実用性とオシャレさを両立できるカスタムとして人気のヘッドライトチューニングでは、HIDやLEDなど高性能かつ高機能バルブに交換するのが一般的です。しかしノーマルのヘッドライトにも改善の余地はあります。そのカギとなるのがアース線のダイレクト化です。

純正ヘッドライトの光量をアップにはヘッドライトリレーが一般的だが……


メーターやイグニッションスイッチ、左右ハンドルスイッチのハーネスはヘッドライト周辺に密集しており、新車でも混雑しがち。旧車ともなればカプラーやギボシも現行車ほど洗練されておらず、多くのユーザーの手を経てきた車両だと配線の切断や継ぎ足しも当たり前で、カスタムの前に整理整頓が必要だ。

電気の回路は電源から負荷に流れた電気が電源に戻ることで成立するというのは、交流でも直流でも同じです。また電圧の高低に関わらず通用します。電気があまり得意ではないというライダーでも、乾電池と豆電球の配線を思い浮かべれば理解できるはずです。

バイクのヘッドライトも基本的には電池と豆電球の関係で説明できます。ただしバイクの配線はもう少し複雑で、バッテリーを基点とするとバッテリー→ヒューズボックス→イグニッションスイッチ→ヘッドライトスイッチ→ディマースイッチ→ヘッドライトバルブ→アース線→バッテリーという道順になっています。このうち、現行車はヘッドライトが常時点灯式なので、ヘッドライトスイッチはありません。その代わりに、キーオンでは点灯せず、エンジン始動後に点灯するようにリレーが組み込まれている機種もあります。

フィラメントバルブを用いた純正ヘッドライトに対して、カスタムパーツとして人気なのがHIDやLEDといったバルブです。これらはコイル状のフィラメントではなく放電や半導体といったメカニズムを用いることで、純正バルブに比べて消費電力が少なくなおかつ見た目も鮮やかなのが魅力です。

しかし絶版車や旧車ユーザーの中には、電球とは全く異なる風合いの最新のヘッドライトバルブは好みではないというオーナーも少なくありません。とはいえ、暗いより明るい方が良いことは間違いなく、そのためにバッテリーからヘッドライトバルブに至る長い道のりをショートカットできるヘッドライトリレーを装着しているライダーもいます。ヘッドライトリレーは、イグニッションスイッチやディマースイッチに流れる電流をリレーの信号用に用いることで、いくつも存在する接点で少しずつ発生する電気的なロスを取り除くことができる点でとても合理的です。

ただし、ヘッドライトリレーを組み込むためにはリレーやヒューズなどの部品を装着するためのスペースが必要です。バッテリーからの電流をヘッドライトバルブにダイレクトに流すリレーはロービームとハイビーム用にそれぞれ必要で、少なくとも2個のリレーを追加しなくてはなりません。かつてのヘッドライトリレーは、追加リレーをヘッドライトケースや燃料タンク下に装着するように設計されているものが多く、ネイキッドタイプの機種ではそれだけで苦労することもありました。

ヘッドライトケース内の混雑を避けるため、サイドカバーやバッテリー近辺にリレーを配置する製品も販売されていますが、限られたスペースに必要な部品を効率的に配置している現在のバイクでは、リレーを追加するのは容易な機種ばかりではありません。

POINT

  • ポイント1・バッテリーからヘッドライトバルブにつながる配線には途中でいくつもの接点が存在する
  • ポイント2・ヘッドライトリレーを装備すればスイッチ部分でのロスを減らすことができるが、リレーを追加するためのスペースが必要になる

アース線の多くはタコ足配線でバッテリーまで戻っていない!?


画像はアース線の新設作業を行っているカワサキZ1-Rとは別のスクーターだが、車体各部の電装品から集まってきた緑色のアース線はフレームに固定されている。一方でバッテリーのマイナスターミナルにつながる太いアース線も、スターターモーターのマイナスターミナルを経てフレームにつながり、緑色のアース線と共締めされている。理屈としてはボディアースで回路ができているが、緑のアース線はここに来る途中でどんどん枝別れしていることを思うと、ヘッドライトバルブからダイレクトでアースを引く方が流れがスムーズになることは簡単にイメージできる。

ヘッドライトリレーによって純正ヘッドライトバルブが明るくなるのは確かですが、純正ハーネスにも改善の余地があります。バッテリーのプラス側からキーシリンダーやディマースイッチを経てヘッドライトバルブに入る側はそのままで、注目するのはバルブからバッテリーのマイナスに戻る出口側のアース線です。

バイク各部の電装品に入る電気はさまざまな経路を辿って来ますが、電装品を通過した後はすべてバッテリーのマイナス側に戻るだけです。そのため、軽量化や省コスト化のため純正ハーネスでは幹となるアース線に各電装品から枝のようにアース線が接続されています。灯火系、燃料系といった機能ごとにまとまっていたり、すべてを一括していたり機種によって異なりますが、スターターモーターのアース線を除けば電装品からそれぞれのアース線が独立してバッテリーのマイナスに戻っていることはまずありません。

