チューブレスタイヤと違って、異物が刺さった途端に空気が抜けてしまうのがチューブタイヤの特長です。幸い今では各社のロードサービスが充実しているので、道ばたでお手上げになる心配は少ないかもしれませんが、いざという時の修理方法は知っておいて損はありません。リムからタイヤを外すのにタイヤレバーが必要ですが、それさえできれば後の手順は自転車のパンク修理と同じです。
スーパーカブなら車体からタイヤを外さずパンク修理できる!?
走行中に空気圧の低下に気づき、ある程度走行した後に異物を引き抜き始めると、どこまでも長いビスだった。刺さり方が良かったようで空気が一気に抜けなかったのが幸いだったが、ビッグバイクでチューブがバーストしたらきわめて危険だ。
引き抜くとともにシューッという漏れ音が大きくなり、完全に抜いた時点でチューブ内に残っていた空気が一気抜けてしまった。空気が抜けた状態でも自宅に帰宅したり、近所のバイクショップまで自走で行きたい気持ちは理解できるが、リムからビードが脱落すると危険だし、リムとタイヤがズレることでチューブが引っ張られてさらに傷むこともあるので、なるべく走行しないようにしたい。
スーパーのレジ袋や空き缶ぐらいのサイズなら気がつきますが、どれだけ前方に注意していても路上に落ちているガラスの破片や小さな釘にはなかなか気づけません。そんな異物を運悪く踏んでしまえば、あっという間に空気が抜けるのがチューブレスタイヤの大きな弱点です。路側に近いところを走るから異物を拾いやすいという意見もあり、確かに多くの道路はセンターラインを頂点にゆるやかなかまぼこ形状なので、ゴミや異物は路肩に集まる傾向にあるかもしれません。しかし現実には、二車線道路の中央側車線にもパンクの原因が落ちていることがあります。
チューブレスタイヤの場合、タイヤの内側とホイールリムがひとつの空間になっており、タイヤのビードがリムに対してしっかりはまっているため、トレッド面に釘が刺さってもそれ自体が栓の代わりになって空気が抜けづらい特性があります。一方チューブタイヤはタイヤとリムの間にチューブがあることで、異物が刺さった時にチューブとタイヤ内面の隙間にチューブ内の空気が出てしまうので、トレッド面に釘が残っていても空気が抜けてしまいます。
昭和世代のライダーが子どもの頃、自転車のパンクぐらい自分で修理できて一人前という風潮が一部にありました。今のように大規模ショッピングモールに自転車店がなかった時代です。パンク修理キットといっても缶に入ったゴムのりと目の粗いサンドペーパーぐらいで、古チューブから切り出したゴム片を穴を塞ぐパッチに使うことも珍しくありませんでした。
そんな昔話はともかく、自転車のパンク修理の経験があればチューブタイヤのバイクのパンク修理も難しい作業ではありません。もちろん、バイク用タイヤは自転車用より格段にビードが硬く、リムからタイヤを外してチューブを引っ張り出すまでが大仕事です。また自転車に比べて重いホイールを外すのも大変ですし、バイクは自転車のように修理中の車体をゴロンと寝かせておくこともできません。
しかしタイヤ幅が狭くセンタースタンドを持つスーパーカブのようなバイクの場合、車体からタイヤを外さずチューブを引き出すことが可能です。私はこの修理光景を、街の「○○輪業」のような店舗の軒先で目撃したことがありますが、“ああ、このやり方でいいんだ”と目からウロコが落ちる思いでした。250ccクラス以上のバイクになるとタイヤ幅が太くビードも硬くなるので、手で潰してチューブを引き出すのは難しくなりますが、林道ツーリングを趣味にしているライダーの中には、タイヤレバーまで含めた修理キットを持参して、いざという時にはその場でバイクを横倒しにして修理する猛者もいるそうです。もちろんこの場合は、修理後に空気を入れるためのコンパクトなエアポンプも携行しているそうです。
- ポイント1・チューブレスタイヤで異物を踏んだ場合はすぐに空気が抜けないことが多いが、チューブタイヤで異物を踏むと短時間で空気が抜けてしまう
- ポイント2・パンク修理でタイヤからチューブを引き出す際、機種によってはホイールを外さず作業できる場合もある
パンク箇所をサンドペーパーで荒らしてからゴムのりを塗布
ホイールを外したらタイヤレバーを使ってリムからタイヤを外す。ビードプロテクターとタイヤレバーをセットする際にチューブを挟み込まないように注意する。外す時だけでなく、パンク修理後に復元する際にもタイヤレバーの取り扱いは慎重に。
タイヤバルブの位置を基準とすればパンク穴の位置を見つけることは容易だが、念のためタイヤから外す際に穴位置にマークを付けておくと良い。タイヤサイズが太い車両では無理だが、原付クラスのスーパーカブのような機種なら車体にホイールが付いたまま、自転車のパンク修理と同じようにスイングアームとホイールの隙間にチューブを引っ張り出して修理することもできる。
パンクの穴は一カ所だけだったので、マーカーで印した位置にパッチを貼り付ける。使用するパッチの大きさに応じて、それより広い範囲をサンドペーパーで擦って荒らしておく。
ツルツルのチューブにゴムのりを塗るのとペーパーを掛けた後に塗るのとでは、当然ペーパー後の方がのりの着き具合が良くなる。
