トランポに載せ降ろしするときなどはもちろん、ハンドルバーから突きだしたバックミラーのロックナットを緩めて、ミラーの取り付け角度を変えたい場面は頻繁にある。気がついたときにはロックナットが緩んでいて、走行中にミラーが動いてしまい、後方視界が見えにくく……、なんてことも良くあることだ。そんなバックミラーの締め付け固定をテキトーにやっていたことで、気がついたときにはマウントのねじ山がナメてしまい、バックミラーを「固定できなくなった!!」といった事象は決して珍しいことではない。ここでは、ネジ山がナメかけていて、しっかり固定することができない、バックミラーマウントを恒久的な修理再生にチャレンジしてみよう。

ネジ山修理の最終兵器!?



パイク関連のネジ山修理には様々な道具や方法があるが、もっとも確実かつ恒久的に修理できる方法のひとつとして知られているのが「リコイル」の挿入。ダメになった(ナメてしまつた)ネジ山を拡大し、リコイル挿入前のネジ山を切り出し、底へリコイルを挿入。挿入後は挿入作業時のリーダーとなる曲げ部分「タン」を折れば作業完了。そんな一連の作業を1パッケージにした便利な「リコイルキット」も人気が高い。

ネジ山サイズに合致した商品のキット

バックミラーのネジサイズは一般的にM8サイズとM10サイズの2種類。ヤマハ車の中には、右側バックミラーのネジ山を左ネジにすることで、転倒時にミラーの折れを回避していた例もあった。今回のカワサキはM10でネジピッチは1.25mm。つまりリコイルキットの「M10-1.25」用を購入した。キットなのでドリルや挿入ハンドルなども含まれる。リコイルタップを切る下穴サイズは、10.25mm。同サイズのドリル(キリ)もキット内容に含まれていて便利だ。

車載状態で患部修理

バックミラーマウント周辺にドリル加工時の切り粉が飛び散らないように、ウエスで周辺全体を養生し、ガムテープや紙テープで患部を固定してドリル作業開始。もとのナメたネジ穴に対して直角に追加工できるように、ハンドドリルの傾け角度の片側を第三者に確認してもらうのが良い。一般的に左右の倒れは自分自身の目で調整し、奥行き方法の倒れを第三者に見てもらうのが良い。「ちょっと立てる!! ちょっと手前……」というように、加工中に声掛けしてもらうと良い。

リコイルタップでネジ切り加工



M10-1.25用リコイルを挿入するための下穴加工(10.25mmのキリを利用)を終えたら、リコイルタップを直角に立ててネジ切り開始。最初の切り始めが肝心なので、タップが倒れないように慎重に確認しながら作業開始。アルミ鋳物部品へのネジ切り作業なので、サクサク作業進行することができる。リコイル挿入前の下ネジ穴は、リコイル分だけ加工径が大きくなっている。

押し付けすぎには要注意



今回はキット同梱のリコイルを利用したが、ネジの深さにしっかり合わせたいときには、長めのリコイルをカットして挿入する裏ワザもある。また、アルミ板などにリコイルを挿入するためのネジ深さが少ないタイプもある。ネジ径に対して1.5倍以上のネジ山を確保するのが一般的だが、時には浅いケースもあるのだ。ネジ径に対して、半分の0.5D、同寸の1.0D、50%増しの1.5D、2倍の深さを持つのが2.0Dとなる。M10用で1.5Dのリコイル挿入となれば、ネジ山の深さは約15mm前後だと考えよう。今回は1.5Dを利用した。

ゆっくり回転させてエンドに注目



リーダーと呼ばれる曲げ部分をハンドル先端の割りにセットしたら、ネジ山に軽く押し付けてハンドルをゆっくり回そう。リーダー部分がネジ山に噛み合ったら、ハンドルをやや引き気味に、押し付けることなく回すことに集中する。そして、リコイルエンドがロックナット座面から1/2周(半山)入ったあたりで回転停止。最後にリーダー部分の曲がりを叩き抜きツールで除去する。ツールを差込み軽量ハンマーでツールエンドを軽く叩いてリーダーを破断。分割されたリーダーを除去して作業完了だ。

POINT

  • ポイント1・本来のネジサイズを明確にしてからリコイルキットを購入しよう。ネジサイズが合致しないとミラーは固定できない
  • ポイント2・下穴加工時は可能な限り部品を単品にした状態で作業進行しよう。
  • ポイント3・リコイル挿入時は部品に押し付けることなく入り口の噛み合いをまずは確認する。その後も押し付けることなくゆっくりスムーズに挿入
  • ポイント4・挿入量は常に確認し、ロックナットの締め付け座面からネジ山半周程度入ったところで作業終了

ネジ山修理ツールとして様々な商品がある中で、圧倒的に信頼されているものがある。それは、コイル状のネジをオーバーサイズ加工したネジ穴に回転挿入するツール(機械職人さんは打ち込むと呼ぶことが多い)。商標名としては、ヘリサートやスプリューなどが以前から有名だが、同タイプの商品には「リコイル(オーストラリア製)」がある。

何故、リコイルを積極的に利用するのか?それは、一般ユーザー向けに商品化されたパッケージや挿入コイルの入数などがある。ここで利用しているのも「キット=スレッドリペアキット」と呼ばれる商品だ。ナメたネジ穴と同じサイズの修理用回転挿入コイルはもちろん、そのコイルを打ち込むハンドル、下ネジ穴を作るための下穴キリ、そしてリコイル挿入用のタップ。さらには、打ち込み後のリコイルリーダー部=タンを折り取るための棒(最近の商品は折れたリードを簡単除去できるように棒先端がマグネット仕様)などが1パッケージとなったキット商品だ。

また、貫通穴の修理で大変便利な、ナメてしまったネジ山をガイドに、リコイルを打ち込むネジ山サイズまで一気に仕上げる(ネジサイズを拡大する)、大変便利なダイレクトタップもラインナップ。我々サンデーメカニックが利用することを、スバリ念頭に商品化されているのがリコイル・スレッドリペア・キットの特徴なのだ。

ブロック部品の修理ではなく、決して厚くないアルミ貫通穴にリコイルを打ち込みたい際は、ネジ径に対して1/2寸法の0.5Dサイズも別途購入できる。スタッドボルトなどの深底ネジ穴を修理するような、長いリコイル(例えば2D)もあるので安心だ。

ここでは繰り返しの脱着で、気がついたときにはネジ山がナメてしまっていたバックミラーのマウント穴を修理したが、周辺をウエスなどで養生することで、部品を単品に分解することなく修理再生することができた。リコイルを挿入する際の注意点は、下穴の加工時に、本来のネジ穴に対して斜めに穴加工(拡大加工)しないこと。また、挿入時には、締め付け座面から1/2巻ほどリコイルエンドを潜らせた状態まで挿入し、作業終了することである。締め付け座面ギリギリにリコイルエンドがあると、ボルトを締め付けたときにリコイルエンドがうまく噛み合わず、微妙にダメージを与えてしまうことがある。こんな仕上がりだと締め付けトラブルを起こしやすいので、挿入時は、規定の深さまでしっかり回転挿入してから作業を終えよう。

この記事にいいねする

今回紹介した製品はこちら

コメントを残す

今回紹介したブランドはこちら