洗浄のために着脱するのも容易だ。通常のプライヤーやクリップジョイント用のプライヤーで、U字型のクリップの開いた側を押してピンから取り外す。ジョイントを取り付ける際は、U字型の閉じた側がチェーンが回転する前方を向くように取り付ける。
本来新品チェーンを横向きに垂らすのは良くないが、5000kmほど走行したチェーンとの差は明白。ドライブチェーンのピッチはジョイントピン間の距離によって決められいるが、ピンとブッシュが擦れて摩耗することで隙間が広がる。そのため中古品を横向きにすると新品より垂れ下がり量が大きくなる。本来は10ピンなら10ピン、20ピンなら20ピン間の距離を新品と比較して交換時期を判断する。
チェーンルブを定期的にスプレーすることで、ドライブチェーンは確実に長持ちするようになります。特にリンクピンとブッシュの間にグリスが封入されていないノンシールタイプのチェーンでは、オイルの有無が決定的に影響します。ドライブチェーンの素材が進化したとはいえ、金属同士が潤滑なしで擦れたり引っ張られながら回転し続ければ、早期に摩耗が進行することは容易に想像できるはすです。
チェーンの給油に使用するチェーンオイル(チェーンルブ)には、浸透性の高さと遠心力で飛び散らない粘性が求められます。そのため、スプレーした直後はサラサラなのに、時間の経過共に粘りが出てくるような特性が作り込まれている製品もあります。とはいえ、どんな高級高性能エンジンオイルもいつかは交換時期が来るのと同様に、ドライブチェーンオイルも一度スプレーしたらそれで終わりではなく、定期的にスプレーしなくてはなりません。この時、ついついやりがちなのが「重ね吹き」です。
ある程度走行してからチェーンオイルをスプレーすると、その直後は加速が滑らかになったりシフトチェンジが軽くなるなどの変化を実感したことのあるライダーもいるのではないでしょうか。そしてその変化は、オイルをスプレーする前の洗浄を行っても行わなくても大差がないことに気づいているライダーもいるかもしれません。そのため、面倒な洗浄を疎かにして、チェーンオイルばかりをスプレーするメンテを行いがちです。
しかし冷静に考えれば分かる通り、この方法ではフレッシュなチェーンオイルは汚れて潤滑性能が低下したオイルの上に重なるだけで、本来の性能を発揮できません。シールチェーンであれば、外側と内側のプレートと、そこに挟まれたオイルシールの接触面の外側にオイルシール対応のチェーンオイルをスプレーすることで、オイルシールの傷みを予防できます。ノンシールチェーンの場合、潤滑の要であるピンとブッシュにフレッシュなオイルを注油することが重要です。そしてシール、ノンシールチェーンのどちらも、ブッシュとローラーの接触部分へのオイルは必要です。
古いオイルの上から新しいチェーンオイルをスプレーした場合、スプロケットとローラーの接触部分は新しいオイルが行き渡るかも知れませんが、古いオイルが居座った状態では先に挙げたチェーン内側の要潤滑ポイントには新しいオイルが届きません。そのため面倒でも、チェーンオイルをスプレーする前には必ず洗浄を実施しておきたいというわけです。
- ポイント1・ドライブチェーンへの定期的なオイル塗布はフリクションロスの低減とチェーンの寿命を延ばす効果がある
- ポイント2・汚れたチェーンオイルの上に新しいオイルをスプレーしても、潤滑すべき部分に到達しないので事前の洗浄が不可欠
ノンシールタイプのチェーンなら洗油で漬け込み丸洗いがカンタン
洗油やパーツクリーナーが入ったバットに汚れたチェーンを浸けると、ジワジワと汚れが染み出してくる。車体に取り付けた状態でも洗浄できるが、ノンシールタイプならこの方が手っ取り早い。
洗油に浸け置くことで、チェーン各部に付着した砂利が汚れとともに洗油の中に流れ出してくる。ただし、中途半端に浮き出した砂利がピンとブッシュ、ブッシュとローラーの隙間に残ると偏摩耗の原因になるので、洗浄する場合は汚れを完全に取り除くことが重要。
シールチェーンを洗浄する場合、使用するクリーナーは脱脂洗浄能力が高くてもゴム製のシールを傷めてしまっては本末転倒なので、シールチェーン対応製品を選ぶことが重要です。
一方、原付クラスや小排気量のビジネスバイク、1970年代の絶版車に装着されることが多いノンシールチェーンの場合、洗浄力重視のクリーナーを選択できます。さらにジョイント部分がクリップで容易に着脱できる場合、思い切ってチェーンを取り外して単体で洗浄することで、作業効率をアップできることもあります。
