
接着剤の世界もその進化は目覚ましい。最近の傾向では、似たような商品に見えても、ある用途に関しては、特化した特性を持つ商品も発売されている。バイク関連部品の補修時に、高性能を発揮するとしてサンメカから高く評価されている商品もある。バイクの部品と言えば、耐熱、耐振動、耐水(防水)の3要素に対して、ストロングな性能でなくてはいけないが、硬化後でも弾力性がある商品を利用することで、様々な場面で使い勝手の幅が拡がる。シート表皮の破れを補修する時でも、弾力性は力強い味方になるはずだ。ここでは市販接着剤の使い方「より確実な接着」を目指したテクニックをリポートしよう。
目次
プラスチック部品の接着こそ瞬間接着剤
裂けるように傷口が開いたままになっている樹脂ウインカーのステー。無理にねじって裂けて開いてしまい、そのままの状態で放置されていたのではないか!?接着作業の基本は患部の脱脂洗浄から開始。綿棒にパーツクリーナーやアルコールを染み込ませて、割れた隙間の汚れをしっかり除去しよう。そして、瞬間接着剤を適量塗布する。この瞬間接着剤にも様々なタイプがあるが、液タイプとジェルタイプは使い分けることでメンテナンスの幅が拡がるはずだ。
マルチクランプの利用で部品形状を再現
様々な用途で利用することができるハンディ万力のようなマルチクランプは、持っていると大変便利だ。例えば、クラッチレバーを握りっぱなしにしたり、簡易的にブレーキレバーを握って固定することもできる。ここでは変形してしまい、患部が開いてしまったウインカーステーの形状をクランプで押し付けることで修正(復元)している。戻りが悪い場合は、この状態でヒートガンを利用して部品を温めても良い。
接着スピードが瞬間!!凝固促進剤がいい!!
長年広がっていた患部をマルチクランプで閉じて押し付けることで形状は戻すことができる。しかし、形状は復元できても亀裂患部が接着されたわけではない。条件が揃っていないと、実はなかなか瞬間接着してくれないのが瞬間接着剤でもある。そんな文字通りの「瞬間接着」を可能にするのが、瞬間接着剤凝固促進剤である。瞬間接着剤を使ったが、流れ落ちてしまったり、なかなか接着できない経験をしたことがあるサンメカがこの商品を使うと、おそらく誰もが驚くはずだ。音を発しながら熱を帯び、化学反応で接着される様子を目の当たりにできる。瞬間接着剤とセットで手元にあることで、反応スピードをコントロールすることができる。様々なメーカーから発売されているが、業務用の大きなサイズの商品が多い。
クラック発見!!バラバラになる前に修理
ウインカーレンズのエッジに欠けがあり、ごく僅かにヒビが入っていたので、綿棒+パーツクリーナーで患部と周辺を脱脂し、欠けた部分に瞬間接着剤を塗布。流れ落ちやすい時には、ジェル状を利用しても良い。ウインカーやテールなどのアクリル系部品に対する瞬間接着剤の相性は特に良く、欠落部分などは肉盛り接着することで形状再生も可能なケースがある。
凝固促進剤の吹き付け過ぎは良くない
凝固促進剤を初めて利用するときには、瞬間接着剤をクリアファイルの上などに塗布して、試し吹きをすることでその様子を窺い知ることができる。一気に吹き付けると一気に硬化し、接着剤が泡を吹くかのように硬化してしまい、見た目が良く仕上がらないことがある。スプレー時は、フワッと軽く吹き付けるのがベストだが、細かな霧状にしにくい際には、ティッシュに凝固促進剤をスプレーして、患部の上にかざして息を吹き付けることで、無駄に多く吹き付けることなく、理想的な凝固促進を行うことができる。
イグニッションコイルとコードの固定
高性能イグニッションコイルの中には、ハイテンションコード(プラグコード)を別途接続するタイプがある。そんなイグニッションコイルとコードの抜け止めや防水対応として性能発揮するのが、固着乾燥後でも弾力性が残る接着剤だ。
硬化後でも弾力性があるのが特徴
ハイテンションコードに接続金具をセットしたら、接着剤を塗布することなくIGコイルにコードをしっかり差込む。この作業で電気的には接続できているが、雨水やゴミの侵入によって金属接点が腐食することもあるので、ハイテンコードの抜け防止と防水を目的にコード差し込み口周辺を接着剤で覆う。
ポイント点火車の場合は、ポイントと並列でコンデンサを取り付けるが、コンデンサの配線接点部分をハンダで接続したら接着剤で接点全体を覆うのが良い。振動によるハンダ落ちを防止するのだ。こんな際にこそ、接着乾燥後に弾力性があるボントのウルトラ多用途SUやセメダインのスーパーXが最適だ。
- ポイント1・接着剤の特性を知った上で利用することで、想像した以上に良い仕事をしてくれるのが接着剤だ
- ポイント2・何かあったときに役立つのが接着剤なので、少量タイプを何種類も手元に持つことでイザというときに助かる
- ポイント3・封切りしたチューブは硬化しやすくなるためシャック付きビニール袋や密閉ケースに入れて冷蔵庫保管するのがベスト
現代のバイクはもちろん、70年代以降のバイクには、数多くのプラスチック製樹脂部品が使われている。経年劣化やオゾンクラック、マイクロクラックなどによって樹脂素材が変化し、仮に、接着修復し直しても、外的衝撃が加わるとまた再び「パリッ」と割れてしまう例は数多い。時には、文字通り「バラバラに!!」なんてこともある。しかし、そんな経年劣化がほぼ無かったり、ダメージが少ない樹脂部品であれば、修理再生が可能な場合もある(露点保管で直射日光を浴び続けた部品はボロボロになりやすい)。
プラスチック製樹脂素材と言っても様々なタイプがある。ウインカーレンズやテールレンズなど、アクリル系樹脂部品であれば、接着剤によっては「かなり高強度に修理再生」することができる。そんなアクリル系樹脂部品の修理時にお勧めしたいのが、みなさんご存じの「瞬間接着剤」だ。指先に付着した瞬間接着剤の強烈な接着力に驚いたことがあるサンメカは数多いと思うが、その一方で、修理したい患部に塗布しても「なかなか固まらなくて困った……」といった経験をしたこともあるサンデーメカニックもいるはず。
瞬間接着剤は、湿気に対して反応速度が変化する特性がある。それが指先(指紋などの小さな溝や湿気に影響)の接着速度に大きく影響するらしい。
そんな瞬間接着剤を上手に利用するための「補助ケミカル」として注目したいのが、瞬間接着剤凝固促進剤。流れ落ちてしまいそうな接着液でも、凝固促進剤をフワッと軽く吹き付けることで、驚きのスピードで完全硬化。やや厚めに盛りつけたような箇所では、ジジュッと音を立て、熱を発しながら、急速硬化するほどの促進力だ。硬化促進が早すぎるのも良くないので、そんなときには画像解説のように、ティッシュを介した促進作業方法を覚えておくのも良いだろう。
また、完全硬化しながらも、ゴムのような弾力性を持つ接着剤もある。このようなタイプは上手に利用することで、振動に対して強い特性を得ることができる。壊れた部品を修理するのに使うのが接着剤だが、このタイプなら振動除けのダンパー硬化も得ることができる。接着剤の特性を知り、使い分けることで、メンテナンスの幅を大きく広げることができる。機会があるときには、実践し、その効力を体感してみよう。
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