
エンジンオイルや冷却水漏れの修理、吸入負圧による二次空気の流入を防止するため使われていることが多いOリング。欲しくてもその場に無かったり、肝心の純正部品が販売中止や取り扱い終了によって、部品入手できなくて困るケースもあったりする。バイクいじりが大好きなサンデーメカニックなら、過去にそんな経験は2度も3度もしたことがあるはずだ。緊急時には「こんな方法もある」といった、ひとつのケースをリポートしよう。
目次
ハミ出してしまうOリングに要注意
分解したマニホールドを見ると、Oリングが完全に潰れているのに気がついた。そんな状態のままでは、組み立て復元したくないものだ。また、Oリングのコンディションを確認しようと溝から抜き取ろうとしたら、劣化していてポロポロ割れ落ちてしまった、といった経験を持つサンデーメカニックもいるはずだ。仕方ないので、手持ちのスペア部品を探したところ、太さは同じながら僅かに径サイズが大きなOリングを発見。サイズ違いでも、キャブのマニホールド用であることに違いは無かったので(ガソリン対応のゴム材質でないと痛みが早い)、その径違いのOリングの大きさを「詰めて(小さくして)利用できないか?」考えてみた。
切れ味鋭いカッターナイフでスパッとカット
フラットなアルミ板の上にOリングを置き(木板などでも可能)、カッターナイフの刃を新品に交換して、Oリングをスパっとカット。ヒモ状になったOリングをマニホールドのOリング溝にセットし、Oリング断面の高さが溝の深さよりも高い=出っ張っていることを確認しながら、長い部分=オーバーラップする部分の長さをさらにカット。カット寸法を間違えていないか、Oリングを溝に再度セットして長さを確認してみた。
切り口はパーツクリーナーでしっかり脱脂
カットした部分の端面同士を瞬間接着剤で一体化するのが今回の作業手順。まずはOリングのカット部分にパーツクリーナーを吹き付けて油分を除去。さらに接着剤を塗布して一体化しやすいようにPET(ペット)ボトルを用意する。PETボトルは瞬間接着剤に反応しないため、使い勝手が良好なのだ。
瞬間接着剤はPETボトルに一滴
PETボトルの利用する側面をパーツクリーナーで洗浄したら、瞬間接着剤をPETボトルに一滴たらす。Oリング端面に直接塗布するのではなく、PETボトル越に接着剤を塗布すると作業しやすくなる。Oリング端面を軽く押し当て接着剤を塗布したら、PETボトル外周面を利用してOリング端面同士を押し当てて接着。芯ズレしないように注意しよう。
硬化促進ケミカルスプレーが威力を発揮
文字通り「瞬間的に接着できる」素材と、決してそうではない素材があることは、瞬間接着剤を利用したことがあるサンメカなら誰もが気がついているはずだ。条件が揃わないと、なかなか接着できないもの瞬間接着剤の特徴である。そんなときに威力を発揮するのが瞬間接着剤凝固促進剤と呼ばれるケミカルだ。このケミカルは、様々なメーカーから発売されている。
接着後はマニホールドにセットして確認
接着完了したら接着面を凝視し、隙間がある場合は、再度、PETボトル台の上で隙間埋め作業を行おう。ちなみにOリングのカット量を間違えると、短すぎて使い物にならなくなってしまうため、くれぐれも慎重に作業進行しよう。Oリングが完成したらマニホールドの溝へ組み込み復元すればよい。瞬間接着剤を塗布する際には、ボトルから直接塗布するのではなく、間接的に塗布することをお勧めしたい。液状では流れ出てしまい使いにくいこともあるため、そんなときには同じ瞬間接着剤でも「ジェル状」の利用がおすすめである。
- ポイント1・自己責任に於いて自作可能なOリング。同じ目的用で同じ太さの部品流用が基本条件
- ポイント2・切り口は切れ味鋭いカッターナイフでスパっと切ろう
- ポイント3・端部同士の接続には瞬間接着剤を利用
- ポイント4・早急に接着したいときには凝固促進剤を利用
エンジンオイルや冷却水をシールする役割を果たしているのが、部品同士が組み合わさる座面に入る各種ガスケットやOリング、回転軸部品に組み込まれるオイルシール。中でも、分解時に溝内に収まっていることが多いため、そのまま見過ごし復元してしまうことが多いのがOリングと言えるだろう。ヘタに触ると切れてしまうことがあるため、敢えて触れたく無い「消極的なメンテナンス」実践があるが、それは大間違い!!
各種ガスケットやOリングやオイルシールは、基本的に分解の都度「新品部品に交換する」のが基本的な考え方。しかし、理想論ばかりではいられないので(そんな現実が実際にある)、時には、部品調達できなくて、再利用しなくてはいけないことも多い。そんな際でも、現状最善を追究したいのがマシンオーナーだろう。
仮に、交換用の新品ガスケット(紙製)が手元に無い場合は、シリコン系の液状ガスケットを併用することで、その場をしのぐこともできる。ガスケットがカバー側とエンジン側の双方に分かれてしまった場合は、残留ガスケットをスクレパーで剥がすことなく、パーツクリーナーで脱脂後、そのまま液状ガスケットを片側へ塗り、セットすることで応急処置になる。その際には、ボルトの締め付け前にカバーをセットして、ガスケット座面の重なり合いを指先の感覚で確認しつつ、ボルトを仮締め固定する。その後、ボルト全体を平均的に締め付け、トルク管理するのが良いだろう。ガスケットを剥がさないといけない際には、残留ガスケットをスクレパーでキレイに剥がした後に、オイルストーンで双方のガスケット座面をしっかり面出しクリーニング、そして、脱脂洗浄を行い、紙製ガスケットが無い状態で、液状ガスケットを座面へしっかり塗布してカバーを締め付けよう。
このような応急対処を施した場合は、できる限り時間の経過を待ち、液状ガスケットが硬化してからエンジン始動するのがコツとなる。何故なら、液状ガスケットが完全硬化に近ければ近いほど、オイル漏れや滲みのリスクは少なくなるからだ。そんな「一か八か!?」なメンテナンスは心臓に良くないので、エンジン関連の部品交換を行う際は、肝心の主要部品の発注と同時に、各種ガスケットやOリング、オイルシールなどは「必ず同時にオーダー」するように心掛けよう。
ここでは「Oリングを自作」した際の手順を解説しているが、これとてあくまで「応急処置的」なテクニックである。すべての基本は「適合新品部品」で復元することだが、液状ガスケットで対応できないときは、このような方法もあることを知っておくと良いだろう。ある意味、綱渡り的なメンテナンスだが、実際に何とかなってしまうことが多い。あくまで作業は「自己責任」になることも、お忘れなく。
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