カブ好きバイク仲間のガレージで偶然見掛けたC90デラックスは「かもめ」と呼ばれるハンドル形状が特徴の、型式C90K2、1974年製モデルだった。シートやマフラーが新品部品に交換されていたが、当時の年式相応純正部品を装着しており、そのフォルムはまさにドノーマル車。この時代のスーパーカブC50/C70には、先代モデルのボディ(ガソリンタンク別体式)を継承したSTD=スタンダードタイプと、ニューデザインのインナータンク式フレームになったDX=デラックスの2タイプのボディデザインがあった。さらにそれぞれのモデルに、セルスターター仕様車の「M」がラインナップされていた。ここでは、現状の車両コンディションを把握するべく、まずはチェックしておきたいポイントに注目してみよう。スーパーカブに限った確認点検ではなく、大型車から小型車まで、共通した点検項目であることを知っておきたい。

まずは外観をぐるりとひと回り



新品マフラーと新品シートに交換されていたスーパーカブC90K2の1974年式。部品交換されていても、年式相応のパーツが取り付けられていたのは、前オーナーさんのこだわりだろう。自賠責保険は切れていたが、普段からコンディション良く保っていたのは明らかだろう。タイヤを確認するときには、溝の深さ、サイドウォールへのヒビ割れ、トレッド溝底のヒビ割れ、サイドウォールにマークされているタイヤ製造年式を必ず読み取りたい。楕円枠の中にある4ケタの数字がタイヤの製造年式表記となる。仮に「3015」とあったら、下2ケタの「15」が「2015年」を示し、上2ケタの「30」は30週目となる。つまり元日から30週目なので、おおよそ5月の下旬に生産。総合すれば2015年の5月下旬に生産されたとなる。仮に下2桁が「91」なら、1991年に生産されたもの。タイヤの残溝量うんぬんではなく、未使用品でも古いタイヤは間違い無く性能低下している。

操縦安定性を左右する足周りのガタ



フロントならステアリングの要であるベアリング。リアならスイングアームピボットベアリングやブッシュが点検ポイントだ。それら可動部分にガタや作動不良が発生していると、走行中のハンドリングに大きな影響が出て、それはもう乗り難さの象徴となり現れる。ステムベアリングにガタがあったり、ボールレースに打痕があると作動性が著しく低下する。ハンドルを切って曲がるときや、ワダチを乗り越えて車線変更するときなどに、それはもう乗りにくさと強烈な違和感があるはずだ。メインスタンドや何らかの方法で前輪を持ち上げてフリーにし、スムーズにハンドルが左右に切れるか?途中で引っ掛かりやゴトゴト感が無いか?また、ハンドルを切ってタイヤを両手で押えて小刻みに揺することで、ステムベアリングのガタの有無を見極めることができる。リアタイヤもフリーの状態を保ち、同じようにタイヤ押えつつ揺すれば、スイングアームピボットのガタを確認点検することができる。

ガソリンタンク内コンディションは即点検



すぐに確認できるガソリンタンク内コンディションにも要注意。しばらく乗らなかったバイクは保管環境によってタンク内に水分が溜まってしまうことが多い。室内環境やガレージ保管だったとしても、寒暖差で結露が発生。その水分でタンク内が真っ赤に錆びてしまうことは珍しくない。キャップを開けて指先を突っ込み、タンク内の天井部分を指先で触れることでサビの発生を確認できる。また、ガソリンの臭いを嗅ぎつつ、内部を点検ランプ(LEDランプの直進性がピンスポット確認には最適)で覗き見することで、コンディションを目視することもできる。

オイルは量よりも汚れ具合重視

エンジンを始動確認する前に、オイルコンディションを必ずチェックしておこう。オイル量がしっかり足りていることも重要だが、汚れ具合の確認も大切である。キレイなウエスでフィラーゲージを拭き取り、必ず確認しよう。直前にオイル交換されている可能性もあるので、そんな状況も踏まえ、フィラーゲージ本体内側の汚れ具合やフィラー穴から見える内部コンディションを、ガソリンタンクと同じようにLEDランプで要チェックしよう。エンジン内部が真っ黒に汚れている場合は、圧縮圧力の低下=ピストンリングの摩耗やバルブガイドのガタで、クランクケース内に長年に渡ってブローバイガスが入り込んでいる可能性が大。それがエンジン内の真っ黒汚れの原因である。

ホンダの旧90ccシリーズはバッテリー点火が多い




旧90cc時代のスーパーカブに限らず、同系エンジンを搭載した同年代モデルは、50や70や新型90のようにフラマグポイント点火(ACコイル点火)ではなく、6V管理のバッテリー点火を採用するモデルが多い。つまりバッテリー電源をもとにスパークプラグを着火しているため、バッテリーコンディションが良くないと、エンジンコンディションは間違い無く良くない。ターミナル端子に腐食が無いか?バッテリー液の液面高さは大丈夫か?まずはコンディションチェックし、不安なときには新品バッテリーへ交換しよう。

