
カスタム車に限らず、車両が変わればメンテナンス方法や手順が異なって当たり前。集合マフラー仕様にモディファイしたため、メインスタンドが取り外されてしまうことも多い。しかし、そうなると車体を安定した状況に保ち、メンテナンスすることが困難になるケースも多々ある。例えば、前後タイヤが設置している状況では、リアタイヤをフリーで回すことができず、ドライブチェーンへのグリスアップ作業も容易ではなくなってしまう。ここでは、メインスタンドが無いカスタムマシンのリア周りを持ち上げ、普段はなかなか分解実践することが無い「リア周りのコンディション確認とグリスアップ」を実践してみよう。
目次
ステップスタンドという選択肢を忘れるな!!
リアホイールを取り外したり、リアブレーキキャリパーを分解するのなら、一般的なメンテナンススタンド=スイングアームを受けてリア周りを持ち上げるメンテナンススタンドがあれば良いだろう。しかし、スイングアームの作動性を確認したり、分解メンテナンスする際には、このようなメンテナンススタンドでは使い勝手が良くない。そんなときにありがたいのが「ステップスタンド」である。ステップで車体を持ち上げれば、リア周りは完全フリーになり作業性は圧倒的に良くなる。しかし、可倒ステップだと……。
カスタム車ならではの調整機能を試してみよう
リアショックユニットを高性能品に交換すると、なかには「車高調整機能」が搭載されるケースもある。ショックユニット本体の長さ=セット長を僅かに調整することで、車高を変化(微調整)することもできる。それによってシート高が低くなり、足つき性が良くなることもある。ロックナットや調整ネジの動きが悪いときには、防錆潤滑浸透スプレーを吹き付けてから作業進行しよう。こんな作業時にもリアホイール+リアサスペンションがフリーになるステップスタンドの存在は実にありがたい。
リンクロッドの調整機能も試すことができる
リアサスペンションリンクのプッシュロッドにも車高調整機能が付くパーツもある。このプッシュロッドを脱着したり調整する際にも、リア周りが完全フリーになるステップスタンドの存在はありがたい。調整機能付きのプッシュロッドがリンクの左右に取り付けられるタイプは、左右の長さが一致するように固定しなくてはいけない。バランスが崩れるとピロボールの作動不良や破壊の原因になってしまう。車載状態で調整する際には、左右のアイエンドスパンをピタリと一致させよう。
フリーの状態でスイングアーム作動性を確認
リアホイールを取り外し、リアショックのロアマウントボルトを抜き取ると、リア周りが完全にフリー状態になる。スイングアームエンドを手に持ち、上下に作動させることでスムーズさを確実に確認することができる。また、スイングアームが左右に触れていないかガタ確認もできる。状況に応じてさらにメンテナンスを進めよう。
リンクブッシュやキャリパーマウントにグリスアップ
スイングアームを上下に作動させたら、その「ついで」に、リンク摺動部の軸受けボルトを緩めて抜き取り、リンク内で摺動しているブッシュやカラー、ニードルベアリングなどを洗浄後にグリスアップしよう。リア周りの作動性は一気に高まるはずだ。また、リアブレーキキャリパーのマウントがフローティンング式(トルクロッドがフレーム側にマウントされている)のため、アクスルマウント部は摺動している。こんな摺動箇所の洗浄クリーニングとグリスアップは必須項目である。
- ポイント1・ 車体はできる限り「安定状況を保ち」メンテナンス実践しよう
- ポイント2・ 折りたたみ式ステップの場合は、左右ステップを逆さまに取り付け、上側へ折りたためる状況にすることでステップスタンドが使える。
- ポイント3・ 各種シャフトやカラー表面にはグリスを塗って復元しよう
どんなメンテナンスでも、作業環境が良いことに越したことはない。露天メンテナンスよりは軒下メンテナンス。軒下メンテナンスよりは、物置でもなんでも「室内空間」でのメンテナンス。同じ室内空間でも、地べたに寝そべりながらのオイル交換と、メンテナンスリフターへバイクを載せた上でのメンテナンスでは、作業性に大きな違いがあるし、想定外の部分に発見があったりするものだ。ここではリア周りのメンテナンスを実践するが、メインスタンドの有無によってリア周りのメンテナンス性は大きく異なってしまうものだ。ここでは自作のステップスタンド(30年近く前に自作した)を利用しているが、メインスタンドが無いバイクのリア周りをメンテナンスする際には、ステップスタンドの利用価値がとにかく大きい。
撮影車両はアルミ製バックステップを装備したGPz900Rニンジャ。市販のバックステップは、固定ステップ式が多いので、ステップスタンドは容易に利用することができる。しかし、なかには可倒式ステップのスペシャルパーツもあるはずだ。また、市販ノーマル車の場合は、その多くが可倒式ステップを採用している。
仮に、可倒式ステップの場合は、ステップスタンドを利用する段取りとして、左右のステップを取り外し、左右を入れ替えて下側へ可倒するようにピンを差し込む段取りを行うと良い。そうすることで、ステップブラケットはバイクをしっかり支え、ステップスタンドによって、バイクのリア周りを安心してリフトアップすることができるのだ。
いちいち左右のステップを入れ替えるのは面倒な作業だが、こんなタイミングでステップ支持のピンやステップ側の孔を洗浄し、グリスアップを行うことができるようになる。安定作業が可能になると、やりたいこと、やってみたいことが次々考えられるようになるので、是非ともチャレンジしてみてほしい。
この記事にいいねする