「旧車だからそんなもん……」の決まり文句で片づけられてしまうこともあるが、しっかりメンテナンスすることで、ごく普通にバイクライフを楽しめるようになるのが旧車である。トラブルが多い旧車は、メンテナンスが行き届いていないか、「的外れなメンテナンス」を施されていることが意外と多い。仮に、現状のエンジンが好調なら(4ストロークエンジン例)、何よりも気を配りたいのが「オイル交換」や「オイルフィルター(オイルエレメント)の交換」、そして「エアーフィルターのコンディション」もこまめに確認したいものである。そんな作業中に気がつくことも意外と多いので、メンテナンスをあなどってはいけない。
目次
腰上オーバーホール直後のエンジン
長年乗り込んだエンジンは、マフラーから白煙を吹くなどの症状が出てしまう。これはピストンリングやピストンの摩耗でクリアランスが過大になり「オイル上がり」を発生させている証拠だ。また、ピストンリングが張力を低下させてオイルをかき落とせないケースも多い。一方、吸排気バルムステムに組み込まれるキャップシールの摩耗や劣化でエンジンオイルをシールし切れないとオイル下がりが発生。やはりマフラーから白煙を吹いてしまう。特にオイル下がりは、シフトダウンの際に白煙を吹きやすい特徴もある。このカワサキ空冷Zは、新品オーバーサイズピストンを組み込み(SHIFTUP製カワサキZ1用)、シリンダーヘッドは吸排気バルブのシートカットと摺り合わせ、バルブステムシールは新品に交換。修理完了後の慣らし運転中だ。白煙が見えなくても「圧縮圧力」を測定すれば、エンジンコンディションをうかがい知ることができる。
流れ出る古いオイルにも要注意
エンジン修理や組み立て直後は、エンジン内部のクリーニングを含めて、早めにオイル交換を実践するのがベスト。新車や高年式車ならそんな必要性は無いだろうが、何が起こるか予測しにくいし、購入直後の旧車などは、エンジン修理うんぬんに関係なく、早め早めのオイル交換を心がけたい。今回は、エンジンオーバーホール直後の走行50km程度で、エンジンオイル&オイルフィルターを交換を実施。純正のマグネット付きドレンには、エンジンオーバーホール時に利用したモリブデングリスの付着が見える。
定評のモトレックス製品でケア
100%化学合成の低粘度オイルは魅力的だが、旧式の空冷エンジンで、しかも街乗りユースがメインの空冷Zには、一般的な粘度指数10W-40を利用。ここではモトレックス製トップスピード4Tを利用した。カワサキZ1/Z2のエンジンオイル容量は約4.5リットル。モトレックス製トップスピード4Tの10W-40は、同社独自の分子変換製法で精製され「100%合成油に近いハイグレードな鉱物油」というのが大きな特徴だ。
魅力の高性能オイルフィルター
モトレックス製品の日本国内発売元であるデイトナでは、高性能オイルフィルターをラインナップしている。嬉しいことにカワサキZ1/Z2用もあったので利用した。カワサキ純正オイルフィルターと比べて、濾紙の折り目を約20%アップし、濾過面積を拡大しているのが大きな特徴だ。
ドレンプラグはもちろん、オイルフィラーケースドレンのOリングもオイル交換時に交換しよう。初代カワサキ空冷Zの時代は、アルミ製ガスケットワッシャーやクラッシュガスケットワッシャーではなく、交換しやすいOリング採用していた。今回は、オーバーホール後、間も無かったので弾力もあり、潰れも無かったのでそのまま再利用した。
目で見て確認できるメンテナンス
圧縮データを測定するときに必要なのがコンプレッションゲージだ。数値データはそれぞれのエンジン型式によって異なるが、ビフォーアフターで測定値を比較すれば、メンテナンスの重要性を理解することができる。一般的にバイク用4ストロークエンジンを例にすると、測定データが6~7kgf/cm2(現在はMPa表示が多い)だったとしたら、圧縮圧力は相当低下していると考えられる。
オーバーホール後のデータ違いに驚愕!!
エンジン分解前のノーマルエンジン時は9kgf/cm2だったが、オーバーホール後はZ1クランクの採用もあり、そのデータ変化は大きく13kgf/cm2弱。1番から4番まで、すべての気筒の数値データを揃えることもできた。1気筒だけデータが違う場合は、その気筒に何らかの問題や違いが生でいていると考えられる。コンプレッションが上がったことで、走りは圧倒的にトルクフル!! エンジン回転を高めずに気持ち良く加速するようになった。ある意味、エンジンを回さないで済む分、エンジン部品の摩耗を抑え耐久性もアップする仕様となった。今回のエンジンチューニング&パワーアップには、様々な意味や目的があり、単純に「速さ=スピード追求」しているわけではない。
- ポイント1・エンジンの分解メンテナンス後は早めにオイル交換、オイルフィルター交換を実施しよう
- ポイント2・ 100%化学合成の低粘度オイルは魅力的だが、敢えて高性能鉱物油をチョイスする理由もある
- ポイント3・ オイル交換時にはドレンガスケットは新品に交換しよう
- ポイント4・ エンジンコンディションを目で見て確認することもできるコンプレッションゲージを上手に利用しよう
- ポイント5・ コンプレッションゲージをメンテナンスのビフォーアフターで利用すれば明確な違いを確認できる
エンジンのフルオーバーホールに限らず、エンジンの分解修理やクラッチオーバーホールなどなど、エンジン内部品の修理や交換を実践したときには、可能な限り早めのオイル交換を心がけたい。車体を寝かして、エンジンオイルが流れ出ないようにしてからメンテナンスすることで、メンテナンス直後のオイル交換回数はセーブすることもできる。僅かな走行距離でも、新品オイルに交換できるのは理想的である。しかし、フトコロ事情もあるので、アイデアを凝らしてメンテナンスするのがサンデーメカニックでもある。
ここでメンテナンスしているカワサキ空冷Zは、エンジンペイントも含めてオーバーホールを実践。それと同時にパワーアップを目論むチューニングも実践している。そんなオーバーホール後、試運転で自宅近所をグルグル回り(いきなり遠出してヘッポコ騒動では悲し過ぎますから)、約50km走行したので、エンジンオイルの交換を実施した。エンジン分解時に単品パーツごと洗浄したので、エンジン内部は完全にクリーンな状態だと思う。そんなつもりでいても、気が付かなかった部分に汚れが残っていたりするので、エンジン腰上のオーバーホールやコンプリートでのフルオーバーホールに限らず、早め早めにオイル交換することをお勧めしたい。
使ったエンジンオイルは、旧車や絶版車ファンのあいだでも人気のモトレックス製トップスピード4T(粘度は10W-40)。フリクションロスの低減やエコという意味で、魅力的なのが近年流行の低粘度オイルだが、旧車系モデルに利用すると、ガスケット材質の材質やクリアランス設定などからかオイル滲みがどうしても発生しやすい傾向になる。逆に言えば、高性能な低粘度エンジンオイルの「浸透性の高さ」を裏付ける証拠でもある。
一方、同オイルは鉱物油を基油に分子変換を行っているのが特徴。天然の鉱物油は、不均一な分子構造を持つのが特徴だが、その分子構造をモトレックス独自の分子変換技術で均一化し、100%化学合成オイルに限りなく近い分子配列としているのが最大の特長でもある。そんなトップスピード4Tの10W-40をチョイスし、旧車ライフを楽しみたいと思ったのだ。
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