スパークプラグが発生する火花の大きさや点火時期は、ガソリンエンジンのコンディションを左右する重要な要素です。純正の点火系も必要充分な性能を発揮してくれますが、高性能パーツを装着することで大幅にパフォーマンスが向上することもあります。ASウオタニが設計から製造まで一貫して自社内で行うSPIIフルパワーキットは、違いが分かる点火系パーツとして多くのユーザーに愛用されています。

感覚や雰囲気ではなく理論的に高性能を追求したSPII


大きな火花を生むSPIIハイパワーイグニッションコイルと、大電流を流せるSPIIコントロールユニットの組み合わせが、ASウオタニならではの点火系チューニングを実現する。点火信号を作るローターとピックアップベースは車種ごとに専用設計されており、ボルトオンで装着できる。

上死点前でスパークプラグに飛んだ電気火花で混合気に着火して、燃焼室内で爆発的に大きく燃え広がる際の膨張圧力でピストンを押し下げて出力を取り出すのがガソリンエンジンの原理です。キャブレターやインジェクション、マフラーやチャンバーやカムシャフトなど、エンジンのチューニングにはいくつもの要素がありますが、それらを交換しても最終的にスパークプラグが火花を出さなければ効果はありません。

点火系の性能アップのためには高性能プラグやハイテンションコードの交換などの手段がありますが、さらに上流にさかのぼって点火システムを見直そうと独自のパーツ製造を行っているのがASウオタニです。エンジンの潜在能力を最大限に引き出すべく同社が開発しているのは、SPIIパワーコイルキットとSPIIフルパワーキットと2製品。前者は純正のイグニッションコイルより大きな電圧と電流を発生できるSPIIハイパワーイグニッションコイルであり、後者はSPIIハイパワーイグニッションコイルと車種別に開発されたSPIIコントロールユニット(イグナイター)の組み合わせとなります。

トランジスタ点火車であれば、どんなバイクにもイグナイターとイグニッションコイルがセットで装着されています。どちらもバイクメーカーや部品メーカーが開発した物で必要な性能が作り込まれています。ただ量産車である以上、ブレーキやサスペンションなどのパーツと同様に製造コストの壁が存在します。純正ブレーキでも止まらないわけではなく、純正サスが路面からのショックを吸収できないわけではありません。しかし社外品の高性能パーツを装着することで、純正を上回るパフォーマンスを実感できます。

点火系パーツもそれと同じで、純正部品は正確な点火時期に必要な火花を出すことができますが、コストを掛けることでさらに性能を向上できる伸びしろがあります。この伸びしろに注目してSPIIシリーズを作り出したのがASウオタニなのです。

同社の特長は、徹底して論理的な開発を行っている点です。スパークプラグに大きな火花を飛ばすには、イグニッションコイルが発生する電圧と電流を大きくすることが必要です。そのためにSPIIハイパワーイグニッションコイルは純正パーツより性能の高いコイルを選択することで、スパークプラグに流れる電圧を約4万ボルトとしています。ノーマルが2~3万ボルトなので約2倍の電圧です。同様に放電電流もノーマルの1.5~2倍、放電時間もノーマルの2~3倍となります。純正イグニッションコイルでもノーマルエンジンにとって必要な「火花力」を確保できますが、SPIIハイパワーイグニッションコイルはこれを上積みすることで性能アップを図っています。

イグニッションコイルの高性能化により強い火花が得られるのなら、イグナイターは純正でも良いかと言えば、そうではありません。イグニッションコイルは2組のコイルの巻線比や抵抗値によって能力が左右されます。SPIIハイパワーイグニッションコイルの一次コイルは純正コイルに比べて抵抗値が小さく、大電流が流れやすい特長があります。そのためイグナイターはより多くの電流を断続できるようになりますが、残念ながら純正イグナイターにはそれだけの能力がありません。具体的には、イグニッションコイルに流れる電流を断続させるイグナイター内部のトランジスタの容量が足らないのです。

そのためASウオタニではSPIIハイパワーイグニッションコイルを余裕で駆動できる大容量トランジスタを使用したSPIIコントロールユニットを開発しました。大電流を流せるコントロールユニットでイグニッションコイルに流れる電流を断続させ、その際に発生する高い電圧を一次コイルに流すことでより大きな二次電圧と電流を得る。これがASウオタニによる高性能点火システムの概要で、どこから見ても合理的です。

理想とする性能を追求することで純正部品よりコストが嵩むのは、有名ブランドのサスペンションやブレーキと同じ理屈だと考えれば腑に落ちるでしょう。ポイント点火の絶版車にとっては、SPIIフルパワーキットは単なるチューニングパーツ以上の価値もあります。

POINT

  • ポイント1・ブレーキやサスペンションと同様に、点火系でも純正パーツを上回る性能を実現した製品が存在する
  • ポイント2・ASウオタニのSPIIシリーズは、強力な点火火花を発生させる仕組みを理論的に構築して製品を開発している

ポイント点火車はもちろんトランジスタ点火車も価格以上の価値を体感できる


カワサキGPZ400の車体にゼファーXのエンジンを搭載したカスタムモデル。このようなバイクにSPIIフルパワーキットを装着する場合、点火特性はエンジンに依存するためゼファーX用キットを選択する。


