原付から大型車まで、機種を問わず人気が高騰している絶版車。ずっと走り続けてきた車両だけでなく、長く不動状態だったものが再生される例も少なくありません。その際の難関のひとつが、燃料タンクとキャブに残る変質したガソリンです。特にキャブレター内でドロドロ、カチカチになった汚れは、完全に取り除かなければ完調になりません。スプレータイプのクリーナーだけで汚れを取り切れない時は、漬け置きタイプのクリーナーを使うのがオススメです。

キャブレターは外観の美しさより狭い通路のコンディションが重要

ワイズギアはヤマハのアクセサリー会社であり、そのワイズギアの製品ということで安心感も高いヤマルーブスーパーキャブレタークリーナー。キャブレター内部や外部の汚れに反応する溶液や界面活性剤などを成分として、ガソリンで希釈して使用する。


ガソリンタンクや携行缶のガソリンを容器に移して、缶をよく振って攪拌したキャブレタークリーナーを混合する。混合比は7:3。

空気の通路であるベンチュリーを空気が通過する際に、ガソリンの出口であるメインノズルに発生する負圧によって、フロートチャンバー内のガソリンが吸い出されるキャブレターの原理を、霧吹きのイラストとともに見たことのあるライダーは多いことでしょう。現在ではフューエルインジェクションに取って代わられましたが、キャブレターはエンジンが吸い込む空気の量に応じて、フロートチャンバーからガソリンが吸い出されて混合気を作るシンプルかつ精密なパーツです。

インジェクションのようにガソリンに加圧するのではなく、吸入工程でエンジンが発生する負圧によってガソリンを運ぶキャブレターは、歴史の中で自然の摂理を巧みに利用しながら高性能化を図ってきました。そしてその過程でとても細かな仕組みや仕掛けが組み込まれています。

例えば、ベンチュリーは空気の流量が多い時に使われる大通りのような存在ですが、スロットル開度が小さく流れる空気の量が少ない時には、大通りであるベンチュリーと並行して設置された小道のようなパイロット系の通路を通ります。このパイロット系の通路はパイロットジェットへの空気を供給して、パイロットジェットからガソリンを出すために使われます。

またメインジェットを通過するガソリンは、ベンチュリーを通過する空気による負圧によって吸い上げられていますが、キャブレターの種類によっては吸い上げられる途中でメインエアジェットという部分で計量された空気を混ぜていることもあります。

このように単純そうに思えるキャブレターも、実は内部構造は複雑で、アイドリング状態からスロットル全開まで正常に機能させるには、前提条件としてすべての通路が開通していることが必要です。

絶版車の人気がどんどん上がるとともに、長らく不動状態だった車両が整備されることも増えています。とりあえず外観をきれいにしたいという気持ちは分かりますが、キャブレターに関しては見た目より中身の方が断然重要です。

POINT

  • ポイント1・長期不動車や長期放置車両のキャブレターをメンテナンスする際は、外観よりも中身のリフレッシュが重要
  • ポイント2・ジェットやニードルはガソリン流量を精密に計量し、キャブボディの狭い通路もセッティングを左右する重要な要素となる

一度詰まって固まったワニスはスプレータイプのクリーナーだけでは落としきれないこともある


キャブレター本体を洗浄する際は、ボディ全体が沈む容器に容器に入れてから希釈したクリーナーを注入する。


通路内に気泡が残らないようにキャブレターの向きを変えながら、1~2時間漬け置き洗浄を行う。クリーナー成分と長く接する事で、固いワニス汚れが徐々に溶解していく。クリーナー溶液から引き上げたら、表面に残った洗浄成分をパーツクリーナーですすぎ、すべての通路が貫通していることを確認する

キャブレターを洗浄する場合、まず第一にボディから取り外せる部品はすべて取り外します。具体的にはフロートチャンバー、フロート、フロートバルブ、パイロットスクリュー、パイロットジェット、メインジェット、メインジェットホルダー、スロットルバルブ、ジェットニードル、エアジェットなどなどです。

これらはあるものはガソリンを計量し、あるものは空気を計量しており、計量されたガソリンや空気はキャブレター内部の細くて狭い通路を通ってベンチュリーにつながっているため、中身を洗浄する際には必ず取り外さなくてはなりません。

長期不動または長期放置車両でキャブレター内に古いガソリンが残っていた場合、多くは揮発成分がなくなった後に残滓としてワニスが残ります。また、走行距離が多い車両の場合、エンジン側から吹き返したカーボンがスロットルバルブやパイロットスクリューに付着していることあり、湿気の多い場所に置いてあったバイクではジェットニードルやジェットが緑青を吹いたように錆びている場合もあります。

