ブッシュとピンの隙間にあらかじめグリスを封入したシールチェーンは、フリクションロスが低く寿命が長いことが特長です。しかしジョイント部分をつなぐには専用のカシメ工具が必要で、DIYメンテナンス時の壁となっています。それを取り除くのがEKチェーンのスクリュージョイントで、一般的なハンドツールだけでシールチェーンを組み付けられるのが最大の特長です。

シールチェーンは動的性能面で圧倒的に優位


EK製シールチェーンのSRXシリーズは幅広いシーンで使えるバランスの良さが特長。サイズのラインナップは420/428/520/525/530で、このうち520/525/530サイズのオプションとしてスクリュージョイントが用意されている。パッケージ品として購入した際には標準的なカシメジョイントが付属する。

バイクのドライブチェーンにはノンシールチェーンとシールチェーンの2種類があります。チェーンの構造は自転車用でもバイク用でも同じで、外側のプレートに圧入されたピンが内側のプレートに圧入されたブッシュを貫通することで屈曲しながら回転しています。

シールタイプはピンとブッシュの間にグリスが充填されており、このグリスのおかげでピンとブッシュの間のフリクションロスが軽減されます。そしてピンとブッシュが直接擦れ合わないことで摩耗も抑制されるためチェーン自体の寿命も長くなります。

ノンシールチェーンはピンとブッシュが直接接触するためチェーンオイルによる潤滑が不可欠で、雨風かまわずノーメンテで走り続ければ摩耗によりピンとブッシュ間のクリアランス=ガタが大きくなり、チェーンの伸びとなって現れます。チェーンが伸びると聞いて小判形のプレートが伸びると理解しているライダーもいるかも知れませんが、実際の伸びはピンとブッシュの摩耗によって発生しており、プレートが引き伸ばされるわけではありません。

最初のシールチェーンは1974年、EKチェーンのブランド名で知られる江沼チヱン製作所によって開発されました。ピンとブッシュの隙間に封入されたグリスが流れ出さないよう、内側と外側のプレートの隙間にゴム製のシールリングを組み込む構造もこの時に誕生しました。

初期のシールチェーンに使用されたシールリングは断面が円形の単純なOリングで、プレートに挟まれて潰れることでグリスを封入していました。やがてシール自体のフリクション減少や摩耗による寿命延長化の目的でリングの断面形状にさまざまな工夫が加えられ一般化しました。

現在でもまれに、スタンドで浮かせた後輪を手で回して、シールチェーンよりノンシールチェーンの方が軽く回るからフリクションロスが少ないと思っているライダーもいるようですが、手回しとは比較にならない駆動力が加わる実際の走行時には、グリスが封入されたシールチェーンの方が圧倒的に抵抗が小さくなります。

また、シールチェーンはグリスが入っているからチェーンルブは不要という意見もありますが、スプロケット接するチェーンのローラー部分はグリスが付着していないので、定期的にオイルを塗布することが必要です。チェーンルブをスプレーする前にチェーンクリーナーを使用することで、チェーンやスプロケットに付着した砂やホコリを洗浄できるので、これも余分な摩耗を防止するために有効です。

POINT

  • ポイント1・ピンとブッシュの隙間にグリスが封入されたシールチェーンは、ノンシールチェーンに比べてフリクションロスが小さい
  • ポイント2・シールチェーンであっても、スプロケットとチェーンの噛み合わせ部分の定期的な洗浄や注油は必要

シールリングのクリアランスを保つために必要なカシメ式ジョイント


チェーンのコマ数を調節する際の切断作業、ジョイントプレートの圧入作業、ジョイントピンのカシメ作業をがすべて可能な江沼チヱン製チェーンツールCRT50A改。チェーンメーカー自身が安全性と機能性、作業性にこだわり開発した工具だけに抜群に使いやすい。対応チェーンサイズは415/420/428/520/525/530/532。630は別売りパーツが必要。


工具自体の作りは頑丈で、作業の要となる外プレートの圧入量やピンのカシメ量も分かりやすい。ただしメーカー販売希望価格は3万9600円(税込)なので、使用頻度が低い一般ユーザーにとっては価格が障壁となるだろう。

性能面でノンシールより優秀なシールチェーンは、小型モデル以上の市販車では一般的に装着されるパーツとなっています。あるいは純正チェーンがノンシールであっても、交換時にシールチェーンを選択するユーザーも少なくありません。

同サイズ、同リンク数のシールチェーンとノンシールチェーンを比較すると、シールチェーンの方が高価になります。ノンシールにはないシールやグリスが使われているため当然そうなります。ただ、ピンとブッシュの摩耗が少ない分耐久性が向上し、メーカーテストによればシールチェーンは寿命が10倍から20倍伸びることもあります。価格には10倍もの差はないので、シールチェーンの方がコストパフォーマンスが高いと言えるでしょう。

