1980年代と言えば、空前のバイクブームで様々なモデルが登場した。そんな輝かしきバイク史上の中でも、燦然と輝くのが「本気のレーサーレプリカモデルの登場」だろう。あの当時の少年や青年諸君はベテランライダーへと成長し、今再び「あの時代のバイクを駆りたい、所有したい!!」と願う80sファンは数多いようだ。そんな多くのファンに愛され続けているのがホンダNSR250Rシリーズだ。ここでは、乾式クラッチモデルの復活へ向けた作業を実践しよう。

作業前に必ず準備したいSMとPL

バイク好きサンデーメカニックにとっては、何よりも大切なバイブルと言える「メーカー純正SM=サービスマニュアル」と「PL=パーツリスト(パーツカタログ)」。その存在は極めて重要だ。サービスデータの記載はもちろん、80年代以降のモデルなら、メインハーネスの車体取り回しレイアウトなども、しっかり明記解説されている。これらの資料があれば、安心進行で作業推進することができる。

分解前のマーキング

チェンジリンクを取り外すケースは多々あるが、セレーション溝がひと山ズレてしまっても、マシンオーナーにとってはペダルのタッチ感に違いが生じて違和感ありありになってしまうものだ。また、機種によっては、セット位置が絶妙で、山がズレてしまうとカチッとシフトしたときにペダルやブラケットがエンジンカバーなどと干渉し、シフト操作不良へ陥ってしまうこともある。そんなことにならないためにも、分解前のマーキングが重要になる。実施することで素早く元通りに復元することができる。

2ストパワーの維持はクランクシールに!?

ローターホルダーでフライホイールが回転しないように固定し、フライホイールプーラーをセットしてネジを締め込むことで、軸芯のテーパー勘合が外れてフライホイールを取り外すことができる。専用工具が無くては作業進行できないが、今回はフライホイールプーラーの合致品が無かったので……。

保管環境でコンディションが左右される



軒下の室内保管状況にあったそうだが、何が起こるかわからないので、空キックなど踏み込むことなくまずはフライホイールを取り外した。ご覧の通り、湿気による結露か?もしくはカバーガスケットの隙間から水分(雨水)が侵入したのか?ローター内側とステーターコイル外周の鉄心部分の一部にサビが発生していた。この水分量が仮に多かったとしたら、もっしガッチリサビ付いていたかも知れない。

ステーターコイルの裏側には……



構造上、2ストロークエンジンは一次圧縮室のオイルシールや気筒間のセンターシールにダメージを受けると、エンジンパワーは著しく低下してしまう。特にNSR250Rシリーズの場合は、ほぼ持病の消耗部品。まさに本気のレーサーレプリカだった証拠でもある。この一次圧縮が低下することによって、燃焼室へ混合気を送り込む掃気工程がスムーズに行われなくなってしまい、良い爆発を得られなくなってしまうのだ。現状ではオルタネータ裏のクランクエンドシールにダメージは無いようだ。ダメージを受けた形跡があるオイルシールは、リップ部分からブチブチブチッとオイル混じりの汚れが、湧き出るように吹き出している様子を見て取れるようになる。

サビや汚れは徹底的に清掃



水の侵入原因が結露によるものだったのか、それともガスケット不良で雨水侵入だったのか?それはよくわからないが、ステーターコイル外周の鉄心エンドやフライホイール内側のサビをワイヤーブラシで徹底的に除去。周辺の汚れもクリーニングしよう。クランクシャフト側のテーパーとフライホイールのテーパー部分を洗浄してから、カチッとはめてボルトで締め付け復元する。

カジリ防止で再度の分解に備える

今回のようなサビ事象やクランクエンドシールのコンディションは、目視確認で点検するしか無い。再度、分解点検することを想定し、ボルトのカジリ防止でアンチシーズを塗布して復元すれば最善だろう。

サンメカなら特殊工具も揃えよう!!

