猛暑になるほど実感するのが水冷エンジンのありがたみです。最近のモデルはロングライフクーラントの交換スパンも長くなりメンテナンスの手間も軽減されていますが、決して無交換で良いわけではありません。むしろ冷却水交換の期間が長くなることで、冷却系統全般の点検が重要になっています。

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冷却水不足やエア混入も水温上昇の原因になる


スズキRG250ガンマ(1987年式)のラジエターは、冷却水がアッパータンクからロアタンクに向けて縦方向に流れるダウンフロー方式。これに対してタンクが左右に付き冷却水が横方向に流れるラジエターをクロスフロー方式と呼ぶ。リザーブタンクはラジエターの真上にある。機種によってはサイドカバーやシートレール部分に設置されている場合もある。

昔のアニメや映画で自動車がトラブルを起こす際に決まって描かれていたのが、エンジンルームから盛大に白い煙を吹き出すオーバーヒートの場面でした。煙だと思ったのは、冷却系統で加圧された冷却水が何らかの理由で大気中に漏れて大気圧下で沸騰して発生する水蒸気だったわけですが、今ではそうしたトラブルもめっきり少なくなっているようです。

自動車とバイクのロードサービスを行うJAFの出動理由の統計データを見ても、冷却系統のトラブルで出動した実績はトップ10までに入っていません。これは真夏のノロノロ運転でもオーバーヒートを起こさないよう、エンジンルームやカウル内の空気の流れまで含めて設計された冷却系統の優秀さのおかげといえるでしょう。

冷却水自体の寿命も長くなっており、かつては2年ごとの交換が一般的でしたが、現在では1回目が5年目、2回目以降は4年ごとという指定も珍しくありません。車検付きのバイクや自動車に当てはめると、新車から2度目の車検時の5年で最初の交換を行い、その後は車検2回で1回の交換となります。メンテナンスに興味がなければ、冷却系統自体を意識する機会そのものが減少していると言えるでしょう。

しかしながら、走行風頼みの空冷エンジンと違って、エンジンが掛かっている間は絶えずウォーターポンプで冷却水を循環させている水冷エンジンの冷却系統は、完全にメンテナンスフリーというわけにはいきません。スパンは長くなったとはいえ冷却水の定期交換は必要ですし、以前の記事のように、ウォーターポンプのメカニカルシールの不具合によって冷却水漏れを起こす場合もあります。

それ以外にも、ラジエターとホースでつながるリザーブタンクの液量が減少して冷却系統にエアが混入すると、ブレーキフルードがエア噛みを起こした時と同様に冷却液の流れが悪くなって水温が上昇することがあります。また冷却水の温度によって冷却通路を切り替えるサーモスタットが開かなければ水温が上がりすぎ、逆に開いたまま閉じなければ水温が上がりにくいというトラブルの原因となります。

こうしたことを考えると、良くも悪くも冷却水の交換時期やリザーブタンクの液量に注意を払う機会が減っているからこそ、トラブルが発生した時に慌てることになるとも言えます。2年に1度の交換が4年に延びたことでメンテナンスの手間が減ったのは確かですが、適切な手入れを怠ると思わぬしっぺ返しを食らう可能性もあることを忘れない方が良いでしょう。

POINT

  • ポイント1・冷却水の交換スパンが長くなることで、冷却系統全般に対するメンテナンスの意識が低下する傾向にある
  • ポイント2・冷却水の減少やエア混入が水温上昇の原因になり、放置すればエンジン本体のトラブルにもつながる危険性がある

ラジエター本体だけでなく周辺部品のチェックも重要


ウォーターポンプのドレンボルトを外して排出された冷却水が正しくロングライフクーラント(LLC)であり、なおかつ透明感があったのでひと安心。サビ混じりの茶色の水道水が出てきたら、ラジエターもホースもすべて取り外して洗浄しなくてはならない。


ラジエター注入口から水道のホースを突っ込んでラジエター内部をすすぐ。この作業によってラジエターのチューブ、ロアタンクからウォーターポンプまでの経路は洗浄できるが、ラジエターアッパーホースからシリンダーヘッド部分にあるサーモスタットの経路は洗浄できない。冷間時はサーモスタットが閉じているので、ここで行き止まりになってしまうからだ。ラジエターからホースの水を突っ込んでサーモスタットケースからシリンダー周辺をフラッシングするには、サーモスタットをケースから取り外して、空にしてから水を流すと良い。

冷却水を交換する際は、自動車の場合はラジエター本体下部のドレンから、バイクの場合はウォーターポンプのドレンボルトを外して排出するのが一般的です。これはそれぞれその部分が最も低い位置にあり、重力によって自然に抜けやすいためです。

しかしドレン部分から抜くだけでは充分とはいえないこともあります。冷却水にロングライフクーラントを使わず水道水を入れるなど管理が悪く、ラジエターに水あかが溜まっている場合、ウォーターポンプから抜いただけではラジエターの汚れが取れないこともあります。

新車から数年のバイクならそのようなことは少ないですが、1980年代や90年代の絶版車で複数のオーナーの手を経てきているバイクの場合、途中でどんな扱いを受けてきたかは分かりません。実際、ウォーターポンプのドレンボルト部分から排出される冷却水は透明でも、ラジエター本体にホースから水道水を入れて圧力を加えると汚泥やサビ混じりの茶色の水が吐き出されることも珍しくありません。

