燃料タンクやカウルなどの外装やサスペンションやホイールなどの足周り部品と並び、洗車の際に注目したいのがディスクローターです。特に雨天走行後のローターには砂利やホコリが付着しており、ブレーキパッドとの間に挟まることでローター摩耗の原因になります。愛車を押し歩いた際にブレーキから“シャリシャリ……”という引きずり音がしたら、ローターを優しく洗浄しておきましょう。

雨天走行時に跳ね上げる砂利がブレーキローターを傷つける


雨天走行後のブレーキキャリパーやローターは雨水と砂利が打ち付けられてザラザラ状態。シャリシャリ音は連続的に出るパターンと、ローター1周で1カ所だけ擦るというパターンがある。

できれば雨の日にバイクに乗りたくないのが本音ですが、通勤や通学やツーリング先で雨天走行をしなくてはならない場面はあります。雨に当たればワックスやコーティングを施した外装は汚れるし、ホイールやサスペンションやドライブチェーンも水跳ねや泥はねが付着します。ブレーキ周りも同様です。

ホンダCB750フォアにディスクブレーキが装着された1960年代終盤、市販車ではドラムブレーキが大勢を占めており、ブレーキローターが露出したディスクブレーキに対して防水性の高さをアピールする機種もありました。確かにブレーキシューがドラム内部に収まったドラムブレーキは、雨天走行時に直接水が掛かることがない分、初期のディスクブレーキに対しては優位性があったのかもしれません。

しかしタイヤの回転エネルギーを熱エネルギーに変換して制動するブレーキにとって、ローターが露出しているディスクブレーキのメリットは大きく、スポーツバイクではディスクブレーキが主役となっていきます。

今では雨の日だからディスクブレーキが利かないということはありませんが、雨天走行後ならではのダメージ要素は存在します。それが“ローターの摩耗”です。国産市販車のブレーキローターのほとんどはステンレス製で、ローターよりもパッドの方が摩耗が先に進行します。しかし雨天走行時にタイヤが跳ね上げる砂利がローターとパッドの間に挟まると、研磨材のようにローターを攻撃し始めるのです。

雨天走行中は跳ね上げた水が潤滑剤代わりとなるため、まだいくらかはマシですが、その状態で乾いてしまうと厄介なことになります。ガソリンタンクやカウルも、雨水で濡れている間はさておき、雨水が乾いてカサカサになった状態で指で擦ると簡単に小キズがついてしまいます。ブレーキローターでもそれと同じことが起こるのです。

スポーツバイクで一般的な穴あきタイプのブレーキローターには、放熱性の向上やブレーキパッド表面を削って制動面をフレッシュに保つなどのメリットがありますが、この穴とパッドとローターの接触面に砂利が入り込むと、ブレーキを掛けるたびにローターに押しつけられて、跳ね上げた水がなくなるとローターを傷つけ始めます。

定期的にキャリパーピストンの揉み出しを行っているにも関わらず、雨天走行後にバイクを押し歩きする際にローターから“シャリシャリ……”と引きずり音がしたらパッドとローターの間に異物が挟まっている合図です。

POINT

  • ポイント1・通常走行ではローターよりパッドの方が先に摩耗するが、雨天走行で砂利や異物が付着するとローターの摩耗が進行する
  • ポイント2・雨天走行後にバイクを押して、ブレーキからシャリシャリ音が出る時はローターに跳ね上げた砂利などが付着している

砂利が研磨材になるとフリクションロスも増大する


金属製のスケールをローター表面に当てれば簡単に摩耗具合が分かる。パッドとローターが均等に当たっていればローターの摩耗も一定に進むが、砂利などを噛み込んでレコード盤のような傷が入り凹凸ができると、パッドを新品に交換した時に当たり方にムラができて制動力が低下したり、パッド部分的に過熱することがある。

ブレーキパッドとローターの間の砂利やホコリは、すぐさまブレーキロックにつながるようなものではありません。またシャリシャリ音もブレーキレバーやペダルを操作すれば消えるので、あまり気にせず乗り続けているライダーもいるかもしれません。

そうした行為が長い目で見た時にディスクローターの摩耗を進行させる一因になります。先にステンレス製ローターではローターよりパッドの方が先に摩耗すると書きましたが、当然ながらローターも摩耗します。そのためローターには摩耗限度が設定されています。しかし砂利やホコリが付着した状態で走行し続けることでローター表面に大小の傷が刻み込まれ、レコード盤の様になってしまいます。

さらに砂利が付着することでブレーキのフリクションロスも増大します。ディスクブレーキのローターとパッドのクリアランスはきわめて微少で、キャリパーピストンの戻りが若干悪くなっただけでもパッドが擦れるほどです。それが、ブレーキレバーから手を離していてもずっと擦れ音が出続けるというのは、常に擦れている証拠です。たかが砂利ぐらい……と軽く考えがちですが、シャリシャリ音の出ているブレーキを洗浄してみると、押し歩きが滑らかになることも少なくありません。

POINT

  • ポイント1・ブレーキパッドとローターの接触面に異物が噛み込んで引きずることでローター表面に大小さまざまな傷がついてしまう
  • ポイント2・ローターが引きずって発生するシャリシャリ音はフリクションロスの証拠

キャリパーピストンの揉み出しと同時にローターも洗浄しよう


ブレーキローターを洗う際は表面だけでなく、穴の汚れを落とすことが重要。ローターの裏側スポンジを押しつけると、黒く汚れた泡が流れ出てくる。長期間メンテナンスしてないローターだと、パッドダストや汚れが穴の中で硬化している場合もある。キャリパーやパッドの状態は気をつけていても、ローターの放熱穴は見逃しているユーザーは意外に多い。


雨天走行時はキャリパーピストンも水や砂利をかぶっているので洗浄するのがベター。特にパッドの摩耗が進んでピストンの露出量が増えてくると、水分を含む汚れで錆びが発生するリスクが高まるので、中性洗剤で洗ってシリコングリスやMR20などの潤滑剤を薄く塗布すると良い。


キャリパーピストンをキャリパーから抜かずに汚れを落とすには、ピストンプライヤーを内側から掛けて回転させる。ピストンとキャリパーシールの接触部分に潤滑剤が行き渡ると、キャリパー内にピストンを戻す際に明らかにスムーズに動くようになる。

ブレーキローターから発生するシャリシャリ音の対策は単純で、ローターをしっかり洗浄するだけで解消します。水道の水を掛けるだけでも汚れは落ちますが、カーシャンプーや中性洗剤を用いるとさらに効果的です。洗剤に含まれる界面活性剤がパッドダストや砂利や油性の汚れを浮かび上がらせます。またローター表面だけでなく、ブラシやスポンジで穴に詰まった汚れも丁寧に取り除けば偏摩耗予防にもいっそう役立ちます。

その上でキャリパーピストンの洗浄と揉み出し、パッド表面の洗浄を行えば完璧です。雨天走行後にこれだけの作業を行うことで、ブレーキ周りのフリクションロスが低減し、押し歩きの軽さを実感できることは多く、なによりローターからシャリシャリ音が消えることで精神的も気持ちよくライディングできるようになります。

雨天走行後だけでなく、ブレーキ周りのメンテナンスを行う際にはローター洗浄もメニューに加えてみてはいかがでしょうか。

POINT

  • ポイント1・ブレーキローターを洗浄する際は洗車用のシャンプーや中性洗剤で、穴の汚れも丁寧に洗い流すようにする
  • ポイント2・キャリパーとローターの洗浄とメンテナンスを同時に行うことで、ブレーキ作動性の向上とパーツ寿命の延長を両立できる

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