各種オイルなどの油脂用ではなく、各種薬品用として利用される機会が多いのが、グレーやブルーや茶色などに着色された樹脂製の液体容器=ドラム缶だ。この容器を使って作るのは、小物部品などのペイントに使うことができるペイントブース。その「ブース本体」として使える可能性を秘めているのが、薬品用の樹脂製廃ドラム缶である。ネットオークションで購入した廃品の樹脂製ドラム缶は、200リットルサイズのものだが、鉄製のドラム缶と比べると驚くほど軽く、大人ひとりで楽々持ち上げることができる優れもの!?だった。

筒状だからこそ高効率なサイクロン吸引式に……

斜流ファンと呼ばれるインラインファンで吸引することで、ペイントミストはスムーズにフィルターへ吸着!!されるはず。円筒型ブースの形状を生かしたサイクロン吸引にできれば、想像以上に高い吸引効果を発揮するはず!?実践するしか無い。斜流ファンは100V電源。おそらく焼き肉屋さんなどで使っているあれかも……。ファンもネットオークションで購入した。

フィルターは「梅干ザル」の上にセット

フィルターはホームセンターで購入した切売りの業務用。ドラム缶内径サイズと同じ梅干作り用のザルがあったので、そのザルを開口部からセットできるように金具を取り付け、切売りフィルターをザルの上へ載せてみた。

アルミ蛇腹サイズに合せて穴加工



Φ150mmの吸引ダクトはアルミ蛇腹製るこれもホームセンターで購入した。円筒ブースに対して90度フィッティングを介して直角にホースを取り付けた。それでも想像以上のサイクロン効果を確認!!たばこは吸わないので、蚊取り線香の煙で確認してみた。だったら、より効果的にサイクロン効果を生み出せるような改造をしようと考えた。こんな感じでファンを接続して吸引すれば、ガレージ屋内でペイントし、排気は屋外に出せる。降雨日でも作業進行可能だ。

蛇腹ホースの接続フィッティングを改造





最初は何も考えずにストレートフィッティングを取り付け、煙の吸引テストを実施。その後、90度にベンドされたダクト金具をホームセンターで追加購入し、円筒キャビネット内側から差し込んでみた。その後さらに、サイクロン気流を効率良く起こしそうな角度で90度ダクトをカット。カット時にはパイプ形状が潰れないように注意した。

ペイント部品を載せるための金網台を設置



小物部品のペイント時には、上から吊る?もしくは部品置き台を作って、吹き付け作業しやすくしなくてはいけないが、今回は100均ネットを利用して、取り外し可能なネット型ペイント台を取り付けることにした。このネットの上にさらに回転台をセットすることで、部品を回しながら吹き付け作業を進めることができる。

切り抜いたドラム缶筒の「キリ抜き」部を利用



樹脂ドラム缶の円筒部分に窓を開けるようなカットを施し(樹脂用ディスクグラインダーとエアーソーを利用した)、その窓部分にペイント台を取り付けた。空気の流れをより良くするのと、この道具を利用しないときの整理整頓用(ドラムの中にダクトや斜流ファンを格納するため)として、切り取ったフタをドラム缶に蝶番で取れ付けて開閉可能式に。閉じたときの固定フックも取り付けて、使い勝手を向上させてみた。

小物部品用ペイントブースをイメージ!!



ドラム内径にドンピシャサイズの篭ザル(梅干し用)をセットして、その上にコンポジットフィルターを丸くカットして敷くことで、ペイントミストフィルターとして立派に機能することを確認した。

事ある毎に使っている「簡易ペイントブース」

バイクのレストアやカスタムをDIYで楽しんでいると、缶スプレーや時にはペイントガンでパーツを塗装したくなることがよくある。そんなときに引っ張り出して、利用しているのがこのペイントブースだ。100均ネットのペイント台の上には、回転型で自作の小型テーブルを置き、手でクルクル回しながらDIYペイントを楽しんでいる

