
モンキーカスタムでもエイプカスタムでも、メーカーを問わず4ストロークミニエンジンのパワーアップは、ボアアップが一番の近道。それと同時に実践したいのが、吸排気系のカスタムである。ノーマルエンジンでも、吸排気系が変るだけで、その走りが元気になるのはご存じの通り。だったらスーパーカブにビックキャブを取り付けてみようと始まったのが、この企画。やっぱり、スーパーカブも例に洩れず、吸排気カスタムによって走りはより一層元気になった。エンジンチューニングは楽しいです!!
目次
手持ちにあったビッグキャブ
キャブボディがひとまわり以上大きく、ピストンバルブのストロークが長いケーヒン製PBキャブ。おそらくタイカブ系パーツだと思うが、以前に購入した部品がガレージ在庫にあった。ボディの大きさ対策で、マニホールド加工しないとボルトオンできなかったが……。
やはりガレージ在庫の中古インマニを利用したが、どこのメーカー製なのか?何用なのかは不明(上の画像)。部品交換会でまとめ買いした箱の中に入っていたマニホールドを利用することにした。シリンダーヘッド側の取り付けピッチとキャブ側の取り付けピッチが一致したので、使おうと思ったのだが……。
マニホールドが長くトップキャップが干渉
適合機種用のパーツを購入して取り付ければ、このようなことにならないが、手持ちにあった部品を利用したので、そのままでは取り付けが不可能。ボディが大きくマニホールドが長いので、トップキャップとフレームパイプが干渉してしまった!!
マニホールドを詰めるか削るか?
マニホールド取り付けフランジが厚い
思い切ってフランジを切削加工
何とかなったかも……?(後でガスケットを追加)
市販の機種適合キットパーツならこんなことにはならない。今回は致し方ない。キャブボディが上側に向けて長い上に、マニホールドのフランジ座が厚かった。そこで、マニホールドのエンジン側フランジを可能な限り薄く加工することにした。フライス盤のクランプにマニホールドを固定してフランジ面を平面に。エンドミルでフランジの厚さを約半分に切削した。ガレージに工作機械があると、思いつきで色々と試せるのが良い。失敗は数知れず……。
何とか干渉からクリアできたが……
フランジ面を7mm残し、マニホールドをシリンダーヘッドに締め付け、キャブをマニホールドにマウント。何とか干渉からクリアできた。しかし、ケーブルアダプターがフレームに当たるので、もう少し余裕が欲しいところだ。
吸入効率の向上を目論見、純正流用
キャブ時代の国内C90(GB6系)用インレットパイプを流用し、パイプ内径の拡大によって吸入抵抗を減らそうと考えた。今回、作業実践した、スーパーカブの北米輸出モデルのパスポートは、ブローバイガス還元ポート付きで、インレットパイプがゴムの劣化で縮んでいた。僅かながらインレットパイプ径を大きくし、吸入抵抗の低減を狙ってみた。逆に吸入抵抗が少なすぎると、低中速域のトルク感は減ってしまう。
ケーブルを逃がすためにスペーサーを追加
【ビフォー】スペーサー薄い
【アフター】スペーサー追加で厚い
マニホールドとキャブ本体の間には断熱用スペーサープレートが入る。このスペーサーの厚さ変更でケーブルアダプターとフレームパイプの間には余裕が生まれる。そこで、再び部品箱の中から樹脂スペーサーを見つけて追加し、フランジ口径部分に段差が出来ないようにリューターで削った。もちろん追加スペーサーへはOリングやガスケットが入る。これでケーブルアダプターの干渉問題は解消できた。
キャブ交換完了=セッティング確認必須
キャブ本体をマニホールドから取り外さなくても、何とかフロートチャンバーのみ取り外すことができ、メインジェットやスロージェットを交換できたのが嬉しい。4気筒モデルでは、この作業を簡単に進められないのが現実だから、尚更、扱いやすさを特筆できる。試運転を繰り返しながらセッティング変更。一般的に4ストミニで特大キャブを取り付けない限り、エアクリーナー付きでもファンネル仕様でも、スロージェットデータに大きな変化は出ないもの。まずは安定したアイドリング環境をセッティングで導きだそう。
セッティングが決まって走りが元気に
このビッグキャブを取り付けたことで燃料コックレバーの向きが逆になってしまったが(進行方向右側から左側)、チョークケーブル仕様なので、従来通りのセンターチョーク式に変わりはない。スロージェットに大きな変化は無く、乗りやすさ向上のためにジェットニードルのストレート径変更とクリップ段数の変更は何度も繰り返した。現在、始動性の良さはもちろん、通常走行でも不満はなく、全域で走りが力強くなった。特に、追い越し加速時のトルク感は素晴らしい。
- ポイント1・ 適合機種用ビッグキャブキットなら完全ボルトオンなので装着は楽々。セッティングデータ付きキットもある
- ポイント2・ キャプ単品だけではなく周辺部品もバランス良くセットアップすることで性能向上は可能
- ポイント3・メインジェット変更からではなく、安定アイドリングできるようにスロージェットやパイロットジェットのセッティングから始める
88ccにボアアップしたので、ビッグキャブ化でさらに走りが楽しくなる?などと妄想しながら、ガレージ在庫の部品箱の中をゴソゴソやってみたら、数年前に購入したけど使う機会が無かった新品キャブが出てきた。それはおそらくタイ産のケーヒンPBキャブ。また、それを取り付けるために購入してあった中古マニホールドも出てきた。キャブボディがやや大きかったが、インレットパイプの口径が同じなのと、チョークがケーブル仕様だったので、このキャブとマニホールドを利用しスーパーカブの輸出車、パスポートC70をビッグキャブ仕様にしてみた。
市販パーツのビッグキャブは、手動式レバーチョーク仕様が圧倒的に多い。しかし、スーパーカブ用として考えた場合は、レッグシールドカバーが付くので、チョークケーブル仕様の方が使い勝手が良い。特に、カモメハンドルと呼ばれる70年代のスーパーカブ時代は、ケーブル式の「センターチョーク」が特徴的だった。このパスポートもセンターチョーク式だったので、このチョークを生かすことができた。
結果的には、マニホールドフランジの追加工によってビッグキャブは取り付けることができた。キャブボディ側、エンジン側ともに、締め付け座面の加工や調整で、何とかなった。ノーマルキャブよりも有効ベンチュリ径が大きい(スロットルピストンの径も太く大きい)ので、空気の吸入抵抗が減り、より元気な走りが可能になった。88cc化と吸排気チューンによって走りが一変するモンキーカスタムのように、このビッグキャブ化によってスーパーカブの走りも、より力強くなる。
さてさて、実は、この作業=ビッグキャブ化を終えてから、ノーマルキャブとほぼ同じボディサイズで、ベンチュリ径だけが大きくなったケーヒンPBキャブがある事実を知り、そのキャブを取り付けて走ってみた。すると、ここで取り付けたラージボディのPBキャブよりも明らかにバランスが良く、扱いやすい走りになった。しかし、そのキャブは手動式チョークレバーだったので、仮に、このボディ仕様でケーブル式センターチョークを利用できれば、見た目のマッチングも最高なのだろうと思った。純正流用も含め、徹底的に探せば、希望の仕様を見つけられるかも知れないが、今回はここまで。
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