
LEDを使ったヘッドライトやウインカーはニューモデルを中心に採用が普及率が高まっています。フィラメントを用いた電球と比較してさまざまな利点があるLEDバルブは、純正だけでなくカスタム用としても魅力です。簡単に交換できるウインカーバルブは専用リレーとの組み合わせで消費電力を圧倒的に軽減できるので、絶版車にとっても大きなメリットがあります。
LEDバルブに交換するだけではハイフラになるウインカー
ウインカー自体をコンパクト化するカスタムがある一方で、バルブだけ交換してLED化する手段もある。当時のスタイルを大きく変更したくない絶版車では、純正ウインカーボディを利用してバルブのみ交換するのが効果的だ。
ひと昔からふた昔ほど前にユーザー車検に出掛けると、ウインカーレンズのサイズや点滅方法などが厳しくチェックされたものです。自動車の例ですが、ポジションランプ点灯時には白色の光で、ウインカーを作動させるとオレンジに点滅するLEDバルブを組み込むと、たいていは検査ライン手前の同一性の確認で不合格となり、ポジション回路を切らないと検査に合格できませんでした。ところが現在では、標準仕様でそうした点滅パターンを採用するニューモデルが数多く登場しています。
バイクのウインカーも同様で、かつてはウインカーレンズの面積やステーの長さまで神経質にチェックされていましたが、今では点滅しない限り存在すら分からないような超小型のウインカーであっても車検に対応するカスタムパーツが販売されています。以前は絶対にダメだった流れるウインカー=シーケンシャルウインカーでも堂々と使える部品が登場しています。
そうした部品が許されるようになってきたのは、主にヨーロッパメーカーがそうした製品を採用し、それらがECE認証を取得しているためです。自動車や自動車部品は様々な国や地域で使用されるため、国ごとの独自基準に縛られないグローバル化が求められています。そのためヨーロッパで認可を受けてECE認証を取得した部品や装置に関しては、型式認定相互承認協定に基づいて日本でもそのまま使えるようになっているのです。そういうわけで、純正部品として装着されている機種はもとより、アフターパーツを利用してカスタムを行う場合でも認証を受けた部品であればLEDウインカーを装着しても何ら問題はありません。
ウインカーボディは純正のまま、電球をLEDバルブに交換するカスタムならなおさら問題はありません。かつてはLEDの素子をいくつも並べてハンダ付けする器用な自作派もいましたが、現在では社外品で口金タイプでもウェッジ球タイプでも多くのLEDバルブが販売されています。明らかに暗ければ危険ですが、信頼できるメーカーの製品であればまず問題はありません。
電球仕様のウインカー回路のままLEDバルブを装着した際に問題になるのが、点滅スピードが異常に早くなるハイフラッシャー化です。これは電球が切れた時に点滅スピードを早めてユーザーにトラブルを知らせるウインカーリレーの仕様の問題で、電球1個あたり21Wが多い電球に比べてLED(製品によってまちまちですが、1~3W程度が多いようです)は圧倒的に消費電力が少ないため、電球が切れているとみなされてハイフラッシャーになってしまうのです。
- ポイント1・ECE認証試験をクリアしたパーツが使用できるようになったことでウインカーカスタムの自由度は格段にアップした
- ポイント2・電球用のウインカーリレーのままLEDバルブを装着すると、消費電力が激減してハイフラッシャー状態になる
抵抗を追加するよりLED対応リレーに交換した方がバッテリーに優しい
純正リレーが2ピンタイプならカプラーオンで装着できるデイトナ製LED対応リレー(現行品は形状が異なる)。車体側カプラーの仕様によって、リレーを直接取り付ける場合とサブハーネスを利用する場合がある。LED対応リレーには3ピンタイプもある。
消費電力が電球より極端に少ないLEDバルブを正しく点滅させるにはふたつの方法があります。ひとつは自作LEDバルブカスタムが始まった20年ほど前の常套手段だった、抵抗を追加して消費電力を増やす方法です。ウインカーハーネスの途中にセメント抵抗を追加するのがポピュラーでしたが、バルブの中に抵抗を入れた製品もありました。これらはLEDの省電力という大きなメリットを利用しない代わりに、ウインカーリレーの交換が不要というメリットがあります。
もうひとつはウインカーリレーをLED対応のものに交換する方法です。電球仕様のウインカーリレーは、ウインカー1個の消費電力が21Wだとすれば21W×2にインジケーターを加えた電力に対して適正な点滅回数になるよう設計されています。一方LED対応型リレーは、電子回路を利用することで消費電力が1~100Wで正常に作動する超ワイドレンジ仕様となっているものが多いのが特徴です。電球に比べて消費電力が少ないLEDはもちろん、電球仕様のウインカー回路でも正しく点滅しますが、電球が切れてもハイフラッシャー状態にならないので、トラブルを見過ごす可能性があるのが弱点となります。
LED対応のウインカーリレーが簡単に手に入るなら、迷うことなくリレーを交換してLEDのメリットを享受したいと誰もが思うでしょうが、ウインカーリレーがECUなどの複合基盤に組み込まれて独立していない機種では交換のしようがない場合もあります。これは自動車用リレーで事例が多く、ドレスアップのためにLEDバルブに交換する際にはセットで抵抗を使わなくてはなりません。消費電力を抑える効果はありませんが、LEDならではの点滅時のレスポンスの良さは体感できます。
