
自動車と違って燃料タンクやサイドカバーなどの外装部品に直接触れることが多いのがバイクの特徴です。日常的な洗車でも細かな擦り傷がつくこともある上に、ライディングパンツやブーツで擦れることでくすみや小キズがついてしまうことも。塗膜が削れるような深い傷ではなく、クリア塗装の表面を擦る程度であれば極細目のサンドペーパーやコンパウンドで輝きを取り戻せるかもしれません。
塗装面にクリア層があればコンパウンドで磨ける可能性が高い
汚れや小キズの目立ち具合は車体色によって左右される。洗車時の磨きキズは紺や黒など濃色系のボディカラーで目立ちやすく、白い車体はブーツやウェア、バッグなどによる擦れ痕が気になる。ニーグリップで擦れる部分がトリコロールのホワイトというのは、ある程度の汚れは諦めるより仕方ないグラフィックでもある。ただ、この燃料タンクはいかにも見栄えが悪い。
愛車をきれいに保っておくことはバイク各部を入念に観察することにもつながり、メンテナンスの第一歩と言われています。ドライブチェーンのたるみやブレーキパッドの摩耗も早期に発見して適切に対応すれば、バイクの寿命を延ばすことができます。
バイクや自動車の塗装面は、空気中のチリやホコリが載った状態で不用意にウエスで拭くだけで、スクラッチと呼ばれる小キズがついてしまうこともあります。ボディシャンプーを使う際にも、洗車部分が乾いたままスポンジで擦るとホコリや砂利が研磨剤のように作用してしまうため、最初に水洗いして汚れを浮かすことが重要です。
しかし自動車と違ってライダーが外装部品に触れる機会が多いバイクは、日常の洗車やワックス掛けでは隠せない小キズやくすみもあります。自動車のボンネットやドアに衣類を擦りつけることはありませんが、同様に塗装を施されたバイクの燃料タンクはニーグリップで挟み込み、サイドカバーやシートカウルは乗降時にライディングシューズやブーツを擦ってしまうことも珍しくありません。保管時に掛けた車体カバーが風にあおられて、
カウルやタンクに汚れや小キズを付けることもあります。
シャンプーとスポンジで落ちない汚れや小キズは、もう少し強力に磨く必要があります。コンパウンド入りのワックスやコーティング剤が効果的なこともありますが、それでも足りない場合は塗装用のコンパウンドやサンドペーパーで塗装面をひと皮剥くという手段もあります。ただしその場合、現状の塗装面で使用されている塗料や状態を把握することが必要です。
赤や黄色の塗色の上からクリアー塗装が施されている場合は、クリアー層についたキズや擦れ痕を研磨する分には色落ちすることはありません。ただし面と面がつながる角部分は塗装が薄くなっていることがあるので注意が必要です。一方絶版車や旧車にありがちなクリアー塗装なしの塗膜は、磨くことで塗色が落ちてしまうためデリケートな作業が必要です。目立たない場所をコンパウンドで擦ってみて、ウエスに塗色が移ってしまう場合は広範囲を磨くのは止めておいた方が無難です。
絶版車の世界では褪色も含めて当時の雰囲気を保つ楽しみ方がありますが、1970年代ならではのキャンディカラーの中にはカラークリアーの上にクリアーのトップコートがなく、コンパウンドや極細目のサンドペーパーで軽く擦るだけで色が落ちてしまうものもあるので注意が必要です。
またトレールモデルのフロントフェンダーに代表されるような、樹脂自体に顔料を加えて成型してある軟質樹脂部品の場合、ペースト状のコンパウンドであれば汚れ落としが可能でも、サンドペーパーを当てると深く削れたり樹脂自体が毛羽立ち修復に苦労することもあります。塗装部品も無塗装部品も同様ですが、最初は目立たない場所で目の細かい研磨アイテムで色落ちがないかなど様子を見るようにしましょう。
- ポイント1・洗車やコーティングを日常的に行っていても、バイクの外装パーツはライダーが触れることで小キズが付きやすい
