スイッチ接点の汚れや腐食、それら影響によって進行する接点摩耗などなど……。細部コンディションの悪化からスイッチ機能を損ねている電装部品は意外と多い。特に、ハンドルスイッチやメインキーの電気接点は、長年に渡る走りで不良を起こしやすい部品としても知られている。ここではハンドルスイッチのレストアにチャレンジしてみよう。

鍋釜利用の「ゆで洗浄」という手段



中性洗剤を少量混ぜて釜茹で洗浄

作動性がイマイチで機能的にも満足できなかった旧車用ハンドルスイッチはまるごと洗浄。もちろんその後の分解クリーニングを想定した上での作業手順だ。沸騰させる必要は無く、中性洗剤や洗浄液を混ぜた水をコンロで温め、50℃前後で十分に高い洗浄効果を得ることができる。5分程度茹でたら、ハーネス周りのクリーニングから始めよう。

スイッチ内部は分解前にエアーブロー

作業進行内容にもよるが、まずは洗浄後のスイッチハウジングを冷やしつつ、ノズル先端が細いエアーガンを利用して、内部の汚れや油分を完全に吹き飛ばそう。油やグリスが落ちきっていない部分は、パーツクリーナーを併用することで確実にクリーニングすることができる。

劣化した保護チューブとテープを除去



レストア作業では、メインハーネスをどのように復活させるかが、大きな話題になることが多い。スイッチハーネスに関しても、作業手順は同じである。内部のコードが大丈夫でも、表面の保護チューブやテープがダメージを受けているケースも多い。逆に、保護カバー内部でハーネスが切れてしまっているトラブルも少なくない。ハーネスは汚れを落してからハーネステープを逆回しですべて剥がそう。ビニールの保護チューブはハサミで切開し、すべての保護カバーを除去しよう。内部のコード被服も汚れていることがわかるはずだ。 まな板のような作業板を準備して、汚れているハーネスに洗剤をスプレーして、ブラシでゴシゴシ洗浄しよう。かんたんマイペットのような家庭用洗剤がお勧めだ。洗浄後は、浮き出た汚れをウエスでしっかり拭き取ろう。

隠れた保護チューブ内側に断線発見!!



ステアリング操作で引っ張られ、保護カバーの下で、すでに切れていたハーネスを発見。こんなハーネスはつなぎ直すことで修復可能だ。この後、ストリッパーで被服を剥がして両端の導線を5mm程度露出させた。コードの端同士を結線する端子(スプライス)を使い、端子カシメ用専用プライヤーでしっかりカシメ固定する。さらにこの部分にハンダを流し込めば接続は完璧だ。結線後は収縮チューブを通してヒーターで炙り、保護皮膜を完全固定することで短絡の心配は無い。保護チューブやハーネステープを巻き付ける前には、コードに突っ張りが再発生しないか?充分な余裕があるか?(余裕があり過ぎてもいけない)、取り回しを再確認してからテープを巻き付けた。切れていた緑色コードは、不要な部分に余裕があったので、その余裕分を送り込むことで、切れた部分に余裕を作って再生復元した。

メインハーネスは分岐レイアウトが重要



メインハーネスの保護粗服にダメージがある場合は、旧チューブを除去してから新たな保護チューブやテープを利用して巻き付け直すことで、美しい仕上がりを得られる。保護カバーを除去することで、内部の断線やダメージの有無を目視確認できる。分解時には、コードの束や分岐の位置関係を崩さないようにタイラップで固定してから内部コードの被覆を洗浄&エアーブローしよう。風通しが良い場所なら、室内でも吊しておけばしっかり乾燥させることができる。乾燥したら新品保護チューブやテープを巻き付けて仕上げよう。ビニールチューブにハーネスを通したいときには、最低限のギボシ端子を外して、保護チューブにハーネスを通し直してからギボシ端子をカシメ直せば良い。保護テープには「ハーネス用」のビニールテープがお勧めだ。

POINT

  • ポイント1・スイッチや配線の修理時には、その不具合箇所だけを修繕するのではなく、ハーネス類をすべてクリーニングしよう
  • ポイント2・必要に応じて新品コードに張り直すことで、間違い無く機能を回復することができる
  • ポイント3・メインハーネスなどをリフレッシュする際には、コードの分岐ポイントを崩さないように作業進行しよう

トラブルの原因が「ハンドルスイッチにありそう?」だと感じたら、ハーネス結線を奇異線カプラやギボシ端子で抜き取り、テスターで配線間の導通チェックを行い、さらに各機能をスイッチングして動作通りに導通があるのかどうか?確認してみよう。仮に、導通確認できない場合は、スイッチ及び接点周辺に不具合があると考えられる。不具合時には正しく導通するように修理しなくてはいけない。新品部品に交換すればそれでOKかも知れないが、もはや部品を入手できないこともある。また、単純に機能すれば良いのなら、デザインがまったく異なっても、スイッチ機能が同じ部品を見つけて、配線の差し換えや取り回し変更で何とかなってしまうこともある(純正流用などなど)。しかし、それだけでは終わらせたくないのが、旧車ファンのサンデーメカニックだろう。

スイッチ内部の汚れやサビが気になる時には、単純にパーツクリーナーを吹き付け、内部の汚れを洗い流すこともできる。しかし、ある程度しっかり内部パーツを洗浄し、ハーネスコンディションを総点検する気持ちがあるのなら、お湯を沸かした鍋や釜にスイッチを沈め「茹で洗浄」するのが実は有効な手段なのだ。水では落ちにくい汚れでも、お湯+中性洗剤を温めて利用することで、驚くほど汚れがキレイに落ち、その後の修復再生作業をスムーズに行うことができるようになるのだ。

各スイッチノブは動くけど、カチッとした節度が無く、スイッチ作動時には粘り感が…と言ったことある。そんな症状時は、スイッチ周辺を徹底的に脱脂洗浄し、可動部分に適切なグリスや接点保護スプレーを吹き付けるなど行うことで、作動性が向上し、スイッチ節度が回復することもある。汚れ落としを行っただけなのに、接点機能が回復し、思い通りの導通を得られるケースも少なくない。

スイッチ可動部が金属部品なら、洗浄後にグリスを適量塗布することで、作動性の向上と防錆効果を同時に得ることができる。グリスやケミカルを多く塗り過ぎてしまうと、逆に汚れやゴミを寄せてしまう結果にもなるので注意が必要だ。樹脂部品が作動性に関係している場合は、樹脂素材の変質防止を考え「シリコン系グリスやラバーグリス」を適量塗布するのが良いだろう。

メインハーネスやサブハーネスが汚れていて、カチカチに劣化しているときや、明らかに配線コードに導通不良があるときには、ハーネスカバーを除去して内部の配線コードのコンディションを目視確認してみよう。ビニール製の保護チューブやハーネステープが劣化していて、ハーネスとしてはカチカチで弾力性を無くしていても、実は、内部の配線コードには弾力性があり、まだまだ利用可能=大丈夫なケースも多い。

今回は、ハンドル操作によって突っ張ってしまっていた配線一箇所が完全に切れているのを発見。切れた患部のコード両端被覆を剥がしてみたら、内部銅線のコンディションは良く、テスターで通電確認もできたので、スプライスと呼ばれる銅線接続端子で配線を結線。その後、結線端子周辺を覆い隠すように熱収縮チューブを通してヒーターで温めて保護を施した。その後、ハーネステープでコードを密にグルグル巻きにして、柔軟性のあるスイッチハーネスを再生することができた。端子コンディションが良くない場合は、オスメス端子とそれぞれの端子用ビニール保護カバーを新品部品に交換すれば良い。

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