その上で注目したいのがアース線の行き先です。ほぼすべてのバイクのアース線はバッテリーのマイナスターミナルではなく、エンジンのクランクケースやフレームに接続されています。そしてバッテリーのマイナス線もクランクケースやフレームに接続されています。クランクケースでもフレームでも導電性の金属なので、いわゆるフレームアースによって回路は成立しています。

私たちが持っているような一般的なサーキットテスターでは、何本ものアース線が合流を繰り返しながらクランクケースに接続されている抵抗値はゼロを表示します。しかし電流が大きくなれば接続部の多い細い配線は抵抗を生む原因となります。バイクの配線の中でバッテリーとセルモーターをつなぐ配線だけが極端に太い理由は、セルモーターが消費する大電流を抵抗なく流すためです。ヘッドライトはセルモーターほどではないものの、H4バルブなら55/60Wの消費電力があり、他の電装品に比べて多くの電流が流れています。

純正ハーネスで用いられる配線サイズは、各電装品の消費電力に応じて必要充分なサイズが与えられていますが、配線を太くすれば電気がよりスムーズに流れられるようになるのも確かです。バッテリーからヘッドライトバルブまでの入り口側はイグニッションスイッチやディマースイッチなどいくつものスイッチや接点があって、配線を太くするのも簡単ではありません。しかしアース線であればヘッドライトカプラーの端子からバッテリーのマイナスターミナルまで一直線で戻すだけなので簡単です。

POINT

  • ポイント1・車体各部の電装品を通過した後のアース線は、車体各部の配線がまとめられている
  • ポイント2・アース線はバッテリーのマイナスターミナルに直接つながらず、エンジンやフレームを通じたボディアースとなっている

バイクの年式が古いほどアース線戻しの効果がある


ヘッドライトリレーを使わず電気の流れを改善するために、ヘッドライトのアース線だけを独立させる。アーシングをより直接的に行うようなイメージだ。


左が純正のアース線で右が新設する電線。バイク全体の消費電力から考えれば純正サイズの配線で充分だが、幹線に対してあちこちから枝線が割り込む仕組みで、なおかつ接続部分が経年劣化により腐食しているような状況では抵抗が増すことも考えられる。サーキットテスターで測定すると純正アース線も抵抗はゼロだが、流れる電流を測定すると専用アース線を追加した方がより多くの電流が流れる。


ヘッドライトカプラーから純正端子を抜いて、太い新たな電線をかしめた端子を挿入するだけでアース線が完成。純正ハーネスに這わせるようにバッテリーまで引っ張って丸型端子をかしめて、バッテリーターミナルに共締めする。

ヘッドライトカプラーからバッテリーに戻るアース線は、純正より太いコードを使います。ここでは3.5sqと呼ばれる太さの耐熱ビニール線を使用します。一般的な配線は0.75sq程度なので相当太いです。ちなみに手元にあった3.5sq線の許容電流は39Aで、電圧が12Vなら450W以上を流すことができオーバースペックと言えるレベルです。

純正アース線をこの線に置き換え、バッテリーターミナルのマイナス端子に直接つないだところ、純正アース線よりも光量は確実にアップしました。旧車や絶版車のハーネスはプラス側もアース側も酸化が進行しているものも多く、アース側は電装品ごとの枝が幹につながる際のハンダやかしめ金具部分で酸化が発生している場合も少なくありません。

そのような状態であるほど、ダイレクトアース線の効果が顕著になります。新たに電線を引く分だけカサは増しますが、ヘッドライトリレーを追加するよりはずっとスリムに仕上がります。最初から恒久的に決めなくても、ヘッドライトカプラーからバッテリーマイナスまで暫定的につないで明るさの違いを実感してから配線しても良いでしょう。

ここではカワサキZ1-Rでアース線の戻しを行いましたが、純正ハーネスが年式相応に劣化していたため明確な違いを感じることができました。ヘッドライトバルブを流行の最新パーツに交換することなく、ヘッドライトリレーを追加せず、現状より電気の流れをスムーズにすることでヘッドライトを明るくできるのがダイレクトアース線なのです。



バッテリーのプラスからヘッドライトバルブにつながる入り口側には手を加えず、出口側のアース線を交換しただけなのに画像でも違いは明確。人間の目で見ると、画像よりもさらにアース線効果を明らかに感じられる。ヘッドライトリレーを組み込める余地があるバイクはリレーを選択すれば良いし、それより手軽に明るくしたいならアース線の新設がおすすめだ。

POINT

  • ポイント1・経年劣化によって酸化した電線が何本もつながることでアース線の流れが滞ることが懸念される
  • ポイント2・ヘッドライトバルブカプラーとバッテリーのマイナス端子を直接つなぐアース線を増設するだけでもヘッドライトの光量がアップする

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