高年式車だから大丈夫、新車だから大丈夫、ではなく「定期的なクリーニング実践」によって、常にコンディションが維持され「握って気持ち良い感覚」になれるのが、ブレーキレバーである。新車当時から保守点検しておくことで、後々のコンディションに大きな違いや他車とは差が出るもの。ここでは、メンテナンスコーナーで再三提案し、今後も事ある毎に提案するであろう、ブレーキキャリパーのクリーニングに触れてみよう。長年乗り込まれたマシンでも、分解オーバーホールを契機に定期的にキャリパークリーニングを実践することで、フロントブレーキのレバータッチは確実に良くなる!!

キャリパー本体を取り外す前のお約束

キャリパークリーニングやメンテナンスを実践する際には、キャリパー本体の取り外し前に、パッドピンの抜け止めプラグを緩め、さらにその奥にあるピン本体も緩めておくのがお約束だ。キャリパーを外して単体にしてしまうと、なかなか本体を押えにくく、単純なキャップですら緩めにくくなってしまうからだ。メンテナンス時は常に「一歩先を見据えた」作業手順を心掛けよう。

パッドピンの抜け止めとなっているプラグ(ロックナットと同じ役割のプラグ)とパッドピンを緩めてからキャリパー本体を取り外すことで、キャリパー単品になってからでもスムーズに構成部品を分解することができる。さすがに新車登録さればかりのバイクなので、痛みは少ないが、それでもキャリパーピストン外周、露出部分の汚れは明らかだ。こんな汚れの堆積が、キャリパーピストンシールを傷める原因である。

ブレーキパッドを交換したいときにもこの手順で

ブレーキパッドを位置決めしているパッドピンを引き抜けば、ブレーキパッドは簡単に取り外すことができる。スプリングプレートでテンションが掛かっている場合は、プレートの反対側からパッドを軽く押込むことでピンは抜けやすくなる。パッド残量は十分なので再利用するが、パッド外周にはバリが立っていた。復元する時には、このバリ取りをヤスリで削り落とすようにしよう。

潤滑性の低下で摩耗しガタが出るプラケットピン

キャリパーブラケットに締め付け固定されている2本のピンは、キャリパー本体をローターに対して直角方向にフローティングマウントしている。80年代以降の片押しピストンキャリパーは、このフローティングピンタイプが特徴だ。このピンの潤滑が低下するとキャリパーの作動性が悪くなり、パッドとローターの引き摺りを招いてしまう。

ピストン外周の汚れがブレーキ性能を左右する



キャリパー本体にブレーキホースがつながったフリーの状態で、ブレーキレバーをゆっくり作動させてみよう。ブレーキパッドが無いフリーのピストンは、出たり戻ったりを繰り返しながら、徐々に出てくる。2つあるピストンの、おそらく片側がだけが押し出されてくるので、先に出てくるピストンを指先で押えながら作業を進めると、もう一方のピストンが露出し始める。ボディ内に隠れていた輝きが見えたところでピストン露出を止め、ピストン磨きを行おう。汚れを落としづらいときには、キャリパーピストンツールを利用してピストンを回転させ、裏側もしっかりクリーニングしよう。

不要になった歯ブラシや小型の作業ブラシを利用し、まずはケミカルなど一切塗布せずピストン外周に固着した汚れをドライ環境でブラッシングして、こそぎ落そう。おおよその汚れを乾いたブラシで落としたら、パーツクリーナーを利用して汚れを洗い流そう。最後にエアーブローで汚れを吹き飛ばせば良い。ブラシで落ちない汚れは不織布シート(スコッチブライトなど)を利用しても良い。

クリーニング後にラバーグリスを塗布

砂塵汚れを除去したらブレーキクリーナーで洗い流しエアーブロー。露出したピストン周辺へは、指先でラバーグリスを薄く少量だけ塗布する。多く塗りすぎるとゴミを寄せてしまう原因になる。ラバーグリス塗布後のピストンは、作動性抜群のはずだ。薄く伸ばすようにピストン外周全体に塗布しよう。ハミ出たラバーグリスはキレイなウエスで拭き取ろう。