キャブレターのジェットやニードルは精密な計量を行う部分なので、これらの汚れや腐食を取り除く際に力任せに作業するのは厳禁です。塞がったジェットに針金やリーマーを突き立てれば内径が拡大することが考えられ、それによりより多くのガソリンが流れるようになる可能性があります。腐食したジェットニードルをサンドペーパーで擦って細くなれば、これもまたガソリン流量が多くなってしまいます。

そこでキャブレタークリーナーを使用しますが、手軽なスプレータイプは吹き返したカーボン汚れには有効ですが、頑固なワニスの奥底までは浸透しないことがあります。またキャブボディ本体の狭くて細い通路の汚れも溶解しづらい場合があります。キャブレターにはいくつかの入り口があり、それぞれは必ずどこかの出口につながっています。そこにパーツクリーナーのスプレーノズルを差し込んで噴射した際に、どこの出口からもクリーナー液が出ず入り口側に逆噴射する場合は、ボディ内部のどこかが詰まっています。

例えばパイロットジェットからパイロットポートにつながる通路のどこかが閉塞していた場合、それがエアーの通路であればスロー系のガソリンが多く吸い出されてスロットル低開度域のカブリ症状の原因となり、ガソリンの通路であれば混合気が薄くて走り出せないかも知れません。詰まり具合によって症状や程度は異なりますが、洗浄作業が中途半端だと組み立て後に必ず不調や不具合を引き起こすことになります。

POINT

  • ポイント1・スプレータイプのパーツクリーナーは手軽に使える半面、頑固な汚れは落ちづらい場合がある
  • ポイント2・ジェットやニードルのサイズが変化するおそれがあるので、固着した汚れは針金やリーマーなどで無理に取り除かない

ヤマルーブのキャブクリーナーは頑固な汚れにも力強く浸透する


未使用のクリーナー溶液は茶褐色だが、汚れが溶け出すことでどす黒く変色する。この状態になっても洗浄成分は働くので、使用後のクリーナー溶液は密閉容器に入れて保管しておくと良い。


ここでは先端にゴム部品を組み込んだスターターバルブも洗浄しているが、Oリングやダイヤフラムなどのゴム部品の洗浄は不適。洗浄後の各部品は新品時よりも美しく見えるほど輝いている。

ワニスのように固体化したキャブの汚れに対して、強い洗浄能力を発揮するケミカルとして知られているのが、ヤマルーブのスーパーキャブレタークリーナーです。これはガソリンで希釈する原液タイプで、ジェットやキャブボディを漬け込んでじっくり反応させられる浸漬タイプであることが特長です。

漬け置きすることでジェットやボディに詰まったワニスに徐々に浸透して溶解し、ジェット類に関しては真鍮系合金ならではの金属光沢も復活します。また溶けきれなかったとしてもカチカチの汚れが柔らかくなるので、当たりが柔らかい爪楊枝などで残った汚れを落とすことができます。

ジェット類のクリーニングに有効なのはもちろんですが、ヤマルーブはキャブボディの細かな通路のリフレッシュで重宝します。なにしろクリーナー溶液に漬け込んでおくだけで汚れが溶けて流れ出すので手間がかかりません。1~2時間漬け込んだ後、パーツクリーナーをスプレーして通路が開通していれば洗浄はOKです。一度で落ちなければ、さらに1~2時間漬け込んで様子を見ます。泡タイプのキャブレタークリーナーをスプレーして1時間も置けば、表面が乾燥して汚れと一体化するのが関の山ですが、溶液タイプだからこそじっくり反応を進行させることが可能です。

ジェットのサイズやパイロットスクリューの戻し回転数は揃えているのに、なぜかプラグの焼け具合にバラツキのある4気筒エンジンの中には、キャブレターのクリーニング不足が原因となっている例もあります。長期不動車のレストアを行った際にそうした症状で頭を抱えることがあったなら、初心に戻って徹底的なキャブレター洗浄をやり直してみることをお勧めします。

POINT

  • ポイント1・1~2時間浸漬させるヤマルーブのキャブレタークリーナーは、固いワニスを徐々に軟化させて除去するのに最適
  • ポイント2・ヤマルーブのキャブレタークリーナーはガソリン70%:クリーナー30%の割合で希釈して用いる

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