エンジン始動後に暖機運転。アイドリングも落ち着き始めたので出発……。バイクを走らせるときには、ほぼそんな手順だろう。普段から走らせているバイクだと気がつかないことでも、普段とは違うバイクに跨がると、なんだか乗りにくい、なんかどこかが違う!?といった印象がある。それとは逆に、自分のバイクに触れた友人からの指摘で「初めて気が付いた!?」といったケースも中にはある。そんな「違和感あるある部品」のひとつにスロットルグリップの操作性がある。ここでは、スロットルグリップ周りの基本的な点検やメンテナンスに触れてみよう。

スロットルの空回しでスムーズに動くか否か!?

エンジン始動の前にスロットルグリップを捻り(回し)、操作性、作動性に違和感があったり、スムーズさに欠けていたりしないか?確認してみよう。スーっと開いて、パチッと戻れば操作感は良好だが、戻らなかったり、戻るのが遅い場合は、何らかの不具合があると考えて良いだろう。市販ロードバイクなら、キャブ仕様はもちろん、FI仕様でもスロットル操作はスムーズに作動して正解だ。

スロットルグリップを取り外してリアルに点検



ここで作業しているのは1970年代のスーパーカブ。一般的な「スロットルパイプ巻き取り式」ではなく、ハンドルバーの溝に添ってケーブルを作動させる「スライド式スロットル」モデル。転倒はもちろん、バイクが倒れたときや、外部からスロットルケーブルにダメージを与えないように考えられた作動システムである。スロットルパイプ(グリップを差し込む部品)のコンディションをしっかり確認したいため、ここではグリップを外してみた。パイプエンドを万力で固定し、細いマイナスドライバーをパイプとグリップの境界へ差し込み、そこへ防錆浸透スプレーを吹き付けて、接着を緩めグリップを抜き取った、万力でパイプを強くクランプし過ぎると変形してしまうため、アルミ製の口金を使って慎重に作業を進めた。プラスチック製スロットルパイプの時には、万力を使わずに素手でグリップを取り外そう。

単品部品の組み合わせで作動性を点検



スロットルパイプを単品にしたら、内部のグリス汚れをしっかり洗浄しよう。パイプの内側にはスパイラル状になった部品が溶接されているが、このスパイラル部品のコンディションが作動性に大きな影響を与える。ハウジングに仮固定状態でスロットルパイプがスムーズに動くか?スライドユニットを取り外してからハンドルパイプを洗浄。スロットルパイプとハウジングを仮固定し、パイプがスムーズに回転作動するか?確認してみよう。

スライドユニットを洗浄&グリスアップ



ハンドルパイプからスライドユニットを取り外し、部品1点1点をパーツクリーナーで洗浄して、各摺動部を凝視確認してみよう。部分的に摩耗痕があったり、バリが出ているようなときには、細目の平ヤスリや600番前後のサンドペーパーでダメージ部分を軽く磨こう。再度洗浄してからパーツ単品毎にグリスを塗布し、すべての部品を復元。さらに先が90度に曲がったピックアップツールでスライドスロットルがスムーズに作動するか?ツール先端を引っ掛けて作動させてみよう。スムーズにスライドし、キャブ側スプリングのチカラでスムーズに戻れば作動性は良好だ。

グリップは接着剤で確実に固定しよう

グリップラバーを復元するときには、グリップ内側をパーツクリーナーでしっかり洗浄し、スロットルパイプの表面もしっかり脱脂してからグリップ用接着剤を塗布してしっかり接着しよう。接着剤はタイプによって使い方が異なるため、使い方説明書を読んでから作業に入ろう。

グリップラバーの押込み過ぎには要注意

グリップラバーを接着復元する際の注意点は、グリップを奥まで押込み過ぎないことだろう。ハウジング寄りにあるグリップフランジが、ハウジング側面と接触してしまうとスロットルの回転抵抗となり、作動性が大きく低下してしまうのだ。ハウジング側面とグリップフランジの間には1~1.5ミリの隙間があるのが望ましい。機種によってはこの隙間にテフロンのスペーサーが入り、安定作動性を確保している例もある。ここでは、厚紙を2つ折りにして「コの時」にキリ抜き、その厚紙をハウジング側面にセット。その状態でグリップを奥まで押込んだ。作業後に厚紙を抜くことで、クリアランスは確保できる。