専用工具があると作業性は圧倒的に良くなる

作動性が良いピストンなら指先のチカラだけでキャリパーシリンダー内にピストンをスーッと押し戻すことができる。しかし、ピストン径が大きかったり、飛び出し過ぎてしまうと戻せない時もあるので、そんなときにあると便利なのが、キャリパーピストン押し込みツールである。いずれにしてもピストンを出し過ぎると、ポロッと外れてしまい、ブレーキフルードが完全に流れ出てしまうことになる。こうなったら最悪……。しっかり洗浄復元し、ブレーキフルードのエアー抜きを行わないといけない。

フローティングピンはクリーニング&グリスアップ



制動力をダイレクトに受けるフローティングピンの受け部分へは、想像を超える圧力が加わる。ピン受けの穴内部には綿棒を差込み、古いグリスを除去しよう。その後、パーツクリーナーでしっかり内部を洗浄し、極圧性に優れたスーパーゾイルグリースを利用した。2本のピンおよび受け側の穴にしっかり塗布しよう。

キャリパーをボトムケースへ復元する前に、前輪を持ち上げてスムーズにホイールが回転し、リム振れが無いか必ず確認しよう。悪路や林道を走るオフ車は転倒が多いため、気がつかないうちにリムが歪んでいることも多い。僅かな歪みならタイヤを取り付けた状態でスポークホイールの振れ修正を行うことができる。

POINT

  • ポイント1・定期的かつ雨天走行後のキャリパークリーニングは効果的で性能維持には特におすすめ
  • ポイント2・ピストン外周をクリーニングするときは、ピストンを出し過ぎないように要注意。目安として最低でも全長の1/4はボディ内に残しておこう
  • ポイント3・汚れたグリスはしっかり拭き取ってから洗い流し、新しい高性能グリスを塗布しよう

ブレーキキャリパー周辺のクリーニングやメンテナンスを行う際に、日頃から気にしておきたいのが、キャリパーピストンとフローティングピンの作動性である。特に、オフロードバイクの場合は、林道やダートを走り、時には河原を横断することもあるため、キャリパー周辺のグリスが著しく汚れてしまったり、洗い流されてしまい、ほぼ乾燥!?といったこともある。だからこそ、定期的な点検メンテナンスが重要なのだ。ツーリングへ行ってきたからメンテナンスする、のは正しいことだが、「ツーリングへ出掛けるからメンテナンスする!!」といった積極的な考え方も、頭の中に入れておくのが良い。もちろん、ビフー・アフターともに手入れするのが最善である。

ここでの作業内容は、ブレーキピストンの作動性確認とグリスの塗布。キャリパーをサポートするフローティングピンの摩耗状況確認とグリスアップである。汚れなどによってピストンの作動性が落ちるとブレーキ性能が低下し、ブレーキレバーの入力に対するピストンレスポンスが悪くなる。フローティングピンが作動不良を起こすと、パッドの引き摺りを招き、それが起因した熱によってローターが歪み、まともなブレーキングができないばかりか、最悪で、ブレーキがロックしてしまう例もあるほどだ。

ブレーキメンテナンスの基本は、何よりも日頃からの「クリーニング」に尽きる。オンロード、オフロード走行に関係なく、雨天走行後は潤滑の要であるグリスが洗い流されてしまうことが多い。また、キャリパー周辺には砂塵や砂利が堆積していることも多いので、キャリパーを分解しなくても、また、ボトムケースから取り外さなくても良いので、柄が長く細いブラシを利用して、中性洗剤を混ぜたお湯でキャリバー周辺を洗浄しよう。たったこれだけの作業で大きな効果を得ることができる。洗浄後は、高性能グリスを要所に塗布して潤滑性を高めることで、コンディション維持をハイレベルでできるようになる。

市販車に多い片押しピストン式ブレーキキャリパーは、その構造上、2本のフローティングピンがキャリパー本体を支持している。ブレーキング時のキャリパーにかかる制動圧も、このフローティングピンがすべて受け止めている。つまり、このピンがかじってキャリパー本体とリジッド化してしまうと、ブレーキ性能が低下するばかりではなく、最悪でブレーキとしての機能を果たさなくなってしまうのだ。金属同士が擦れ合うフローティングピンには、極圧性能に優れた高性能グリスを利用し、常日頃からコンディション良く保ちたいものである。

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