ディスクブレーキ車のブレーキフルードは2年に一度の定期交換が必要。そう分かっていても、マスターシリンダーからフルードを送りながらブリーダープラグを開け閉めする作業は結構面倒です。そんな時に重宝するのがワンウェイバルブとボトルがセットになったワンマンブリーダー。これがあれば、バイクはもちろん自動車のブレーキフルードも一人で交換できます。
ブリーダープラグに手が届かなければエア抜きもできない
これは工具ショップのストレートが販売しているブレーキブリーダーボトル。抜けたフルードを溜めるボトルは適度な重量により倒れづらく、キャップのフックによって車体に引っ掛けておくこともできる。
マスターシリンダーやブレーキキャリパーのオーバーホール時はもちろん、分解作業を伴わなくても定期的な交換が必要なのがブレーキフルードです。制動時にブレーキパッドを通じて加熱されても沸騰せず、気泡を生じさせないことが重要なブレーキフルードは、その性能を維持するために2年ごとに交換するよう指定されています。
ブレーキフルードの交換では、キャリパーやマスターシリンダーをオーバーホールするか否か、つまりブレーキフルードの経路内にエアーを混入させるか否かによって、作業の手間が大きく異なります。ブレーキ周りに触れたことのあるライダーはご存じの通り、マスターシリンダからブレーキホース、ブレーキキャリパーのどこかに空気が混入すると、これを取り除くにはそれなりの手間が掛かります。
液体のブレーキフルードは圧縮しても体積は変化しませんが、空気は圧力を加えると体積が小さくなるため、ブレーキレバーやペダルを操作してもフルードの液圧がスポイルされてパッドを動かすことができず、そのためブレーキの効きが悪くなったり、そもそも利かなくなってしまいます。
したがって、キャリパーやマスターシリンダーのオーバーホールを伴わない、単純にブレーキフルードの入れ替えだけを行う場合は、キャリパー側のブリーダープラグからフルードを抜きながら、マスターシリンダーのリザーバータンクを空にしないよう継ぎ足しつつ、徐々にフルードを交換するのが定石となっています。
そのような場合でも、ブリーダープラグはレバーを握ってブレーキ経路内に圧力が掛かっている間に開け締めを行い、締めた後にレバーから手を離す作業を繰り返さなくてはなりません。ブレーキレバーやペダルから手や足を離してマスターシリンダーのピストンが戻ると、ブレーキホースやキャリパー内のフルードがマスター側に逆流し、ブリーダープラグが開いていると空気を吸い込む可能性があるからです。
フルードの入れ替えやエアー抜き作業を二人で行う際は、マスター側とキャリパー側に分かれて声を掛け合い、タイミングを合わせてレバーとブリーダープラグを操作することができます。しかし一人で作業する場合、フロントブレーキの左キャリパーなど、レバーとブリーダープラグを同時に操作できない場合もあります。それでもバイクならどうにかできる可能性はありますが、自動車の場合、運転席でブレーキペダルを踏みながらタイヤハウス内のキャリパーに触れることは不可能です。
- ポイント1・マスターシリンダーやブレーキキャリパーをオーバーホールしていなくても、ブレーキフルードの定期交換は必要
- ポイント2・ブリーダープラグの開け締めを伴うフルード交換やエアー抜き作業を一人で行うのは難しい
ワンウェイバルブがあればブリーダープラグは開けっ放しでもOK
ブリーダープラグを緩めたままでフルードやエアーの逆流を防止するカギがワンウェイバルブ(上の部品)。下の黒い部品はブリーダープラグに差し込むアダプターで、プラグの突起を差し込むと抜けづらい形状となっている。ホースを柔軟性のあるシリコンゴムとすることで、ブリーダープラグからワンウェイバルブ入り口の圧力の変化に応じて収縮し、フルードやエアーの逆流を防止する。
ブリーダープラグにアダプターを差し込んだら、フルードやエアーを排出できる範囲でプラグを最小限だけ緩めて、マスターシリンダーから新しいフルードを注入する。ワンウェイバルブが逆流を防いでくれるので、ブリーダープラグを緩めたまま連続的に排出できる。
そんな時に重宝するのが液体や気体を一方通行で流すことができるワンウェイバルブです。バルブ自体は1個数百円で手軽に購入できる部品ですが、ブリーダープラグにつなげばフルード入れ替えやエアー抜きが劇的に楽になります。
最大の特長は、フルード注入時のブリーダープラグの開け締めが不要になることです。ブレーキレバーを握ってマスターシリンダーから押し出されたフルードやエアーはレバーを離すと逆流しようとしますが、ブリーダープラグにつながったワンウェイバルブのおかげでキャリパー内に戻ることができず、次にレバーを握った際にさらに押し出されます。この動作を繰り返すことで、ブレーキフルードやエアーは排出一方となり、ブリーダープラグを緩めたままでもフルード交換やエアー抜きが可能となります。
