
エンジンパワーを引き出すための常套手段として知られているのが、効率の良い「吸排気」仕様。吸気に関しては、ノーマルのエアークリーナーシステムを取り外して、高効率なパワーフィルター仕様に交換される例が多い。効率良くエアーを吸い込む分、フィルター機能は汚れやすいことも知っておきたい。ここでは、高性能エアーフィルターの積極的なクリーニングを実践してみよう。
目次
ノーマルキャブでも高効率な吸入を目指す
吸入容積を稼ぎ、しっかり敷き詰めた濾紙式エアーエレメントを装備するメーカー純正部品の吸入系。大気中のチリや小さなゴミをエアーエレメントが濾過しつつ、キャブレターへ空気を送り込むが、純正のエアークリーナーシステムは、確実にキレイな空気を送り込むことを優先した装備と言える。一方、パワー重視の場合は、エアークリーナーシステムを取り外した、通称「直キャブ」仕様や、エアーファンネルを取り付ける例もある。しかし、さすがにこれらの仕様では、目に見える跳ね石=砂利すらも吸い込んでしまうことがあるため、エンジンにとっては良い状況ではない。そこで、数多くのファンにチョイスされているのが、高性能フィルターと呼ばれる、エアーフィルターやパワーフィルターなどだ。ここでは、パワーフィルターと呼ばれる商品を装着したカワサキGPz900Rニンジャのフィルター洗浄を実践してみよう。
専用のフィルター洗浄剤「パワークリーン」
パワーフィルター用クリーニング剤として販売されているのがK&N社製エアーフィルター用パワークリーン洗浄剤。キャブボディ毎に取り付けるパワーフィルターを洗浄するが、純正タイプの濾紙式エアーエレメントの代わりに取り付ける「リプレイス用エアーフィルター」の洗浄剤としても利用することができる。一般的に濾紙式エアーエレメントは、エアーブローで汚れ取りを行うこともあるが、明らかに汚れている時や濾紙の色が変化(白から茶色へ)したときには、新品エレメントに交換するのが原則である。似たタイプなら他社製パワーフィルターの洗浄でも利用することができそうだ(あくまで個人の判断で使っております)。
ボトルをしっかりシェイクしてからクリーニング
取り外したパワーフィルターをトレイに入れ、スプレーボトルをしっかりシェイクしてからタップリ洗剤を吹き付ける。さらに内側からフィルターのひだに向けてスプレーするのも効果的だ。ボトル入りの洗剤を利用する時には、しっかりシェイクしてから利用することで、洗剤の活性を高めることができる。利用前には必ずシェイク!!
汚れた液体がドロドロ流れ出る……
スプレーを吹き付けた後、しばらく放置すると汚れを分解した洗剤がドロドロ流れ落ちてくる。汚れの原因は、大気中のチリや汚れもあるが、その多くは、霧化したガソリンがキャブから吹き返した汚れである。汚れが流れ出てきたら、スプレーを追い掛けして、分解した汚れをさらに洗い流そう。汚れが流れ始めたら10分程度放置して、その後は水道水で洗い流そう。バケツや容器に溜めた清水でじゃぶじゃぶ濯ぎ洗いしてもよい。フィルターの汚れが落ちて、キレイになっていることに気がつくはずだ。
エアーブローは厳禁!!自然乾燥を待とう
フィルターの濾過媒体が崩れてしまうことがあるため、コンプレッサーの圧縮空気をエアーガンで強く吹き付けるのはNG。どうしてもエアーブローしたい際は、ガン先をパーツから離して、やさしくエアーブローしよう。一般的には、乾いたキレイなウエスの上に洗浄後のフィルターを載せ、風通しの良いところで自然乾燥させれば良い。
専用オイルを少量塗布=フィルターに吸い込ませよう
水洗したパワーフィルターが乾燥したら、同じくK&N製フィルターオイルを少量塗布し、フィルター媒体にオイルを吸い込ませよう。ベタベタになるまで塗布するのではなく、極少量でよい。他社製品にも似たようなフィルターオイルがあるので(スプレー式が使い易い)、利用しよう。ここでは、スポイトを利用して染み込ませるタイプを利用した。
- ポイント1・ 汚れたら廃棄交換ではなく、クリーニングケミカルで汚れを洗い流そう
- ポイント2・ エアーフィルターを洗浄したらエアーガンで圧縮空気を吹き付けて水分を飛ばすのはNG。やさしく乾燥させわう
- ポイント3・完全乾燥後のエアーフィルターはそのまま利用せず、専用のエアーフィルターオイルを少量塗布=染みこませよう
吸入系の要といえるパーツ、それは、キャブレターの上流にある「エアークリーナーシステム」だ。エアークリーナーボックスの中には、エアーエレメントが組み込まれ、流入空気のクリーン化と同時に、吸入サウンド(ノイズ)を消す役割も果たしている。それ故、空気抵抗が想像以上に大きい。良いサウンドで走りたい!!エキサイティングな走りにしたい!!といったライダーの中には、吸排気系の効率アップのために、マフラー交換と同時にエアークリーナーシステムを取り外し、いわゆる「直キャブ仕様」や「エアーファンネル仕様」に変更する者もいる。しかし、直キャブやエアーファンネル仕様の場合は、ゴミをキャブが吸い込んでしまうリスクがあり、また、吸入時の吹き返しでキャプ周辺のバーツが霧化したガソリンで汚れてしまうリスクも多い。エンジンコンディションの良し悪しに関係なく、走行中のスロットル操作で霧化したガソリンは、吹き返しを起こしてしまうものなのだ。
直キャブやエアーファンネル仕様ではリスクが大きいため、そんなときに取り付けたいのが通称「パワーフィルター」と呼ばれる高効率エアーフィルターである。吸入抵抗が少なく、ゴミやチリを除去できるフィルター機能を取り付けることで、ノーマル仕様のフィーリングとはまるで違った、エキサイティングな走りを実現できるようになる。
今回、メンテナンスで預かったカスタムニンジャは、吸排気系がモディファイされていた。キャブレターにはパワーフィルターが取り付けられていたが、見るからにメンテナンス=クリーニングが必要だった。そこで、エアーフィルター専用の洗浄剤を利用し作業進行。トレイの上に並べたフィルター本体に洗浄剤をたっぷり吹き付け、フィルターに馴染んだところで、フィルター内側からもしっかり追いスプレー。しばらく待ってからトレイを傾けると、染み込んだ洗浄剤が汚れを分解し、流れ出てくる様子を確認することができた。汚れたフィルターは水道水で洗い流し(バケツに張った清水の中に沈めて洗っても良い)、風通しが良いところで自然乾燥させよう。コンプレッサーの圧縮空気をフィルター部に強く吹き付けてしまうと、ネットの中のフィルター機能が千切れてしまうため、ウエスなどを敷いた上で自然乾燥させるのが良い。
吸排気系を高効率化することによってパワーアップは可能だが、それは新たな仕様でキャブセッティングを行ってからのお話である。吸排気系を変更したのにセッティング変更しなければ、本来のエンジン性能は引き出すことができない。そんなときにありがたい存在が、キースターブランドの「燃調キット」である。スパークプラグの焼け具合を確認しつつ、番手違いのジェットニードルやメインジェットに変更することで、エンジンパワーを引き出すことができる。シャシーダイナモでパワーチェックしながらセッティング変更すれば、より緻密なセッティングが可能になり、走りの違いを実体感できるようになるはずだ。
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