POINT

  • ポイント1・ ちょっとした小物部品をペイントするにも、簡易ペイントブースがあるだけで作業性も仕上がりもグッと良くなる
  • ポイント2・ 樹脂製ドラム缶はそもそも廃品だったものらしい。見つけさえすれば格安購入も可能なようだ
  • ポイント3・ 繊維状のコンポジットフィルターでペイントミストを濾過することで、ダクト通過後の排気時にはペイントミストも極少量になる

この簡易ペイントブースを作った当時、樹脂製の中古ドラム缶は3000円前後で購入可能だった。φ150mm口径の斜流ファンは、新品ながら余り物(ハンパ部品)らしく1万円ほどで購入することができた(すべてインターネットオークションを利用)。そんな簡易ブース本体に対して、アルミ製のφ150mm蛇腹ダクトやジョイントなどの関連部品を始め、コンポジットフィルター(ロール巻き商品を10cm単位の寸法切りで購入)やフィルターを受けるフレーム(梅干しザル)や、ブース内に取り付けるLED照明などは、ホームセンターで購入した。気になる総製作費用はおよそ2万円前後だった。

今回は、運良く好タイミングで必要な部品が見つけ出すことができたので良かったが、このような「簡易ペイントブース」を製作したいと思ったら、日頃から不要品や廃品を探しておくのが良いだろう。

実製作にあたっては、プロ向けのペイント設備やインフラ関連設備の開発・製作・販売を手掛ける、愛知県のカーベックさんから様々なノウハウをお聴きすることができた。もっとも重要なのは、ペイントミストを高効率でダクト外へ引き抜くことができる「サイクロン吸引」に関するノウハウだった。今や高性能掃除機では当たり前となったのがサイクロン吸引式。筒状やサイフォン形状になった容器の壁に添って気流を巻き起こすことで、効率の良い空気の流れを生み出すのがそれである。

この簡易ブーステストでは、ペイントミストの流れをしっかり目視することができるパウダーコーティングを試してみたが、ブース内を舞うパウダーが「蟻地獄」の如く!?渦巻き状に吸い込まれていく様は興味津々だった。まさに円筒状ボディの利点が、結果として表れたようだ。プロのノウハウはさすがに素晴らしい!!

ペイントブースがさらに使いやすくなればと考え、様々な改造を追加で施してみた。部品のペイント時には、回転ベースや部品を吊り下げるブラケットが必要不可欠だが、これらは過去に自作したペイントブース用から取り外して改造再利用。足りない部品は、100均ショップで購入。その甲斐あって、想像以上の使いやすさを得られたと実感。

例えば、フィルターの下側、吸引エリアとなる樹脂ドラム缶の中央には、太い塩ビパイプを立てることで、空気の流れが完全なドーナツ状になり、より効率良くサイクロン効果を得られるようになった。

そんなペイント環境で、キャブレターの「ボディ」をペイントしたところ、以前に自作したユニット換気扇改ペイントブースよりも、確実に高性能吸引を実現。その証拠が、作業後のマスクからも確認することができた。以前のブースではマスクにペイントミストが付着していたが、サイクロン吸引式ペイントブースにしてからは、マスクへのミスト付着は皆無!! さらに斜流ファンを通過した後に追加した、換気扇フィルターにも、ペイントミストが付着していないという驚きの結果を得ることもできた。

部品点数および吹き付け量が少なかったとしても、過去に実践したDIYペイント経験と比べ、考えられないほど効率良く働いてくれている樹脂ドラム缶改簡易ペイントブースには大満足。仮に小物部品であれば、ペイント後の「焼き付け乾燥」も可能である。圧倒的な耐溶剤性や耐ガソリン性に優れるガンコートを利用すれば、キャブレターボディのペイントも可能なのだ。このガンコートを完全乾燥させるには、しっかりした温度管理のもとで高温焼き付け乾燥が必要不可欠だが、そんなときに便利なのが、カーベックのCVジュニアである。DIYペイントの世界は本当に楽しい!!

取材協力:カーベック

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