今回の作業で使った特殊工具はすべてメーカー純正特殊工具。必ずしもホンダ車用の純正品ではなく、フライホイールホルダーは、確かヤマハ用を購入した(30年以上前)記憶がある。フライホイールプーラーは、ネジ部分の長さが足りなかったので、鉄製カラーを延長ピースとして利用しクランクシャフトの勘合部分から切り離した。この特殊工具も別のモデル用だが、ネジ部分が一致したので利用することができた。ちなみにこの鉄製ピースは、ツインショックのアイエンドに入るカラー。薄いカラーでは潰れて変形してしまうが、厚かったので利用することができた。

POINT

  • ポイント1・ 長く乗りたい、所有したい愛車用のメーカー純正PL/SMは所有したいものだ
  • ポイント2・ペダルの分解時は取り付け角度を再現できるように、分解前にマーキングしておくのがおすすめ
  • ポイント3・ エンジン構造を理解することで、おのずとやるべきメンテナンス項目が見えてくるもの。資料閲覧も勉強になる
  • ポイント4・ バイクいじりが趣味なら、特殊工具は一生物!!いろいろ無駄に揃えておくとイザというときに役立つことが多い

自身が所有し続けてきたバイクを、久しぶりに復活させるのは比較的容易な作業かも知れない。乗らなかった期間が長かったとしても、その間、愛車がどんなコンディションだったのか?どんな状況下で保管されていたのか?それを知っているのだから、復活するためには、どんな作業が必要なのか?概算うんぬんはそれなりにできるはず。露天放置の雨ざらしだったとしたら、それ相当の覚悟は必要だろう。また、乗らなくなった直前のコンディションを知っているのだから、見た目だけでは判断できない箇所の様子も、ある程度は理解しているはずだ。

今回、作業したホンダNSR250Rは、自賠責保険が切れてから2年弱。オーナーさんからの申し送りでは、乗らなくなったのは保険切れの前からなので、おおよそ不動歴は2年程度の個体らしい。保管場所は地面がコンクリートの物置。比較的湿気は少ないようだが、何が起こっているのか?知らぬ間にトラブルを起こしていては良くないので、エンジン始動前に確認しておきたい部分の点検を実践することにした。

2ストロークエンジンは、以下のようなメカニズム行程である。キャブレターから吸い込んだガソリンとともに、オイルポンプから送られてきたエンジンオイルがミキシングされ、混合ガソリンとなって一次圧縮室(クランク室)に吸い込まれる。次に、ピストンの下降行程で混合気が一次圧縮され、掃気ポートを介してシリンダー内へ送られる。次に、ピストンが上昇することによって、二次圧縮された混合気が燃焼室で爆発燃焼→膨張行程へと移行。そんな繰り返しで連続運転している2ストロークエンジンだが、もっとも大切なのが「一次圧縮行程」だと言える。何故なら、ピストン下降時に混合気を圧縮するが、例えば、クランクシャフトのオイルシールがダメージを受けていると、圧縮行程で圧力がオイルシールから逃げて(抜けて)しまうことになる。NSR250Rの場合は、クランクエンドシールと気筒間にセンターシールがあるが、センターシールとクラッチ側のクランクエンドシールは、エンジン分解しないと状況判断ができない。

一方、発電機側(左側クランクエンド)のオイルシールは、フライホイールローターとステーターコイルを取り外すことで、圧縮漏れしているか否かを、目視判断することができる。圧縮漏れしている場合は、圧縮混合気がシールリップから吹き出し、ステーターコイル裏のクランクケース周辺が、ベトベトに汚れているはずだ。

このようにエンジン分解せずにコンディションをあらかじめ確認点検できる箇所もあるので、久しぶりにエンジン始動する際には、できる限りの箇所を始動前に確認点検しておくことが重要だ。今回は、何らかの理由でステーターコイルの鉄心とフライホイールローター間、僅かな隙間に水分が溜まり、サビが発生していた。ごく僅かなサビだったので、分解時にワイヤーブラシで磨き落としたが、このサビの量が多めだと、フライホイール内側とステーターコイルの間にサビが食い込み、クランクシャフトがロックし、キックが降りなくなってしまうこともある。だからこそ、キックの踏み込み時に違和感があるようなときは、このような事前点検や清掃が、後々、部品にダメージを与えない結果にもなるのである。

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