- ポイント2・汚れやキズがクリアー塗装に留まっている場合は研磨で回復できる可能性がある。クリアー層のない塗装は磨くと色落ちするので要注意
しつこい汚れや小キズは極細目のサンドペーパーで下地を作り直す
ここでは#2000の研磨フィルムを使用する。サンドペーパーに比べて薄く柔軟性のある研磨フィルムは、形状が複雑な塗装面に対して追従性が良く、スポンジパッドを併用することで均等な圧力で研磨できる特徴がある。
#2000まで目が細かくなると、塗装前後の仕上げやバフ工程前の研磨など細かい仕事向けとなる。既存のクリアー層の中だけで汚れやキズを取り除くためには、深く削れないことが重要。だがスポンジパッドに貼り付けて擦るうちに削れたクリア層が白い粉となりタンク表面に付着してくる。
ワックスやコーティング剤の中にも研磨成分入りの製品があるが、サンドペーパー(研磨フィルム)でクリアー層ごと削る方が明らかなクリーニング効果がある。タンク全面にクリアー塗装が施されているので、ホワイトの部分だけでなくレッドのペイント部分も研磨フィルムで擦っておいた。
表面のクリアー層が生きていて洗車だけでは取れない汚れがある時は、汚れを落としつつクリアー層を一皮剥く目的でサンドペーパーを掛けるという選択肢があります。#400や#600などの粒度では傷が深くなるので、再塗装時のクリアー研磨などにも使用される#2000クラスのペーパーを使います。ペーパーの目が細かくなることで研削力は低下するので、クリアー層を大きく削ることなくクリアーの上に付着した汚れを取り除き、小キズをならすのが目的です。
ここではニーグリップ部分に細かなキズがたくさん入った燃料タンクのペーパー研磨を行いましたが、ホワイトの塗装面に到達する深さがなかったため汚れもキズもクリアー層の中できれいに除去できました。塗色の状態にもよりますが、クリアー層を全面的にペーパーがけして下地を整えた上で新たにクリアー塗装を施すことで、ペイントの深みが増しながら塗色を保護できる一石二鳥の効果が期待できます。
クリアー塗装のペーパー掛けはカスタムペイントや鈑金補修では一般的な作業で、塗装面が凸凹になるユズ肌を調整する際には硬めのサンディングブロック(当て物)を使って平滑に磨き上げるのも珍しいことではありません。ただし、経年劣化やケミカルなどでクリアー塗装自体が傷んでかさついている場合、サンドペーパーで擦ることでさらに状態が悪化してしまうこともあるので、どんな場合もペーパーで磨けば良いわけではないことを頭に入れておきましょう。
- ポイント1・コンパウンドより目が粗いサンドペーパーの方が汚れ落としや皮むき効果が高い
- ポイント2・目の粗いペーパーはキズが深くなり、後工程のコンパウンドで磨く際に手間が掛かるので、汚れが落ちる中で最も細かい目のペーパーを選択すると良い
ポリッシャーの活用で作業効率の向上と均一な仕上がりを両立できる
塗装面用の液体コンパウンドは細目、極細目、超微粒子といった3段階が一般的のようだが、粒度の違いや名称はメーカーによってまちまち。段階を踏んで研磨する場合、粒度違いの矛盾を避けるためにもメーカーは統一しておく方が無難だ。
#1200以上の耐水ペーパーの目を素早く消すというコンパウンドを塗布する。
エアーポリッシャーにウールバフを付けて磨く。バフはウールよりスポンジの方が柔らかく、一般的に同じコンパウンドを使うならウールの方が研削力が高くなる。だがポリッシャーに加える圧力やコンパウンドの量によって実際の研削力は変化するので、一概に決めつけることは難しい。
研磨用コンパウンドによって、研磨パッドによる艶消し状態からツヤあり状態まで回復したので、超微粒子仕上げ剤でもう一段階磨き込む。ちなみに、研磨用コンパウンドで磨いた状態でもスプレーコーティングを行えば光沢が出るが、下地をしっかり作ることでワックスやコーティングのない状態でさらにツヤが出せる。
