シールドビームとは、読んで字の如く、ヘッドライトハウジング全体がバルブと一体化された部品であって、「バルブが切れてもバルブ交換できない」のが最大の特徴。つまり、フィラメントが切れたらヘッドライト本体ごと交換……、というのが常識である。しかし、派生モデルの中には同じ形状ボディでバルブ交換式もあったりする。それなら、改造も可能なのでは?と実践してみた一部始終をご覧下さい。すべてのシールドビームヘッドライトで可能なカスタマイズではありませんが、こんな廃物利用、楽しいですよね?

同じボディ形状なら使えるかも?

70年代の大型車、特に、北米輸出をメインに開発されたモデルの多くにシールドビームが標準装備されていた。カワサキZ1/やマッハ、ホンダCBフォアもそうだった。球切れで使えなくなったシールドビームがあったので、バルブ交換可能タイプとボディ形状を比較したら、まったく同じ?それならやってみる価値、ありますよね!?

ハイワッテージバルブも使えるように!!



60年代後半から70年代前半以前の国内モデルに数多く採用されていた交換式のバルブソケットユニット。各メーカーともにこのタイプがあり、今では高性能バルブ専門メーカーから、ハイワッテージ対応品が発売されている。これを組み込み光軸さえ出れば……などと考えたのだった。

レンズ割れで使えないライトを基準に



ガラスレンズが飛び石で割れてしまったライトボディのバルブ組み付けポイントをキリ抜き、シールドビームボディにこのキリ抜きを再現できないものか?検討開始。あわてて切り抜き作業に取り掛からず、まずはレンズトップになる部分を明確にしないと光軸が出なくなってしまう可能性大。どうやらこのボディは小さな切り込みがTOP目印のようだ。

キリ抜きボディのバルブ穴を参考に





ガラスレンズが飛び石で割れてしまい、使えなくなったライトボディのバルブソケットホルダー部分を切り取り、治具代わりに利用。これでゴミ箱行きのシールドビームボディに新たな息吹を吹き込むことができるのか?加工するシールドビームボディのレンズリムにマーキングを行い「TOP」の位置を間違わないようにした。切り抜いたソケットホルダー部分をシールドビームのバルブ部にセットし、金尺で寸法確認しながらセンターリング。粘着力の弱い紙用の両面テープで切り取った交換バルブ用ボディを接着。

マーキング通りにバルブソケット穴を加工





バルブソケット部分の切り欠き形状を模して、シールドビームボディにマーキングを行い、TOP位置のケガキ線と小さな切り込み部分を一直線で合致していることを再確認。マーキング後、シールドビームのバルブ部分を固定し(万力を利用)、金ノコでバルブの根元付近をゴリゴリと切り落とした。ボディが転がらないように座布団や折りたたんだ毛布の上で、バルブソケットのマーキング内側をドリルでボコボコに穴加工した。この作業を丁寧に進めないと、後々の仕上がりが変わるので要注意。切れの良いキリを利用しないと穴が滑って作業性が悪くなってしまう。今回は新品のキリ=Φ2.0mmを利用。不要な部分をニッパでカットして棒ヤスリ仕上げに進んだ。

バルブ切れのシールドガラス球は砕き出す





シールドビームには大きく2種類がある。ガラスボディ全体にガスを封じ込めた完全シールド仕様と、薄いガラス球がフィラメントを覆う2タイプがある。このシールドビームは後者なので、ボディ内に落下したガラス球を棒ヤスリで割り砕いて取り出した。繰り返し棒で突っつきガラス球を割ったが、レンズの内側にダメージを与えないように要注意。バルブソケットホルダーの取り付け形状は、小型リューターと半丸棒ヤスリでマーキング線に従い仕上げていった。角張った凹削りもあるので、棒ヤスリは様々な形状が欲しいところだ。

バルブソケットがピタリと一致した!!



