性能に問題はなくても、経年劣化などで塗装がボロボロに剥がれたエンジン。タッチアップや部分塗装で一時しのぎはできますが、本格的にリペアするなら全塗装が良いでしょう。塗装の下地を整えるにはサンドブラストが便利ですが、重曹ブラストを使えば燃焼室の丸洗いも可能です。そして地肌が露出することで想定外の事実が発覚することもあります。

エンジン部品にサンドブラストを使う場合は厳重なマスキングと入念な洗浄が必須


クランクケース以外のシリンダー、シリンダーヘッド、ヘッドカバーの腰上3点セットを再塗装するため、ガムテープを重ね張りしてマスキングを行う。テープ貼り付け面の脱脂洗浄は必須だが、それでもどこかから研磨材が入り込んでしまうことも多い。


プラグ穴は使い古したプラグをねじ込み、サンドブラストで風合いが変わってしまうエキゾーストスタッドボルトはガムテープでマスキングした。フィンが密集して奥行きが深い空冷エンジンの塗装剥離は作業効率の点からサンドブラストを用いるのがベストだろう。ただしマスキングを剥がした後、内側に入り込んだ研磨材の除去と清掃は必須作業となる。


燃焼室側のマスキングテープを剥がすと、スタッドボルト穴の底にあたるテープ面に研磨材が付着しており、それが燃焼室周辺にパラパラと降ってしまった。こうした研磨材の清掃を疎かにすると、組み立て時にジャリジャリとした嫌な手応えを感じる原因となる。

カウルで覆われていないネイキッドモデルのエンジンは見た目が重要で、半ツヤブラックで塗装された空冷4気筒エンジンなど見ているだけで興味をそそられます。しかし経年劣化で塗膜が剥がれだすと、途端に精悍さが失われてしまいます。

クランクケースやシリンダーなど、多くのバイクのエンジンはアルミニウム合金を素材としていますが、アルミニウム自体は鉄に比べて塗装が密着しづらく、塗膜の薄い部分から水分が浸入して素材を腐食させると、塗膜は容易に剥がれてしまいます。そのため、洗車後に水滴を飛ばすためエアーブローガンで軽く吹いただけでも、塗膜が勢いよく剥がれてしまい大慌てすることも少なくありません。

そんな時、応急措置として部分塗装で対応することもありますが、エンジンをすべて分解して再塗装するのが最善策です。塗装のために分解するのは大仕事ですが製造から20年、30年を経過した絶版車であれば、バルブステムシールやカムチェーンのガイドローラーなどのゴム部品も交換のタイミングかも知れません。

分解、全塗装を選択した際に、塗装剥離と下地作りで最適なのがサンドブラストです。アルミナなどの研磨材を高圧のエアーで打ち付けるサンドブラストを使えば、劣化した塗膜など一瞬で剥離され、なおかつ素材表面をサンドペーパーで擦ったような足づけ効果が得られるため、次に塗装するペイントの密着性が向上します。

しかしエンジン部品にサンドブラストを使用する場合、準備と後処理は不可欠です。作業の光景はまったく異なりますが、サンドブラストを当てるのとサンドペーパーで擦るのは作業内容としては同じです。つまりカムシャフトホルダーやバルブガイドなどに研磨材を当てれば相応の影響が出ます。また吹き付けた研磨材がエンジン内部に残りオイルと一緒に循環されれば、エンジン各部を引っ掻き回すことにもなりかねません。

そのため、サンドブラストの専門業者や塗装業者にエンジンパーツを依頼すると、なにはともあれマスキング作業を入念に行います。塗装下地用の研磨材として使われるアルミナやセラミックといった素材は、硬い塗膜を剥離する能力に優れていますが、柔らかい素材はエネルギーを吸収するので、平面のマスキングには布製のガムテープ、ボルトやプラグ穴にはゴム製の栓を打ち込んでおくのが一般的です。

入念なマスキングを行っても、研磨材はわずかな隙間を突いてマスキングの内側に入り込んでしまうこともあるため、サンドブラスト処理後はエアブローやパーツクリーナー、さらには超音波洗浄機を活用した洗浄などの後処理が欠かせません。「ガムテープでマスキングしたから大丈夫」と、軽くエアブローしただけで吸排気バルブを差し込んだ途端、バルブガイドにジャリジャリとした手応えを感じて青ざめた経験のあるベテランも少なくありません。特にカムホルダーやバルブガイド周辺に油分が残った状態でマスキング、ブラスト処理を行うと、オイルに付着した研磨材は簡単に落ちないので注意が必要です。

POINT

  • ポイント1・エンジン部品を再塗装する際は、古い塗装の剥離と下地作りを同時にできるサンドブラストを使うのが効率的
  • ポイント2・研磨材がエンジン内部を傷だらけにするリスクがあるため、ブラスト前に入念なマスキングが必要

水溶性の重曹ブラストならマスキングなしで燃焼室周りをクリーニングできる


今回のシリンダーヘッドとは別のエンジンだが、これでも製造から40年以上を経過して一度も開けていないわりにはマシな方。カーボンクリーナーをスプレーしてワイヤーブラシで擦れば汚れは落ちるが、どうしてもブラシが届かない部分も残ってしまうこともある。


EZブラストジャパンが販売しているEZブラストは、重曹の研磨材の入った青いタンクにエアーコンプレッサーの空気をつなぎ、高圧で吹き付ける直圧式。タンクから出たホースの途中に水道水をつなぐことでウェットブラストとして使用できる。噴射された研磨材は露天に放出されるが、水が加わることで水溶液となるため環境中に残存することはない。