ゴムのりがある程度乾燥したらパッチのアルミ箔を剥がして接着する。補修面に押しつけたパッチは上からローラー(ソケットレンチのエクステンションバーなどでも可)を転がして密着させる。ゴムのりとパッチの接着面が密着すれば、パッチ表面のビニールもすんなり剥がれる。
ここで紹介するのは通勤時の帰宅途中で冗談かのような太くて長い木ねじを踏んでパンクした事例です。刺さり方が良かったのか空気が一気に抜けることがなく、徐々にリア周りのグニャグニャ感が増して帰宅後に引き抜いたところ、プシューッっと抜けて終了……というパターンです。
車両からホイールを取り外してチューブを引き出す際に、穴の位置が分かっていればマーキングしておくことをおすすめします。もちろん、空気を入れたチューブを水を張った洗面器やバケツに沈めて、浮かび上がる気泡で穴位置を確認するのが正解ですが、タイヤの穴の位置と照合してチューブにチェックを入れておけば確認作業の効率がアップするからです。ただし、異物の刺さり方によって穴が複数箇所に開いている場合もあるので、このチェックマークだけを信じて作業を進めることはおすすめしません。穴が分かる部分をマーキングしつつ、やはり最終的にはチューブを水に沈めてプクプクと出てくる気泡を頼りにパンク箇所を特定します。
穴の位置が分かったらチューブ表面の水分を拭き取り、ゴムのりの着きを良くするため穴の周辺をサンドペーパーで擦ります。この時、貼り付けるパッチよりも広い範囲を擦っておくことが重要です。パンク修理キットに含まれるパッチは、アルミフィルムと透明フィルムを剥がしてゴムのり部分に貼り付けますが、パッチの外周部分までしっかりゴムのりが付着していることで強力な接着力を発揮します。パンク穴の近くはペーパーが掛かっていてもパッチの外周部分がしっかり接着できていなければ、空気を入れた際にパッチが端から浮いてしまうこともあります。
もちろんゴムのりを塗布する周辺の油分も厳禁です。後輪のパンク修理の場合、ホイールを外す際にドライブチェーンに触れるため、その手でチューブに触れればパンク穴の周辺にチェーンオイルが付着することも考えられます。したがって、サンドペーパーを掛ける前にパーツクリーナーで洗浄しておくぐらいの慎重さがあっても良いでしょう。
自転車のパンク修理を経験しているライダーならご存じかと思いますが、ゴムのりを塗布してからパッチを貼るまでに若干の時間を空けることもポイントです。ゴムのりは比較的粘度が低く厚塗りしづらい接着剤で、これをパッチのサイズを超える範囲に塗布して表面の濡れ感が収まるまで待ち、それからフィルムを剥がしたパッチを圧着します。
このパッチは2層構造でゴムのりに触れる面には接着成分があることで加硫反応が起き、強力な接着効果が得られるのが特長です。また外周部分はなだらかに成形されており、ゴムのりがしっかり効いていれば浮き上がって剥がれることなく、修理後はすぐに走行できます。
- ポイント1・チューブの穴を確認するために水に沈めて気泡チェックを行ったら、補修部分を脱脂してサンドペーパーで下地作りをする
- ポイント2・接着成分付きのパッチはゴムのりと即座に反応するため、貼り付け後すぐに走行できる
タイヤレバーでチューブに穴を開けないように注意しよう
今回修理した場所の近くにもう一カ所、以前に修理したパンク痕があった。チューブ単品で空気を入れて、洗面器やバケツの中で空気漏れが起こらないことを確認したらタイヤに組み込む。この際にタイヤバルブが倒れすぎないこと、タイヤレバーでチューブを傷つけないことに留意する。
パンク穴にパッチを貼ったら、念のためにもう一度水に沈めて気泡が漏れてこないかを確認します。修理部分だけでなく、エアバルブ部分も浸けることでバルブコアからのリークの有無を知ることもできます。
エア漏れなく修理できたらタイヤ内にチューブを収めてホイールにセットしますが、この際にタイヤレバーでチューブにダメージを与えないよう注意します。冗談のような話ですが、パンク修理に限らず新品チューブを組み付ける際にも、タイヤのビードを起こす際にタイヤレバーとリムの間にチューブを挟み込んでしまい、穴を開けてしまうミスは珍しいことではありません。特にタイヤ内でのシワやねじれを嫌ってチューブに若干の空気を入れた状態でタイヤをはめるライダーは、タイヤレバーによる再パンクに注意が必要です。
ロケットやひもタイプの補修材をトレッド面から挿入するだけのチューブレスタイヤに比べると、チューブタイヤのパンク修理にはホイールやタイヤを着脱する手間が掛かります。ただ、穴と補修材のフィット具合によっては作業後にエア漏れの可能性があるチューブレスに対して、チューブタイヤはパッチを貼ればパンク穴が確実に塞がるため修理後の安心感は大きいという利点があります。
不幸にも異物が刺さってパンクしてしまった時のために、手元にパンク修理キットを持っておくことをおすすめします。
- ポイント1・パッチを貼ったチューブは復元前に水に入れて穴が塞がっていることを確認する
- ポイント2・パンク穴を塞いだチューブをタイヤに組み込む際は、タイヤレバーでチューブを傷つけないよう慎重に作業する
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