LED化が消費電力を抑える目的であるなら、対応リレーに交換するのが最善です。電球ウインカーが21W×前後2灯で42Wを消費するのに対してLEDバルブなら1灯4Wでも前後で8Wで済むので、その差は歴然です。ヘッドライトやテールランプと違ってウインカーを使用する時間は限られているのでバッテリーに与える負荷はそれほど大きくないという意見もありますが、オルタネーターの能力が限られている絶版車にとっては電気を使う装備が減るのはメリットがあるはずです。
- ポイント1・LEDバルブのウインカーを正しく点滅させるには、抵抗を追加するかリレーをLED対応に交換する2つの方法がある
- ポイント2・LED化による消費電力低減というメリットを活用したいならワイドレンジ仕様のウインカーリレーを使用するのが最善
ウインカー作動時の電流を測定すればメリットは明白
GPZ400の純正ウインカーリレーは3ピンタイプでデイトナは2ピンタイプだが、BとL端子の配列は同じだったのでGPZ用ソケットのまま装着できた。車体側にアースのEがある場合、LEDバルブによっては正しく作動しない場合があるが、今回使用したバルブの動作は正常だった。
前後4灯が点滅するハザードランプの方が消費電力が大きくバッテリーに負荷が掛かり、LEDバルブとの差が明確になる。
LEDバルブはレスポンスが良いのが特徴で、点滅時のコントラストが明確になることで被視認性が向上するメリットもある。
交差点でウインカーを使う際、信号待ちで止まった状態でウインカーを点滅させるのは珍しくありません。この際に電球であれば断続的に40W以上の電力を消費し、絶版車ではメーター照明を使っていると点滅に合わせてフラフラと明暗することも珍しくありません。画像のカワサキGPZ400の純正ウインカー電球はS25型の23Wで、その後の主流となるG18型の21Wよりさらに消費電力が大きくなります。レギュレートレクチファイアはバッテリーのコンディションに合わせて充電量を制御していますが、そもそもアイドリング中はオルタネーターからの立ち上がり電力が大きくないので、ウインカーに電力を取られるとバッテリーが不安定になりがちです。
交換したLEDバルブは純正ウインカーのソケットにフィットし、点灯時にオレンジ色に光るタイプです。交換したのは数年前なので、バルブのデザインはひと昔前の雰囲気があります。3ピンタイプの純正ウインカーリレーに対して、交換したデイトナ製リレーは2ピンタイプです。3ピンは電源(バッテリー)のB、ウインカースイッチに向かう(ウインカーランプ)L、アースのEの3端子で、一方2ピンはBとL端子でアースにつながるEはありません。純正が3ピンリレーならLEDも3ピンタイプを使うのが定石ですが、3ピンでなくとも正常に作動する場合もあります。この車両の場合は2ピンリレーで大丈夫でした。
抵抗なしでLEDバルブを作動させることで、信号待ちでウインカーを作動させた際のメーター照明のチラツキはまったくなくなりました。その理由はバッテリーケーブルで電流を測定すれば一目瞭然です。消費電力の差を明確にするためにハザードランプ点滅時で比較しましたが、電球仕様の時に7A近く消費するのに対してLEDバルブではわずか0.37Aと90%以上の省電力化を実現していました。これは使用したLEDバルブの消費電力が1個あたり2W以下という小容量タイプであったことも大きな理由ですが、超高輝度5W級のLEDバルブを使ったとしても28W電球より80%近く電力消費を抑えられることになります。
このようにテスターを使って客観的な測定をすることで、消費電力が少ないLEDの利点はより明確になります。ウインカーバルブのLED化がドレスアップや個性のアピールであっても良いのですが、一方で充電系やバッテリーへの負荷軽減の観点からもメリットがあることを理解することで、絶版車にとっては実用的なカスタムであることも理解できることと思います。
クランプテスターは電気が流れる配線にリング状のクランプを被せることで、回路中の配線に割り込ませなくても電流が測定できる。大電流の測定時にテスターのリード線に電流を流すのは危険だが、クランプテスターは直接配線に触れることはないので安全性が高い。
純正のウインカー電球でハザードを使用すると最大6.8Aの電流が流れる。バッテリーが12.8Vだとすると約87Wとなり、23W×4灯とだいたい同じになる。つまりこの電流量は信頼できる。
同条件でLEDバルブに交換するだけで、電流は0.37Aまで激減する。LEDバルブは製品によって消費電力に違いがあるので、すべてのバルブの消費電力がこれほど少ないとは限らないが、少なくとも確実に半減以上の効果が期待できる。消費電力が少なくても暗いわけではなく、むしろ明暗がはっきりして点滅を認識しやすくなる。
- ポイント1・ウインカーリレーには2ピンタイプと3ピンタイプがあり、交換する際はピン数を合わせるのがベスト
- ポイント2・電球とLEDバルブの消費電力の差はバッテリーから流れ出る電流の差に比例する
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