バルブガイドやカムホルダーなど、サンドブラストで直接施工できない部分、ウェットブラストでも施工後の研磨材除去に気を遣う部分でも、重曹ブラストなら躊躇なく当てることができる。ワイヤーブラシで擦った痕が残らず、バルブシートを傷つける心配もない。作業後に隅の方に溜まった重曹は、シャワーのお湯を掛けたりお湯の入った水槽に漬け込んでおけば溶けてしまうので、組み立て時も安心。

年式が古く走行距離も多くなったエンジンでは、サンドブラストのマスキング前にしっかり脱脂と洗浄を行うのに合わせて、燃焼室や吸排気ポートの汚れやカーボンを落としておくのが良いでしょう。

カーボン除去用のスプレーケミカルを燃焼室に吹き付け、歯ブラシやワイヤーブラシで汚れを落とすのが一般的で、同時に脱脂洗浄を行えばマスキングの密着性も向上します。ただその一方でカーボンクリーナーやワイヤーブラシではバルブシートやバルブガイド、プラグ穴周辺などの入り組んだ隅部分に落としきれない汚れが残ることもあります。

燃焼室全体を覆うカーボン汚れが落ちるだけでも充分ではありますが、せっかくエンジンを全バラにしたのだから妥協せずクリーニングしたい。そんな時に重宝するのが重曹ブラストです。

重曹ブラストはその名の通り、研磨材として重曹=炭酸水素ナトリウムを使用するのが特長です。重曹はキッチンのシンクの清掃や食品添加剤としても使われる汎用性の高い粉末で、高圧で吹き付けることで研磨力を発揮します。

EZブラストの名称で重曹ブラストを製品化しているEZブラストジャパンでは、コンプレッサーで加圧した高圧のエアーと水道水を併用するウェットブラスト工法が可能な機材を開発、販売しています。その特長は、メディアである重曹は水やお湯に溶けて消滅すること、研削力が強すぎないことの2点です。

水と研磨材を同時に吹き付けるブラストとしてはウェットブラストもあり、一般的なウェットブラストはアルミナやガラスビーズを研磨材として使用します。水を併用することで研磨材を乾燥状態で用いるサンドブラストよりも研削力はマイルドになり、デリケートな燃焼室周りのクリーニングにも使えるものの、水が乾燥すれば固体の固い研磨材が残るため入念なすすぎや洗浄は欠かせません。

これに対して重曹ブラストは、研磨材が付着した部品をお湯に浸せば重曹は溶解し、さらに一部が残ったとしても人間の口に入っても問題とならない性質なのでカムやバルブ周りを傷つけることはありません。研磨力の点でも金属素材に食い込むほどの力はないため、バルブシートやバルブガイド内面に重曹が当たり続けても、相手が傷つくなどの影響はありません。

ただし、柔らかい重曹を水と併用する重曹ブラストには、サンドブラストほどの研削能力はありません。そのため塗装の剥離で使おうとすると作業効率は良いとは言えません。重曹ブラストだけで外面の塗装剥離と燃焼室のカーボンクリーニングを丸ごとできれば便利ですが、塗装仕様のエンジンならペイントの剥離はサンドブラストで行い、燃焼室や吸排気ポートのクリーニングは重曹ブラストを用いるのが良いでしょう。

一方、アルミ素材の風合いそのままの無塗装のエンジンであれば、外側の汚れ落としと燃焼室周りのクリーニングを重曹ブラストだけで行うことも可能です。

POINT

  • ポイント1・重曹ブラストは研磨材として重曹=炭酸水素ナトリウムの粉末を使用する
  • ポイント2・重曹はお湯で溶ける特性と適度な硬さが燃焼室のクリーニングに最適

完璧にクリーニングすることで想定外のトラブルが発覚することもある


カーボン汚れが完璧に落ちたからこそ見つけてしまった燃焼室のクラック。バルブ径を拡大しながらネジ径の太いプラグを使い続けることで、バルブシートとプラグ穴が接近すれば、こうしたトラブルが発生するのもある意味必然なのかもしれない。


プラグ穴へストレスを軽減する目的でリコイルを施工しておいた。これで万全というわけではないが、ネジ山への負荷は軽減できるだろう。

カーボンやオイル汚れの除去に効果的な重曹ブラストを使うことで、想定外のトラブルが発覚することもあります。再塗装のためサンドブラストで塗装を剥離したカワサキKZ1000Jの燃焼室を重曹ブラストでクリーニングしたところ。プラグ穴から排気側のバルブシートにつながるクラックが見つかりました。燃焼室の設計上、両者が接近しすぎているのと経年劣化などが原因と考えられますが、燃焼室にも躊躇せず研磨材を当てられる重曹ブラストだからこそ発見できたトラブルと言えるでしょう。

抜本的な対策としては、バルブシートを抜いてクラックを溶接で埋めて、バルブシートやプラグ穴をもう一度加工し直すことになるでしょうが、それらは内燃機屋さんに依頼しなくてはならず、とても大がかりな作業になります。そこでプラグ穴のネジ山を補強する目的でリコイルを施工して様子を見ることにしました。さらにクラックが拡大すれば圧入されたバルブシートが緩くなってトラブルにつながるかもしれませんが、重曹ブラストでクリーニングを行うことで、その前段階のシグナルをキャッチできたのは幸いだったかも知れません。

POINT

  • ポイント1・重曹ブラストを吹き付けることでワイヤーブラシだけでは見落とす可能性もある病巣を発見できることもある

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