一般的に、ブレーキホースやキャリパー内にエアーが溜まった状態でフルードを送り込もうとしてもエアーが圧縮と膨張を繰り返すばかりでフルードは入りづらいものです。そのためブリーダープラグ側からマスターシリンダーに向けてシリンジでブレーキフルードを押し込む逆送式もポピュラーになっているほどです。
しかしここでもワンウェイバルブを使えば、ブレーキホースやキャリパー内にエアーが溜まっていてもマスターシリンダー側からフルードを注入することが可能です。この場合、ブリーダープラグとワンウェイバルブを繋ぐチューブに柔軟性のあるシリコンゴムを使い、ブリーダープラグとチューブの接続部から空気の出入りがないようにすることが重要です。
こうした機能を一体化したワンマンブリーダーも商品化されており、これを活用することでブレーキフルード交換やエアー抜きが作業者一人でも容易に実践できるようになります。
- ポイント1・ブレーキフルードやエアーを一方通行にするワンウェイバルブがあれば、ブレーキメンテナンスの作業性は大幅に向上する
- ポイント2・ワンウェイバルブやシリコンホース、フルードを受けるボトルなどをセットにしたワンマンブリーダーも販売されている
ワンマンブリーダーはバイクで便利、クルマにとっては必需品
レバー操作とブリーダープラグ開け締めの連動を図ることなく、リザーバータンクの残量を気にしながらレバーを握り続けるだけでブレーキフルードの入れ替えができるのは圧倒的に楽。ブリーダープラグを緩めたままでエアーが抜けるのか?と疑うかもしれないが、プラグの緩め量が適切ならばエアーが抜けると同時にレバーへの手応えがグッと硬くなる。
ワンマンブリーダーの有り難みは自動車のブレーキフルード入れ替えで実感できる。右ハンドル車でマスターシリンダーから一番遠い左後輪のキャリパーのフルード交換は、二人でも大声を掛け合わないと作業のタイミングが合いづらいが、ワンマンブリーダーを取り付けておけばリザーブタンクの残量を確認しながらブレーキペダルを踏み続けるだけで交換が完了する。
ワンマンブリーダーを使用する際は、ブリーダープラグを緩めたままでもブレーキフルードやエアーの逆流を防ぐことができます。しかしブリーダープラグとキャリパー側の雌ネジの隙間からフルードが漏れたりエアーを吸い込むことがないよう、プラグの緩め量は最小限にするのがポイントです。
プラグの緩め量によってフルードの排出量は増減し、ブレーキレバーを握った際の重さも変化します。緩め量を増やせばレバーのストロークは軽くなり多量のフルードを押し出すことができますが、ネジ部分からのフルード漏れやエアー吸い込みの可能性も大きくなります。それを軽減するためにブリーダープラグの根元とキャリパーにシール剤代わりにシリコングリスを塗布する例もありますが、プラグの緩め量を最小限にすればグリスを塗らなくてもフルードが漏れることはありません。
むしろ、ブレーキレバーを握る際に抵抗を感じるぐらいの緩め量に止めておく方が、ホースやキャリパー内のエアーを効率的に圧縮できて排出しやすくなるという効能もあります。
ワンマンブリーダーはバイクで重宝するのは間違いありませんが、自動車のブレーキメンテでは必需品と言っても過言ではありません。バイクに比べてブレーキ配管の長さが圧倒的に長く、後輪用のホースやキャリパーに溜まったエアーを押し出すのは本当に面倒ですが、ワンマンブリーダーがあればフルード交換とエアー抜きが確実に行えます。レバータッチがイマイチだけど仕方ないか、と妥協できないのがブレーキメンテです。一人で作業を行う場合は、エアーが抜けずに泥沼にはまる前にワンマンブリーダーを用意しておくことをおすすめします。
- ポイント1・ブリーダープラグにワンマンブリーダーを接続すれば、フルード注入からエアー抜きまでプラグを開け締めすることなく作業できる
- ポイント2・バイクでも有効だが、自動車のブレーキメンテではワンマンブリーダーが必須
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最近ほぼ標準装備のABS付きも、そんなに簡単に交換可能なのでしょうか?
車両の電源オフで交換するんでしょ?
ABS関係なくね?
電源オフもなにも、車輪が回ってない(回転差が発生してない)のにABSは関係ないね
ブレーキ踏むと必ずいつもABSが働いてると思ってるのかな
OBD使う場合でもセルフでも
ブレーキフルード交換するのに
ABSは関係ないですよ。
便利なツールを使う事に
抵抗や不安ごあるのならば
車種毎のマニュアル通りに
フルード交換とエア抜きを
しましょう。
昔、会社の車屋さんで働いていたけど、エンジンかけてエアー抜きしていたなー。なんでも、エアーの抜けが悪いんだって!でも国産ディーラーに勤めてた仲間に聞いたら、エンジン停止で大丈夫!って言っていた。ブレーキはプロに任せた方が良いと思うよ。