左がGPZ400純正のローターとピックアップで、右がゼファーX用SPIIコントロールユニットのパーツ。トランジスタ点火のGPZ400純正は同時に点火する1、4番と2、3番プラグ用のピックアップが向かい合って付くが、SPIIはデジタル回路で点火状態を検知するためピックアップは1つだけ。長い突起が1つの側と、長い突起と短い突起が隣り合う側で、ピックアップ通過時に発生する波形が異なり、その違いで1、4番と2、3番を判断してイグニッションコイルへの電流を断続する。

無接点のフルトランジスタ点火システムは、スパークプラグの交換以外にやるべきことはなくメンテナンスフリーです。しかし1970年代までは当たり前だったポイント点火は、ポイント接点の摩耗によるギャップ調整や点火時期の調整など定期的なメンテナンスが不可欠です。また物理的にポイントを開閉するため、エンジン回転数によって点火時期が不安定になるといった弱点もあります。だからこそトランジスタ点火に取って代わったわけです。

カワサキZ1/Z2シリーズやホンダCB750フォアシリーズなど、絶版車界の人気モデルの多くの純正点火システムはポイント式で、こうした機種にとってSPIIフルパワーキットはチューニングと補修を両立できる製品となります。現在の絶版車はノーマルスタイルが好まれる傾向にありますが、それでもレーシングキャブが支持されるのは、各部の摩耗や破損によって調子が出ない純正キャブに比べて新品のレーシングキャブの方がアイドリングからビシッと安定して吹け上がりもスムーズだからです。

デジタル点火よりポイント点火の方が味わいがあるという意見のオーナーもいますが、アイドリング回転でも一発一発強力な火花を発生するSPIIフルパワーキット装着車は低回転の安定感が秀逸です。また多少キャブセッティングがズレていても、スパークプラグの火花が大きいため強い燃焼のきっかけを得られます。

時代的に古いポイント点火車に対する効果は明確ですが、年式が古いトランジスタ点火車にとっても強い味方になります。ホンダCBXやカワサキKZ1300といった6気筒モデルは熱心な愛好家が多いモデルですが、新品の純正イグナイターは入手できません。壊れづらいといっても電気部品なのでトラブルはゼロではなく、もしプラグから火が飛ばなくなったら手の施しようがありません。ASウオタニではこうした機種用にもSPIIフルパワーキットを開発しているので、オーナーは安心して乗り続けることができます。

POINT

  • ポイント1・経年変化による性能低下が避けられないポイント点火にSPIIフルパワーキットを装着することで高性能化とメンテナンスフリー化を両立できる
  • ポイント2・補修用部品がなくエンジン不動となったトランジスタ点火車もSPIIコントロールユニットによる復活の可能性がある

純正点火カーブを解析した上でチューニングに対応した味付けを用意


ピックアップは1個になるが、ピックアップベースは純正部品を流用しているので取り付けは完全ボルトオン。


SPIIフルパワーキット装着後のスパークプラグギャップ1.3mmという指定に、火花の強さ、火種の大きさに対する自負が現れている。通常、標準プラグのギャップは0.7~0.8mmでワイドギャップ指定でも1.1mm。これより広げると純正点火ユニットでは火花を飛ばせず失火につながってしまう。1.3mmという超ワイドギャップでも高電圧で火花が飛ばせるため初期段階の種火が大きく、混合気に確実に着火できるのだ。

SPIIフルパワーキットが信頼されている理由に、車種ごとに専用開発を行いボルトオンで装着できる点があります。純正システムがトランジスタ点火でもポイント点火でも、バイクメーカーが点火系の開発を行う際はノーマルエンジンに適した点火カーブを設定しています。具体的にはアイドリング時の点火時期から始まり、点火時期が進角するエンジン回転数や最大進角値などです。

イグニッションコイルだけを交換する場合はそうした設定は不要ですが、SPIIフルパワーキットは純正イグナイターをSPIIコントロールユニットに交換するため、新たに点火カーブをプログラムしなくてはなりません。

ASウオタニでは機種別SPIIコントロールユニットの開発に当たり、すべての機種で純正イグナイターの点火カーブの解析を行い、その結果を基に複数の点火カーブを設定しています。そのため、エンジン本体から吸排気系まですべてスタンダード状態にSPIIフルパワーキットを装着しても、何の違和感もなく強力な火花による力強さだけを恩恵として味わえます。

その上でエンジンチューニングや乗り方に応じて最適な点火状態が選択できるよう複数の点火マップがプログラムされており、ライダーはモードスイッチを切り替えるだけで簡単にマップが選択できます。

良い混合気、良い圧縮、良い火花はガソリンエンジンにとっての三大要素です。前の2つに比べて火花は軽視されがちですが、強化することで確実な見返りが期待できます。ASウオタニのSPIIはノーマルエンジン、チューニングエンジンのいずれにとってもポテンシャルを最大限に引き出してくれる高性能パーツなのです。

POINT

  • ポイント1・SPIIコントロールユニットの点火カーブは装着する車種の純正カーブを解析した上で設定しているので、ノーマル仕様のエンジンにも対応する
  • ポイント2・エンジン仕様やライダーの乗り方に応じて調整できる、複数の点火時期が設定されている

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