マーキング線が途中で消えてしまったら、再度、キリ抜き見本を当ててケガキ線を書き込み直そう。削り過ぎるとソケットとのハメ合いが緩くなってしまうので慎重に加工。何度か合いを確認しながら加工作業を進行しよう。バルブソケットをボディにぴったり合わせてクイッと回すと、しっかり固定できたことがわかる。ガラスのヘッドライトレンズにキズが付かないように、レンズ表には布ガムテープを貼り付けて保護しながら作業進行しても良い。

いい感じに仕上がった廃物利用!!

ヘッドライトの点灯テストを実施してみた。このタイプのバルブは、M&Hマツシマ製の番号で表すと「PH8バルブ」が合致した。ハイワッテージで明るく、純正シールドビームの比ではない明るさを獲得。この改造ヘッドライトを車両に取り付け、車検のテスター屋さん持ち込んだところ、光軸も明るさもOK!!その後、車検もパスできた。

POINT

  • ポイント1・ゴミ箱へ放り込む直前の不要品が、時として新たな命を獲得できることもある
  • ポイント2・あくまで個人責任における作業進行であることを御理解下さい
  • ポイント3・上手に作業できれば、光軸も光量もバッチリ得られる。これぞまさに廃物利用

シールドビームのままでユーザー車検にチャレンジしたら、光量不足でパスできなかった……。そんな経験を持つサンデーメカニックは数多いことだろう。ヘッドライトが暗いのには様々な理由があるが、旧車に多いのが「シールドビームバルブの劣化」である。新品のシールドビームに交換したり、ハイワッテージバルブを組み込めるヘッドライトボディに交換すれば、その改善効果は覿面だろう。しかし、バルブ交換できないシールドビームで新品部品が入手困難な場合は、ヘッドライト用ブースターキットを取り付けることで、ヘッドライト光量は明るくすることができる。

しかし、もっとシンプルにバルブを明るくすることができないものか?でも、旧車としての雰囲気を壊したくないから……、といった意見も数多くある。旧車専門ショップのメンテナンスエリアの片隅に「バルブ交換できないシールドビームが山積みになっている光景」を見たことがあるが、純正ヘッドライトのデザインやレンズカットにこだわりを持ちたいファンも多い。確かに、シビエやマーシャルなどのヘッドライトは、おしゃれで明るく魅力的な商品である。しかし、ノーマルにこだわりながらも、ヘッドライトを明るくしたいユーザーも少なくない。そんな思惑の中でチャレンジしたのが、ここに紹介するような廃物ヘッドライトの再利用カスタムだった。

ユーザー車検にチャレンジしたが、ヘッドライト関係の「不可」で一発パスできなかった経験のあるサンメカは数多いはず。低年式モデルに限らず、最近は、比較的高年式モデルでも、光量不足で車検を一発パスできないモデル例もあるそうだ。

光軸、光量とも、予備車検場=「テスター屋」さんで事前に検査してもらうことで、少なからず車検にパスできるか否かは、事前に把握することができる。日本国内の保安基準に照らし合わせると、まずは「右側通行用のレンズカット」のボディを取り付けなくてはいけない。アメリカ仕様などの左側通行用ヘッドライトボディを取り付けたまま検査ラインに入れば、光量は十分でも「光軸が出ない」ため、検査にはパスできない。

一方、光軸はしっかり出ているのに、光量不足のケースもある。ヘッドライトの検査中にエンジンを空吹かしして、ヘッドライトを明るく照らすテクニックもあるが、できれば涼しい顔で余裕の一発パスを目指したいものだ。

単純に「光量アップする方法」として、バルブのワット数が高いものを組み込む例は多いが(50W/50W仕様から65W/60W仕様のバルブへ交換するなど)、それでも光量アップしないときには、ヘッドライト系のハーネス劣化を疑い、バッテリーからダイレクトに電力を供給する「ヘッドライトリレーキット(ブースターキット)」などを組み込むのが手っ取り早い。想像以上にハーネスが劣化していて、光量が減衰している例は多い。

ここで実践しているのは、廃物利用でヘッドライト光量を得つつ、見た目は純正デザインを目指した特異な例である。すべてのモデルに適応するカスタマイズではないが、ノーマルフォルムにこだわりを持ちながら、ヘッドライトを明るくしたい場合には、このような改造実例もあることを知っておきたい。

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