
もしも「自分仕様」オリジナルパーツを製作できたなら、現代的カスタムマシン作りでは当たり前の「つるし部品=市販カスタム部品」だけではなく、他人とは、ひと味違ったマシン作りも可能になる。そして、今まででは味わうことができなかった「個性」が羨望の眼差しを受けることすらある。誰もが認める「美しさを兼ね備えた部品作りが可能」になれば、それはもう最高ですよね!?
目次
通称「ニコイチ」からでも夢広がる
ウインカーレンズ中央に突起があるオリジナルデザインのウインカーレンズ。ホンダ純正ウインカーレンズをベースに、市販のカスタムウインカー用小型レンズを組み合わせた、単純ながら完全なるオリジナルデザインのパーツ。ウインカーは目立つ存在だけに、このようなカスタムは同モデルを所有するユーザーからは「あれっ!?何だ!!」なんて思わせることになる。上が自作カスタムレンズを装着した例。
スーパーカブの歴史を振り返ると、60年代後半に「オッパイ」ウインカーレンズが登場し、70年代初頭のデラックス仕様には、通称「乳首」と呼ばれるウインカーレンズを装着したモデルも登場した。今回は、現代のスーパーカブ用純正ウインカーレンズをベースに、完全自分仕様の「乳首レンズ」を自作してみようと考えた。「ニコイチ」カスタムである。
ホールソーでアルリルレンズをキリ抜く
ホンダ純正レンズの中央には穴明け作業が必要だが、ここではホールソーを利用することにした。カスタムパーツの老舗、キジマ製小型レンズの段付き部分の外径がΦ28mmだったので、同サイズのホールソーを使うことにしたが、果たして穴の仕上がりがどうなるか!?
「下穴加工」がキーポイントになる
「いきなりホールソーで穴明けしたらどうなります?」そんな問いを、パーツ作り指南役、モデルクリエイトマキシの板橋さんにすると「そりゃ大失敗しますね~。レンズが割れて終わりになりますよ」とご返答下さった。「急がば回れ」という言葉通りに、ピンバイスホルダーとΦ1.0ミリのキリ(ドリル)で下穴加工を行ってから、ボール盤にホールソーをチャッキングして、最低回転数の550rpmで、ゆっくりゆっくり送り込んで序所に切削。ベースレンズを切り抜いた。テクニックを要するが、送り量(押し込み量)を少なく、じっくり作業しよう。
穴明け貫通「直前」で作業ストップ
穴明け完了する直前の合図は「切削音が変わった瞬間」になる。加工音が変化したそのタイミングで押し付けるチカラを緩めて作業終了。すると、あと僅かでホールソーが突き抜けるタイミングで作業を終えるのだ。下穴をピンバイスで開けていたので、その穴に90度に曲がったピックアップツールを差し込み、テコの原理で穴加工したレンズをクイッとすると、キリ抜きを進めていたセンターがパコッと外せる。
合体レンズ側の接触部の段差を切削
キジマ製小型レンズはラバーボディにカチッとハメ込んで固定するタイプ。ビス止めなどのネジ穴が無いので、デザインしやすかったのがチョイスした理由だ。ラバーボディに引っ掛ける部分の出っ張りをベルトサンダーで削り落し(外周方向への出っ張りを削り落す)、ホンダ純正レンズの厚さに合わせて段差部分の寸法を調整する。最後の仕上げは400番前後のサンドペーパーを利用した。削り落とした後の段差がホンダ純正レンズにパコッとハマるように仕上げる。
厚さ合わせの仕上げ切削はフラットに
フラットバーに400番のサンドペーパーを巻き付けて固定し、ベース側レンズの厚さに合せて突起レンズのベース部分をより一層、平面に仕上げる。レンズの厚さが同じになればランプ点滅時に違和感無く輝くのでは?と考えた。
残す作業は「レンズ同士の接着」のみ
双方のレンズの接触部分にスキマができていたり、部分的に凸凹があるときには、当て板に巻いたサンドペーパーで、より一層、密着するように切削仕上げを行おう。そんな作業を繰り返し行い、4個のレンズともハメ合い具合が良くなった。
アクリル系樹脂の接着に一番良いのが「プラリペア」の液体。そもそもウインカーレンズはアクリル製なので、プラリペアの粉は使わず、液体を少量、流し込むだけでレンズ表面がそれぞれ溶けて強固に接着できる。ベースとなるホンダ製ウインカーレンズの加工穴部分の内側にプラリペア液をハケ塗りする。ハケで液を適量塗ってからしばらく待つと、塗布部分のレンズにはベト付き感=溶け具合がはっきりわかる。
マスキングテープで固定して接着待ち
接着作業が完了したら、レンズがズレないようにマスキングテープをグルリと巻き付ける。この状況で完全硬化を待とう。最低でも「半日程度はそのままにしておきたい」とは指南役のマキシ板橋さん。
取材協力:モデルクリエイトマキシ
- ポイント1・アクリル部品に穴明けしたいときには、いきなり仕上げ寸法の刃具を使うのではなく極細のキリで下穴加工を必ず行う
- ポイント2・ 接着箇所のハメ合い精度が高ければ接着強度が高まるので、カチッと確実にハマるように仕上げる
- ポイント3・ アクリル部品の接着にはプラリペア液が最適。アクリル表面同士が溶けて接合する
カスタムマシン作りの第一歩は「ウインカー交換」に始まる、と言われた時代もあったが、確かに、ウインカー本体デザインやレンズ形状が変わることで、バイクに対する印象は大きく違って見えるもの。ここでは、ホンダ・リトルカブのカスタムウインカー作りにチャレンジしてみた。実は、カスタムパーツメーカーのカタログに目を通してみたが、意外にもバリエーションが少なく、お気に入りパーツを見つけることができなかった。そこで、ウインカーボディはそのままに、カスタムレンズに交換することで、個性を主張できるかも知れない?などと、考えたのだ。
そこで思いついたのが、ウインカーレンズをニコイチ。スーパーカブ伝統デザイン?の「乳首型」レンズデザインである。そんな妄想を抱きながらカタログをめくっていたときに発見したのが、カスタムの老舗、キジマ製の小型ウインカー用補修レンズだった。そのキジマ製補修レンズとリトルカブのホンダ純正レンズを合体させれば、オリジナルの「乳首」型のレンズが自作できる!!と考えたのだ。
そんなカスタム妄想をプラスチック部品作りのプロ、モトメカニック誌アドバイザーのモデルクリエイトマキシ主宰、マキシ板橋さんへ伝えたところ「それは面白そうですね!!穴加工が難しいかも知れませんが、穴明けノウハウさえ伝えることができれば、DIYカスタムレンズ作りが流行るかも!?」とのお話しで盛り上がった。
作業ノウハウは写真解説の通りだが、ボール盤を利用するときには「必ず素手で作業」することと、回転速度は「500rpm前後に設定」すること。ボール盤はVベルトのプーリー掛け替えで回転数を調整することができる。とにかく急がず慌てず、穴明けハンドルの送り込みも、ごくゆっくり作業すれば、レンズを割ってしまうことなく、作業を楽しむことができそうだ。
仮に、ベースの純正レンズに「クリアのカスタムパーツ」を準備できれば、突起部分を橙色レンズにして、より一層、カスタムテイストが高い仕上がりにすることもできる。自分仕様のカスタムパーツを製作したいサンデーへメカニックには、チャレンジしていただきたい「ハイブリッドレンズ」のワンオフカスタムである。
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