経年劣化やサビで覆われたホイールほど残念なものはありません。アルミキャストホイールにはペイント仕上げと無塗装の切削仕上げの2パターンがあり、後者は研磨によってキラリとしたアルミ特有の光沢が回復する場合があります。ただしそれには根気強さと忍耐が必要です。新車当時の輝きを目指してサンドペーパーを握りましょう!!

塗装なし、クリアなしの切削仕上げなら光沢復活の可能性あり


アルマイト仕上げのホイールをコンパウンドで磨いても、アルマイトの酸化皮膜が強力なのでアルミ素材自体を磨くことはできない。ホンダモンキー用のカスタムホイールにあるような板素材をプレスした合わせホイールの場合はアルマイト仕上げの場合もあるが、鋳造ホイールで未塗装のものはアルマイト皮膜のないアルミ合金であることが大半だ。このホイールも切削加工面は磨けば光るパターン。

スポークホイールのリムやスポークが錆びるとバイク全体のイメージが大きく低下しますが、足元の印象が重要なのはアルミキャストホイールでも同様です。ブレーキダストやチェーンオイルが付着したままだったり、経年劣化や長期放置で腐食したキャストホイールをリフレッシュするにはどうすれば良いのでしょうか?

そのためには、まず最初にホイールの表面仕上げを観察します。スポークもリムも塗装仕上げの場合、洗車用のシャンプーやパーツクリーナーやコンパウンドで塗膜を磨き、それでもダメならペイントを剥離して再塗装するのがベストです。

アルミの地肌が見えている場合でも、クリア塗装やアルマイトで表面が保護されているホイールもあります。アルマイトはアルミ素材の表面を強制的に酸化させることでそれ以上の酸化=サビを進行させない表面処理技術ですが、純粋なアルミニウム合金に比べて表面が硬いため、劣化が進行した場合にコンパウンドなどで磨いても状況はあまり改善しません。

磨き作業の効果が実感できるのは、切削仕上げで塗装処理を行っていないタイプのホイールです。市販車のアルミキャストホイールは鋳造製法で作られており、製造工程の一部でリムやスポークを切削加工しているものもあります。その切削後にクリア塗装をしないことで、アルミならではの金属光沢を演出できるのが特長ですが、切削面が空気中に露出することで酸化=錆びやすい弱点もあります。

しかし鉄のサビとは異なりアルミのサビは表面で留まる場合が比較的多く、初期の段階で手を打てば回復が期待できます。少なくとも、点サビが浮き出てきたクロームメッキよりは補修が容易で、仕上がりも良くなります。とはいえサビの程度によっては磨き作業の手間は多くなり、その分手間と時間も余計に掛かることになります。

POINT

  • ポイント1・塗装やアルマイトなどの表面処理がなく切削加工面が露出しているアルミキャストホイールは、磨き作業によって光沢が回復する
  • ポイント2・鉄のクロームメッキスポークホイールの腐食に比べてアルミキャストホイールの腐食は磨き作業の効果が得やすい

磨きは一日にしてならず。何はともあれ下地作りが重要


表面が柔らかいアルミホイールをサンドペーパーで削る際は、粗すぎる番手で深い傷を付けないことが重要。表面の酸化皮膜を削り取りたいが深い線キズをつけないためには、細かい目のペーパーから様子を見るのが良い。


ここでは#600のペーパーから研削を開始。顔が映り込むような鏡面仕上げを求めるならペーパーの番手を順番に細かくしていくが、線状痕を残しつつアルミ特有の光沢を求めるなら#600だけで磨いても良い。後に使用するメタルポリッシュが#4000相当の番手なのでペーパーで付けた傷は消えないが、アルミ自体を輝かせることができる。

無塗装、切削仕上げのアルミキャストホイールの腐食を取り除くには、サンドペーパーやスポンジ研磨材で表面を研削して下地を作り、コンパウンドやアルミポリッシュなどのケミカルで研磨するのが一般的な流れです。塗装やパテを使う時も同様ですが、下地をどこまで丁寧に行うかが仕上がりを左右します。

光沢が失われたリムに対して最初からメタルポリッシュを使っても、それなりの効果は得られます。アルミ磨きを得意とするケミカルであれば、化学的に酸化皮膜を取り除く成分を配合していることも多いからです。しかしアルミ表面のダメージが大きい場合は磨きケミカルだけでは不足かも知れません。塗装面のくすみを取り除く際に、コンパウンドを配合したワックスを掛けるのと、純粋なコンパウンドで一皮剥くのでは仕上がりが異なるのと同じことです。

ここで紹介しているのは切削部分と塗装部分を組み合わせたアルミキャストホイールで、これは1980年代にレーサーレプリカ向けのフル塗装ホイールが台頭するまでは主流の仕上げ方法だったものです。保管方法は悪くなかったものの、経年変化によって切削部分の表面が曇り光沢が失われています。

