昔のような単純なキーではなく、現代のバイク用キーは、盗難やいたずら防止を目的に、様々な仕様へ進化している。以前のモデルの外装パーツには、クイックファスナーを利用する例が多く、その都度、ドライバーを準備するのが当たり前だったが、ちょっとしたアイデアで、このようなメインキーがらみのカスタマイズも可能になる。ここでは、クイックファスナーを開放できることで車載工具を素早く取り出せるようになった、旧車用キーのカスタマイズをリポートしよう

お化粧タイプのつまみを持つ純正キーを参考に

最近は限定モデルに多いお化粧つまみ仕様(指先でつまむ部分がプラスチックタイプのキー)のメインキー。1本のメインキーが化粧タイプで、スペアになると普通の金属キーというモデルもある。左のような合鍵は、一般的に金属仕様が当たり前。こんな金属キーのドレスアップにチャレンジしてみようと思う。

自作フィギア作り用ハイキャストと型取くんを利用



自作フィギアを作るための材料として模型ショップなどで販売されているハイキャストを利用。さらにデイトナの型取くんを使い、ヤマハ純正のお化粧キーを複製してみることにした。ハイキャストはA液B液を100対100で混ぜる樹脂で、黒色を購入。今回のサイズ感なら、プラリペアの黒色でも複製することができそうだ。

複製元のキーに同じ厚さのアルミピースを追加





お化粧つまみのヤマハ純正キーにアルミピースを追加。この部分がクイックファスナーを回す部分になる予定。この段階ではまだイメージできないのだが……。油粘土の台座を用意しマスターモデルのキーを押し付け、型取り開始。マスターキー周辺をスパチュラで押し付けて成形していく。成形が完成したら、水を張った鍋をガスコンロで温め型取りくんを沈める。今回はコンロを使ったが、紙コップに型取くんを入れて、ポットのお湯を注ぐことでも型取りくんは柔らかくなる。
※編集部注釈:スパチュラ=金属製のヘラ

クリア→軟化、乳白色→硬化、それが型取くんの特徴





油粘度で成形した台に柔らかくなった型取くんを押し付け、まずは片面の複製から作業開始。片側の型取くんが硬化したら、離型剤となるシリコンスプレーを吹き付け、反対側も型取り。温まり柔らかくなると型取くんはクリアになり、乳白色に戻ると再び硬化する型取くん。完全に固まったら、型合せ部分から真っ二つに。

化粧つまみ部分の強度をアップ



金属合鍵のつまみ部分に化粧つまみを追加するが、できる限り強度アップする(樹脂部分の強度を高める)ため、金属キーのつまみ部分に穴明け加工を施し、左右の樹脂を一体化できるようにしてみた。

複製型に金属キーをセットして樹脂流し通路を確保



型取くんで作った複製型に金属キーをセット。キーホルダーにセットする穴部分はねんどを詰めてハイキャストが流れ込まないように養生。片側にキーをセットできたら、もう片側の型に樹脂を流し込む通路をカッターの刃で削り込む。

100対100でA液B液を混ぜて注ぎ込む



金属キーをセットし終えたら、2枚の樹脂型を組み合せてマスキングテープをグルグル巻きにして完全固定。そして、混ぜ合わせたハイキャストを素早く流し込んだ。ハイキャスト樹脂は、しっかり混ぜ合わせたら、即流し込む。作業をお願いしたモデルクリエイトマキシによれば、混ぜ合わせたら10~20秒程度で流し込みたいそうだ。時間の経過で樹脂の粘度が高くなってしまい、上手に流れなくなるらしい。流し込み1時間程度で樹脂型から抜き取れるが、完全乾燥までには24時間以上自然乾燥させるのがベストだそう。

キーの持ち手の一部を工具代わりに!!



脱型後の不要なバリ部分は、カッターや刃先が鋭いノミなどを利用して除去。金属つまみ部分をすべて覆い隠すようにハイキャスト樹脂を流し込んだので、完全乾燥後は簡単に割れてしまうこともなさそうだ。骨となった金属キーのつまみ部分を飛び出させたことで、クイックファスナー溝に合せてクイッと回すことで、車載工具を簡単に取り出せるようになった。大満足!!

取材協力:モデルクリエイトマキシ

POINT

  • ポイント1・あくまでDIYカスタムと考えればアイデア次第で様々な樹脂工作を楽しむことができる
  • ポイント2・ ハイキャストは量が多いので、型取くんでマスターから複製型を作りさえすれば、プラリペアの充填で同じような化粧キーも作ることができる

合い鍵ではなくオリジナルキーが付いていて、そのキー1本でメインキーはもちろん、ハンドルロックやシートロックを施錠できたなら、それはもう完璧なコンディションだろう。旧車オーナーにとって、オリジナルキーの操作で走れる、触れられるのは実に嬉しいこと。ちなみに撮影車両のヤマハのスーパースポーツモデルYDS2はメインキーのみしか無く、ハンドルロックキーはオプション装備。そのオプションもロック本体を常に持ち歩く仕様で、キーを差込めばクイッとハンドルロックできるようなシロモノではない。

せめて気分だけでも「オリジナルキーのような雰囲気を楽しみたい」ということで、トライしてみたのが今回の作業だ。メインキー一本だけの車両だが、残念なことにメインキーは合鍵でオリジナルキーではなかった。そこで、その金属板の合鍵をお化粧してみたくなったのだ。

人気旧車のカワサキZ2/Z1やマッハシリーズ、ホンダCBナナハンなどの場合は、オリジナルキーを模した「向かい獅子」と呼ばれるブランクキーや、特徴的な「へそキー」用に、キーの軸部分にプラスチック製キャップが付くが、それらは人気モデルが故、複製部品が発売されている。そのような人気モデルでなければ、DIYでお化粧キーを作らなくてはいけないだろう。オリジナルデザインを含め、それなりの満足感を得られるのが、ここにリポートするキーのカスタマイズである。

具体的なカスタム手段は、樹脂ノブ付きのヤマハ純正キーを専用粘土(続にプラスチックねんどと呼ばれている)で型取りし、その型に注型用の樹脂=自作フィギアの世界では数多く採用されているハイキャストを流し込むことで、樹脂ノブ部分を復刻してみよう、といった段取りだ。ここでは、ヤマハ60Sモデル用の合い鍵に、樹脂ノブを合体させるテクニックをリポートすることにしよう。

同年代のヤマハ純正キーには、樹脂ノブが付くモデルがあるが(おもに軽二輪モデル以上の排気量)、そのお化粧的な樹脂ノブをマスターとして型取し、その型取りをベースに、新しいお化粧キーノブを作るのである。この際には、ノブの中に鋳込むキーに穴加工を追加することで、樹脂ノブ部分の一体化がより強まり、強度アップするであろうと考えた。また、内部に鋳込むキーのエッジを敢えて露出させることで、ドライバーやコインを利用しなくても、純正車載工具箱の「クイックファスナーを開閉できる」仕様にしてみた。そんな妄想的な目論見は見事に的中し、キーを逆さまに持ってクイックファスナーを楽々開閉することで、車載工具を簡単に取り出せるようになった。他人とはひと味もふた味も違ったDIYカスタム。あなたもワンオフ樹脂部品作りにチャレンジしてみませんか?

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