具体的には、取り外したチェーンをバットなどに入れて、パーツクリーナーの原液や洗油に漬け込み、目立つ汚れをブラシで擦りながらガシャガシャ揺らすだけ。たったこれだけのことで、ブッシュとローラー、ピンとブッシュの間に入り込んだ砂利やホコリが洗油に流れ出します。チェーンを車体に取り付けた状態で、段ボールやウエスで養生しながらチェーンクリーナーをスプレーしても同じ効果が得られますが、単体洗浄の方がバイクの車体やホイール周りを汚すことなく、チェーンを外したついでにドライブ、ドリブンスプロケット周辺の汚れを落とすのも容易にできます。
洗浄のたびに毎回チェーンを外すのは面倒ですが、普段のスプレー洗浄と大掃除代わりの漬け込み洗浄を併用すれば、ドライブチェーンも車体も良好なコンディションをキープできるはずです。
ドライブチェーンを外すと、洗浄が容易になることに加えて簡易的な伸びの診断もできます。チェーンの伸びはリンク部分のピンとブッシュが擦れて痩せることで発生し、本来は一定の力で引っ張った状態で決まったリンク数の距離を測定して判断します。
簡易的というのはチェーンを横向きにして持ち上げる方法で、これにより伸びたチェーンは新品より大きく垂れ下がります。チェーンにとって捻る力を加えるのは決して良いことではないので、面白がって釣り竿のように長い時間垂れ下がった状態を維持するのは避けなくてはなりませんが、ピン1本ずつの摩耗は僅かでも数十リンク分重なると明確な違いとなって現れます。アジャスターで引き切って、もう使い切ったチェーンを交換する際に新品と比較すると、その差に驚くかも知れません。
- ポイント1・シールチェーンの洗浄にはゴム製のシールを傷めないクリーナーを使用する
- ポイント2・ノンシールのチェーンなら洗油やパーツクリーナーに浸して洗浄できる
チェーンルブは洗浄成分をしっかり落としてからスプレーする
洗油で濡れたままのチェーンにオイルを塗布しても定着せず流出しやすいので、ウエスで拭いたりやエアーブローで吹き飛ばしてから塗布する。飛散したオイルがホイールやタイヤに付着しないよう、チェーンの裏側に厚紙などでカバーしておくと良い。
チェーンオイルは外プレートに塗布しても意味はなく、スプレーする際はピンとブッシュの潤滑のために内外のプレートの隙間、ブッシュとローラーの隙間を狙う。ビショビショに濡れるほどスプレーしても多くが飛散してしまうので、狙いを定めて的確に塗布しよう。
ノンシールタイプのチェーンをパーツクリーナーや洗油に漬け込んで汚れを落とした後は、潤滑成分ゼロの金属状態になってしまうので、チェーンオイルをしっかり行き渡らせます。しかしこの時にも注意が必要です。
乾燥が早いパーツクリーナーであれば問題はありませんが、灯油のように表面に油分が残るタイプの洗油を使った場合、それが充分に乾かないうちにチェーンオイルをスプレーすると洗油と一緒に流れ落ちてしまうことがあります。そもそも洗油には油汚れを洗い流す能力があるので、その効果が残っているうちに新たなチェーンオイルを吹き付けても、走行時の遠心力で飛び散ってしまいます。
それを避けるには、洗油を使用した場合はウエスでしっかり拭き取ることが重要です。コンプレッサーがあればエアーブローするのも有効です。シールチェーンの場合、高圧のエアーがシールに影響する懸念もありますが、ノンシールチェーンなら心配ありません。
さらに万全を期すなら、洗油で洗ったチェーンをパーツクリーナーですすいで脱脂するのも有効です。この時、狙いたいのはローラー表面もさることながらピンとブッシュの隙間です。そう考えると、洗浄時に漬け込む洗浄液は洗油よりパーツクリーナー原液の方が作業が一度で済むので楽ができると面もあります。ただ、洗浄液のコストは洗油の方が安価に済むかも知れません。
いずれにしても、クリップジョイントのノンシールチェーンの汚れ落としには漬け込み洗浄のスピード感は魅力です。チェーンオイルは定期的にスプレーしているけれど、洗浄はいつもそれなりだったなぁ……という自覚のあるオーナーは、一度実践してみることをお勧めします。
- ポイント1・洗油が乾かないうちにチェーンオイルをスプレーしても流れ落ちる可能性があるので、洗油が乾燥してからスプレーする
- ポイント2・洗浄と脱脂を行ったノンシールチェーンは潤滑成分がゼロなので必ずチェーンオイルを浸透させる
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