下地作りに使うのはサンドペーパーです。デザインが複雑で入り組んでいる場合は柔軟性のあるスポンジタイプの研磨材も有効です。ペーパーの番手は磨く部品のコンディションによって選択しますが、もっとも注意すべきは「粗すぎる番手を選択しない」ということです。ガサガサに荒れている表面を削るには粗い番手のペーパーが手っ取り早いのは確かですが、粗いペーパーによって素材表面に深い傷をつけると、その傷を消すのに苦労する羽目になります。

目の細かいペーパーは研削量が少ないので手間も時間も掛かってじれったり思いをすることもありますが、表面を研削できる中でできるだけ目の細かいペーパーを使うのがポイントです。今回は#600のペーパーを水研ぎで使いましたが、軽く擦るだけでアルミ研削時特有の黒い汁が出て、リムの表面を研削している手応えが得られました。しばらくペーパーを掛けた後に表面を確認して、サビによる黒いシミや白いカサカサの腐食痕が残っているようなら#600より番手の粗いペーパーに変更してみても良いでしょう。

#600、#800、#1200と番手を細かくしながら下地を作る中で、#600の次に#800が必要なのか?#1200より細かい#1500や#2000で磨いた方が良いのでは?と感じることもあるかもしれません。磨きの順番に唯一の正解はないので、そう感じたら今回の番手にとらわれずいろいろなパターンで磨くのが良いと思います。ただ、ペーパーをドライ状態で使う空研ぎか、水を併用する水研ぎにするかに関していえば、絡みが少なくスムーズにペーパーが運べるため水研ぎで実践する例が多いようです。

POINT

  • ポイント1・アルミならではの深い輝きを得たいなら、手間を惜しまず下地磨きを行うことが重要
  • ポイント2・サンドペーパーやスポンジ研磨材は素材に深い傷を付けないことを確認して番手を選ぶ

メタルポリッシュで磨いた後も定期的な手入れは必要


ペーパーを水に浸しながらリムを擦ることで、アルミ素材を磨いた時に特有の黒い汁が出てくる。ヘアラインを残したい時はペーパーを一方向に動かす。ランダムに動かすと線状痕もでたらめに入ってしまうため仕上がりがイマイチになる。


メタルポリッシュを指で塗布してウエスで広く伸ばしていく。手袋の着用を求める製品はそれに従うこと。アルミ磨き用のケミカルは粘度の低い液体タイプからペースト状まで幅があり、磨き作業時の手応えも製品によってまちまち。粘りが強く深く磨けるタイプのケミカルだと、ヘアラインを残すつもりがほぼ鏡面というような場合もあるので、製品ごとの特性を知っておくことも磨き作業にとって有効だ。

サンドペーパーやスポンジ研磨材の番手の選択と同様に、仕上げの研磨用ケミカルに何を使うかも人それぞれで好みが分かれます。ひと口にメタルポリッシュといっても、製造メーカーによって成分や配合はさまざまで、Aという商品とBという商品では磨き作業時の手触りや仕上がりの光沢が異なることもあります。

ここで使用している工具ショップストレートのメタルポリッシュの場合、コンパウンドの番手としては#4000相当でアルミ、ステンレス、クロームメッキなどに加えてプラスチック類の磨きにも使える設定になっています。同じような名称でも金属専用の製品もありますし、メッキ磨きだけに特化したものもあります。ここではアルミキャストホイールを磨きたいので、アルミ素材に対応したケミカルを選択します。またコンパウンドの粒度を明記している製品であれば、下地のペーパーの番手選びの参考になります。

アルミ磨き用のケミカルを使用する際に、必ずといっていいほど黒い磨きカスが発生します。ウエスが真っ黒になると、いかにもアルミを磨いている感がありますが、黒いウエスで擦り続けてケミカルの滑りが悪くなると新たな傷を付ける原因になるので、ウエスで拭く面を細かく変えていくのが良いでしょう。

またアルミ研磨成分とともにワックス成分を含有しているケミカルもあり、それらを選択すると美しいコンディションを長期間持続できる利点があります。ただし時間の経過と共にワックスに含まれる油分が酸化することで透明感が低下し、アルミ表面が曇って見えるようになる場合もあります。

ペーパーで下地を作りケミカルで磨いたとしても、塗装やアルマイトで表面をカバーしていないキャストホイールの輝きはいつか曇ってくるものです。しかし、一度下地を作っておけば日頃のメンテナンスの手間は大幅に軽減され、簡単に美しい光沢を回復できます。大切な愛車の足元を美しく保っておくために、一度はしっかり磨き上げておくことをお勧めします。

POINT

  • ポイント1・アルミや金属磨き用ケミカルは製品ごとの特長を把握して、必要に応じて使い分ける
  • ポイント2・ワックス成分によって光沢や汚れ防止効果が持続する製品もあるが、コンディションを維持するには定期的な磨き作業が必要

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