灯火類の作動を確認



バッテリーコンディションが良ければ、灯火類の作動を確認することができる。バッテリー点火車の場合は、電気系の制御もすべてバッテリーなので、50や70モデルのように夜間走行のヘッドライトやテールランプの電源にAC/交流電源を利用していない。スイッチ操作でしっかり点灯することを確認したら、各バルブのセット状況を確認しよう。仮に、バルブ金具のセット時にガタがある場合は、プライヤーでバルブソケットを曲げて、バルブの金具がカッチリ収まるように調整しよう。ガタが多いと振動でフィラメントが切れやすくなるのだ。

ひと通りの点検を終えたらエンジン始動

スーパーカブの場合は、レッグシールド内側に様々な機能や部品が隠れているため、エンジン始動時にはレッグシールドを取り外し、作業進行することで不調箇所にすぐにアクセスすることができる。旧型スーパーカブは、レッグシールドを取り外すためにエアークリーナーエレメントのフタを取り外さなくてはいけないが、エンジンの調子や試運転確認する際には、レッグシールドを取り外しても、このエアークリーナーのフタを閉じるようにしよう。フタ無しで試運転してキャブセッティングしてしまうと、フタを付けたときとまったくデータが異なり、不調の原因になってしまうからだ。

POINT

  • ポイント1・ 前後タイヤをフリーにした状態で小刻みに揺することで、各可動部のガタを明確に確認することができる
  • ポイント2・ タイヤはトレッドの残山評価意外に生産日時も理解し、古いタイヤは迷うことなく新品タイヤに交換しよう
  • ポイント3・灯火バルブの取り付け時にガタがあるとバルブ切れの原因になるのでソケット金具を変形させてガタが無くなるように調整しよう

中古車購入の際に、信頼できるバイクショップから購入した中古車なら安心できる。しかし、現在は個人売買環境が進み、ネットオークションやメ○カリなどで、昨日までは個人ユーザーが所有していたモノやバイクやクルマを、そのまま受け継ぎ購入できる例が増えている。個人売買車両を馴染みのショップへ持込み、メンテナンス依頼できるなら良い。しかし中には、どうしたら良いのかわからず、メンテすることなく、不調なまま乗り続け、結果、長持ちしなかったと嘆いている購入者もいる。そんなユーザーが増えているからこそ、我々のようなバイクメンテナンス雑誌が便利に利用され、このWEBメンテナンスのコーナーを楽しみにして下さるユーザーさんも増えている。

例えば、購入したバイクがどんなコンディションなのか?それを知っているのと知らないのとでは、所有するにも走られるにも状況判断が異なるはず。ここでは、バイクを走らせる前やエンジン始動する前に、最低でも知っておきたい、知っておくべきコンディションチェック、そのやり方をレクチャーしよう。

まずはタイヤがスムーズに回転するか、確認してみよう。前後ホイールを回すことによって、ホイールハブのベアリングコンディションを理解することができる。さらに写真解説のように、タイヤを鷲づかみにしながら小刻みに揺することで、ステアリングやスイングアームピボットのコンディションを体感的にも理解することができる。この「足周りの要」とも呼べるポイントが今ひとつのコンディションだと、真っ直ぐ走ることもままならなく、極めて乗りにくいバイクのはずだ。タイヤ山の残量や賞味期限に関しても理解しておくべきである。

しばらく乗っていなかった、放置されていたようなバイクは、ガソリンコンディションのチェックも重要だ。タンクキャップを開けた瞬間に、違和感ある臭いでガソリン腐りを知ることができる。また、指先でガソリンに触れることで、揮発性を体感することもできるはずだ。「何かが違う」と感じたり、前回のガス給油から半年以上経過していることが明確な場合で、しかもエンジン始動がスムーズではないときには、すべてのガソリンを抜き取り、新品ガソリンに交換することから始めよう。キャブレター内に残っているガソリンは、ドレンから抜きとりウエスで吸い取ってしまえば良い。こんな作業を実践したときには、吸い取ったウエスの臭いやガソリンの色を必ず確認しておこう。そんな残留ガソリンがエンジン始動性を悪化させているケースが、本当に多い。

逆に、しばらくバイクに乗らないようなときには、どうしたら良いものか?現代のガソリンは添加物の影響で水分を寄せやすくタンク内部をサビさせやすい特徴があるので、もう何年も乗れない、乗ることがないと思ったときには、タンクを外してすべてのガソリンを抜き取り、キャブ内ガスもすべて抜き取り、さらにスロットル全開でセルスターターをしばらく回して、キャブ内通路の残ガスもすべて吸い込ませよう。さらにタンクキャップを開けて天日干しを行い、タンク内を「完全乾燥させてからバイクを保管」するのが良い。もちろんそんな面倒なことはできない、といったみなさんへは、ガソリン劣化を防止する「フューエルスタビライザー」を処方通りに投入しエンジン始動することで、タンク内のガソリンはもちろん、キャブのフロートチャンバー内や各通路内の残留ガソリンも腐りにくくなる。想像以上に長持ちするので、長期保管の際にはお試し頂きたい。

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