ガソリンとエンジンオイルを混ぜた状態で燃焼させるのが2ストロークエンジンの特徴です。1960年初頭にヤマハがオートルーブを実用化して以降は分離給油が当たり前になりましたが、オートルーブをはじめ初期のオイルポンプのデリバリーパイプの途中には小さな硬球とスプリングを組み合わせたチェックバルブが存在しており、メンテナンス時の要チェックポイントとなっていました。

2ストロークエンジンを焼き付きと白煙から解放したオイルポンプ


1963年に登場したYG-1の派生モデルとして1965年にデビューしたヤマハYGS-1。YG-1は混合給油だったが、新たにオイルポンプを装備して分離給油となったのが大きな特徴。オートルーブ初期の機種だが、1980年代に至るまで基本構造は継承された。

シリンダーヘッドに吸排気バルブを持つ4ストロークに比べてメカニズムがシンプルでエンジンパワーも出しやすい2ストロークエンジンは、1960年代以前においてバイク用エンジンの主流でした。そんな2ストロークの使い勝手をさらに向上させたのが、ヤマハ発動機が最初に実用化したオートルーブ=別体式オイルポンプです。

それ以前の2ストは、燃料タンクでガソリンと2スト用エンジンオイルを混ぜて使用する混合ガソリンが当たり前で、ライダーは吸油の際には持参したエンジンオイルをガソリンタンクに注入するか、その当時はガソリンスタンドに存在した混合済みガソリンを給油していました。2ストロークエンジンはそもそもガソリンと潤滑油を同時に燃焼させて動くメカニズムなので、それが当然だったわけです。

しかし吸油のたびにエンジンオイルを注入していては、ガソリンとオイルの混合比はその都度まちまちになってしまいます。混合比が濃ければ燃え残ったオイルは白煙となって吐き出され、薄ければ焼き付きにつながるため、1950年代末頃から徐々に普及し始めた、ガソリンだけを入れて走行できる4ストロークモデルに比べて取り扱いが面倒と見なされるようになりました。

そんなネガティブなイメージを払拭したのがオートルーブです。エンジンで回すオイルポンプによって、インテークマニホールドにエンジンオイルを送るオートルーブは専用のオイルタンクを持つ分離給油方式を実現し、ガソリン給油時の手間を解消しました。

また、オートルーブポンプはエンジン回転数とスロットル開度の両面で吐出量を決定しているため走行状況に応じた給油が可能で、白煙を減らしながら焼き付きの心配も排除できるという利点があります。そのためヤマハ以外のメーカーも順次分離給油方式を採用し、公道用市販車から2ストモデルが消滅する時までオイルポンプは連綿と使われました。

POINT

  • ポイント1・分離給油用オイルポンプが実用化される前の2ストローク車は給油のたびにエンジンオイルも注入していた
  • ポイント2・ヤマハのオートルーブ皮切りに分離給油が普及したことで、2ストローク車の白煙や焼き付きなどのトラブルは大幅に解消された

停止時のエンジンオイルの流れを止めるチェックバルブ


オイルデリバリーパイプのバンジョーボルトを取り外すと、ボルト内には小さな鋼球と細いスプリングが入っている。勢いよくボルトを取り外してどこかに飛ばさないように注意しよう。硬球とスプリングの位置関係から、オイルポンプがオイルを吐出すると鋼球がSプリングを押してパイプにオイルが流れ、パイプからオイルポンプに戻ろうとするオイルを鋼球が止めていることが分かる。


経年劣化によって硬化したオイルホース(画像ではすでに交換済み)はオイルポンプの後方に取り付けられているので、ホースを交換する際はポンプ自体を取り外す必要がある。この時、先にオイルデリバリーパイプを外さなくてはならないので、チェックバルブの脱落や紛失に注意しなくてはならない。YGS-1は後のYB-1などと同じくロータリーディスクバルブの吸気方式なので、キャブレターはクランクケースに横向きに装着される。


オイルホースを交換したりオイルタンクが空になるなど、オイルポンプ内に空気が入った場合はデリバリーパイプ隣のブリーダーボルトを取り外してエアー抜きを行う。オイルタンクから流れるオイルは重力によってポンプ内を満たすため、ブリーダーボルトを外してポンプ内からオイルが流れ出てきたらエアー抜きは完了である。

2ストローク車のオイルポンプはエンジンの潤滑に関わる生命線であり、エンジンを始動すると同時に必ずエンジンオイルを吐出することが求められます。そこで採用されたのがチェックバルブです。