巻き取り式スロットルパイプも分解洗浄から



スロットルパイプのフランジにタイコを引っ掛けてフランジの溝にワイヤーを添わせる通常仕様のスロットルパイプ。作動性に違和感がある場合は、ハウジングからスロットルパイプ+グリップを取り外してパーツの徹底洗浄から始めよう。洗浄後、スロットルワイヤーをセットせずに部品を組み立て、スロットルパイプがスムーズに作動するか確認してみよう。スムーズかつ違和感無く作動していたのに「ワイヤーケーブルを復元すると作動性が今ひとつ……」といった場合は、キャブ側やケーブルに問題があると考えられる。

POINT

  • ポイント1・スロットル操作は乗り心地や安全性に直結するので、頻繁に作動性を点検しよう
  • ポイント2・各単品パーツの徹底洗浄と単品部品同士の作動性確認を行い、それからコンプリートの作動確認
  • ポイント3・ スロットルパイプ周りはグリスの塗りすぎに要注意。グリスの粘りが作動抵抗になるケースも多い

バイクに跨がりハンドルに手を添えると、スロットルを「パン、パンッ!!」と作動させたくなるものだ。加速ポンプ機能付キャブの場合は、その操作によってキャブから吸入ポートに向けてガソリンがジュジューッと吹き出すため、エンジン始動時にはプラグのカブリに要注意……。そんなお話、以前には数多くありましたね。

さて、そんなスロットルの作動性、操作性が悪いと、バイクを走らせていても違和感があり気持ち良いものではない。そんな違和感や明らかな作動不良があるのなら「ためらうことなくスロットルハウジングを分解」してみよう。分解した部品は徹底洗浄し、さらに現状の作動性を確認してみよう。ここで重要なことは、違和感や作動不良の原因を突き止めることだ。一般的に、スロットルの操作性不良には下記の問題が考えられる。

  • キャブスロットルバルブの作動性不良やリターンスプリングの張力低下。
  • スロットルワイヤーの作動性低下。
  • スロットルパイプ周辺の作動性不良。

などが考えられる。

ここで注目しているのは「スロットルパイプ周辺の作動性不良」である。
エンジン内部の部品交換や重整備とは異なり、比較的作業性が良いのと、メンテナンス後には明らかな違いを体感できる「充実のメンテナンス」でもあるため、スロットルの操作性に今ひとつ違和感があるときには、積極的な分解メンテナンスにチャレンジしていただければと思う。

スロットル周りの作動性改善メンテナンス中に、過去に何度か気が付いたのが「スロットルグリップラバーの取り付け」不備である。具体的には、グリップラバーを押込み過ぎてしまうことだ。グリップフランジがスロットルハウジングに押し付けられ、スロットルの回転作動にとっては「ブレーキ的役割」を果たしているケースがあるのだ。しっかりセットアップしてあったのに、走行中の入力で、気が付かないうちにグリップがズレてしまい、ハウジングへ押し付けられているケースもある。また、グリップラバーに対して、ハンドルバーエンドが突き抜けタイプではなく、クローズド型の場合 (オフロード車のような仕様) は、ハンドルバーエンドにスロットルパイプの内側が接触し、スロットル操作がスムーズに行われていないこともある。閉じ型スロットルパイプを組み付ける際には、奥まで押込み過ぎないようにセットアップすることが大切だ。

「動きが良くないから……」と、潤滑目的にオイルやグリスをたっぷり塗布してしまうと、使っているうちに、肝心の潤滑剤がゴミを寄せる結果になり、気がついたときにはネバネバになってしまい、作動性が低下しているケースも多々ある。ケミカルの塗布時は、塗り過ぎに十分注意しなくてはいけない。

スロットルハイプ周辺をメンテナンスしたのに、作動性が今ひとつの場合は、他の要素を再確認し、スロットル操作は軽快に行えるように心掛けよう。

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