ラジエターとエンジン、サーモスタットハウジングとウォーターポンプをつなぐホース類も同様で、ゴムの割に硬いと思いながら握ったホースの内側が一面サビ水でコーティングされていたり、逆にブヨブヨに劣化して加圧により破裂寸前だったという例もあります。ホース同士の接続部分に使われているスチール製パイプもサビに弱く、ロングライフクーラントではなく水道水を使っているとサビが進行し、それが冷却系統全般に回るのはもちろんのこと、パイプ自体に穴が開くトラブルにつながる場合もあります。

またラジエターとウォーターポンプに高低差が少ないスクーターの場合、ラジエターキャップから冷却系統内にコンプレッサーのエアーを送り込んで排出を促すのも有効です。ただし冷間時はサーモスタットが閉じているので、送り込んだエアーはラジエターのロアホースからウォーターポンプには有効ですが、サーモスタットからラジエターアッパーホース区間に残った冷却水を押し出すために万全かといえば、必ずしもそうとはいえません。

シリンダーのウオータージャケットやアッパーホースまで洗浄しようとすれば、広範囲に渡る部品の着脱が必要となります。しかしそこまで徹底的に洗浄を行えば、冷却系統の効率回復も期待できます。

POINT

  • ポイント1・冷却水交換の際には、ラジエターやサーモスタットなどの周辺パーツも同時に洗浄すると良い
  • ポイント2・スポーツバイクとスクーターでは、同じ冷却系統でも冷却水の抜けやすさが異なる

新しい冷却水を注入した後は必ずエア抜きをする


排出された冷却水に濁りはなかったが、ラジエター本体の洗浄も行うため取り外す。冷却水を上下に流すチューブがすべて開通していれば良いが、サビや汚れが詰まると冷却効果が低下する。クロスフロー方式のラジエターの場合、下部から数本のチューブが完全に閉塞していても冷却水は循環するので、不具合に気づきづらいこともある。


リザーブタンクが汚れていると冷却水の残量が見えづらいので、冷却水交換に合わせて細いブラシなどで洗浄しておく。冷却水に水道水を使っていると、茶色のさび色で変色していることもある。


取り外したサーモスタットには薄い塗膜片のようなものがびっしり付着していた。原因を探ると、どうやらウォーターポンプハウジング内部の塗膜であることが判明。この程度の異物ならサーモスタットの機能に影響を与える可能性は低いだろうが、除去しておいた方が良いのは言うまでもない。これは単にウォーターポンプのドレンから抜くだけでは見つからなかったので、結果として開けて正解ということになる。

ここで紹介するスズキRG250ガンマの場合、1987年式と古いため冷却経路内は相当汚れていると予想していましたが、走行距離が5000km未満と少ないことが幸いしてか、排出した冷却水は濁りもなくきれいな状態でした。

ただしサーモスタットにはウォーターポンプハウジング内から剥離したと思われる塗装片がいくつも付着していました。幸い冷却水の流れをコントロールするバルブに挟まっていなかったので冷間時は完全に閉じていましたが、もう少し大きな異物がバルブに挟まるとサーモスタットが閉じず、冷間時にも冷却水が循環してしまい、水温が上昇するまでに時間がかかるようになることもあります。

水冷エンジンは冷却面で有利なだけでなく、サーモスタットを閉じてシリンダー周辺に冷却水をとどめることで暖機を促進できるメリットもあります。冷間時はガソリンの霧化を促進するため、シリンダーや燃焼室の温度をある程度上昇させるのが有効であり、サーモスタットで閉じた冷却系はその目的にも適しているのです。かつては、常にオーバーヒート気味のエンジンの場合、サーモスタットを取り外してしまうという手段もありました。

エンジンチューニングによって発熱量が増してヒート気味になることもありますが、先に説明したようにラジエター本体の目詰まりにより放熱能力が低下した結果、オーバーヒート気味になっている可能性もあるので、サーモスタットを外す前に冷却系統全般の洗浄を行った方が良いかもしれません。

新しい冷却水を注入する際には、ホースやラジエター、サーモスタットケースなどに空気が残らないようエア抜きを行うことが重要です。冒頭で触れたように、冷却系統にエアが混入していると冷却水の流れが阻害され、水温上昇の原因となるからです。冷却水を入れた直後に始動する際にラジエターキャップを開けておくのは、キャップを開けて冷却系統を大気圧にすることでエアの排出を促進するためです。エアが残っているのにラジエターキャップを閉じてしまうと空気の逃げ場がなくなり、水温の上昇とともに膨張して水の流れをせき止めてしまいます。したがって、暖機中にラジエターキャップ部分からボコボコと泡を吹き出すことがあっても、最初に排出しておくことが重要です。

機種によっては、サーモスタットケースにエア抜き用のボルトが装着されていることもあります。ラジエターから注入した冷却水はロアホースからウォーターポンプまではスムーズに流れますが、アッパーホースからサーモスタットケースに流れる分はサーモスタット部分で行き止まりになっています。ここでサーモスタットケースのエア抜きボルトを外すことで、アッパーホースから勢いよく流れる冷却水がサーモスタットケース内のエアを押し出し、エンジン始動後の暖機エア抜きも短時間で完了します。

水温計の針の動きが大きくなる真夏だからこそ、快調に走りつづけるための冷却水交換を行うのが良いのではないでしょうか。

POINT

  • ポイント1・新しい冷却水を注入する際はホースやラジエター本体にエア溜まりを残さないことが重要
  • ポイント2・ラジエターアッパーホースにつながるサーモスタットケースにエア抜き機能がある場合は、冷間時にエア抜きを行っておく

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