エンジンが動いている時はポンプによってオイルは圧送されていますが、エンジン停止時はオイルタンクとオイルポンプ、オイルの吐出口となるデリバリーパイプ先端の高さによって、オイルの流れが変わります。4ストロークエンジンでも、エンジンを止めてから長い時間が経過するとカムシャフトや吸排気バルブなどシリンダーヘッド周辺のオイルはエンジン下部のオイルパンに戻ってしまいます。

一般的にオイルポンプはデリバリーパイプ出口よりも低い位置にあるため、パイプ内部のオイルはオイルポンプ側に逆流しようとします。もしパイプ内が空の状態でエンジンを掛ければオイルなしでガソリンだけが燃焼することになり、焼き付きに直結します。4ストでもヘッド周りのオイルが落ちれば油膜切れにつながりますが、4スト用のエンジンオイルは油膜の保持力があるのでエンジンが始動してオイルポンプがエンジンオイルを吐出すれば潤滑は回復します。

一方2ストオイルはシリンダー内で常に燃焼して消費されるため、始動時にすぐさま新たなオイルが供給されなければ、クランクケースやシリンダーはガソリンだけで洗浄される状態になるため、とても危険です。

オートルーブのチェックバルブはオイルポンプとデリバリーパイプ接続部のボルト内部に組み込まれており、小さな鋼球と細いスプリングで構成されています。両者はポンプ側に鋼球、ボルト側にスプリングが付くことで、ポンプが作動すると吐出圧によって鋼球がスプリングを押し縮めてオイルがパイプ内に流れます。そしてエンジンが停止すると鋼球がポンプの出口を塞いで、パイプ内のオイルの逆流を防ぎます。

POINT

  • ポイント1・2ストロークエンジンは始動時にエンジンオイルが吐出されないと焼き付くおそれがある
  • ポイント2・停車中にオイルデリバリーパイプ内を空にしないためにチェックバルブが組み込まれている

気付かず紛失する可能性もあるので分解時には要注意


後に廃止されるが、オートルーブ初期のオイルポンプには強制的にオイルを吐出するスタータープレートが備わっている。デリバリーパイプが空だと、エンジンオイルがクランク室に届くまでしばらく時間が掛かるので、あらかじめスタータープレートでエンジンオイルを送り出しておくのだ。始動時のみガソリンにオイルを混ぜた混合ガソリンを使用しても良い。


経年劣化で黄変しているが、新車時のデリバリーパイプは乳白色なのでエンジンオイルの流れを目視で確認できる。パイプ内が一度オイルで満たされたのに、エンジンを止めてしばらく待つと上部から空気が入るようななら、チェックバルブの密閉不良でポンプ側に逆流している可能性があるのでもう一度確認する。

シリンダー周りのメンテナンスやレストアを行う際にオイルポンプ周辺を取り外す場合があります。特にオイルタンクとオイルポンプをつなぐホースが経年劣化によってカチカチに硬化している場合、新たなホースに取り替えておきたいと思うのは当然です。

この際、エンジンからオイルポンプを取り外すときに注意したいのがチェックバルブの脱落や紛失です。最初から「内部にバルブがある」と用心していれば間違いはないのですが、通常のボルトのように緩めて引き抜いてしまうと、硬球とスプリングを落として紛失してしまうことがあります。ボルトはブレーキホースのバンジョーボルトと同じような作りで、中心の太い穴と横穴があるだけなので、落下しても気付かない場合もあります。

幸い、1960年代のオートルーブのオイルポンプにはエンジンを始動していなくても強制的にオイルを吐出できるスタータープレートが付いているので、オイルポンプやデリバリーパイプを外したりオイルタンクを空にしてしまった時は、ポンプ内のエアーを抜くブリーダーボルトを外してオイルをポンプ内に満たしてから指でスタータープレートを回します。

するとデリバリーパイプに徐々にエンジンオイルが送り出されるので、インテークマニホールド(画像の車両の場合はロータリーディスクカバー)までオイルが到達することを確認し、さらにその状態でしばらく放置してホース内のオイルがポンプ側に逆流しないことを確認してから乗車しましょう。

POINT

  • ポイント1・オイルポンプからデリバリーパイプを外す際はチェックバルブの紛失に注意する
  • ポイント2・オイルポンプを着脱した後はデリバリーパイプのエア抜きを行い、オイルがパイプ内を逆流しないことを確認する

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