しかしDIYメンテ派にとっては、シールチェーン交換時に必要な専用工具がネックとなります。ノンシールチェーンはジョイントの外プレートをセットしたらクリップで固定して繋げますが、シールチェーンはジョイントプレートを圧入し、ピンの頭部をカシメて広げなくてはならないのです。

その理由はグリスを封入するシールリングの性能を正しく発揮させるためです。ピンとブッシュの隙間に封入したグリスをシールしながら、擦れ合うプレートで発生するフリクションも受け止めるシールリングには適正なクリアランスが設定されています。プレートの圧入が足らなければシール力不足でグリスが漏出するかもしれません。

逆に押し込みすぎればシールが潰れすぎて摩擦によって折損して、やはりグリス漏れの原因になります。さらにノンシールチェーンのクリップジョイントのように、ジョイントピンと外プレートのはめ合いが緩いとプレートが動いてしまい、シールリングに加わる圧力が増減する可能性があります。

こうした理由から、シールチェーンのジョイントはピンに対して外プレートを適正な位置まで圧入し、ピンの先端をカシメて押し広げて抜け止めとする作業が必要で、そのためには圧入とカシメができる専用のチェーンツールが必須アイテムとなるわけです。

言うまでもなくドライブチェーンは安全を左右する部品です。中でも大排気量の大型車にも採用されるシールチェーンのジョイント作業は非常に重要で、チェーンツールもしっかりした作りが求められます。シールチェーンのパイオニアである江沼チヱン製作所は独自開発の専用ツールCRT50A改を販売していますが、販売希望価格は4万円近くする高価な工具です。それだけにクオリティは高く確実な作業ができますが、趣味でバイクいじりをするユーザーにとっては軽い負担ではありません。そのためシールチェーンユーザーの多くはバイクショップに交換作業をお願いしているのが実情です。

POINT

  • ポイント1・シールチェーンのジョイントはプレートを圧入しピン頭部をカシメるのが一般的
  • ポイント2・信頼できるジョイントのカシメ工具は安価とは言えず、DIYメンテナンスユーザーにとって壁となる

専用ナットで外プレートを圧入するスクリュージョイント


EKチェーンならではのスクリュージョイントは同社の特定チェーン用のオプション部品で、専用工具なしで外プレートを圧入できるのが最大の特長。シールチェーンを自分で装着したいが専用工具を買うのは負担が大きい、というユーザーに最適。


ジョイントピンとブッシュ内側に専用グリスを塗布したら、ナットを締めて外プレートをピンに圧入する。ピンがナットの底に接するまで締め込めば、プレートが適正位置まで圧入されるという作業手順も分かりやすい。プレートの圧入が終わったらナットを雄ネジ途中のくびれ部分まで緩めて、ナットと共に折り取る。

こうしたシールチェーン装着時の常識を覆すのが、江沼チヱン製作所が独自開発したオプション部品のスクリュー式ジョイントです。先端部分に雄ネジが切られたジョイントピンが独特なスクリュージョイントは、外プレートを付属のナットでねじ込みます。ピンの外径と外プレート穴の内径の差により、外プレートがねじ込まれた時点でピンに圧入されており、プレートが外れることはありません。

また付属のナットは止まり穴で、ピン先の雄ネジを突き当たるまで回した時にプレートの圧入量が適正になるよう設計されているため、誰が作業してもバラツキはありません。ナットをねじ込んだ後は、ネジ部分を折り取ればジョイント作業は終了で、ピンの頭をかしめる必要もありません。

このジョイントはEKチェーン専用で、さらにEK製シールチェーンの中でも特定の製品(520/525/530サイズのSRX2およびZVX3シリーズ)だけに使用できる別売り部品です。しかしDIY派向けのこうした部品が、このチェーンを選ぶ動機にもなるというユーザーもいるはずです。

シールチェーンの交換には基本的に専用工具が必要ですが、中にはハンドツールだけでジョイントできる場合もあるということを知っておくと、駆動系メンテナンスの際に役立つかも知れません。

POINT

  • ポイント1・江沼チヱンのスクリュージョイントは汎用ツールだけでシールチェーンのジョイントが可能
  • ポイント2・オプション部品として用意されているスクリュージョイントは、EKチェーンの中でも限られた製品で使用できる

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コメント一覧
  1. 匿名 より:

    こんにちは

    いつも楽しく読ませてもらっています。

    1つ疑問だったのですが
    「現在でもまれに、スタンドで浮かせた後輪を手で回して、シールチェーンよりノンシールチェーンの方が軽く回るからフリクションロスが少ないと思っているライダーもいるようですが、手回しとは比較にならない駆動力が加わる実際の走行時には、グリスが封入されたシールチェーンの方が圧倒的に抵抗が小さくなります。」
    と書いてますが、RKでノンシールよりフリクションが低いのはレース用のチェーンで普通のチェーンはノンシールチェーンの方がフリクションロスがないようです。
    DIDではノンシールチェーンの方がフリクションロスが少ないようです。

    この書き方だと全てのシールチェーンはノンシールチェーンよりフリクションロスが少ないと勘違いする人がたくさんいると思います。

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