
レーシングマシン用のブレーキキャリパーには、アルミ素材にハードアルマイト処理を施したキャリパーピストンが組み込まれている例が多い。市販ロードバイクの場合は、スチール製部品にハードクロームメッキを施してある例が多い。ブレーキ性能やコントロール性、レバータッチフィーリングに大きく関係するのがキャリパーピストンなので、その表面仕上げの精度は極めて高い。そんなピストンに何らかのダメージがあると気がついた時には、即刻、メンテナンスを施さなくてはいけない。
目次
点サビが発生しやすいピストンシール周辺
ピストンシール周辺やキャリパーピストンとキャリパーボディの摺動部分にある点サビやホールサビが原因となり、結果的にピストンの戻りが悪く、それが原因でブレーキの引き摺り音を発生する例は意外と多い。旧車のブレーキキャリパーやダストシールを持たないブレーキキャリパーは、排水性能が決して良くないので、特に雨天時に走行した場合は、帰宅後に水道ホースで勢いよくキャリパー周辺を洗い流し、エアーブローするだけでもブレーキ性能の維持には効果的だ。今回は絶版車部品のコンストラクター製パーツを購入。ブレーキピストン1個、シールキット1セット、Wディスクなのでパッドシムを2枚購入した。
ブレーキフルードストッパーを使おう!!
キャリパー本体のみ分解清掃するので、ブレーキラインはフレアパイプ部分で取り外し、ブレーキフルードが滴り落ちないように「フルードストッパー」を利用した。パンジョー型ブレーキホースの場合は、洗濯ばさみタイプのフルードストッパーを利用するのが良い。サンメカにとっては必需品の特殊工具である。
キャリパーシール周辺を凝視!!
分解したキャリパー本体に溜まったブレーキフルードはウエスでしっかり拭き取ろう。ピックアップツールを利用してキャリパーシールを抜き取る。ドライバーなどで無理にほじくり出すとシール溝にキズが付くので要注意。キャリパーシール溝内には固形堆積物が溜まっていることが多く、この堆積物がピストンの作動性を著しく低下させる。この堆積物が影響して、ブレーキの引き摺り音が発生するケースも実に多い。
リプレイス部品のキャリパーピストン
左がスチール製のカワサキ純正ブレーキピストン。対して右は今回購入したコンストラクター製のSUS製ブレーキピストン。ステンレス素材なのでサビの心配は無用になる。ピストン摺動面はポリッシュ済みで作動性も良い。点サビが発生している中古ピストンと新品のステンレス製ピストンの作動性をキャリパー単体で比較したところ、驚きの違いを確認することができた。サビが発生しているピストンは、やっぱり引っ掛かりが起き、作動性は今ひとつ良くない。
ラバーグリスを塗布してシール組み込み
ピストンシールを組み込む前に、作動性の向上を目的にラバーグリスを適量塗布。ここで使ったのはスーパーゾイル製ラバーグリス。金属とラバーパーツ間の作動性が特に良くなるグリスだ。ピストン側の摺動面にも薄くラバーグリスを塗布して組み込む。ラバーグリスが手元に無いときは、利用するブレーキフルードを適量塗布してから組み込む。潤滑成分が無いと新品でも作動性が低下するのだ。
指先でスムーズに作動するか要確認
キャリパー本体にピストン差し込んだら、スーッと作動するのを確認しよう。この際に、ラバーグリスの有無で作動性が大きく違うことを確認しても良い。ピストンを押込んだら、ダストブーツをピストン側の溝とキャリパー本体側のリテーナ外周に引っ掛ける。このダストブーツにもラバーグリスを指先で擦り込むように塗布しておこう。
締め付けトルクは大変に重要!!
キャリパー各部の締め付け時には、トルクレンチを必ず利用しよう。オーバートルクによるキャリパー変形が原因で、パッドが引き摺ってしまいノイズを発生する例も多い。締め付け完了したら、最後にブレーキフルードのエア抜き作業を実施しよう。こんな作業時にエアー抜きシリンジがあると便利だ。
- ポイント1・ キャリパーを分解した際にはキャリパーピストン外周のコンディションを徹底的に点検しよう
- ポイント2・ キャリパーピストンシール無いにはブレーキフルードと水分が変質したスラッジが堆積しているので除去しよう
- ポイント3・ シール溝のクリーニング時には溝内にキズやダメージを与えないように要注意
- ポイント4・ブレーキピストンやマスターシリンダーの分解時はラバーグリスを使って復元しよう
バイクが仕上がってきたので試運転を繰り返していたある日、ブレーキの引き摺り音が気になった。先日、ダブルディスク化したときに、引き摺り音の原因だと思わしき箇所に気が付いた。走行中のブレーキングノイズも気になるが、押し歩きの際に発生する「キー、キーッ」といったノイズも気になるもの。ブレーキノイズには様々な原因があるが、基本的点検箇所のひとつに「ブレーキピストン」がある。
ダブルディスク化の際に気がついたというのは、標準装備の左側キャリパーに組み込まれていたブレーキピストンの外周摺動部に「サビ」が発生していたのだ。その作業時には、手元に交換部品が無かったので、ピストン外周を暫定的に磨き込んで復元。おそらくそのサビの首輪が引き摺り音の原因だと思えた。
ここで作業しているカワサキ空冷Zに限らず、ディスクブレーキ黎明期とも呼べる70年代前半に登場したモデルのブレーキキャリパーは、左右分割構造が多い。実は、この時代の分割キャリパーは、締め付けるボルトのトルク管理を間違えると、キャリパー本体が歪んでしまい、作動性が悪くなる=ピストンの引き摺りを起こしやすくなるようだ。
例えば、カワサキ空冷Zやマッハ系のブレーキキャリパーは、分割部分の締め付けトルクが30~35Nm。トルクレンチを利用しないとオーバートルクになりやすいので、十分な注意が必要である。また、このキャリパー締結ボルトは、キャリパー本体の「スライドガイド」にもなっているので、キャリパー単品とサブASSY後に、パッドをセットしたキャリパーブラケットがスムーズに作動するか?フロントフォークへ組み込む前に確認しておくのも良いだろう。
今回のケースでは、サビの首輪が原因でキャリパーピストンとシールエッジが微妙に引っ掛かり、ブレーキピストンの戻りが悪くなったことで「キー、キーッ」音が発生していたようだ。ピストン交換によって、現状の引き摺り音は消えたが、走り込むにつれ、また違った原因でノイズ発生する可能性もあるので、その都度、ノイズ原因を探ってみよう。そんな事象を克服できるようになれば、旧車ライフをより一層楽しめるようになるはずだ。
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