研磨用コンパウンドには明らかにペーパー目を消すための研削力があるが、超微粒子の仕上げ用コンパウンドにはクリアー層を研磨している手応えがなく、ワックスを塗っているような印象。それだけ研磨剤の粒度が細かいのだ。
研磨パッドによる下地作りとコンパウンドを使った研磨によって、クリアー層の透明感が劇的に向上した。鈑金塗装用のコンパウンドはノンシリコン、ノンワックスタイプが多く、磨き上がった状態はまったくの素肌状態なので、ガラスコーティングやポリマーコーティング、ワックスなどとの相性が良い。
サンドペーパーでクリアー層を擦り、汚れを落として艶消し状態になったらコンパウンドで磨きます。コンパウンドには中目、細目、極細目といった粒度の違いがあり、粒度が細かくなるほど表面が滑らかに仕上がります。とはいえコンパウンドはサンドペーパーによる擦り痕(ペーパー目)を消すのが役目なので、サンドペーパーの粒度との組み合わせを考慮しなくてはなりません。目の粗いサンドペーパーを掛けた後を粒度の細かいコンパウンドで磨いてもペーパー目はなかなか消えません。逆に、目の細かいサンドペーパーを掛けた後で粒度の荒いコンパウンドを使えば、せっかく平滑に仕上がった塗装面に新たなキズをつけることにもなりかねません。
鈑金塗装用に調整されたコンパウンドであればサンドペーパーより目が粗いということは考えづらいですが、第一段階で使用したコンパウンドのキャッチフレーズには「#1200以上の耐水ペーパー目を素早く消す」と書いてあるので、#2000のペーパーを掛けた下地ならもう一段階細かいコンパウンドで磨き初めても良いのかもしれません。もちろん、#2000のペーパーであっても#1200以上のペーパー目を消すコンパウンドで磨くことで、ペーパー研磨の艶消し状態からツヤあり状態に大きく変貌します。
コンパウンドで磨く際に使用する道具も作業効率や仕上がりを左右する要素となります。サンドペーパーを掛ける際に指先で擦るよりサンディングブロックを使った方が面を均等に擦れるのと同様に、コンパウンドもポリッシャーを活用した方が作業が早く仕上がりも良くなります。写真ではエアーポリッシャーを使っていますが、リーズナブルに購入できる充電式の電動タイプもおすすめです。
研磨用、超微粒子の順で磨いたタンクにサンドペーパーの痕跡は全くなく、汚れや擦れ痕以外のクリアー層の細かなキズも除去できたため表面が滑らかになり、天井の蛍光灯の映り込みもシャープになりました。小キズやくすみで外装パーツの印象がぼやけて見えるようなら、クリアー層を一皮剥くのは効果的なリフレッシュ術となります。
- ポイント1・コンパウンドの目的はペーパーによってついたキズを滑らかにすること。ペーパー目を消すことで艶消し状態からツヤあり状態になる
- ポイント2・ポリッシャーを活用することで作業時間の短縮と磨き残しの少ない均等な仕上がりが両立できる
この記事にいいねする
-
KOWA
コードレスポリッシャー
¥41,600(税込)
-
SANKEN
電動ポリッシャー
¥21,736(税込)
-
AUTO GLYM
ペイント・リノベーター【研磨用微粒子コンパウンド】
¥2,870(税込)
-
WILLSON
【コンパウンド 下地処理剤】 超微粒子コンパウンド
¥760(税込)
-
KIJIMA
ラッピングフィルム 精密仕上げ用研磨フィルム
¥660(税込)
-
KIJIMA
ラッピングフィルム 精密仕上げ用研磨フィルム
¥574(税込)
-
Holts
耐水ロングサンドペーパー
¥404(税込)
-
SOFT99
99工房 耐水サンドペーパーセットM
¥590(税込)
-
DAYTONA
3Mスポンジ研磨材
¥707(税込)
-
DAYTONA
研磨パッド
¥309(税込)