バイクを走らせる上で肝心なパーツがメインキー。キーが無ければ、イグニッションをONにすることができず、ウインカーやヘッドライトやホーンなどなど、補器類の操作が不可能になってしまう。メインキー関連のトラブルは多岐に渡るが、ここでは、機能不全に陥りそうな70年代のスーパーカブ用純正メインキーを分解して、電装接点の回復にチャレンジしてみた。

旧車のメインキーボディなら分解可能?



キーを差込むとスムーズにON-OFF作動するものの、思い通りに電装回路が働かないことがある。そんな症状の時に考えられるのが、キーボディ裏側に組み込まれている電装接点周辺の不具合だ。まずはキーボディ単品状態で、サービスマニュアルやオーナーズマニュアルの配線図の「色」に従い、端子間の導通有無を確認してみよう。今回は、キーONのときに導通が無くなるイグニッション回路が、キーのポジションにかかわらず常時導通状態になっていた。まずはボディ固定部分のアース接点ハンダを落とし、エンドカバーの取り外しから取り掛かった。

プラスチックの爪を引っ掛ける構造



メインキーボディ裏側のフタがキー接点の端子台になっていることが多いので、裏蓋を固定している爪部分を精密マイナスドライバーで押込み、まずは裏蓋の取り外しから開始。接点には銅板接点がスプリングで押し付けられているので、裏蓋を取り外すときに接点をフッ飛ばして紛失しないように、作業時はテーブルの上で、裏蓋を真上にしてゆっくり取り外そう。心配なときには、透明なビニール袋の中に腕を突っ込み、作業することで部品のフッ飛ばし=紛失しにくくなる。

裏蓋接点の中は細かなパーツだらけ



裏蓋を取り外したら、銅板プレス部品の移動接点、鋼球、スプリング、回転ベースを取り外すが、復元時の組み込み向きを間違えないように、分解前には携帯やスマホで撮影しながら作業進行するのがよい。または、マジックなどで部品にマーキングしよう。銅板接点を逆さまに組み込むと電装機能不全になる。電装部品を取り外したら、メインキーを差込んだ状態でON-OFF操作を行い、スムーズに動作するか確認しよう。

裏蓋接点の汚れは徹底除去



裏蓋の接点には腐食の防止や給電性向上を目的に、銅粉を含有したグリスを少量塗布し(画像は大袈裟に塗ってます)、マイナスドライバー先端で端子表面を擦りながら汚れを除去。ウエスでグリスと汚れを拭き取ったらパーツクリーナーで洗浄し、乾燥したら再度接点に同グリスを極少量=薄っすら塗布する。

樹脂部品にはシリコン系グリスがお約束 



樹脂部品の電装スイッチ用回転ベースの軸部分には、樹脂部品を変質させないシリコン系グリス(ラバーグリスとも称される)を少量塗布してから組み立て復元開始。たっぷり塗布すると汚れを寄せやすいので、あくまで少量で良い。

金属部品の締め付け座で「アース」回路

メインキーボディに回転座、スプリング、鋼球、銅板接点を復元したら、配線回路のスイッチ接点となっている裏蓋をしっかり押込み、カチッと固定する。この復元時に裏蓋の落ち着きが悪いときは、裏蓋をグイッと押込んだ状態で、裏蓋と筒状ボディの数カ所をグルーガン(熱間接着剤)で素早く固定すると良い。裏蓋を固定したら、締め付け座のアース金具を裏蓋のアース接点にハンダで固定する。このハンダ固定が重要で、ハンダがはずれて(クラックなどで)アースが途切れるとキーポジションに関係無くキック始動できてしまうこともある(フラマグ点火車両)。

POINT

  • ポイント1・ 分解メンテナンスが難しいときには、無理せず「カギのプロ」に作業依頼しよう
  • ポイント2・電装接点の摩耗が原因の時には接点突起を裏側からポンチで軽く叩いて突起を押し出すと良い
  • ポイント3・キーボディのアース回路が遮断されるトラブルも多いので、分解復元時は新しいハンダでしっかり復元

メインキーが不調になった際に、何とかならないものか?修理に挑戦してみたくなるのがサンデーメカニックなのかも知れない……、と言うよりも、新品の適合部品はなかなか見つからないし、部品交換できたところで「別のキー」になってしまい、メインとハンドルロック&ヘルメットホルダーが異なる2本キー仕様になってしまう場合もある(以前に購入した中古車で3本キー仕様もあった)。正直なお話し、80年代前半以前に誕生したモデル用部品なら、ベテランサンメカなら分解メンテナンスできるシンプルな構造も多い。しかし、空前のオートバイブーム以降(80年代前半以降)に登場したバイク用のキーは、盗難防止対策を含めて様々なハードルがあり、そうは簡単かつ思い通りに分解修理できないものが多い。そんなモデルのキー修理は、キー専門の業者に依頼することもできるが、必ずしもすべてのトラブルを修理できるとは限らないことも知っておきたい。

ぼく自身、70年代以前に誕生したモデルのメインキーボディは、何度か分解メンテナンスしたことがある。キーをひねったとたんにフューズが飛ぶとか、キーを捻ってもニュートラルランプが点灯しないので、キーONの状態でキーの根元をクククッと揺らしたら、ニュートラルランプが点灯……。そんな症状が出たときには、メインキーの裏側をバラして、ハーネス接点のコンディション確認を行うようにしている。

ちなみに、キーをONにしたとたんに「フューズが飛ぶ」と言ったトラブルの原因は、電装回路内で電源の「+線」が、キーON操作と同時にダイレクトにアース落ち(地落)する際の起こる症状が多い。そのトラブル箇所が、車体側のメインハーネスや各スイッチ類のどこにあるのか?もしくはメインキー内のハーネス接点にあるのか……。仮に、その原因がキーボディ内の接点にあったとしたら、キー接点の分解メンテナンスで修理することもできる。

過去に経験した実例の中には、走行中に突然エンストするトラブルがあった。もちろんメインキーはONの状態。路肩に寄って停車して、ギヤをニートラルにしても、緑色のニュートラルランプが点灯しなかった。あれっ!?と思い、キーONのポジションでキー根元をククッと揺すったところ、ニュートラルランプが点灯。その後は、難なくエンジン始動もできた。このトラブルの原因は、メインキー接点の接触不良だった。どうにか帰宅した後にメインキーの裏側を分解。銅板プレス部品のスライド接点=突起部分が摩耗していたので、接点の裏側からポンチで突起を僅かに叩いて押し出し、接点の当りを強めて腐食防止と給電用のグリスを少量塗布してから復元。するとその後は、トラブルフリーを取り戻してくれた。

今回分解メンテナンスしたのは、70年代のスーパーカブ用純正キーボディ。キーONにしてもニュートラルランプが点灯したり、しなかったりがあったので、ボディ裏側のハーネス接点の洗浄とケミカルの塗布を行い、締め付け座のアース坂のハンダを新たに行ったところ、その後は、不調にならず作動性は良好を持続している。

このような単純構造のメインキーなら、クリーニング&メンテナンスが可能なことも多いので、旧車好きサンメカさんには、部品交換前の修理にもチャレンジしてほしい。

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コメント一覧
  1. 匿名 より:

    プラ爪じゃないタイプだとベースの基板ごとポッキリ行ったことがあるから怖い・・・

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