現代モデルの多くは電動式スピードメーターを採用し、ホイールの回転数を電気信号へ置き換えてスピードメーターを動かしている。一般的な機械式スピードメーターと言えば、ホイールハブに組み込まれているギヤを介して、スピードメーターを駆動しているが、80年代後半以降、ホンダのレーサーレプリカモデルに始まったのが、ドライブスプロケットを締め付けるセンターナットに「ジョイント=カップリング」を被せて取り付けることで、メーターケーブルを回転させる駆動方式。ここでは、そんなタイプのモデル用スピードメーターギヤの「取り出し」に注目。分解メンテナンスを実践してみよう。

ドライブスプロケの同軸芯の延長上にギヤ



現代的にはスーパースポーツモデルで集約されるが、80年代当時はレーサーレプリカ、さらにそのムーブメントが過熱してからの「リアルレーサーレプリカ」と呼ばれたモデルが登場。その頃には、フロントホイール周りのシンプルさをひとつの目的に、メーターケーブルドライブを廃止し、メーターケーブルは固定側=車体側に沿わせてスピードメーターギヤをドライブスプロケットの回転軸から取り出していたモデルが数多くあった。例えば、VFR/RC/NC/NSRシリーズなどがそうだった。

樹脂製カップリングでケーブルを駆動



ドライブスプロケットカバーにスピードメーターギヤが組み込まれ、カバーの内側には両者を接続する「カップリング」となる樹脂部品を介して、ドライブスプロケットを固定するセンターボルトの頭にセット。ドライブスプロケットの回転に同期するボルトの頭で、メーターギヤを回転させる機構だ。

新品部品は低圧入で固定される

車両コンディションによって異なるが、今回分解したRVF400R用メーターギヤのカップリングは、本来なら低圧入なのに対して、ガタがあり指先で簡単に抜き取ることができた。軸の回転で圧入が甘くなったのだろう。走り込んだバイクの中には、このカップリングがさらにガタガタになり、破壊してしまった例もあった。ギヤ周りをクリーニングした後に、新品部品(この撮影段階ではまだ部品供給されていた)を圧入。この際には万力を使い、押し込み過ぎないように圧入固定した。

接触部には緩衝剤のグリスを塗布してみた

金属部品と樹脂部品の接触部には、緩衝剤としての機能を目的にグリス塗布。樹脂×金属部品なので、樹脂部品に影響を与えないようにラバーグリスを利用した。チェーングリスなどで汚れないようにしたいが、ドライブスプロケットの中心にあるため、遠心力でチェーングリスが飛び散って付着することは少ないようだ。スプロケットカバーを取り外したときには、パーツのクリーニングが大切だ。

メーターギヤの作動確認

カップリング部品を固定したら、指先で回転させ、メーターケーブルを駆動するシャフトが回転しているか確認しよう。内部ギヤは単品販売されていないので、汚れが激しいときにはパーツクリーニングを行い、極細ノズルを取り付けたグリススプレーを利用し、シールを傷めないようにグリスを封入しよう。

バイク最高の時代を代表するモデルRVF

80年代初頭から始まった空前のバイクブームは、数多くのニューモデルを誕生させた。レース人気が特に高まった80年代後半には、市販レーサーに保安部品を取り付けただけのようなモデルが登場。ホンダは、中型二輪クラスでも、強烈な性能を輪誇るモデルをラインナップ。2ストロークのNSRシリーズは年毎に進化を果たし、4ストロークでは並列4気筒エンジンを搭載したCBRシリーズを充実させ、V型4気筒エンジンを搭載したVFR/RVFシリーズも、数多くのスポーツライダーを育てたモデルだった。メンテナンス撮影した車両は、90年代の初頭に登場したV型気筒400ccモデルの最終レーサーレプリカとなったホンダRVF400R。ホンダV4特有の排気音が個性的なモデルだ。

POINT

  • ポイント1・部品を分解、例えばー各種カバーを取り外したときには周辺部品をクリーニングしよう
  • ポイント2・突然のメンテナンス時にも対応できるように、グリスはMP(マルチパーパス)グリスとラバーグリス、二硫化モリブデングリスの3種類を持っておこう

バイクの計器=メーターの駆動には、ワイヤーケーブル式が多い。今でこそ電気信号でメーターを動かす電気式メーターが数多くなっているが、電気式が採用され始めたのは80年代の初頭。当時は、電気式タコメーターだけではなく、電気式スピードメーターの採用が先進だと評されたが、技術的過渡期だったこともあり、まだまだトラブルが多かった。継続採用されず、短命で終わってしまう例がほとんどで、電気式スピードメーターを採用していたモデルの中には、カワサキのKZ1000R1もあった。

ステアリング操作時の邪魔になり、回転抵抗にもなるメーターギヤの存在を、何とかしたいと考えたのが技術者たちだった。外車=英国製バイクの中には、70年代以前からスピードメーターの駆動をリアホイールハブから取り出していたモデルもあり、それもやはりステアリング操作の軽快性を追求した結果だと言われている。

そんなスピードメーターギヤ&ケーブルの存在を前輪から隠したのが、ホンダのレーサーレプリカモデル群だった。1983年の車両法改正で、フルカウル付モデルが認可された関係で、スピードメーターケーブルが前輪によって駆動されると、そのメーターケーブルがアンダーカウルと干渉しやすい問題が新たに発生。そこで開発されたのが、ドライブスプロケットにスピードメーターの駆動ギヤを持つシステムだった。

現代のスポーツバイクは、リアホイールの回転から電気信号を得て、スピードメーターを動かすモデルが多くなっている。このように、普段は気にも留めない部分に、様々な技術進化が見え隠れしているのがバイクである。前後にある2本のタイヤの間に跨がり、ハンドルを操作して走るスタイルは、バイクが登場して以来、100数十年間、何ら変化していない。しかし、様々な技術進化で、安定安心の走りを得られるようになっているのが、現代の最新バイクである。

ここで注目したのは、80年代の後半以降、ホンダのスポーツ車に採用されてきたスピードメータードライブギヤ周辺。ドライブスプロケットの回転軸延長上にメーター駆動ギヤを組み込むタイプだが、スプロケットカバーを取り外した際には、スプロケットやドライブチェーン、ケース内の汚れ落としや点検だけではなく、メーターギヤ周辺も確認点検し、必要に応じて部品交換を実践しよう。なかでも駆動回転力をメーターギヤへ伝えるカップリングパーツ(部品名称はスピードメータージョイント)のコンディションは、しっかり確認し、使えなくなってしまう前に、スペアパーツを確保しておきたいものだ。

この記事にいいねする

今回紹介した製品はこちら

コメントを残す

今回紹介したブランドはこちら

ホンダ RVF400の価格情報

ホンダ RVF400

ホンダ RVF400

新車 0

価格種別

中古車 13

本体

価格帯 ―万円

万円

諸費用

価格帯 ―万円

万円

本体価格

諸費用

本体

145.74万円

価格帯 89.9~210万円

諸費用

7.24万円

価格帯 7.11~9万円


乗り出し価格

価格帯 ―万円

万円

新車を探す

乗り出し価格


乗り出し価格

152.99万円

価格帯 98.9~217.11万円

中古車を探す

!価格は全国平均値(税込)です。

新車・中古車を探す